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どうも、お久しぶりです。おすなのかたまりです。
スパムがひどいので、禁止語句を設定しました。
「http://」を禁止していますので、URL を記入する場合は「ttp://」とかにして下さい。
これでこのスパムがツールを使ったものかどうかよく分かると思います(笑
この掲示板は XREA.COM が生きてる限り多分あると思いますので、どうぞよろしくお願いします。
以上、さくらがちる頃に。
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スパムがうっとうしいので、そろそろ公開。史上最長の話となった第七十五話です。
第七十五話 放浪の殲滅者
キュワール連合軍、デヴォリア基地
複数隻の輸送船が停泊し、慌しくなったのも束の間、再び静寂が訪れる
しかしそれはただの静寂ではない。緊張を伴う静寂である
軍施設の隅にある、真っ白な鉄筋コンクリート製の建物
戦時下でも攻撃を受けないよう、銃座も土嚢も無く、屋上には赤い十字が描かれている
その建物のある階に、エレベータが昇って来た
鐘の音が鳴り、自動扉が開く
そして、一両の四式中戦車が出てきた
かつての第一一五中隊司令、九龍少佐である
ルナツー戦で負傷してから、前線の第一一五中隊から一旦引き、パレンバンでリハビリに専念していた
このデヴォリア到着後、保留となっていた昇進が叶い、中佐となっている
パレンバン戦の直前には殆ど怪我も治りつつあったが、それでも怪我を心配した部下達の計らいで、ここまで退避してきたのだ
手引きをしたのは憲兵隊に友人がいた天城大尉、そしてその憲兵隊にいる友人、野末曹長である
天城の副官である久村は残って戦うつもりだったが、フレイ中佐の護衛要員が不足していたことから護衛に回されることになったのだ
勿論のこと、船内でリハビリを終えた九龍中佐は、ともに移ってきた天城、そして久村とともに部隊に復帰している
だが、属している部隊は第一一五中隊ではない
パレンバン戦で壊滅的打撃を受けた第一一五中隊は、砂原少佐の下、ルナツー基地において再編が行われている
そしてパレンバンが壊滅したことにより、デヴォリアからルナツーの間、パレンバン周辺に強力な敵の勢力圏が存在する
そこで、時を同じくしてデヴォリアで再編された小隊の指揮官に就任することとなった。無論、天城と久村も一緒である
九龍中佐「・・・たしか、この階だったはずだが」
彼が軍事病院に来たのは他でもない、未だ入院している戦友に会いに来たのだ
九龍中佐「おっ、あったあった」
引き戸をノックして、応答を待つ
しばらく経ってから、応答があった
引き戸を開け、個室に入る九龍中佐
ベッドに横たわっていたのは、中佐の階級章をつけたルノーB1だった
九龍中佐「やぁ、フレイ中佐」
フレイ中佐「おお、九龍・・・中佐か」
フレイ中佐はベータ攻略作戦の折、帝国軍のブービートラップにより重傷を負った
以後、同じくパレンバンで治療を受けていたが、怪我の度合いが酷く「助かったことさえ奇跡」とまで言われていた
そのため、パレンバン撤収の折には天城、久村、そして九龍により車輪つき担架に載せて搬送したほどであった
フレイ中佐「いかんな・・・どうにも、怪我がなかなか治らなくて」
九龍中佐は、持っていた短刀でリンゴの皮をむいている
綺麗に八等分し、その一つをフレイ中佐に渡した
九龍中佐「差し入れだ。憲兵の曹長から一箱貰った」
フレイ中佐「・・・器用だな」
九龍中佐「あぁ、見せて無かったな。隊のみんなから言われてたよ。『宇宙基地所属部隊で一番皮むきが上手い』って」
フレイ中佐は、手渡された一つを貰って食べる
フレイ中佐「・・・ん、うまいな、このリンゴ」
九龍中佐「曹長が厳選したらしいからな。憲兵権限って訳じゃないが」
九龍中佐も、短刀を洗った後に食べ始めた
フレイ中佐「本国の軍隊じゃないんだから、憲兵が威張っちゃいかんだろう」
九龍中佐「全くだ・・・それにしても、元気そうだな」
フレイ中佐「ああ、もうすぐ退院できそうだ」
九龍中佐「そうか、それは良かった」
窓の外の景色は、戦時下とは思えないほど平和である
いつもどおりチョロQたちは、大通りを通っている
ただ、道端のそこここには警備の兵卒の姿が見られるのが、いかにも戦時下らしい
フレイ中佐「・・・大丈夫かなぁ、この基地も」
九龍中佐「隣のセイロンがやられたからな。航空基地の士官が『もしこっちの戦力が万全なら、飛び石で本土に向かう連中を横っ腹から叩き潰したい』なんて言ってたが」
談笑をしながらも、九龍中佐はルナツーにいる戦友たちのことを思っていた
パレンバンの激戦は凄まじい規模に達し、精鋭第七分隊にも犠牲車が出たという
重傷を負った佐軒准尉は別ルートで搬送されたというが、果たして何処に着いたのか。生きて彼らに再会することができるのだろうか・・・
ほぼ同時刻、ルナツー基地
軍楽隊による行進曲の演奏とともに、盛大に出航する艦隊の姿があった
士官「これより本艦隊は、ベータ方面に進出すると見られる敵哨戒部隊の追撃に当たる!」
その艦隊を見送る、基地の住民とキュワール各国軍の兵士達
その一両、一等兵の階級章をつけた三式中戦車の上には、子チョロQが乗っていた
二両は日の丸の旗を振り、出航する大艦隊を見送っていた
周りの兵士達の言葉を真似て叫ぶ子チョロQは、決してその一等兵の家族ではなかった
この数分前、海軍の兵士達が出港式の準備をしている時、自室で準備をしていた一等兵は、子チョロQに名前を聞いた
まだ名前を聞いていなかったからである
すると、子チョロQは元気良く「あやだよ!」と答えた
グリシネ系の女の子であることは、ここまで乗ってきた艦の中での話から推測は出来ていた
一部始終を知っていた分隊長代行兼暫定隊司令の佐藤大尉は、一等兵に子チョロQの面倒を見るように命じた
それからという物、子チョロQと一等兵はまるで兄妹のように港で遊んでいたという
そんな一等兵と子チョロQの平和な姿とは裏腹に、この戦争は大きな動きを見せるようになった
この日出航した艦隊は、その象徴とも言える
任務を発表した士官は、日戦軍団海軍の精鋭、第一特務艦隊に所属している
すなわち、出航した艦隊は第一特務艦隊である。勿論、その戦力はパレンバン奇襲作戦に参加した八隻のみである
だが、その数分後、追って出航する十六隻の艦隊の姿があった
巡洋艦八、駆逐艦八。その艦影はプロトン軍の物に近かったが、識別塗装はグリシネ海軍のそれであった
だが、その日の出港命令に、グリシネ海軍の名は無かった・・・
同時刻、グリシネ国軍総司令部
いきり立つ幕僚達は、会議室の扉を勢いよく開けた
既に陸海の幕僚は集結し、「彼ら」を待ち構えていた
空軍長官「・・・一体どういうことかね!?」
長官席に座った空軍長官は、今まで以上に憤慨していた
谷村中将「即刻銃殺せよと命じたはずだ!」
藤沢中将「貴様らが躊躇したせいで、反逆を防ぐことが出来なかったではないか!」
続いて会議室に座る幕僚達も、状況を聞いて向かい側の幕僚達に敵意を剥き出しにしていた
森中将「西郷、もう貴様には騙されんぞ。士官学校で誓ったことなど、何一つ無い!」
西郷中将「それは間違いだ!厚木准将はまだ反逆など起こしていない!」
斎藤中将「厚木には謹慎命令が下されていたはずだぞ!・・・そもそも、厚木は反逆車どもに加担したから銃殺せよと、長官殿が仰ったではないか!」
湊川少佐「待ってください!今回の出航、ちゃんとした事情があります!これを見てください!」
そう言って、湊川少佐は一枚の指令書を取り出した
幕僚の一両が、指令書を取って眺める
「発 ルナツー基地司令部 宛 第一特務艦隊 哨戒機より敵偵察部隊と思しき小規模艦隊を捕捉との報告、追撃を要請す。支援のために別艦隊の支援が必要な場合は出航後追って知らせよ 以上」
「発 第一特務艦隊 宛 ルナツー基地司令部 艦載機からの報告より、小規模艦隊はベータ沖に向かう物と思われる。第三巡洋艦隊の援護を要請す 以上」
森中将「・・・どういうことかね、これは?!」
湊川少佐「ルナツー基地司令部と第一特務艦隊の通信の内容です。第一特務艦隊より、正規の命令系統で『第三巡洋艦隊』の出航を要請しています。すなわち、これは艦隊自体への出航要請なんです!」
藤沢中将「そんな物、反逆車どもの偽装工作じゃないのかね?!」
湊川少佐「ルナツーの管轄はQシュタイン連邦軍です!」
それを聞いて、幕僚達は一旦着席した
湊川少佐「とにかく、今のところ叛乱の兆候は見られません。新たな情報が入り次第・・・」
そのとき、会議室に一両のウーズレー装甲自動車が駆け込んできた
グリシネ通信兵「主任!日戦軍団から第二報!」
湊川少佐「何っ!?」
グリシネ通信兵「読み上げます!『発 第一特務艦隊 宛 ルナツー基地司令部 小規模艦隊は艦載機部隊の攻撃により撤退。これより本艦隊は艦載機の修理並びに弾薬補給のためベータに向かう 以上』!」
再び会議室は騒然となった
原田大将「報告の通り、同部隊はこれよりベータに向かう。ベータもQシュタインの管轄だ、万が一叛乱があったとしてもQシュタイン側が阻止する!」
黒田中将「そうは思えんな。連中は反逆車を庇護した。あんな連中、信頼など出来まい!」
そのとき、傍らの斎藤中将が黒田中将に耳打ちをした
斎藤中将「・・・参謀、落ち着いてください。我々には直轄部隊があります」
黒田中将「・・・そうだったな」
騒然となっていた会議室は、一応の落ち着きを見せた
「会議室の第一次攻勢」は、収束を迎えた
ほぼ同時刻、ベータ基地第一軍港
そこに停泊する大型艦の機関室で、一両の一式装甲兵車が唸っていた
機関員A「・・・どうしました?」
機関長「・・・どうもおかしいなぁ・・・昨日はこんな音は出なかったが」
この日、この艦の属する艦隊は大規模な演習を控えていた
しかし、出航五日前に限って、機関に異常が見られたのだ
機関員B「全く、演習が近いというのに機関故障だなんて、ついてないなぁ・・・」
機関長「実戦じゃないだけマシだ。これで実戦、それも緊急だったら出航前に叩かれてたぞ」
実は、この艦で起こった異常は機関だけではなかった
赤城型航空母艦、二番艦「天城」。開戦当初から、たびたび戦線に出てきた武勲艦
今まで故障など考えられなかったその艦に、突然故障が多発した
まるで、出航することを嫌がるかのように
機関員A「・・・結局、異常の原因は何なんですか?」
機関長「分からん。ちょっと資料と機材持って来い」
機関員A「はっ!」
修理作業は、なおも続く
結局のところ、全ての修理が完了するのはそれから四日後のことであったという
第七十五話 続く
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出航。ちょっと時系列をずらしてますが、これに関してはあとがきで。
第七十五話 放浪の殲滅者
同時刻、空母「天城」の格納庫
117空特有の塗装を施した愛機の整備を行う、一両の自走無反動砲
日戦軍団海軍屈指の精鋭飛行隊、第117航空隊の指揮官である彼は、一旦機体の下から出て汗を拭った
京城大佐「・・・よし、方向舵異常なし」
細い胴体に長い主翼、折りたたまれた翼端部
その機影は、日戦軍団屈指の名戦闘機、零戦であった
彼の愛機は、試験的に導入された零戦の後継機候補の一機「電征」であった
この電征は零戦に旋回性能で劣るが、防弾性及び機関砲の威力、そして速力で勝っている
同一の事情で開発された「烈風」に対し、武装が30mm機関砲二門の「電征」は、どちらかというと熟練兵向けであることから、日戦軍団海軍屈指の精鋭部隊である第117航空隊に配備されていた
しかし、数日前に整備兵のミスで発動機が故障してしまい、予備部品も無かったことから現在はかつての愛機である零戦を使うこととなった
とはいえ、仮に発動機が直ったとしても、電征に乗り換えるつもりは無い
第116航空隊の豊島少佐の「機体は消耗品。搭乗員さえ生きて帰ればどうにでもなる」という考えも「何よりも生きて帰ること」と考えればうなずけるが、自身の弟はそれに反して旧式であるがゆえに既に前線を離脱した一一型を使っていた
急降下性能において現行機に劣る一一型は、パレンバンにおける戦闘でその急降下性能が仇となって敵機を逃している
しかし、例え時代から遅れても、自身の機体に愛着を持って扱う、という考えには共感できた
それこそ、まさに「愛機」という言葉がふさわしいからだ
京城大佐「・・・そういえば、前にあいつに会おうとしたら、電征の発動機がいかれたんだっけか・・・」
最も、こちらも五日後に演習を控えている時期だ。陸上基地まで赴く暇は無い
兄弟の再会は、演習終了後になりそうだ
二日後、ライトウォーター近郊宙域
二十四隻の艦隊は、一路ベータへと向かっていた
しかし、この宙域において、その二十四隻全てが一旦停止した
と、言うのも、これから行う「作戦」のためである
ティーガー元帥「各員に告ぐ、これより本艦隊は一路ベータへ向かう。ここまで同行したグリシネ国海軍第三巡洋艦隊とはここでお別れだ。手空きの者は甲板に登って挙手敬礼をするように。以上」
その通信を聞き、多くの乗員が甲板へと駆け上がった
松井元帥「通信長、『ライズナ』との回線を開いてくれ」
通信長「了解!」
甲板上には多くの兵士達が集合する
そして、通信回線の準備が整った
松井元帥「『紀伊』より『ライズナ』へ。運が悪ければこれが今生の別れとなるだろう。しかしそのようなことはめったに無いと思っている。健闘を祈る」
厚木准将(通信)「『ライズナ』より『紀伊』へ。今回のは実在しませんでしたが、いずれは本物の外惑星軍との戦闘に参加する物と存じます。武運長久を祈ります」
ティーガー元帥「総員、敬礼!」
甲板上の乗員たちが、敬礼を行う
それから数十秒後、二つの艦隊は別れて動き始めた
これからの戦いは、さらに熾烈な物となる
両艦隊に待ち受ける運命は、如何なる物か
それから三日後、ルナツー基地
一つの艦隊が、出航準備を整えていた
戦艦八、巡洋艦九、駆逐艦八。グリシネでは標準的な中規模艦隊である
旗艦である戦艦「バージニア」の艦橋には、既に幹部達が詰めていた
通信長「第一特務艦隊から入電です!『ベータ基地駐留の青柳中将から「第三巡洋艦隊はいずこに在りや」との連絡あり』」
通信長の連絡を聞き、艦隊司令官、三川中将は、予定通りの電文を命じた
三川中将(車種:九七式中戦車)「よし、本国に打電!『第三巡洋艦隊は本国ならびに民兵の意思に叛いて、放棄された採掘基地「フィフス・ルナ」に向かっている模様。追撃の許可を求む』、以上!」
通信長「了解!」
通信士たちが、既に書かれていた通信文を、本国へと打電する
返答は、あまりにも早く帰ってきた
通信長「本国から入電です。『ただちに追撃せよ。一隻残らず殲滅せよ』、以上です!」
三川中将「了解!・・・・・これより本艦隊は、第三巡洋艦隊追撃のため、『フィフス・ルナ』へと向かう!」
艦長「両舷、前進微速!」
旗艦の「バージニア」が、轟音を立てて出航する
他の艦艇も、それに続く
そして、出航直後、艦隊は一斉に、近郊宙域に展開する別の艦隊に砲身を向けた
艦長「撃ち方、始め!」
八隻の戦艦から、一斉砲撃が開始される
別の艦隊は射程圏外のようで、反撃は何一つ無い
砲撃を受け、轟沈する駆逐艦
しかし、脱出する乗員の姿は、無い
その後も反撃どころか、動くことも無く、艦隊は壊滅していった
壊滅した艦隊の脇をすり抜け、グリシネ艦隊は進撃を続ける
果たして、この「戦闘」は如何なる意味を成すのか
話は、数十分前に遡る
ベータ基地の軍港には、多くの日戦軍団兵士が並んでいた
が、その近くには、本来近くに並んでいることはありえないQタンクが並んでいた
深緑の車体色。フェンダーに大きな階級章を装備し、さらに車体には無数の勲章
グリシネ空軍の参謀であった
その軍港に、艦隊がやってきた
キュワール屈指の精鋭艦隊、第一特務艦隊である
「紀伊」は、あえて参謀達がいる岸壁へと接岸した
タラップを掛けて、降りてくる松井元帥
松井元帥「・・・やあ、仇の諸君。ご苦労さん」
ベータ基地直属のグリシネ空軍参謀、青柳中将は驚愕した
青柳中将(車種:九八式中戦車)「・・・どういうことかね、これは!?」
松井元帥「本部に報告は上げたはずだよ。『哨戒艦隊を撃退したためここに寄港する』と」
青柳中将「第三巡洋艦隊は、どうしたと聞いているんだ!」
松井元帥「我々とは別の意思に従って行動している、としか、言いようがないな。まあ、その方があなた方も手を出しやすいだろうが」
その言葉を聞き、青柳中将はさらに驚愕した
グリシネ本国どころか、日戦軍団との意思とも異なっての行動
「反逆車」と罵られながらも、「祖国解放」を意にも介さず戦う民兵組織とさえ袂を分かつこの行動は、一体何を意味するのか
松井元帥と別れた青柳中将は、ただちにルナツー基地の第五主力艦隊に対し、第三巡洋艦隊の動向を探るよう打電。それからしばらく後、ライトウォーターの遠方にある放棄された採掘基地「フィフス・ルナ」へと向かっていることが判明した
あまりにも早い返答に、青柳中将は疑問を感じたが、ただちに第五主力艦隊に追撃を指示。これまた思いのほか早く、第五主力艦隊は追撃を開始した
今回の鎮圧作戦の指揮は、表向きには青柳中将に任されていた。しかし、厳密に言えば青柳中将は本国の意向を前線に伝える役目を負わされているに過ぎなかった。このときの指示も、実は「第三巡洋艦隊の行き先が判明次第ただちに第五主力艦隊に追撃を指示せよ」という命令書を受け取っていたためである
この時点で、前線に展開しているグリシネ海軍の艦隊は、第三巡洋艦隊、第五主力艦隊のほかは、デヴォリア方面まで退避した第三主力艦隊を除けば小規模な艦隊のみであった
空軍に関しては、ベータに停泊する二個艦隊のほか、数個艦隊が各基地に展開している。これに関しては後述する
このベータに停泊する二個艦隊に関しても、追撃作戦のバックアップとして出航準備を始めつつあった
その傍らで、出航する小規模な艦隊の姿があった
航空母艦「天城」。赤城型空母の二番艦で、第四機動艦隊の旗艦である
「天城」はこの日、遅れに遅れていた演習を行うため、巡洋艦二、駆逐艦七を伴ってベータ沖へ進出することとなっていた
だが、この日その宙域には、恐るべき敵が待ち受けていた
第七十五話 続く
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会議室の戦い。加筆に加筆を重ねた結果。
第七十五話 放浪の殲滅者
再び時系列を進め、舞台をグリシネ国の統合幕僚本部へと移す
第五主力艦隊が、ルナツー港外に残存していた第三巡洋艦隊艦艇を撃沈後、全速力でフィフス・ルナへ向かっているとの報告が入ったとき、幕僚達は一旦解散していた
報告を受けて、慌てて駆け込んでくる幕僚達
斎藤中将「第五主力艦隊が、反逆車どもの追撃を始めたって!?」
森中将「らしいですよ。ようやくまともにやってくれるようになったらしい」
技術屋でありながらも前線に口を出す斎藤中将と、相変わらず腰巾着な森中将
黒田中将「大日本帝国とやらのキュワール侵攻が近いといわれているのに、全く連中は・・・松井元帥もとんでもない奴だが連中はそれ以上だ!」
その腰巾着をわき目に騒ぎ立てる黒田中将
藤沢中将「海軍どもの馴れ合い体質には呆れた物だな。不穏分子をここまで放っておくとは」
着席しながら、相変わらず小言を呟く藤沢中将
谷村中将「これで粛清が完了するな。清々するよ」
しきりに「粛清」を呟く谷村中将
村瀬中将(車種:九二式重装甲車)「全くですな。これでようやく外惑星とやらの迎撃に集中できそうです」
相変わらず追従の多い村瀬中将
その向かい側には、こちらも別室で待機していた陸海の幕僚達の姿があった
高沢少将「・・・準備は、出来ているかね?」
湊川少佐「勿論です。安心してください」
その外れの机に新型無線機を置いて、新たな入電を待つ湊川少佐と、その部下本村中尉
そのとき、新たな報告が第五主力艦隊から入った
本村中尉(車種:九三式装甲自動車)「主任!第五主力艦隊から報告・・・いえ、これは・・・」
湊川少佐「どうした!?」
無線連絡を聞いた本村中尉は驚愕した
本村中尉「・・・そんな・・・」
藤沢中将「何があったんだ!?読み上げてくれないと分からないではないか!」
一瞬躊躇った後に、本村中尉が通信を読み上げる
本村中尉「・・・『発 第五主力艦隊司令部 宛 グリシネ軍統合幕僚本部 本艦隊は、現時刻を以ってグリシネ軍からの脱退を宣言する。以後、本艦隊並びに第三巡洋艦隊は独自の指揮系統に準じ、資源惑星「フィフス・ルナ」を中心とした二〇浬圏内の制宙権は本艦隊並びに第三巡洋艦隊に帰属する物とし、これを侵した場合は敵対行動と判断する』・・・」
村瀬中将「・・・これは、まさか!?」
湊川少佐「・・・その、まさかです。ミイラ取りがミイラになったようです」
会議室は、一瞬の沈黙の後、再び戦場と化した
黒田中将「・・・貴様らには、恥も誇りも無いのか!?」
谷村中将「ただちに、全艦隊に叛乱軍を撃滅せよとの指示を出せ!」
谷村は向かい側の海軍作戦参謀、稲沢中将に向かって叫ぶ
稲沢中将(車種:四式中戦車)「それは無理です!」
谷村中将「何故だ!?」
稲沢中将「このところの騒ぎで、指揮系統は壊滅状態です。第三主力艦隊は距離がありすぎますし、それ以外の小規模艦隊に至っては命令を拒否・・・」
谷村中将「ふざけているのか、貴様らは!」
西郷中将「ふざけてなどいない!そもそも、キュワールが壊滅するかもしれないという状況下で、何故我々が殺しあわなければならない!森、答えろ!」
向かい側に座るかつての戦友に向かって、西郷中将は叫んだ
森中将「殺し合いを仕掛けたのは海軍だろう!こちらに責任を押し付けるな!」
西郷中将「責任を押し付けたのはそちらのほうだろう!・・・昔のお前なら、そんな事は言わなかったはずだ・・・!」
森中将「昔が何だ!今の俺は空軍作戦参謀だ!キュワールの平和のため、そして祖国のために戦う・・・」
西郷中将「ならば、何故お前はこれほどまでに他に責任を押し付ける!祖国のためを思うなら、かつて祖国のために散った仲間達に詫びるべきだろう!今の祖国が、これほどまでに崩壊してしまったことを!」
森中将「黙れ!・・・俺は、チョロQであることを止めたんだ!」
椅子から直立し、二両の戦車が叫びつづける
傍らの谷村中将は、それを無視して隣に座る情報参謀に聞いた
谷村中将「・・・金居、あれはどうした!?」
金居少将(車種:四式自走迫撃砲)「・・・あれ、と言いますと?」
谷村中将「決まっているだろう。我が空軍の直轄部隊だよ!」
金居少将「精鋭の第二艦隊及び第八機動部隊は、海軍第三主力艦隊同様遠方デヴォリアに停泊中です!他の部隊は・・・」
そのとき、金居少将の弁論を遮るように、谷村中将が立ち上がった
谷村中将「ええぃ、この事態は全て陸海軍の責任だ!貴様ら全員、粛清だ!」
そう言って、谷村中将が発砲した
その砲撃は、軍務参謀の江原少将に命中した
江原少将(車種:特四式内火艇)「貴様らは、鉄砲でしか物が言えんのか!?」
その言葉が引き金となった
再び机は倒れ、会議室の戦闘はさらにヒートアップした
江原少将「貴様らは常に権力に物を言わせて、無理のある作戦計画を次々と通していった!それによって犠牲になったチョロQは何両に及ぶ!?」
西郷中将「今回もそうだ。結果的にこの叛乱を呼び起こしたのは貴様らとも呼べるんだぞ!」
森中将「何を言うか!?部内の統制を出来ないのを、我々のせいにして!」
西郷中将「部内の統制!?貴様らは『統制』という名の虐殺を行ったに過ぎない!知っているんだぞ!谷村中将が以前・・・」
その直後、誰かが椅子を放り投げた
稲沢少将「お、おい、浜野少将!?」
浜野少将(海軍参謀。車種:海軍十二糎自走砲)「現場で叛乱が起こっているというのに、鎮圧の対策もろくに取れねぇ。我々もそうだが空軍の独裁体制はどうも気にいらねぇ。この前の続きだ、派手にやるぞ!」
そう言って、浜野少将は倒れた机を持ち上げた
原田大将「総員、海軍陣営を止めるんだ、急げぇ!」
こうもなると、止めようがない
前回の会議を引きずっていた参謀達は、さらに暴走を開始した
これでは会議以前の問題である
大河内元帥「・・・参ったな、これは」
モントレー元帥「どうも最近、みんなイライラしてるようだからなぁ」
ところが、前回の会議とは一つだけ違う要素があった
三つ巴になっていたのだ
海軍側を止めに入った陸軍も、結局のところ「会議室の戦い」に参加する結果となったからである
次から次へと負傷車が続出する
ガラスは割れ、机は全損、椅子など跡形も無く、湊川少佐の周りだけが異常に整然としていた
湊川少佐「・・・新報は?」
本村中尉「ありません」
湊川少佐「早いうちに入って欲しいな・・・」
もはや参謀達の騒乱には見向きもせず、ひとまず情報の収集に当たる情報部の面々
本村中尉に至っては、ヘッドセットを押し付けて会議室の戦いから遠ざかろうとしている
グリシネ国王「諸君!いいかげんにしないかぁ!」
その言葉に続いて、120mm滑腔砲の砲声が轟いた
窓の外に向かって発砲した木原元帥だった
木原元帥「・・・我々の悪い癖だな、これは。どうしてこの状況下で、同胞同士が殺しあわなければならない。何故なんだ・・・何故私が諸君に砲身を向けなければならないんだ・・・!」
砲声から数十秒後、全ての騒乱は収まった
もはや机も椅子も無く、会議室に並んだ幕僚達は、とりあえず一つの結論を出した
空軍第六・第七艦隊の出撃である
全ての会議が終わり、会議室の修理のために幕僚達は一旦退室した
長年の間、この会議室で戦略会議が行われてきたが、会議室がほぼ破壊されるという事態は始めてであった
元々こういう事態が発生しやすいため、会議室の机や椅子は極力安めのものが使われているという
あえて高めの固定式のものを置いておけば、こんなことにもならないのに
廊下の隅で、窓の外を眺めながら、原田大将は思った
原田大将「・・・西郷、この国はどうなると思う?」
一緒に会議室から出てきた西郷中将に聞く
西郷中将「間違いなく、滅びる。この戦争で」
今まで滅んでいなかったのが不思議とも言える国だ。今度とばかりは、キュワール全土の中では真っ先に滅びるだろう
勿論、内側からだ
原田大将「そうなるとして、俺たちはどうする?」
国家が滅びるのなら、その幕僚達も、勿論滅びることとなる
黒田たち「権力車」はさておき、その「権力車」に対し最後まで抵抗した俺たちは、一体どうするというのだ
西郷中将「俺は最後まで戦う。あんたは・・・祖国へ帰ったほうがいい」
原田大将「どういう意味だ?」
西郷中将「あんたにはこの国を守ってもらう義理はない。戦友を死地に追いやり、自身をも縦社会の中に組み込んだような国家を守る義理など・・・」
原田大将「この国を守る義理はない。だが、戦友を守る義理はある!」
西郷中将「その『戦友』が俺や稲沢さん、そしてレラッフティたちのことと解釈しても、俺には解せない。祖国であんたと共に戦った戦友は、この国は滅びなければ変わらないといっていた」
窓の外から、ジェットエンジンの轟音が聞こえる
どうやら今日も演習があるらしい
原田大将「・・・本当にあいつは・・・松井はそんなことを言っていたのか!?」
西郷中将「それは・・・」
原田大将「・・・俺はそうは思わない。だとしたらあいつは・・・この国の軍隊を抜けた時からそうしてる!でも、あいつは・・・そうしなかった・・・!」
西郷中将は黙り込んだ
実際のところ、軍にいた頃の松井元帥にはとにかく縁が無かった
やたら堅苦しく反抗的で、ちょくちょく海軍に手を出していた破天荒な将校、そう言ったイメージだった
だが、いざ独立してみれば平和主義で、熱い性格とは想像もつかないほど冷静な戦術で、瞬く間に戦局を変えていった
時折彼の書いた本を、松井元帥と共に民兵に移った戦友の薦めで読むことがあった
情報を殆ど開示していなかった当時のQQQQ橋本派の政治体制や兵力などを見事に予想していた
小泉少佐がまだ参謀本部にいた頃、彼の著書を参考に作戦計画を立てた
事実、第六次キュワール大戦でグリシネ海軍は大戦果を挙げた
しかし、それを妬んだ空軍と結託した当時の長官の陰謀により、小泉少佐は前線部隊へと左遷された
当時の長官を更迭したのは、現在の長官である大河内元帥が率いる情報部だった
そして小泉少佐を左遷した空軍幕僚の一両は、親友だったはずの森中将だった
原田大将「・・・俺の祖国は、あいつの仲間が守っている。大丈夫だ。だから俺は、あんた達と共に戦う」
未だ喧騒の残る会議室前の廊下で、原田大将は言った
その傍らで、無線機を持ち出して別室へ移動する情報部の面々
情報を随時入手していかなければ、ただでさえ状況判断が鈍っているこの軍部においては破滅を意味する
今まで軽視されていた物が、ようやく重視されるようになってきたのだ
だが、それは遅かったのかもしれない
高沢少将「・・・戦争が、友情を引き裂く、か。いつの時代も、ありうる話だ」
廊下の隅に立ち止まり、高沢少将は呟いた
第七十五話 続く
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オルキス艦隊との遭遇と、航空隊の出撃。航空隊出撃のほうが実質メイン。
第七十五話 放浪の殲滅者
さて、グリシネにおいては海軍のみならず空軍も艦隊を保有しているというのは前にも書いた
こういった傾向は他国にも見られ、たとえばニビリア共和国や日戦軍団においては哨戒や上陸支援のために陸軍が機動部隊を保有しているという例もある。ルナツー上陸戦などで成果を上げた日戦軍団陸軍第一機動部隊は、その後も対潜哨戒や揚陸支援で影ながらも重要な任務を担っている
しかし、グリシネ空軍艦隊の錬度は艦隊ごとにバラバラで、デヴォリアに退避している第二艦隊及び第八機動部隊を除いては低い傾向にある
この日出撃した空軍第六・第七艦隊は、その中でも最底辺に当たるのではないかといわれるほど錬度の低い艦隊である
数ヶ月前に編成したばかりで、殆ど演習も行っていない
乗員の大半は船に乗っている時間が短く、砲術士の大半がまともに火器を扱えないという有様
では空軍ならではの艦載機はといえば、これまた本土での最新鋭機の扱いになれていて、機銃によるドッグファイトは艦隊編成後数回行ったのみだという
第六艦隊司令、橋本少将は、この現状に溜息をついた
送り出した青柳中将も、どことなく表情が暗かった
橋本少将(車種:九七式中戦車)「青柳の奴、頭固いから何も言えなかったんだろうなぁ・・・」
「反逆車の鎮圧」と言う表向きなら、どの国々にも支援を要請することが出来たはずだ
勿論、反逆車の背後の情報が伝わっていなければ、である
事実、グリシネ海軍の「作戦」に関しては松井元帥と厚木准将の密談のみで成り立っているため、Qシュタイン連邦を始めとする国々は、この時のルナツーからの出航は「第一特務艦隊の支援を目的とした独断出航」と考えていた
橋本少将「理由はどうあれ、反逆車の鎮圧に向いた戦力ではないな・・・」
彼らの座乗する戦艦「おうみ」と、第七艦隊旗艦「あさひ」、そして「するが」、「よねやま」の四隻の戦艦は、性能においてはグリシネ海軍の艦艇に大きく勝り、大口径レーザー砲をも有している
だが、前述のように錬度においては大きく劣っている
何が「誇り高き空軍」だ。実質的に有名無実ではないか
二個艦隊は、勝てるはずのない戦に、臨もうとしていた
同時刻、資源惑星「フィフス・ルナ」
決起の直後から、グリシネの国旗を降ろした二個艦隊が、付近に停泊していた
既に日戦軍団の支援を受けて設営された前進基地において補給を行った後、周辺海域の哨戒活動に当たった
そのとき、電探に奇妙な影が映った
所属不明の艦隊のようだ
電探手「所属不明艦接近!数は二・・・四・・・七隻!」
横田大佐「・・・敵か?」
深谷中佐(副長。車種:九五式軽戦車増加装甲付)「いえ、外惑星でもグリシネ政府軍でもないようです。しかし・・・」
通信長「『紀伊』にデータ照合でも頼みますかね?」
横田大佐「・・・いや、その必要は無さそうだ」
遠方から、七隻の艦艇が近づいてくる
横田大佐「先頭の不明艦に発光信号。『こちらはグリシネ海軍第三巡洋艦隊所属、装甲巡洋艦「アナポリス」。貴艦の所属と艦名を問う』、以上」
見張り員「了解!」
装甲巡洋艦「アナポリス」から、発光信号が発せられる
数分後、所属不明艦からも応答があった
見張り員「所属不明艦から応答!『こちらはオルキス統合軍第七守備艦隊旗艦、戦艦「ホンゴウ」。事情について説明するので接舷されたし』、以上です!」
横田大佐「了解した。副長、聞こえたな?」
深谷中佐「はっ!オルキス艦に接舷いたします!」
近づいてみると、随分と美しいデザインの艦だ
流麗なフォルムに、青い船体。武装さえなければ一級の客船とも言えるだろう
だが、本当に驚いたのは、接舷してからのことだった
乗艦してみてまず驚いたのは、艦内の装備であった
艦内のあらゆる装備が高度に自動化されていたのだ
乗員の錬度に関しては分からないが、局地的な性能ならば「紀伊」をも上回るかもしれない
通された部屋に、指揮官らしきM2中戦車の姿があった
マクベイ中将(第七守備艦隊司令。車種:M2中戦車)「第七守備艦隊、司令のマクベイです」
横田大佐「装甲巡『アナポリス』艦長の横田です」
挨拶を交わした後、横田大佐は着席、事情を聞くこととなった
マクベイ中将「我々オルキスの、本星が陥落したことは、ご存知ですね?」
深谷中佐「はい、折しも我々キュワール連合軍は、パレンバン防衛作戦に失敗し撤退に切り替え、前線部隊が散り散りになっています」
マクベイ中将「我々も、殆ど同じです。各部隊が散り散りに遊撃戦を行っています」
聞けば、本星陥落後、オルキス軍の残存勢力は、この艦隊のように中規模艦隊数個に分けられて遊撃戦を展開しているという
当初予定していた派遣艦隊構想も、完全に頓挫。その戦力の一部がこうしてここまで流れてきたのだ
遊撃戦において彼らは大日本帝国軍を始めとする外惑星軍とたびたび小規模な戦闘を展開、輸送船団強襲などである程度の戦果を挙げていた
しかし、遂に弾薬尽き、食料、燃料も僅か。拠点となる惑星を保有できた艦隊はほんの僅かで、大半がこの第七守備艦隊のようになっているという
マクベイ中将「内惑星連合軍もこのたびの戦況悪化で散り散りとなっています。この周辺に補給の余裕のある港は無いでしょうか」
深谷中佐「・・・実は我々も、似たような境遇となっています。我々は本国に反旗を翻した叛乱軍です」
マクベイ中将は当惑した。外惑星側に寝返った部隊と接触したと思ったからだ
横田大佐「ご安心下さい。我々は内惑星軍の一員です。政府側の撤退命令に叛いて現場に残っているだけです」
そして、横田大佐は現在のグリシネの状況を説明した
マクベイ中将「・・・グリシネの政治体制がどうも不安定だと聞いていましたが、そういうことでしたか」
横田大佐「そういう状況なので、我々の拠点も非公式に設営された物です。弾薬・食料等の補給は最低限の物となります」
マクベイ中将「いえ、最低限の物でも構いません。とにかく補給ができれば」
横田大佐「それでは、我々の艦が先導します」
そう言って、横田大佐以下幹部は退室、「アナポリス」へと戻った
ベータ基地、第二滑走路
多数の陸上攻撃機が、駐機場から滑走路へと移動していた
日戦軍団航空兵A「隊長。松井元帥からの電文です」
そう言って、飛行隊員は隊長に一枚の紙を渡した
飛行隊長はそれを読み始めた
「発 日戦軍団総司令部 宛 飛行第361戦隊 所定の計画どおり、グリシネ空軍艦隊を攻撃する。仇討ちどころか同族を討つ結果となってしまったが止むを得ない。極力無益な犠牲は避けるように。敵機も極力落とすな。以上」
日戦軍団航空兵B「撃ち落すな、ってことですか?」
日戦軍団航空兵A「久々の出撃だってのに、無茶言いますよ、総司令も」
飛行隊副隊長「・・・しょうがないだろ。相手が相手なんだ。総司令は昔、自分がそこにいたせいで多くのグリシネ空軍パイロットを死なせてる」
日戦軍団航空兵A「・・・どういうことですか?」
飛行隊副隊長「空軍の式典に総司令が呼ばれてね。受ける気は無かったんだが、特別断る理由も無かったから行ったんだ。だが・・・」
日戦軍団航空兵B「・・・だが?」
飛行隊副隊長「・・・テロに巻き込まれて、多くのチョロQが死んだ」
日戦軍団航空兵A「・・・目的は、やっぱり・・・?」
副隊長は、無言を答えにした
飛行隊副隊長「・・・だから総司令は、グリシネ空軍の上層部には恨みがあっても、現場には負い目があるんだ」
その言葉を聞き、隊員たちは暗い表情となった
飛行隊副隊長「まぁ、相手は恐らく新兵以下だ。適当にあしらってやればなんとかなる。気楽にやれ」
そう言って、副隊長は機体へと飛び乗った
一方、滑走路に待機する陸上攻撃機には、海軍の飛行兵たちの姿があった
爆撃手「目標は空軍の戦艦部隊。軽く吹き飛ばしてやりましょうや」
副操縦士「しかし、残ってるんですかねぇ?案外、グリシネ海軍が全部やっつけてるかもしれませんよ」
戦闘機乗りたちとは対照的に、陸上攻撃機を駆る彼らの表情は明るい
元グリシネ海軍の飛行兵が多数を占める日戦軍団海軍は、グリシネ空軍を敵視していた
そこに、直接攻撃の許可が下りたのだ
柴田少佐(車種:九五式軽戦車)「いくら錬度が低いとはいえ、最新鋭の戦艦だ。そう簡単にやられるはずが無い。止めは、俺達が刺す」
機長である第762航空隊隊長、柴田少佐が、計器を調べながら言う
管制官(通信)「離陸を許可する!」
無線機から管制官の声が響く
柴田少佐「了解、出撃する!」
そう言って、柴田少佐は機体を加速させた
プロペラの回転が強まり、機体は一気に速度を上げる
一機の九六式陸攻が、高度を上げていく
それに続いて、多数の陸上攻撃機が離陸していった
第七十五話 続く
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戦闘開始。ここからずっとグリシネ海軍のターンです。
第七十五話 放浪の殲滅者
さて、「アナポリス」とオルキス艦隊が「フィフス・ルナ」に寄港、物資等を補給してしばらく後、ベータ基地から電文があった
グリシネ海軍通信士「司令、ベータ基地から電文です。『グリシネ空軍艦隊が「フィフス・ルナ」に向けて出航』。以上です」
参謀長「これは恐らく、我々を捕らえに来たのでしょう。迎撃しましょう!」
厚木准将「よし。ただちに迎撃準備を整えろ!」
参謀長「・・・司令、オルキス艦隊はどうします?」
「フィフス・ルナ」の軍港には、オルキス軍第七守備艦隊も停泊していた
これを加えればかなりの戦力になるだろう
しかし・・・
厚木准将「いや、オルキス艦隊には退避するよう伝えろ」
参謀長「司令!?」
厚木准将「これはグリシネ民族だけのけじめだ。彼らを関わらせるわけにはいかない」
参謀長「・・・そうでしたな。我々だけで、行きましょう」
そうして出航準備を整えた折、オルキス艦隊から連絡があった
マクベイ中将(通信)「我々も戦列に加わらせてください。補給をしてもらった恩を返したいのです」
なんとオルキス艦隊のほうから支援を申し出てきたのだ
流石にこれには困ったところだ
戦力としては強力だが、果たしてこれが独立の証と呼べるのか
「他国の力を借りなければ独立できない海軍」と揶揄されるのか
迷った末、彼らは勝利を選んだ
オルキス艦隊も、戦列に加わることになったのだ
両艦隊は出航、グリシネ空軍艦隊を迎え撃つこととなった
総数四一隻のグリシネ艦と、七隻のオルキス艦が一斉に出航する
空軍艦隊を迎撃するため、単従陣を展開する
しかし、オルキス艦隊はそれに従わず、全速力で離脱へ向かった
小泉少佐「・・・逃亡か?」
参謀長「恩を返すなどといっておきながら、全く・・・」
厚木准将「いや、そのようなことは無いだろう。あれほどの高速艦だ。きっとその速力を生かした作戦に出るだろう」
小泉少佐「・・・そういえば、『民兵』の総司令官が言っていたような気がするな。高速艦のみで編成した水雷戦隊・・・」
小泉少佐は少し考えた後、指示を出した
小泉少佐「このまま前進を続ける。司令、全艦に前進強速を指示願います」
厚木准将「分かった。全艦に通達、前進強速!」
グリシネ艦隊も速力を上げ、迫り来る空軍艦隊へと向かい合った
戦力こそこちらが優位だが、錬度では圧倒的に劣る
一隻たりとも撃沈できないのではないか。橋本少将はそう思った
栄光ある空軍の初出撃が「身内の精鋭艦隊になぶり殺し」か。なんともいえない話だ
参謀A「司令、敵艦隊、射程圏内に入りました。ただちに砲撃しましょう」
本部から派遣されてきた参謀が早速仕切り始める
今回の作戦では彼を初めとする参謀が督戦のために乗り込んでいる
彼らさえいなければ、間違いなく面舵一杯で反転を指示していた
そうしなければ、数多くの部下が無駄死にするばかりだからだ
だが、そうするわけには行かない理由は、督戦に乗り込んだ参謀以外にもあった
「空軍の栄光」である
元々形無しになっているものであっても、せめて戦場で敵に背中を向けずに戦うというプライドだけはある。そういう矛盾した思いが、橋本少将にはあった
艦長「・・・大型レーザー砲、撃ち方始め!」
一瞬躊躇った後、艦長が砲撃を指示する
これで後に退けなくなった。意味の無い犠牲車が増える
何故同胞同士で戦わなければならないのだ
この戦争が始まる前は、グリシネという一つの国で、ともに暮らしていたはずの仲間同士が
砲撃の第一射は、見事に避けられた
何しろ砲術長以外の全員が砲撃の素人だ。当たるはずも無い
一応出撃前に演習は済ませておいたのだが、付け焼刃の訓練ではやはり当たるはずも無かったか
そのまま艦隊は回頭、海軍艦隊との同航戦になる
それから、一切命中弾は確認できなかった
そして、ものの見事に敵艦隊の射程圏に突入してしまった
こうもなれば、一方的な展開である
砲身が曲がっているんじゃないかといわんばかりに、こちらの弾が当たらない
そうこうしているうちに、海軍の戦艦二隻を先頭にした戦隊がこちらに向かってきた
重巡洋艦二隻が、海軍の戦艦二隻に対し果敢に応戦する
それまで殆ど当たらなかった弾が、的が大きいからか随分と多数の命中弾が確認できた
やけっぱちに撃った魚雷が、見事に海軍の戦艦に命中する
先頭の旗艦らしき艦が煙を上げ始める
見張り員A「敵艦への魚雷命中を確認!」
参謀B「よし!その調子で行け!」
しかし、健闘もそこまでだった
戦艦に追随する艦艇の総攻撃を受け、重巡洋艦二隻は轟沈した
海軍艦隊に与えた損害は僅かだった
いまだに敵艦の一隻も沈められていない
大方予想通りの展開であった
海軍艦隊はこちらの大型艦から優先的に砲撃している。第六艦隊に航空母艦はいないが、所属する大型艦には大なり小なり航空機格納庫が存在するからである
最も、その格納庫に収まっているのは大半が戦闘機である
海軍側も恐らくそれは承知の上であり、だとすれば次に航空攻撃が予想される
ようやく砲撃を当てることができるようになったようで、段々と押し始めている
海軍側の艦艇もいくつかは煙を上げ、大体の艦艇が損傷している
参謀A「このまま、敵艦隊を撃滅しましょう!」
参謀は真っ先に突撃を上申する
艦長「・・・この動きは妙です。一旦退いて、考えるべきでしょう」
それに反し、転進を上申する艦長
参謀B「何を言うんだ。こちらが押してきているんだぞ!」
艦長「相手はグリシネ海軍きっての策士。何をしでかすかは分かりません」
参謀B「逆賊の肩を持つつもりか!?」
艦長「敵の能力を素直に認めるべきです!」
そのとき、砲戦とは反対側の見張り員が素っ頓狂な叫び声を上げた
艦長「どうした!?」
見張り員B「所属不明艦、超高速で近づく!数は・・・七隻!」
橋本少将が同じ方角を見てみると、確かにそれらしき艦の姿があった
常識では考えられない速力で突撃してくる、七隻の軍艦
押さえられたか。橋本少将はそう思った
こちらの退路を封じ、徹底的に撃滅する。海軍側の意思を示すために
我々はその生贄となったのだ
だが、なんとしてでも長時間戦い、海軍側を疲弊させなければならない。もし応援が来るならば、の話だが
橋本少将「駆逐艦隊を向かわせろ。なんとしてでも時間を稼ぐんだ」
艦長「しかし司令、ここで艦隊を二分すると・・・」
橋本少将「やるんだ。何処の所属かもわからない艦隊に殲滅されたくは無い」
橋本少将の指示によって、軽巡二、駆逐艦一八で構成された水雷戦隊が、所属不明の高速艦隊へと向かった
性能は高いが、先ほどまでの砲戦には一切参加していない。果たしてどれほど持ち堪えられるのか
第七十五話 続く
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戦闘。今回は非常に後ろめたい戦いにしました。
第七十五話 放浪の殲滅者
最新鋭のシステム戦艦「ホンゴウ」。その艦橋に、マクベイ中将はいた
この第7守備艦隊は、オルキスでは平均的な哨戒部隊である
戦艦「ホンゴウ」以下、戦艦「シラカミ」、装甲巡洋艦「アカツキ」、そして駆逐艦四で編成され、いずれも最高速度は80ktを越える
ただ、80ktは理論上であり、戦闘中に出せる最高速度は70kt、それも短時間。通常時は40ktが限界だ
見張り員「敵艦隊、分散して向かってきます!」
マクベイ中将「補給をしてもらった恩だ。なんとしてでも敵艦隊を撃滅する。砲撃用意!」
艦長「砲撃用意!目標、先頭の軽巡洋艦!」
機関長(通信)「速力はどうします?!」
艦長「戦闘速度、40ktまで落とせ!」
機関長(通信)「了解!」
七隻の艦は一斉に減速、空軍艦隊との交戦に備える
空軍艦隊、その数二〇隻。こちらは僅か七隻
しかし、艦隊の士気、いまだ衰えず
戦闘は圧倒的だった
数で勝るグリシネ空軍だが、やはり水雷戦に慣れていない、いや、敵艦の性能があまりにも高すぎる故に、魚雷も砲撃も一切当たらなかった
時折、まぐれ当たりに命中する砲撃や魚雷が確認できたが、それっきりであった
戦隊を指揮する軽巡洋艦「きたかみ」の艦内は、騒然となっていた
敵の戦艦が、後方の駆逐艦に向けて発砲する
命中、炎上するが、なおも戦艦の砲撃は続く
駆逐艦は大爆発を起こし、跡形も無く消失した
砲術士A(通信)「ダメだ、全く効果がない!」
砲術士B(通信)「早すぎる!照準が間に合わない!」
艦長「落ち着けぇ!まだ負けたわけじゃない!連中の艦にだって、弱点はあるはずだ!落ち着いて狙えば何とかなる!」
部下を落ち着かせるために叫ぶ艦長だが、実は艦長自身も焦っていた
民間船のような流麗なフォルムに、恐ろしいほどの高速。先ほど指揮下の駆逐艦が呆気なく撃沈された際に見た凄まじい命中精度
勝てない。彼らに殺される。司令官が予想したとおりだ
逆賊を討つために出撃したはずの我々が、逆賊に味方する異形の集団に殺される
そのとき、敵の旗艦の砲塔がこちらに向けられた
見張り員「敵艦の砲塔がこっちを向いた!」
砲術士B(通信)「もうダメだ!異形の連中に殺される!」
いや、砲塔を向けたのは、旗艦一隻だけではなかった
後続の戦艦と、装甲巡洋艦らしき大型艦も、こちらに砲塔を向けていた
同盟国から聞いたことがある。内惑星連合は例え相手が駆逐艦であったとしても、余裕があれば戦艦の主砲斉射、あるいはAD兵器掃射で敵艦を跡形も無く撃沈すると・・・
艦長「面舵一杯!」
艦長が稚拙ながらも回避運動を指示する
しかし、それは間に合わなかった
舷側に数発の主砲弾が直撃、大爆発を起こした
オルキス艦隊の砲撃はそれだけに留まらなかった
瀕死の「きたかみ」をいたぶるように、速射砲の容赦ない砲撃が始まる
艦内のそこかしこが炎上し、艦全体から損害報告が聞こえた
砲術士A(通信)「一番砲塔大破!」
砲術士C(通信)「おいっ、しっかりしろ!脱出するんだ!」
機関長(通信)「機関室がやられた!もうだめだ!」
水雷士(通信)「艦尾区画で火災!弾薬庫に引火します!」
艦長「総員、退艦!」
しかし、その命令さえも遅かった
副長が命令を全艦放送に流そうとした直後、艦橋全体が激震した
その直後、艦橋の床が崩落した
弾薬庫に引火したのだ
甲板に飛び出した乗組員が、慌てて内火艇を降ろそうとする
しかし、その内火艇さえも火に包まれる
無事な内火艇を探す乗組員達だが、残っていたのは僅かだった
あるものは火焔に包まれて倒れ、またあるものは爆発に巻き込まれて四散した
「きたかみ」の生存車は、僅か数両だった
その業火は、駆逐艦「ライズナ」からも目視できた
見張り員「・・・空軍軽巡洋艦、撃沈・・・」
しばしの沈黙の後、小泉少佐が呟いた
小泉少佐「・・・これでよかったのか?俺達は・・・」
厚木准将「我々の独立のためだ、やむを得ん・・・」
小泉少佐「やむを得ん!?・・・そう言って、彼らは数多くの罪なきチョロQを殺してきたのではないのですか!?このままでは我々は・・・」
そう言って、小泉少佐は厚木准将に詰め寄った
参謀長「・・・艦長。まだ戦闘中だ」
その間に入り、なだめる参謀長
厚木准将「そろそろ時間だ。全艦を退避させる」
壁の時計を見て、厚木准将は呟いた
小泉少佐「・・・本当にやるんですか?」
厚木准将「『民兵』も出撃準備を整えている。今更断るのもどうかと思うがね」
もはや返す言葉も無いと思ったか、小泉少佐は操舵室に向き直って言った
小泉少佐「取舵一杯!ただちに戦闘宙域から離れる!」
第三巡洋艦隊の各艦は、ただちに回頭、戦闘宙域から離れた
第五主力艦隊も、それに続いた
それまで砲戦を続けていた海軍艦隊が、突如反転した
一体如何なる意味があるのだろうか
橋本少将は、これまでの各国の戦術から、如何なる攻撃が来るかを考えた
艦隊が撤収するということは、同士討ちを避ける意味合いがあるのだろう
だとすれば、航空攻撃・・・
その予想は、見事に的中した
見張り員「左舷前方、航空機接近!・・・一〇・・・二〇・・・三〇・・・」
参謀B「そんなにいるのか!?」
参謀C「連中はそれ程の航空機を保有しているのか!」
見張り員「いえ、機種は陸上機です!グリシネ軍機ではありません!」
上空を見上げながら、見張り員が答える
橋本少将「大方、『民兵』だよ。海軍が叛乱を起こすといったら、大方彼らが協力しているだろうと思った。上はなんと?」
橋本少将は通信長のほうを向いて言った
通信長「いえ・・・まだ何も」
申し訳無さそうに通信長が答える
橋本少将「我々だけで戦えということか・・・」
橋本少将は参謀達の方を向いてから言った
艦長「全機発艦、敵航空隊を迎撃せよ!」
橋本少将「全艦に通達、艦載機をただちに発艦させろ!」
通信士たちが一斉に無線機を手にし、各艦に連絡する
ようやくおでましか、「民兵」。栄光あるグリシネ空軍の実力を見せ付けてやる
本来ならそう言いたいところだったが、そうも行かない理由があった
艦載機部隊の隊員達は新任で、ろくに演習もしていなかった
すなわち、本土に配備されているジェット機とミサイル空中戦のみの経験で、ドッグファイトに挑もうというのだ
同じ飛行機であっても、ジェット機とプロペラ機では操縦は全く異なる
上層部は、それを理解できているのだろうか
出撃した航空隊は、日戦軍団の誇る精鋭飛行隊、陸軍飛行第361戦隊と、海軍第762航空隊である
装備は現在も主力重戦闘機として配備されている「鍾馗」も含まれているが、主力機「隼」の姿は無く、九七式戦、九五式戦で占められている
海軍航空隊は九六式陸攻と九五式陸攻が混在しており、護衛機は九五式艦戦であった
数においてグリシネ空軍に大いに劣るはずだったが、厚木艦隊の攻撃で当初の半数近くにまで減っていた
既に航空戦は始まっていた
機種はF7CやF4B。優秀な複葉機であった
一機のF7Cが、九五式陸攻の背後に喰らいつく
しかし、そのまま戸惑っていたため、その背後に回っていた九五式艦戦に撃墜される
F4Bが、慣れない急旋回をしながら九七式戦とドッグファイトを展開する
しかし、背後に回っていたもう一機に気づかず、撃墜される
急上昇する九五式戦を、F7Cが追う
そのまま機銃攻撃をするが、九五式戦はそれを回避する
見越し射撃をしようとしていたF7Cだったが、側面から別の九五式戦の銃撃を受け撃墜される
錬度において劣るグリシネ空軍は、思いのほか呆気なく撃墜されていた
「なるべく落とすな」との指示だったが、図らずして撃墜してしまうことが多かったのだ
いくら錬度の高い第361戦隊であっても、流石に「落とさずに逃がす」やり方は苦手だったのだ
飛行隊長「・・・何故だ・・・何故同胞同士が戦わなければならない・・・!」
飛行第361戦隊の隊長は浮かない顔だった
亡き上官の復讐を誓って練習を重ねてきたというのに、復帰戦の相手がよりによって同胞とは
これでは同胞を守って散った上官に顔向けできないのではないか
出来れば戦いたくない相手だった
そのとき、一機の九五式陸攻が火を噴いた
撃墜されたのだ
そして、もう一機の九五式陸攻に、F4Bが迫る
仲間を守るために、同胞を撃つ。止むを得ない事情とはいえ・・・
自分は、亡き上官の仇と同じ存在となりうるのか
飛行隊長は、亡き上官と共に写った写真に目を向けた
藤岡少佐「・・・隊長・・・許してください!」
そう言って、飛行隊長、藤岡少佐は操縦桿を倒した
三機の鍾馗が、分散して降下する
急旋回し、九五式陸攻へと迫るF4Bを、照準に捉えた
そして、射撃釦を押した
20mm機関砲の斉射が数秒ほど行われた後、そのままF4Bとすれ違い、藤岡少佐は射撃を止めた
F4Bは煙を噴き、降下、爆発した
それを尻目に、九六式陸攻を狙うF4Bを捕捉する
直下から一斉射を放ち、見事撃墜する
三機のF7Cが、編隊を組んで九五式陸攻へと突撃する
すれ違いざまに、一機を撃墜
鍾馗はそのまま旋回し、二機目を狙う
射撃釦を押したそのとき、三機目が間に入った
慌てて藤岡少佐は射撃を止めようとしたが、遅かった
爆発、四散するF7C
もう一機のF7Cは、そのまま降下して僚機の爆発を見届けていた
改めて狙いなおす気にもなれなかった
藤岡少佐「・・・隊長・・・」
仲間を守るために犠牲になった同胞。そしてそれを撃ってしまった自分
犠牲になったF7Cが、亡き上官、古田少佐と被った
飛行隊副隊長(通信)「・・・隊長!攻撃隊は突入体勢に入りました!任務完了です!帰投しましょう!」
副隊長の無線の声が聞こえた
藤岡少佐「・・・よし、帰投する!」
一刻も早く、この場から離れたかった
奇跡的にも、損害は僅か二機。海軍第762航空隊は、二つに別れて攻撃態勢を整えていた
攻撃隊隊員(通信)「隊長、こちらも準備完了です!」
柴田少佐「よし、攻撃を開始する。突撃!」
四十六機の攻撃機が、一斉に敵艦隊へ突撃する
空軍艦隊からも壮烈な対空砲火が浴びせられるが、今のところ損害は無し
雷撃体勢のため、対空火器の死角に近いところを飛ぶ攻撃機を、空軍艦隊は撃墜することは出来なかった
一機の九五式陸攻が、魚雷を投下する
その前方には、重巡洋艦の姿があった
急旋回をするが、間に合わなかった
重巡洋艦に魚雷が命中、爆発する
駆逐艦めがけて投下された魚雷が、見事舷側に直撃
真っ二つになり、爆発する駆逐艦
炎上する重巡洋艦に、陸攻の対地爆弾が投下される
命中、轟沈する重巡洋艦
駆逐艦が果敢に対空砲火を張りながら前進する
しかし、その直上には九六式陸攻の姿があった
対地爆弾を受け、沈没する駆逐艦
そして、数機の陸上攻撃機が、「おうみ」へと迫った
第七十五話 続く
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対空戦闘。今回両軍の描写をしたのはこの場面だけでした。
第七十五話 放浪の殲滅者
見張り員からの報告は、予想通りのものであった
直援の戦闘機隊は九五式陸攻一機を撃墜したに過ぎず、大半の戦闘機隊が反撃を受け日戦軍団の航空隊によって撃墜された
僚機の犠牲があって辛うじて生還した隊員によると、胴体に書かれていた記章から、日戦軍団陸軍の誇る精鋭飛行隊、飛行第361戦隊であることが分かった
それを聞いて、橋本少将は嘆いた
飛行第361戦隊といえばかつてグリシネ空軍に所属したエース飛行隊だったはずだ。第四次キュワール大戦直前の日戦軍団独立までは、グリシネ空軍の腐敗をなんとしてでも食い止めようとしていた存在の一つだった
そして、飛行第361戦隊の先代隊長、古田少佐は、ベータ防空戦でQターレットのグリシネ系飛行兵の乗る機体を庇って戦死している
そんな彼らが、我々と戦っている
彼ら自身だって、本当は戦いたくなかったはずだ
そう思ったとき、見張り員から新たな報告が届いた
見張り員「左舷より六機、陸上攻撃機、接近!」
六機の陸上攻撃機が、「おうみ」へと迫る
その数機は低高度を維持し、魚雷を投下した
見張り員「左舷、魚雷接近!」
艦長「取舵一杯!」
「おうみ」は急旋回をし、魚雷をかわす
投下される爆弾を、果敢に回避する
舷側を掠め、通り過ぎる魚雷
第一派は、辛うじてかわした
艦長「舵、戻せ!」
続いて、第二派が接近する
こちらも、見事に回避する
対空砲火を潜り抜け、柴田少佐の乗る九六式陸攻は、「おうみ」へと接近することに成功した
副操縦士「あれです!空軍艦隊の旗艦です!」
回避運動を取る「おうみ」
その予想位置への方角に、陸攻はついた
爆撃手「積年の恨み・・・ここで晴らす!投下ぁ!」
そう言って、爆撃手は投下スイッチを押した
宇宙魚雷が投下され、「おうみ」へと迫る
そして、操縦桿を引き、「おうみ」を飛び越えた
この僅かな間で、「おうみ」の乗員の錬度は格段に向上していた
しかし、それは遅すぎた
三機の九六式陸攻が、「おうみ」へと迫る
急旋回をして回避した、その先に展開していたのだ
流石にこれは避けきれなかった
三本の魚雷が、右舷に直撃した
そして、立て続けに後続の九五式陸攻が、魚雷を投下した
必死に回避運動を取るが、間に合わなかった二本が直撃した
艦長「被害報告!」
乗員A(通信)「右舷第八、第一〇区画、損傷!」
その直後、再び激震が走った
陸攻の水平爆撃が命中したのだ
乗員B(通信)「右舷、第十二区画、大破!」
乗員C(通信)「第四砲塔大破!」
各部に命中した500kg爆弾は、「おうみ」の被害をより拡大させていった
ふと見ると、既に多くの艦艇が沈んでいる
共に戦っている第七艦隊の「あさひ」も、爆弾を受けて火を噴いている
撤退するべきか
艦長「・・・これ以上の戦闘は無理です。引き返しましょう!」
参謀B「何を言う!刺し違えてでも叛乱艦隊を撃滅せよとの、参謀本部からの命令があっただろう!」
艦長「そのために、数多くのチョロQが死んでも良いというのですか?!」
艦長と参謀の一両が、判断を巡って争っている
しかし、迷っている暇など無かった
見張り員「海軍艦隊の戦艦八、急速接近!」
海軍が止めを刺しに来たのだ
追随する僚艦「するが」に対し、四隻の戦艦が接近、集中砲火を加える
果敢に応戦する「するが」だが、四対一では分が悪い
性能で劣る分、数でカバーするということか
さらに近距離とあらば、自慢の大型レーザー砲も使えない
果敢に応戦するが、遂に機関損傷
戦艦一隻にある程度の命中を確認するが、それは無駄だった
包囲されてもなお健闘した「するが」は、戦艦四隻の総攻撃を受け沈んだ
続いて犠牲になったのは、「あさひ」の僚艦「よねやま」だった
別の四隻に包囲された「よねやま」は、主砲斉射で状況を打破しようとした
だが、すでに「よねやま」を援護できる艦は一隻も無かった
戦艦の総攻撃を受け、砲塔が次々と吹き飛ばされていく「よねやま」
実質的に戦闘不能となった「よねやま」だが、四隻の戦艦の砲撃は止まることは無かった
爆発と共に、轟沈する「よねやま」
艦長「・・・むごい・・・これではまるで・・・」
参謀B「見たか!あれが海軍のやり方だ!」
参謀C「だからこそ、連中は撃滅しなければならないんだ!」
それは確かにうなずける内容であった
海軍のやり方は確かにやりすぎだ
だが、こうなる状況を作り上げた者達が叫んでも、説得力に欠ける
海軍の攻撃は、なおも続く
これまで撤退していた本隊が、遂に「おうみ」を始め数隻に減った空軍艦隊に突入したのだ
至近距離から、海軍艦隊は魚雷を放った
既に大半の艦が傷ついている。回避運動のため、艦隊は寸断された
そこに、続いて突入したオルキス艦隊の容赦ない砲撃が浴びせられる
炎上する「おうみ」、「あさひ」に、無数の砲撃と魚雷が浴びせられた
最新鋭の超弩級戦艦といえど、無数の艦艇の攻撃を受ければひとたまりも無い
続いて、オルキス艦隊の総攻撃が「あさひ」に殺到した
果敢に応戦する「あさひ」だったが、性能的に不利であった
多数の艦艇の砲撃を受け、遂に「あさひ」は機関室に被弾、戦闘不能となった
「おうみ」は、そのオルキス艦に対し果敢に砲撃する
しかし、撃沈できない
奴らはどれほどの性能を有しているのだ
見張り員「駆逐艦『はまかぜ』、離脱していきます!」
そうこうしているうちに、生き残った駆逐艦「はまかぜ」が、三隻の駆逐艦を率いて戦闘宙域を離脱していった
それに続いたのは、軽巡「あぶくま」だった
離脱を試みる「おうみ」だったが、既に機関を損傷していた
そして、前方に海軍の戦艦が立ち塞がった
このままでは、「するが」の二の舞だ
参謀A「刺し違えてでも、撃沈すべきです!」
参謀B「今出しうる最大の速度で、あの駆逐艦に突っ込め!あれが厚木の艦だ!」
参謀C「我が空軍の威光のため、降伏することなど・・・」
その参謀達の言葉を遮り、橋本少将は指示を出した
橋本少将「白旗を用意しろ!」
参謀B「何言ってんだ!?ふざけるな!」
参謀C「連中に投降するつもりか!?」
参謀たちが、橋本少将に詰め寄る
橋本少将「この艦の乗員の命と、空軍の威光、どちらが大切だ!?答えてみろ!」
参謀C「決まっているだろう!空軍の威光だ!だからこそ我々は・・・」
そこまで言ったところで、参謀は衛兵に取り押さえられた
橋本少将「・・・できれば、使いたくなかったがな」
こうして、空軍第六艦隊旗艦「おうみ」、及び第七艦隊旗艦「あさひ」は、グリシネ海軍・オルキス軍の連合艦隊の前に投降することとなった
二隻の戦艦に追随した数隻の艦艇は、いずれも彼らに帰順することとなった
厚木准将の確保、あるいは撃滅を目的に出撃した参謀が、彼らにより返り討ちに遭う
あまりにも滑稽なこの事態は、本国を落胆させた
たった一つの利益を挙げるとすれば、離脱した「あぶくま」が送信した、オルキス艦隊のデータだろうか
第七十五話 続く
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雷撃。今回はダメコンのほうに気合を入れました。
第七十五話 放浪の殲滅者
「フィフス・ルナ」近郊宙域での戦闘はいざ知らず、ベータ沖においては第四機動艦隊の航空演習が行われていた
空母「天城」、重巡「加古」、「奥入瀬」を初めとする艦艇は、厳重な対潜警戒の下、演習海域に展開していた
しかし、その警戒網を潜りぬけた艦が、一隻だけいた
その艦は、少し前に日戦軍団の駆逐艦に雷撃を敢行していた
あの時は取り逃がしたが、今度という今度は逃さない
そう言う思いで、その艦はベータ沖にいた
グリシア帝国海軍に属する潜宙艦「バリッラ」は、第四機動艦隊を追ってこの宙域に来ていた
以前の戦闘で同行した僚艦「アントニオ・シエサ」の姿は無い
別の方面で通商破壊活動を行っているからだ
最も、この前の駆逐艦隊との遭遇のように、キュワール連合軍の対潜警戒網は日々厳しくなっている。今までのようには行かないだろう
ラファリエスの潜宙艦隊が日戦軍団の船団を撃沈してからというもの、日戦軍団の潜宙艦対策は一段と強化された
このときも非常に強固な防備が築かれていたが、「バリッラ」はそれを辛うじて潜り抜けてきたのだ
いまだに気づかれていないのも、僥倖といったところだ
あの時必死になって逃がした僚艦は、果たして無事なのだろうか
しかし、僚艦の無事を願うのは、自分の艦が無事帰還できてからだ、と、艦長は思い直した
潜宙艦は、他の艦艇とは全く異なる運用方法の中にいる
基本的に単独で行動し、獲物を見つければ僚艦を呼び出して攻撃に移る
時には戦闘艦と戦うこともあるが、それはごく稀に起こる事態である
そういった戦闘において、「戦隊」という言葉は存在しない
書類上に存在する、ただそれだけだ
この「バリッラ」の艦長、イマノフ中佐は、歴戦の名潜宙艦乗りである
「バリッラ」はものの数日前、日戦軍団の駆逐艦隊と交戦し、「蕨」に損傷を与えた
副長「奴さん、まだ気づいてないみたいですね。遠回りした甲斐があった」
イマノフ中佐「相手はあの日戦軍団だ。油断は出来ない」
水測員「見つけるのは出来ても、沈めるのは難しいんじゃないですか?」
水測長「それを油断というんだよ。確かに日戦軍団は最近潜宙艦を撃沈できていないらしいが、必ず何かしら損傷を与えている。いずれの場合も、乗員の腕があってこその生還だ」
そのとき、追跡していた航空母艦が、突如旋回を始めた
どうやら機体の収容を終えたらしい
潜望鏡越しにそれを確認したイマノフ中佐は、直ちに指示を出した
イマノフ中佐「一番から四番、発射管開け!」
副長「一番から四番雷撃用意!」
水雷士(通信)「雷撃準備、よし!」
イマノフ中佐は改めて、潜望鏡越しに目標を確認する
見事に横っ腹を見せていた
あの日戦軍団がここまで気づかないことがあるのだろうか
とにかく、好機であることは間違いない
潜望鏡を下ろしてから、イマノフ中佐は発射を指示した
イマノフ中佐「一番、てーっ!」
発射音が、指令室内にこだまする
イマノフ中佐「二番、てーっ!」
続いて、二番発射管の発射を指示する
同じ要領で、全四本の魚雷の発射を指示した
イマノフ中佐「面舵一杯、艦尾発射管、雷撃用意!」
副長「面舵、一杯!」
その指示が飛ぶや否や、「バリッラ」は急旋回を開始した
潜望鏡を回し、艦尾方向に向ける
先ほどの航空母艦が、再び潜望鏡に映る
イマノフ中佐「五番、てーっ!」
今度は反対方向から発射音がかすかに響く
続いて、六番発射管にも発射を指示。計六本の魚雷が放たれた
イマノフ中佐「急速潜航!一気に潜るぞ!」
そう言って、イマノフ中佐は潜望鏡を下ろした
副長「急速潜航!」
乗員たちが一斉に艦首方向へ駆けて行く
古典的な手法だが、いつもこれで乗り切ってきた
水測員「敵駆逐艦のソナー音を感知!」
ようやく気づいたらしい。今ごろ気づいても遅いだろう
乗員A「本当に日戦軍団の対潜技術はキュワール最強クラスなんですかね?」
乗員B「本当だ。この前だって危なかったじゃないか」
砲術士「何話してるんだ!早く行けぇ!」
浮上砲戦ではないので出番の無い砲術士が怒鳴り散らす
駆逐艦がこちらに向かってくる
今度は振り切れるだろうか
艦内に警報が鳴り響いたのは、そのときだった
通信士「『夕凪』より入電!『潜宙艦一隻を捕捉!雷跡六近づく!警戒されたし!』」
艦長「面舵一杯!」
「天城」は、舷側に向かって放たれた魚雷をかわすべく旋回する
一本をかわすが、残りは舵の効きが悪い大型艦では無理があった
三本の魚雷が命中、右舷で大爆発を上げた
甲板から爆炎が吹き上がる
元山少将「被害報告!」
乗員A(通信)「右舷、二区画にて火災!」
艦長「消火急げ!」
艦長は急いで消火命令を出した
兵員達が慌てて甲板へと駆け込む
そのとき、甲板が再び激震した
機関長(通信)「機関室に魚雷が命中!火の回りが早い!応援を頼みます!」
敵は二派に分けて魚雷を撃ってきた
恐らくはQグリーン・・・もとい、グリシアの潜宙艦だろう
彼らの艦は艦尾発射管を採用している。日戦軍団の潜宙艦にもあるが、彼らの場合、艦首発射管から魚雷を発射した後、反転して第二派を放つために採用されているのだ
左舷側では「加古」も爆炎を上げている
どうやら回避した魚雷の一本が命中したらしい
「夕凪」以下、駆逐艦が潜宙艦を探知した付近に爆雷を投下する
しかし、撃沈の報は無い
一度ならず二度までも、してやられたか
元山少将は、炎上する「加古」を見て落胆した
その数分前、演習を終えた航空兵たちは格納庫へと降りてきていた
航空兵A「久々の演習、上々だったな」
航空兵B「しかし、なんでこの時期にやることになったんだろうな」
機体の格納も完了し、整備兵たちも一息ついていた
航空兵A「そりゃあ、大日本帝国がキュワールに攻め込んでくるからだろ」
航空兵C「ベータ方面はあまり関係ないと思うんだけどなぁ」
航空兵B「あとはあれだろ。グリシネ・・・じゃなかった、グリシアの潜宙艦がこのところ潜伏してるって言うから、連中との決戦に備えてか」
航空兵D「潜宙艦じゃあ俺達戦闘機乗りの出番は無いなぁ」
航空兵A「じゃあグンナだ。熱田さんが戻ってきたって、グンナには何とかって言う凄い提督がいただろ。あいつがまた大部隊率いてやってくるかもしれない」
航空兵B「色々考えられるなぁ・・・そういえば、大日本帝国が俺達の同族って、信じられるか?」
航空兵A「そんなわけ無いだろ。隊長の相棒を、あっさりと殺した連中だぞ」
京城大佐「ああ。それは全くだ・・・そういえば、藤岡の奴、出撃したって?」
傍らの副隊長、新竹大尉に聞く
新竹大尉「らしいですね」
京城大佐「断りゃよかったのになぁ、あいつ。司令だって分かってくれるはずなのに」
勿論、この日のグリシネ空軍艦隊との戦闘のことである
飛行第361戦隊の先代隊長、古田少佐は彼のかつての相棒だった
航空隊の部隊整理が行われた際に離れたが、その信頼関係は相変わらずだった
航空兵B「でも、ベータは部隊不足で大変だって、司令言ってましたよ」
航空兵A「陸攻隊は意気揚々と出てったって聞きますがね。それに引き換え、どうも我々戦闘機乗りは辛気臭い」
京城大佐「当たり前だ。あんなことが起こったってのに・・・」
そのとき、格納庫内に激震が走った
振動で航空兵たちが転倒する
格納庫一帯に警報が鳴り響く
起き上がった京城大佐は、急いで格納庫内にある弾薬庫へ向かった
航空兵A「・・・何があったんだ?!」
新竹大尉「雷撃だ!どこかの潜宙艦が、魚雷を撃ちこんだんだ!」
後を追って走り出す新竹大尉
航空兵A「おい、俺達も行くぞ!早く起きろ!」
倒れている同僚を助け起こして、続いていく航空兵たち
弾薬庫の付近に駆け込んだとき、周辺は火の海になっていた
京城大佐「おい、みんな大丈夫か!?」
多くの乗員たちが倒れている
航空兵の一両が、ホースを取り出して駆け込んでくる
航空兵C「隊長!ホースありました!」
京城大佐「ちゃんと繋いであるか!?」
航空兵C「はい!」
もう一両がバルブを回して、放水を始める
同じくホースを持った新竹大尉が、別の区画に向かって放水を開始する
京城大佐「弾薬庫の引火はなんとしてでも避ける!連中への復讐を果たすまでは、この『天城』を沈めるわけには行かないんだ!」
倒れている乗員たちを、残った航空兵たちが運び出す
辺り一帯で噴煙が巻き上がる
新竹大尉「隊長、持つんですかね、この艦?!」
京城大佐「持たせるんだ!」
機関長(通信)「機関損傷!」
副長(通信)「・・・機関がやられただと!?」
艦長(通信)「落ち着け。まだダメコンは動くはずだ。左舷側にバラストを入れてバランスを取るんだ」
艦橋や機関室でも、必死に火災と戦っている乗員たちがいる
なんとしてでも、格納庫の火災を止めるんだ
火災は収まる気配も無く、艦内各所が悲鳴を上げていた
床が傾き始める
どうやら艦が傾斜を始めたらしい
ダメコンも遂に限界を迎えたか
機関長(通信)「機関室、復旧の目処が立ちません!」
通信長(通信)「消防艇の出撃要請、出しましょうか?」
副長(通信)「ダメだ!まだ潜宙艦が潜んでいるかもしれない!」
乗員B(通信)「ということは・・・この艦は・・・」
全艦放送につなげられたスピーカーから、艦内の状況が伝えられる
京城大佐「・・・冗談じゃねぇぞ。乗艦を二度も捨てられるかよ!」
航空兵B「隊長!消火剤持ってきました!」
京城大佐「遅いぞ!何やってたんだ!」
航空兵B「各所で必要になってるみたいで、やっと手に入りました」
京城大佐「弾薬庫が近いんだぞ、優先してもらえるはずだろ!とにかく早く装填するんだ!」
航空兵B「既にやってますよ!」
もう一両の航空兵が、接続口付近に消火剤を装填する
航空兵D「準備完了です!」
軍医長(通信)「医務室が一杯です!士官室の使用をお願いします!」
艦長(通信)「分かった!空いてるところ、安全なら全部使え!」
乗員C(通信)「甲板の傾斜がさらに増しています!」
乗員D(通信)「落ち着けぇ!俺達さえ無事なら、『天城』は沈まん!耐えるんだぁ!」
艦内の各所から、連絡が飛び交っている
乗員たちが一丸となって、火災と戦った
第七十五話 続く
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戦闘の収束。終わってみれば今回は「青き名将(仮題)」に近い作風になったと思う。
第七十五話 放浪の殲滅者
同じく被弾した「加古」においても、懸命な消火活動が続けられていた
こちらは被弾したのが一本のみであったことから、早いうちに鎮火が完了した
通信長「『加古』、消火完了!損傷は軽微とのことです!」
元山少将「よし、いざとなれば曳航、あるいは雷撃処分を頼む」
その言葉を聞き、艦長は一瞬固まった
雷撃処分。ベータ戦で沈んだ「高千穂」の最後がよぎった
あれは敵の放った魚雷だったが、今度は我々が撃つこととなるのか
元山少将「心配するな。本当にいざという時のことだ。この艦は沈まない」
機関員B(通信)「この部屋さえ無事なら『天城』は沈まん!この艦は不死身なんだ!」
機関員C(通信)「しかし、あの『高千穂』さえ・・・」
機関員A(通信)「大丈夫だ、この艦なら・・・!」
機関員達が、必死に火災と戦っている
航空兵A(通信)「そっちの状況はどうだ!?」
航空兵B(通信)「なんとか、上手くいきそうだ!」
航空兵A(通信)「分かった!消せたら隊長のところまで行ってくれ!あの辺りが一番酷い!」
弾薬庫の引火を阻止するため、各所にホースを引っ張って消火活動に当たる航空兵たち
乗員E(通信)「こちら高角砲陣地!甲板付近の火災は何とか収まりつつある!」
乗員F(通信)「弾薬庫の引火は防げそうです!しかし甲板方面の火災は、まだ収まりそうにありません!」
甲板上にも多数の乗員たちが展開している
艦は僅かながらも右舷側に傾いており、その中での消火活動は困難を極めた
それでも、乗員たちは諦めることは無かった
これからの戦いはさらに熾烈な物となる。そんなときに、潜宙艦一隻の襲撃で、大事な空母と艦載機を沈めてなるものか
火災との戦いは、半日近く続いた
弾薬庫付近での火災は、徐々に収まりつつあった
機関員A(通信)「機関室、火の規模が小さくなってます!」
機関長(通信)「後少しだ、気を抜くなぁ!」
乗員F(通信)「飛行甲板付近、煙が少なくなってます!」
乗員A(通信)「右舷第五区画、火災鎮火!」
各所から飛び交う、「火災鎮火」の言葉
航空兵B「よし、後少しだ!」
京城大佐「タンクの残量は?!」
航空兵C「まだ十分あります!」
煙に包まれていた航空機弾薬庫付近は、徐々に晴れつつあった
そして、弾薬庫付近で消火活動を続けていた航空兵の一両が、無線機に向かって叫んだ
航空兵A「航空機弾薬庫付近、火災鎮火!」
これとほぼ時を同じくして、高角砲弾薬庫付近の火災も鎮火された
消火活動に当たった航空兵の大半は、壁に寄りかかっていた
京城大佐「やったな・・・」
京城大佐は、ただ一言、そう呟いた
それから数分後、「天城」の火災は鎮火された
各所から入る、鎮火の報告
どうやら、辛うじて雷撃処分は免れたらしい
しかし、戦列への復帰は少し遅れるだろう
そして、機関長からは悲痛な連絡が入った
機関長(通信)「機関室の火災は鎮火しましたが、機関の復旧は少し無理そうです」
大規模な火災に見舞われた機関室は、被害が大きく、復旧が困難となっていた
鎮火に成功したことさえ僥倖である
やむなく、艦隊に属する重巡洋艦「奥入瀬」により曳航されることとなった
艦長「通信長、ベータ基地に打電。『発 航空母艦「天城」 宛 ベータ基地司令部 本艦は敵潜宙艦の雷撃を受け火災発生。消火完了なるも航行不能。重巡の曳航により寄港する』、以上」
重巡洋艦「奥入瀬」が、ゆっくりと「天城」に接近する
曳航索を取り付け、準備を整える
「奥入瀬」艦長(通信)「これより、曳航を開始する!」
その光景を横目に、前進を始める「加古」
こちらは損傷が軽微だったため、自力航行が可能だった
低速ではあるが、艦隊はベータに向かって進み始めた
これからの戦いは、さらに厳しくなるだろう
しかし、我々は全力を以って、敵を迎え撃たなければならない
たとえそれが、かつての同族であったとしても
グリシネ国軍、統合幕僚本部の臨時会議室は、再び騒然となった
前回の会議で甚大な被害を負った普段の会議室ではなく、別室を使うこととなったが、規模に関しては殆ど変わっていない
流石に椅子や机、砲弾が飛び交うことは無かったが、代わりに言論が飛び交った
ようやく会議らしくなったか。もうすぐ国が滅びるというのに
会議室の盛況を遠巻きに見ながら、湊川少佐は溜息をついた
今から数十分前、離反した橋本少将から連絡が入った
「王政復古、軍部支配断絶」をスローガンに、海軍第三巡洋艦隊及び第五主力艦隊は、「神聖グリシネ王国軍」という武装ゲリラを編成、各地の前線部隊に参加を呼びかけている
どうやらミイラ取りがまたもミイラになったらしい。しかも、今度は空軍の部内で
陸軍参謀「部内の統制が出来なかったのは、むしろ貴様らではないか!」
海軍参謀「このような事件の原因を作ったのは、間違いなく貴様らだ!」
陸海の幕僚も、会議が始まってからというもの、今まで以上に騒ぎ立てている
もっとも、いつもなら真っ先に反論を叫びそうな原田大将は、沈黙を押し通している
国が滅びる、という状況を思ってだろうか
Qターレット出身の異邦車たる彼が、この国に何を思うのか
湊川少佐「・・・本村、声明はあれで以上か?」
本村中尉「そのようです。現時点では第三巡洋艦隊、第五主力艦隊と、空軍第六、第七艦隊の一部、そしてオルキス軍の第七守備艦隊が、『神聖グリシネ王国軍』に関わっているようです」
情報部士官「何が神聖だ。他国の力を借りなければ革命を成しえないくせに」
もう一両の情報部員が呟く
彼の言ったことももっともだ。独立の時に他国の力を借りなかった松井元帥とは異なり、彼らは独立の時に他国の力を借りてしまった
松井元帥はあくまで「グリシネ民族の誇りとなるべき国際平和維持団体」を目指しての独立だったという説があったが、彼らは真っ先に王政復古と軍部支配断絶をスローガンに上げている
情報部士官「やっぱり、松井元帥やチリ元帥を超える方は、現れないな」
湊川少佐「革命家のロマンを語っている場合ではない。国が滅びるかもしれないんだぞ。我々の仕事は、グリシネという国を、他国からの侵略から守り抜くことなんだから」
そう、我々の仕事はグリシネという国家を守ることである
それにおいて敵となるべく存在は、例え同じグリシネ国民であっても撃滅する。そういう権限が与えられた部署が情報部にある
しかし、空軍の支配が始まってから、その部署が動いたことは無い
やはり、「彼」が消えたからだろうか
執務室の机を迂回しながら、松井元帥は通信兵の持った書面を取ったのは、何時間前だっただろうか
この時期に、まさか空母が奇襲攻撃を受けるとは、思ってもいなかった
松井元帥「・・・機関室に火災・・・絶望的だな」
あれから、執務室内は異様なほどの沈黙に包まれていた
その沈黙を打ち破るように響き渡る、飛行機の轟音
どうやらグリシネ空軍を叩きに行った航空隊が戻ってきたらしい
その轟音が鳴り止んでしばらく後、何者かが扉をノックした
松井元帥「入れ」
扉を開けて入ってきたのは、副隊長だった
飛行隊副隊長「飛行第361戦隊、ただいま帰還しました。損害は二機。搭乗員はグリシネ海軍艦に救出され、全員無事です」
松井元帥「・・・藤岡は、どうした?」
松井元帥が聞くと、副隊長は無言で立ち止まった
飛行隊副隊長「・・・降りてから、しばらく一両きりにしてくれとのことで・・・」
副隊長の報告を聞き、松井元帥は無言で着席した
松井元帥「・・・そうか、藤岡が・・・」
飛行隊副隊長「前に聞いた話では、藤岡隊長の戦友は例の航空学校爆破事件で犠牲になったそうで・・・」
隊長室に篭ったらしい藤岡少佐に代わって、副隊長が執務室を訪ねることになったようだ
松井元帥「・・・俺の力が及ばなかったからだ。彼にはすまないことをした」
飛行隊副隊長「いえ、司令の責任ではありません。全ては・・・あの空軍長官が・・・!」
松井元帥「落ち着け。今にグリシネは滅びる。内側と外側の二重攻撃で・・・」
そのとき、一両の九四式軽装甲車が駆け込んできた
藤田上等兵「司令!『天城』から入電がありました!」
松井元帥「どうした!?」
藤田上等兵「消火完了なるも航行不能。重巡洋艦が曳航するとのことです!」
そう言って、藤田上等兵は通信文を置いた
松井元帥「そうか、鎮火したか・・・」
ほっとしたように息を吐きながら、松井元帥は呟いた
松井元帥「・・・京城は無事だそうだ。仇討ちの目標は、まだ一つで済みそうだ」
副隊長のほうを向いて、松井元帥は言った
藤田上等兵「司令、我々は、これからどうなるのでしょうか?」
松井元帥「・・・これから、か。キュワールを守るために、戦うまでだ。例え相手が大日本帝国であったとしてもだ」
飛行隊副隊長「いえ、相手が大日本帝国だからです!隊長をここまで苦しめたのは、大日本帝国に他なりません!彼らが、彼らが古田さんを殺さなければ・・・!」
松井元帥「・・・副隊長、落ち着くんだ」
しばらく黙った後、松井元帥はこう言った
松井元帥「・・・よし、第361戦隊にはしばらく休暇を与える。軍事基地でたいしたものはないだろうが、ゆっくり休め」
飛行隊副隊長「はっ!」
そう言って、副隊長は部屋を出て行った
松井元帥「陸軍飛行隊は、大体あんな感じだ。みんな古田の仇討ちに燃えている。もしこれで、大日本帝国が停戦条約でも申し出てきたら、どうなると思う?」
藤田上等兵「・・・・まさか!連中がそんな・・・」
同族の命を奪っても平然としている連中が、突然同族面して停戦協定など、するはずが無い。藤田はそう思った
松井元帥「俺は、一つの可能性を言っているに過ぎない。だが、一つだけ気になることがある」
藤田上等兵「・・・なんですか?」
松井元帥「さっきQシュタイン連邦の諜報部から、どうも大日本帝国の次期攻撃目標が、グリシネではないかという連絡が、入ったんだ」
藤田上等兵「どうしてですか!?キュワールを叩くなら、連合の盟主たるプロトンか、我々のバックホーンたるQシュタインを叩くべきでしょう!」
藤田の言ったことはもっともだった
現にグンナ帝国軍は、プロトン合衆国首都、バチェリットを強襲、プロトン合衆国を一時戦線離脱させるほどの損害を負わせている
本土強襲とならば、目標はプロトン、あるいはQシュタイン大陸のいずれかの国と相場は決まっている
それながら、面積はあまり広くなく、周辺に島嶼どころがQシュタイン大陸まで存在するグリシネを、何故第一攻撃目標としたのか
松井元帥「そこだよ。そこが引っかかっているんだよ・・・連中の考え、まるで読めん」
そのとき、もう一両の通信兵が駆け込んできた
日戦軍団通信兵「司令!グリシネ海軍第三巡洋艦隊からです」
そう言って、通信兵は書面を渡した
その書面を一瞥した後、松井元帥は呟いた
松井元帥「『神聖グリシネ王国軍』・・・皮肉な名前だな」
日戦軍団通信兵「・・・どういう意味ですか?」
松井元帥「・・・いや、こっちの話だ。それで、青柳はなんと?」
日戦軍団通信兵「いえ、まだ何も・・・」
松井元帥「そうか・・・ちょうどいい。君も話を聞いていってくれ」
書面を机に置いた松井元帥は、二両の通信兵に対して言った
藤田上等兵「何の、話ですか?」
松井元帥「・・・我々の、いや、キュワールの・・・これからの話だ」
窓の向こうで、着陸する哨戒機のエンジン音が響き渡った
第七十五話 終わり
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あとがき:「最初に言っておく。今回のあとがきはかーなーり、長い!(元ネタ:某仮面ライダーのサブキャラ)」。二ヶ月ほど小説を公開していなかったのと、恐ろしく長い本編に比例してやたらと長くなりました。
今や遅しと待っていたにも関わらず執筆意欲が低下した今回。あとがきとか言ってますが今回は本編と並行して書いていて、執筆終了後に纏めてます。今回は内乱戦、それも一方的な戦闘(日戦軍団も勿論グリシネ系なので完全にグリシネ民族同士の内乱)なので執筆意欲が湧かなかったんです。お陰で何か内惑星連合結成前後のような間延び感。
今回、「腕が鈍ったんじゃないか?」と思うぐらいに味方側に都合の良すぎる展開。あまりに一方的過ぎて空軍側に敵愾心が沸きました。
そう言う敵愾心が災いしたか、今回の戦闘はむしろグリシネ空軍視点です。「無能な上層部によって多大なる損害を出す現場」といった雰囲気です。というか、グリシネ空軍視点にしないと執筆意欲が湧かなかったんです。「序盤で苦戦を強いられていた友軍艦隊が『紀伊』の到着で逆転」みたいなありきたりな展開ならまだできるんですが、初めから一方的というのはその前に敗走する前哨戦みたいなのがないと出来ない。グリシネ空軍(それこそ精鋭の第二艦隊とかが)がそれ以前に凄まじい戦闘技能を見せていれば話は別だったんですが、グリシネ空軍は今まで幕僚しか出てませんでしたし。
今回はどうも場面展開が多く詰め込みすぎ感がします。目まぐるしく舞台が変わるスピード感はどうも上手く出せない。いつも思うんだけど第七分隊(溝口分隊)と藤田上等兵って脇に追いやられてるなぁ。お陰で本編に比例してあとがきも長い長い。実は執筆時、テキストファイルをある一定の長さ(ファイルサイズ20kbぐらい)ごとに「A、B、C」で区切ってるんですが、まさかの「D」突入。Dパート入るなんて思わなかった・・・しかもそれでもBパートが30kbになってた。
そういうことで、どうもサブタイトルが思いつかない。あわや前代未聞の無題回になるところでした。「亡国の艦隊」というのが思いついたんだけど、二話前が「燃ゆる艦隊」だったし、とうの昔に「漂流艦隊」というサブタイトルもやったし・・・ということで却下。そもそも「紀伊」において「艦隊」というワードは最もサブタイトルに使われてるんですね(戦艦ものだから仕方ありませんが)。散々考えた末に現在にいたってます。グリシネ海軍厚木・三川隊、オルキス艦隊、そして潜宙艦「バリッラ」全てに当てはまる(一応拠点がある厚木・三川隊やバリッラが「放浪」と呼べるのかは疑問ですが)のでピッタリだと思いました。「殲滅者」と書いて「デストロイヤー」と読ませる感じです。
後々構成される「神聖グリシネ王国」にちなんで「正義亡き聖戦」というのも考えましたが却下。いずれ使いますが、使い時はこちらに任せてください。
デヴォリアの病院。実はここが最初に執筆意欲が湧いた部分。出てないけど天城と野末について色々と掘り下げてます。何故彼らはデヴォリアまで退避することになったのか、というのを説明してなかったので。
ルナツーの出航。池内に関するエピソードですが、今回の話の内容には合わないと思ったので出航式典の場面に統一しました。完全に脇に追いやられました。個人的には「相棒を死なせてしまった佐軒」と「止むを得ない事情があったとはいえ同僚を見捨てて逃げ延びてしまった天城」をメインに掘り下げたい。
会議室。前回書いたときにはものすごく熱くなったのに、どうしてここまで熱くならないのか分からない。空軍の強さが見せられていないからなのか、それとも湊川があまりにも確固たる情報をもっていて強すぎるのか。なんと言うか、こいつら本筋に関わると弱体化するなぁ・・・
機関室。「真夏のオリオン」を見た影響か、職人気質な機関長が登場。「ローレライ」のときのこちらも職人気質だけれどややコミカルな機関長とはまた違った雰囲気がありました。
京城大佐。兄弟という設定だからそろそろ下の名前を設定しようか検討中です。共演するとややこしくなりそうだから。因みに豊島少佐の語っている言葉は「エースコンバット5」に登場するバートレット大尉(主人公の所属する飛行隊の隊長)の台詞に由来。実は5はやったこと無いです。
時間経過。ルナツーからライトウォーターまで行くのに二日が経過していますが、もう少し遅くすれば良かったかもしれません。いずれにせよライトウォーターからベータまで三日が経過しているので、ルナツー〜ライトウォーター間よりベータ〜ライトウォーター間のほうが距離が長いようです。第四機動艦隊との整合性のためとはいえ少し無理したなぁ。
青柳中将。別に空軍参謀一派のチョロQでもなく、ただ職務意識、というか愛国心から、松井元帥と対立しているようです。松井元帥は二度、国を捨てて逃亡していますからね。
グリシネの参謀も一本調子じゃないんですよ。この後も森が結構騒いでるし。いくら強権的とはいえ全員あの様子じゃあとっくの昔に滅んでるわけですし、木島のようなQタンクが統合幕僚長になってるわけですし。
松井元帥と本国の関係はそれ程良好ではないのですが、陸海軍とは仲が良かったり、空軍でも現場筋とは通じてたりするので、別に敵同士というわけではないです。なんだかんだ言って北町地区には日戦軍団本部がありますし。
グリシネ空軍は現場側には現状打破を試みる勢力もいますし(今回の橋本少将は多分そんな感じ)、かのプロトン陸軍にだってリピーレド元帥のような権力主義車がいたわけですし。
出航。正直言って場面展開が多すぎると書いてて煩わしいのと読む側も混乱するので流れを変えて「第五主力艦隊出航→第一特務艦隊入港→第四機動艦隊出航」としました。空軍精鋭艦隊の配置も解説。勿論本土にもそれ相応の部隊はいます。
二度目の会議室。フィフス・ルナに舞台を移し変えてまで書く内容ではないと思ったので会議室のみ。とりあえず今回も幕僚総出演を目指しました。原田大将は会議中は台詞が一言しかありませんが、今回は陸軍の介入余地があまり無かったので仕方ありません。
決起文は「亡国のイージス」原作に由来。むしろ亡国のイージス的展開を狙って(=叛乱は鎮圧される!?)。その後の「俺はチョロQであることを止めたんだ!」と、「貴様らには恥も誇りも無いのか」も「亡国のイージス」から。やっぱり叛乱といったらこれに限る。
にしてもグリシネ軍上層部は出てくるたびにキャラが増えるなぁ。そして今更気づいたんですが、グリシネ軍参謀ってなぜか「さんずい」が多いなぁと。流石に陸軍はいませんが海空軍に多数。車種もマイナー車ばかりだ(いや、現場にメジャー車が多いから仕方ないんだけど(特に九七式中戦車))。
退室後の二両。ぶっちゃけ会議室のシーンそのものよりも気合入れて書いた。そしてこの場面書くの久々だなぁと思った。前回は高沢と湊川を中心的に書いてたからなぁ。
忘れてるかと思いますが、原田大将は松井元帥の旧友で、戦略思想の違いから松井と反目、「日戦軍団事件」には参加せずにグリシネの軍部に残っています。しかしそれ以降も交流を無くしていたのではなく、時折北町地区で会談をしていたようで、それは西郷中将ら海軍の面々にも影響を与えています。読み返すと初登場時と比べ相当丸くなったと思う。
西郷中将は根っからのグリシネ軍車で、空軍の黒田、森両中将、そして海軍の小泉少佐とは同い年で幼馴染。しかし、お互いが求める物が異なっていたために進んだ組織が異なり、結果的にそれぞれが全く別々の道を進んでしまいました。
実は一番微妙なポジションにいるのが、今回は出ていませんがパレンバン防衛で成果を挙げた装甲列車隊隊長の清水中佐。松井元帥、原田大将の旧友で、「日戦軍団事件」で松井と共に軍部を脱退した物の、軍時代は黒田や森といった空軍の幕僚達と仲が良かったという逸話があります。「日戦軍団事件」への参加の理由は「権力軍部を一度叩きなおし、三軍平等体制を築き上げる」と語っていたと言う設定です。仲の良かった空軍幕僚達を敵に回すことは躊躇わなかった様子。旧知の仲のほうが勝ったという意味ですな。西郷中将の「民兵に移った戦友」は実は清水中佐です。
今後の軍事政権壊滅後、背負う物が異なる原田大将と西郷中将、そして森中将はある意味大きな役割を担うかもしれません。
どうでもいい話ですが、今回西郷中将が松井元帥を評した「破天荒」。読めない人が多いそうですね。「はてんこう」です(「竣工」の前例があったので)。
空軍艦隊の出撃。いくら(一応)敵扱いとはいえ、あまり弱いとかわいそうなので(そういえばQターレットってどうなった?)、今回出撃した部隊は錬度的には空軍内ではかなり低めの部隊としました。まあ橋本少将自身はなかなかの名将なんですが、駆逐艦一隻しか敵艦を沈められてない辺りでどうも実戦参加する以前の問題のような。
実は今回戦闘シーンの執筆意欲が湧かなかったのは「精鋭部隊が新兵をなぶり殺しにする」展開に納得いかなかったから。日戦軍団の航空支援いらんだろとも思った(いや、オルキスの乱入は想定外だったんですが)。まあたまにはこういう展開もありかとも思いました。
松井元帥は実はQシュタインにクーデターの連絡をしていないんです。松井元帥自身も最終的に成り行きでQシュタインに頼る結果になっただけで、初めからQシュタインに頼ったわけではありませんでした。それに倣っての行動です。というかそうでもしないとQシュタインが支援に駆けつけなかった説明が出来なかった。
で、あえて空軍艦隊出撃をずらしたわけは、勿論厚木艦隊側と日戦軍団を同時に動かすため。しょっちゅう場面転換やるのもどうかと思ったので。
久々に登場の横田大佐。実は後述する深谷副長は横田大佐をすっかり忘れていた結果(というか横田大佐の乗務艦が「アナポリス」だったことを忘れていた)登場したキャラクターだったり。
「アナポリス」副長。厚木、横田と来たら次は深谷通信所から。余談ですが、厚木飛行場は厚木ではなく相模川を挟んで向かい側の大和市に存在するそうな。
車種の九五式軽戦車増加装甲付は実際にインドシナで見られたもの。元々防弾性に難があった九五式ならば増加装甲をつけるのも無理はない・・・というか旧軍戦車の大半がそうですな。その他にもラバウルには九五式改造の火炎放射戦車があったとか。
オルキス軍。そういえばホンゴウ軍港はともかくオルキス軍自体はこれが初登場。以前のホンゴウ軍港は随分駆け足で書いてましたな。よっぽど執筆意欲が湧かなかったのか。そう言う点では不憫なオルキス。そして今回も・・・
今回のあとがき、まだまだ続きます。
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あとがきの続きです。
飛行隊出撃。松井元帥は勿論グリシネの陸海軍は味方ですが、空軍の上層部に関しては完全に敵。しかし現場はグレーゾーン。純粋にパイロットとして戦うために空軍に入隊したパイロットを上層部のテロでみすみす死に追いやってしまった過去を持つ松井元帥としては空軍の前線部隊と戦うことに負い目があるようです。因みに日戦軍団の航空隊でも松井元帥に不信感を持つ隊員がいたりいなかったり。
一方で海軍航空隊側は意気揚々。日戦軍団海軍航空隊は空軍に疎んじられてきた海軍出身車が多数を占めているので、空軍を相当恨んでいるようです。
柴田少佐。どっかで出てきた名前だなとも思ったんですが、今まで出ていないらしい。とにもかくにも出番は殆ど無し。今回の戦闘はどうも後味が悪い。
出航。完全にこの筋書きだとオルキスは「招かれざる客」なんですよ。味方なのに。内惑星連合軍ってどうしてこうも「必要な時にいなくていらない時にいる」ような雰囲気なんでしょうか。今までちゃんと歓迎されたことが殆ど無い。第六十五話でも最初歓迎、あと拒絶ですし。こちらにおいても最終的に厚木准将は支援を承認しているという矛盾点が(おい)。
今回はどうも筋書きに苦労したなぁ。何しろオルキス艦隊が関わる理由がそれこそ「補給をしてもらった恩を返す」ぐらいで、しかもその対象が「その恩を受けた者の同族の抹殺」ですからねぇ。本編でも書きましたが「結局他国の力を借りなければ独立できない海軍」と揶揄されることを覚悟での支援受け入れとしています。松井元帥も汚名を授かること覚悟での日戦軍団設立だったので。いずれの場合も「もとより他国の支援を当てにしていなかったにも関わらず結局他国の支援を受けてしまった」という事例です。
実は戦闘開始までの導入部を書くのに相当時間がかかりました。叛乱物が苦手なのと結局叛乱が成功してしまう「沈黙の艦隊」がむしろ嫌いだったからです(おい)。タイトルの良く似た「紺碧の艦隊」も様々な事情があって正直微妙。
ただ、やる気が無くても幕僚描写には気合が入るわけで(今後のキャラクターの位置付けに繋がりますので)、作戦本部時代は西郷中将の相棒だった小泉少佐が日戦軍団の過去の戦闘からオルキス艦隊の戦術を見抜いています。この「日戦軍団の過去の戦闘」は第六次キュワール大戦時の出来事。Qトルックの開発した最新鋭超高速巡洋戦艦を相手に日戦軍団が艦隊に属する高速艦を集めて戦隊を編成、巡洋戦艦を待ち受けたという逸話です。
橋本少将の危惧。もはや大当たり。橋本少将は空軍第六艦隊でまともな思考を持っている数少ないチョロQで、この戦いが「勝てない」どころが「勝負にならない」ことを分かっていて出撃しています。「空軍の栄光」から反転するわけにも行かず、「錬度の差という現実」から突撃するわけにも行かず。ところで、中編の一部で、橋本の階級が「中将」になっている箇所がありましたが、「少将」で合ってますよね?
戦闘シーンに入ってからは海軍側の描写は無し(実質部外者のオルキスのみ)。海軍側が悪役にならないようにする配慮です。
今回の空軍艦隊のイメージは「怪獣映画の前半に出てくる陸上自衛隊」です。
戦闘時に海軍側の描写が全くないため、三川中将は出撃時の場面にしか出てません。今までもそういった感じのキャラクターが多かったので致し方ないです。
オルキス側の到着。ここで橋本少将が語っているように、もし第八機動部隊をデヴォリアから出撃させ、フィフス・ルナに向かわせていれば、波状攻撃でグリシネ海軍を撃滅できたかもしれません。しかし空軍側にその発想は無かったようです。書いてみると「ガ島戦で戦艦大和を艦砲射撃に投入しなかったために敗走した連合艦隊」みたいになっているような。この時点で橋本少将は投降を念頭に置いておらず、転進して状況を立て直すつもりでした。
オルキス艦隊の描写。なんと言うか、彼らは今回の貧乏くじです。グリシネ空軍の参謀以上に悪役に近い描き方になってしまった。グリシネ空軍にまつわる詳しい事情を知らないが故になおさら。これが日戦軍団だったらもう少し手加減したはず(たとえば艦尾に砲撃を集中させ機関損傷を誘発させるとか)。前述のように海軍側は悪役にならないよう配慮しましたが、部外者の彼らに配慮は要らないので(おい)。どうも最近ひねくれて来たなぁ。ただ一応味方なので「さっさと逃げればよい物を」みたいなことはやりませんでした。
そしてオルキス艦隊に撃沈される軽巡洋艦の艦内はまさに阿鼻叫喚の地獄。これじゃぁ完全にオルキスは悪役。まあ部外者だからいいか(おい)。
因みに「同盟国から聞いた」と言うのは第六十五話のズィーモス集中砲火が曲解されて伝わった物。
で、戦闘中唯一の海軍側の描写。小泉少佐は参謀本部から現場に移ってきた将校であるため、参謀本部における対立の実情を知っていたので、純粋に現場筋の厚木准将とは考えが異なる様子。日戦軍団でさえも現場内での対立が存在する(大艦巨砲主義のレンネル中将と、航空・水雷戦主義の熱田中将の対立など)ので、今回も少しわだかまりを用意しました。最も、今までのレンネルと熱田の対立のように、すぐに抑えられること前提で書いてます。今回の戦いをどうも苦味が残る雰囲気にしたかったので。
航空隊登場。既に巡洋艦四などが轟沈しているので、航空機はそれなりに減っているのですが、半数強(残存機五六機、損害四〇機のため恐らく一〇〇機ほどが残っていた物と推定)が残っていたので勿論それなりの航空戦にはなります。ただ、相手がグリシネ空軍の中では錬度において最底辺に近い部隊に精鋭部隊をぶつけるというのも、どうも日戦軍団側もグリシネ空軍を過大評価していたらしいですな。
藤岡飛行隊長も「非戦を訴えながらも友軍機の損害からやむなく同胞を撃墜してしまう」という展開。亡き上官古田は同胞だったQターレットの大岡を守って散ったのにも関わらず、自分は僚機を守るために割って入った同胞を殺してしまうという皮肉。言うなれば「仇を討つために戦場にいるのに仇と同じ状況になってしまった」ですかね。
藤岡少佐は歴戦の名搭乗員ですが、大日本帝国との初戦においては「大日本帝国軍=敵」と思っていたため普通に戦えたのですが、グリシネ空軍は実質的に味方だった存在、それも自身が抜けてきた組織であるため、戦うことに戸惑っていたようです。日戦軍団陸軍って暗いドラマ多いなぁ。
そこには独立への大いなる躍進などの希望など何一つ見えない雰囲気。久しぶりに「紀伊」を書いたら凄まじく暗い展開になってきた。それを吹っ飛ばそうとする気も無いとはいえませんが・・・
今回の戦闘で唯一両軍の描写がまともに行われている「おうみ」の対空戦闘。そういえば「近江」って現時点で本編に出ていない紀伊型の四番艦と同じ名前なんです。日戦軍団の誇る戦艦「紀伊」の同型艦と同じ名を冠す船を、日戦軍団が攻撃する。なんとも皮肉な話ですな。
最近気になったんですが、魚雷って「発」で数えるのか、「本」で数えるのか、どちらが正しいんでしょう?今回は最初の水雷戦で「発」、「おうみ」の回避描写で「本」を使ってますが・・・
そして怒涛の対地爆弾投下。いつもの日戦軍団なら煙吹かせるほど損傷させたらもう狙わないはず(効率性などにおいても)なんですが、あれだけ恨んでたグリシネ空軍ですから生かしてはおけなかったんでしょう。厚木准将も海軍所属だった故に空軍を恨んでいて、そのために殲滅戦を試みたと。この点においては、元空軍所属だったために戦いに悩む藤岡少佐とは対照的。でも厚木准将とは違って、松井元帥の指示を無視しているので後々上からお咎めがあるかも。
実はこの場面で「おうみ」が次々と損傷するのは「ここで戦闘困難なほど傷つかせておけばオルキスを『実質戦えない相手をなぶり殺しにする連中』として書けるぞ」というとんでもない考えがあったりします。内惑星連合ってキュワール連合軍以外はそういう非情な論理にもとづいて行動していると思ってるんです。敵を完膚なきまでに叩き潰さなければ勝利ではないといった感じ。日戦軍団とは絶対に考えが合わない。特に戦力的に余裕があるアマティス(一個艦隊を丸ごと他国に明渡している)とかデュミナス(言わずもがな)とかロドリグ(常識では考えられない数の艦艇を他国に明渡す)とか。松井元帥が「AD兵器を必ず自主開発」など、極力キュワールの技術に頼ろうとしているのは「内惑星連合とは相容れない」ことが分かっているからなんですな。この辺りが、原田大将に「甘い」と言われた部分なんでしょう。
今まで以上に長いあとがき、まだまだ続きます。
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あとがきの続き。
集中砲火を受けて沈む「おうみ」の僚艦。こちらも「紀伊」型にちなんで「するが」としました。「あさひ」の僚艦の「よねやま」は、「あさひ」が長らく上越新幹線の優等列車の名前だったことから、上越線の急行「よねやま(1985年廃止)」に由来。「あさひ」は自然現象(「朝日岳」という山もありますが)、「よねやま」は山の名前で、いずれも日本海軍の命名基準とは異なりますが、そこはグリシネ空軍。恐らく異なった命名基準があるのでしょう。これからネタに困ったら国鉄特急・急行の名前から取ろう。レパートリー多いし。
軽巡の「きたかみ」。そういえば日戦軍団の大井型出てないなぁという思いも込めて。日戦軍団の「北上」が水雷戦重視の重雷装艦で、多数の魚雷で敵を撃滅するのが目的である一方で、こちらの「きたかみ」が敵の大艦隊にフルボッコされて沈んだ艦。実は最初は名前決める予定無かったんですが、「するが」と「よねやま」を決めたところで急に思いついたので。付けてみて気づいたんだけど、オルキス側には「シラカミ」がいるんですね。この後日戦軍団に「奥入瀬」がいるし、今回は東北地方にちなんだ名前が多い。
「するが」、「よねやま」いずれも海軍艦隊の総攻撃を受けて沈んでます。逃がすタイミングがあったにも関わらず。この後の参謀も「あっているような間違っているような」ことを叫んでますね。
そして損傷してもはや戦闘不能に近い艦にも容赦なく砲撃するオルキス艦隊。もしかしてこれって「オルキス軍=悪役」な描写を期待してた?・・・そんなわけ無いか。でもデュミナスの前例があったから、もしかして・・・
今回、どうもオルキス軍の描写に困りました。あまり悪役っぽすぎると今後同盟国として登場する際にグリシネの参謀みたいな扱いになりそうだし、かといってこれは従来の内惑星連合(とりわけ、活躍の多い日戦軍団)の戦法とは大いに反しますし。でも結局オルキス悪役モード。そもそも、ゲリラ戦を主体としていたのなら一撃離脱が主軸になるはずですし、損傷して殆ど戦えないといっても過言ではない艦に砲撃をするというのは非効率ですし。ゲリラ戦の名手としては考えられない戦い方をしているなぁ。
終盤なんか完全にグリシネ海軍とオルキス軍は悪役モードですね。これは今回の相手が悪かったということで(おい)。空軍視点で無いと書く気が起きなかったのは実はここのお陰。気が付いたらどっちが主役だか分からなくなった。おかしいぞ、今回の主役は厚木准将だったはずだ。いつの間に橋本少将に入れ替わってるんだ(おい)。
今回、投降した艦が「おうみ」、「あさひ」以外に何隻いるのか分からなかったのですが、「はまかぜ」以下四隻及び軽巡「あぶくま」が艦隊を離脱していることを明記しました。日本海海戦で命からがらウラジオストックに寄港した三隻の艦艇がモチーフだったり。まあたかだか五隻が離脱したところで、強力なオルキス艦が七隻もいるわけですから何ら問題ないんですよ(おい)。「一〇数隻」じゃなくて「数隻」と書いてあったので、もしかしたら「おうみ」、「あさひ」に二〜三隻しか追随しなかったかもしれませんし(中編設定の何処にも「残存艦艇全艦」とは書いてありませんからね)。この辺は任せることにします。
ちなみに「あぶくま」が送信したデータによって、オルキス艦隊の大体の戦闘能力はグリシネ空軍に筒抜けになっているという扱いです。ご了承ください。
空母「天城」。もうここが書きたくてグリシネの内乱戦を終わらせた感じです。そういえば知らないうちに退場していた「ルアンガ(ラファリエスの潜宙艦)」ってどうなったんだろ。パナイ隊と交戦して以来出番無いからなぁ。日戦軍団ってほとほと仇討ちの機会が無い。
潜宙艦の艦内描写。日戦軍団の対潜戦闘技能が高いことが明かされています。日戦軍団は対潜戦闘に関してはQシュタイン連邦の協力を得てキュワール随一の能力を誇ってます。「ルアンガ」に船団撃滅されたことがあるのに何の対策も取らないはずがありませんからね(前半の海軍補正を根に持ってる)。
雷撃描写。多分平成初であろう「リアルな国産潜水艦映画(といっても、やっぱり不備があるのは国産の辛いところ。「ローレライ」ぐらいぶっ飛んでればどうでも良くなるんだけど)」である「真夏のオリオン」では、一本ずつばらして撃っていたのでそれに倣ってみました。前回では一斉雷撃でしたが、今回は数が違うのと見つかっているのかいないのかが分からない(前回は明らかに見つかっていた)ので慎重に。
魚雷発射後の旋回。必ず面舵と決めてます。いずれ手傷を負う展開になるときに、ここが弱点になるように(=いずれは手傷を負わせろ、の意)。ついでに油断しているわけではないのに潜望鏡を上げっぱなしというのも弱点になるようにした配慮だったり。二度目の雷撃の後にしまってますがね。
第四機動艦隊の駆逐艦。神風型駆逐艦の艦名の中ではやや異質な「夕凪」を使用しました。
「天城」の損傷。もしかしてこの損傷が後々の戦闘に響くとか?そういえばティーガー元帥の負傷は「紀伊」自体の構成の都合上あまり意味が無かったなぁ。
それにしても第四機動艦隊の損害は日戦軍団の他の艦隊に勝っている気がする。他の艦隊があまり前線に出ないからなんだけど。なんだかんだ言って第四艦隊も第七艦隊も主力艦の喪失はほぼゼロだからなぁ(第二艦隊は一度壊滅してる(再登場時にも空母数隻を失っている)けど)。
結局逃してる駆逐艦隊。日戦軍団は対潜宙艦戦闘のエキスパートなんですが、今回は敵もエースですからね。日戦軍団って潜宙艦相手の場合相手が強すぎる事が多い。しかも自軍にその方面のエースが多いにも関わらず。
演習の目的。普通に考えればグンナ・グリシアや外惑星連合の侵攻に備えてですが、タイミングがどうも謎だったようで。大日本帝国が味方になるかもしれないという展開に備えて、京城大佐が大日本帝国を敵視する発言をしています。というかこの文面だと明らかに大日本帝国は敵。
ダメコン描写。そういえば今までやったこと無かったなぁ。とりあえずは消火活動に当たる航空兵や乗員たちを描写してます。今回それっぽいのが出てますが、宇宙において応急注排水装置のような物は存在するのでしょうか。
会議室。なんだかんだ言って今回会議室出まくり。戦闘が会議室で起きてそうな雰囲気。「何が神聖だ」と言うのは最初湊川の台詞でしたが、中立目線の湊川が批判的な発言をするのはどうかと思ったので別の士官の台詞としました。
とりあえず最後は松井元帥のいかにもな振りで終わらせてます。今回は内惑星側の結束に亀裂が見え始めている雰囲気で書いてます。というか、書いていて松井元帥まで「味方側を自身のシナリオどおりに動かそうとする第三勢力のリーダー」のような雰囲気になってしまって困った。仮にも主人公なのに。
最後に。大日本帝国が味方になる経緯があまりにも酷すぎると思うのは僕だけでしょうか。このような経緯では藤岡少佐も京城大佐も、そして仇討ちに燃えていた松井元帥も浮かばれない。この点から考えれば、内惑星連合はいずれ内側から瓦解するような気が(特に日戦軍団とそれに友好的なQシュタイン連邦が大日本帝国を拒絶してそう)。
一旦は内惑星と外惑星で二極化されたこの大戦も、新たな変革を迎えそうです。
以下、作者近況。正直どうでもいい余談揃いです。
「電車でGO!」を久々にやりたくなって専用コントローラーを購入。これがあるとないとで操作感が全く違うらしい。警笛は押しにくくなった(実車は足で踏むがこのコントローラーにペダルは無い)ものの、他は向上。ブレーキが軽いぞ!惜しむらくは「電車でGO!」の方が故障してしまったことだが。買いなおそう。でも名鉄編高いなぁ。
シリーズの収録線区を見返してみるとやっぱりJR、それも関東地方が圧倒的に多い(山手線と京浜東北線は最多記録)。私鉄は名鉄ぐらいじゃないかと思った(三河地方も収録して欲しかった。TSなら金山からあったのに)。「赤い電車」つながりで京浜急行が無い(携帯アプリ版はある)のは本当に残念。携帯アプリ版の京急編をやった友人によると「モーター音も加速性能もちゃんと再現している」とのこと。Wiiあたりに移植して欲しいなぁ。あとは名鉄編のリメイク。
「オウバードフォース(初代)」ですが、三連続ミッションで詰まってます。二戦目むずい。
最近は「仮面ライダー剣」のDVDを借りてます。滑舌が悪いことで有名なライダーで、実質ネタ目当てで見たのに結構面白い。何年経っても愛されるライダーってのはこういうものだと思う。電王も好きだけど。
SCQ中期頃にやり始め、異常にはまった挙句にSCQに空戦の要素を取り入れるきっかけとなった「The Wing Bluff」が「大空軍」のタイトルでPSP化されるそうです。公式サイトを見ているとTWB時代とさほど変わらない部分もある(燃料が切れても飛べる(但し弾は無条件で切れる)、など)一方、PSPの強みか、グラフィックが3D風になっていたり(真珠湾に停泊する軍艦がちゃんと並んでいる)、登場する機体が増えていたり(零戦は一一型から六四型まで。TWBでは二一型と五二型のみ)と進化した部分も。双方向スクロールの2Dシューティングという革命的要素を持っていたこのゲームが、PSPで如何にしてリメイクされるか、期待したいところ。発売元は「零式艦上戦闘記」と同じGAE。もしかしたら機体は「零式艦上戦闘記」の登場機体をフィードバックしてる?
さらに、かなり前になりますが、戦艦の設定考察に役立つのではと高杉さんに薦めた「鋼鉄の咆哮」。シリーズ最新作の「ウォーシップガンナー2」がPSPに移植されます。シリーズ初の対戦・協力プレイ搭載、さらにPS系列版では初めてとなる「反物質砲(PC版には前からあった)」の導入など期待できる要素が盛りだくさん。ただ、「大空軍」もそうなんだけど、PSP持ってないんだよなぁ・・・
一方、こちらもSCQに大いに影響を与えた弥栄堂が久々に大きな動きを見せている様子。年内には甲鉄傳紀シリーズの新作が公開されるらしい。期待する一方で「公開されたら速攻でパロディしてやる」という野望が心の奥底で渦巻いてます。
さて、あまりにも長かったあとがきもここまで。次回は多分大日本帝国軍のグリシネ攻撃。松井元帥の決断は?「紀伊」の運命は!?そして内惑星連合の今後は?!
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ダークスピリッツ
- 2009/10/7 18:50 -
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> あとがき:「最初に言っておく。今回のあとがきはかーなーり、長い!(元ネタ:某仮面ライダーのサブキャラ)」。二ヶ月ほど小説を公開していなかったのと、恐ろしく長い本編に比例してやたらと長くなりました。
> 今や遅しと待っていたにも関わらず執筆意欲が低下した今回。あとがきとか言ってますが今回は本編と並行して書いていて、執筆終了後に纏めてます。今回は内乱戦、それも一方的な戦闘(日戦軍団も勿論グリシネ系なので完全にグリシネ民族同士の内乱)なので執筆意欲が湧かなかったんです。お陰で何か内惑星連合結成前後のような間延び感。
> 今回、「腕が鈍ったんじゃないか?」と思うぐらいに味方側に都合の良すぎる展開。あまりに一方的過ぎて空軍側に敵愾心が沸きました。
今回は叛乱軍の圧倒的な勝利を書くために多分にご都合主義を混ぜてしまいました。僕もまだまだ浅いです・・・
> そう言う敵愾心が災いしたか、今回の戦闘はむしろグリシネ空軍視点です。「無能な上層部によって多大なる損害を出す現場」といった雰囲気です。というか、グリシネ空軍視点にしないと執筆意欲が湧かなかったんです。「序盤で苦戦を強いられていた友軍艦隊が『紀伊』の到着で逆転」みたいなありきたりな展開ならまだできるんですが、初めから一方的というのはその前に敗走する前哨戦みたいなのがないと出来ない。グリシネ空軍(それこそ精鋭の第二艦隊とかが)がそれ以前に凄まじい戦闘技能を見せていれば話は別だったんですが、グリシネ空軍は今まで幕僚しか出てませんでしたし。
>
> 今回はどうも場面展開が多く詰め込みすぎ感がします。目まぐるしく舞台が変わるスピード感はどうも上手く出せない。いつも思うんだけど第七分隊(溝口分隊)と藤田上等兵って脇に追いやられてるなぁ。お陰で本編に比例してあとがきも長い長い。実は執筆時、テキストファイルをある一定の長さ(ファイルサイズ20kbぐらい)ごとに「A、B、C」で区切ってるんですが、まさかの「D」突入。Dパート入るなんて思わなかった・・・しかもそれでもBパートが30kbになってた。
ぶっちゃけ登場人物を増やそうとして場面展開が多くなってしまったのですが・・・藤田上等兵とかの出番をどこで出せばいいのか・・・
> そういうことで、どうもサブタイトルが思いつかない。あわや前代未聞の無題回になるところでした。「亡国の艦隊」というのが思いついたんだけど、二話前が「燃ゆる艦隊」だったし、とうの昔に「漂流艦隊」というサブタイトルもやったし・・・ということで却下。そもそも「紀伊」において「艦隊」というワードは最もサブタイトルに使われてるんですね(戦艦ものだから仕方ありませんが)。散々考えた末に現在にいたってます。グリシネ海軍厚木・三川隊、オルキス艦隊、そして潜宙艦「バリッラ」全てに当てはまる(一応拠点がある厚木・三川隊やバリッラが「放浪」と呼べるのかは疑問ですが)のでピッタリだと思いました。「殲滅者」と書いて「デストロイヤー」と読ませる感じです。
今回はかなりカオスとなってしまいましたからね^^;
> 後々構成される「神聖グリシネ王国」にちなんで「正義亡き聖戦」というのも考えましたが却下。いずれ使いますが、使い時はこちらに任せてください。
神聖という言葉はゼロの使い魔の影響でつけてしまいました。つけてから気づいた事・・・これじゃなんか悪役然として名前じゃねぇ!?
>
> デヴォリアの病院。実はここが最初に執筆意欲が湧いた部分。出てないけど天城と野末について色々と掘り下げてます。何故彼らはデヴォリアまで退避することになったのか、というのを説明してなかったので。
そういえば音沙汰が無かったフレイ中佐を出そうと思って考えました
> ルナツーの出航。池内に関するエピソードですが、今回の話の内容には合わないと思ったので出航式典の場面に統一しました。完全に脇に追いやられました。個人的には「相棒を死なせてしまった佐軒」と「止むを得ない事情があったとはいえ同僚を見捨てて逃げ延びてしまった天城」をメインに掘り下げたい。
これも前と同じ理由。でも合わなかったかなぁ・・・
>
> 会議室。前回書いたときにはものすごく熱くなったのに、どうしてここまで熱くならないのか分からない。空軍の強さが見せられていないからなのか、それとも湊川があまりにも確固たる情報をもっていて強すぎるのか。なんと言うか、こいつら本筋に関わると弱体化するなぁ・・・
>
> 機関室。「真夏のオリオン」を見た影響か、職人気質な機関長が登場。「ローレライ」のときのこちらも職人気質だけれどややコミカルな機関長とはまた違った雰囲気がありました。
> 京城大佐。兄弟という設定だからそろそろ下の名前を設定しようか検討中です。共演するとややこしくなりそうだから。因みに豊島少佐の語っている言葉は「エースコンバット5」に登場するバートレット大尉(主人公の所属する飛行隊の隊長)の台詞に由来。実は5はやったこと無いです。
下の名前は松井さんに一任します。どうぞ良い名前をつけてやってください^^
>
> 時間経過。ルナツーからライトウォーターまで行くのに二日が経過していますが、もう少し遅くすれば良かったかもしれません。いずれにせよライトウォーターからベータまで三日が経過しているので、ルナツー〜ライトウォーター間よりベータ〜ライトウォーター間のほうが距離が長いようです。第四機動艦隊との整合性のためとはいえ少し無理したなぁ。
>
> 青柳中将。別に空軍参謀一派のチョロQでもなく、ただ職務意識、というか愛国心から、松井元帥と対立しているようです。松井元帥は二度、国を捨てて逃亡していますからね。
> グリシネの参謀も一本調子じゃないんですよ。この後も森が結構騒いでるし。いくら強権的とはいえ全員あの様子じゃあとっくの昔に滅んでるわけですし、木島のようなQタンクが統合幕僚長になってるわけですし。
そうなんですか。どうも強権的な所ばかり感じてしまうので・・・
> 松井元帥と本国の関係はそれ程良好ではないのですが、陸海軍とは仲が良かったり、空軍でも現場筋とは通じてたりするので、別に敵同士というわけではないです。なんだかんだ言って北町地区には日戦軍団本部がありますし。
> グリシネ空軍は現場側には現状打破を試みる勢力もいますし(今回の橋本少将は多分そんな感じ)、かのプロトン陸軍にだってリピーレド元帥のような権力主義車がいたわけですし。
>
> 出航。正直言って場面展開が多すぎると書いてて煩わしいのと読む側も混乱するので流れを変えて「第五主力艦隊出航→第一特務艦隊入港→第四機動艦隊出航」としました。空軍精鋭艦隊の配置も解説。勿論本土にもそれ相応の部隊はいます。
>
> 二度目の会議室。フィフス・ルナに舞台を移し変えてまで書く内容ではないと思ったので会議室のみ。とりあえず今回も幕僚総出演を目指しました。原田大将は会議中は台詞が一言しかありませんが、今回は陸軍の介入余地があまり無かったので仕方ありません。
> 決起文は「亡国のイージス」原作に由来。むしろ亡国のイージス的展開を狙って(=叛乱は鎮圧される!?)。その後の「俺はチョロQであることを止めたんだ!」と、「貴様らには恥も誇りも無いのか」も「亡国のイージス」から。やっぱり叛乱といったらこれに限る。
> にしてもグリシネ軍上層部は出てくるたびにキャラが増えるなぁ。そして今更気づいたんですが、グリシネ軍参謀ってなぜか「さんずい」が多いなぁと。流石に陸軍はいませんが海空軍に多数。車種もマイナー車ばかりだ(いや、現場にメジャー車が多いから仕方ないんだけど(特に九七式中戦車))。
>
> 退室後の二両。ぶっちゃけ会議室のシーンそのものよりも気合入れて書いた。そしてこの場面書くの久々だなぁと思った。前回は高沢と湊川を中心的に書いてたからなぁ。
> 忘れてるかと思いますが、原田大将は松井元帥の旧友で、戦略思想の違いから松井と反目、「日戦軍団事件」には参加せずにグリシネの軍部に残っています。しかしそれ以降も交流を無くしていたのではなく、時折北町地区で会談をしていたようで、それは西郷中将ら海軍の面々にも影響を与えています。読み返すと初登場時と比べ相当丸くなったと思う。
> 西郷中将は根っからのグリシネ軍車で、空軍の黒田、森両中将、そして海軍の小泉少佐とは同い年で幼馴染。しかし、お互いが求める物が異なっていたために進んだ組織が異なり、結果的にそれぞれが全く別々の道を進んでしまいました。
> 実は一番微妙なポジションにいるのが、今回は出ていませんがパレンバン防衛で成果を挙げた装甲列車隊隊長の清水中佐。松井元帥、原田大将の旧友で、「日戦軍団事件」で松井と共に軍部を脱退した物の、軍時代は黒田や森といった空軍の幕僚達と仲が良かったという逸話があります。「日戦軍団事件」への参加の理由は「権力軍部を一度叩きなおし、三軍平等体制を築き上げる」と語っていたと言う設定です。仲の良かった空軍幕僚達を敵に回すことは躊躇わなかった様子。旧知の仲のほうが勝ったという意味ですな。西郷中将の「民兵に移った戦友」は実は清水中佐です。
> 今後の軍事政権壊滅後、背負う物が異なる原田大将と西郷中将、そして森中将はある意味大きな役割を担うかもしれません。
> どうでもいい話ですが、今回西郷中将が松井元帥を評した「破天荒」。読めない人が多いそうですね。「はてんこう」です(「竣工」の前例があったので)。
>
> 空軍艦隊の出撃。いくら(一応)敵扱いとはいえ、あまり弱いとかわいそうなので(そういえばQターレットってどうなった?)、今回出撃した部隊は錬度的には空軍内ではかなり低めの部隊としました。まあ橋本少将自身はなかなかの名将なんですが、駆逐艦一隻しか敵艦を沈められてない辺りでどうも実戦参加する以前の問題のような。
> 実は今回戦闘シーンの執筆意欲が湧かなかったのは「精鋭部隊が新兵をなぶり殺しにする」展開に納得いかなかったから。日戦軍団の航空支援いらんだろとも思った(いや、オルキスの乱入は想定外だったんですが)。まあたまにはこういう展開もありかとも思いました。
> 松井元帥は実はQシュタインにクーデターの連絡をしていないんです。松井元帥自身も最終的に成り行きでQシュタインに頼る結果になっただけで、初めからQシュタインに頼ったわけではありませんでした。それに倣っての行動です。というかそうでもしないとQシュタインが支援に駆けつけなかった説明が出来なかった。
>
> で、あえて空軍艦隊出撃をずらしたわけは、勿論厚木艦隊側と日戦軍団を同時に動かすため。しょっちゅう場面転換やるのもどうかと思ったので。
> 久々に登場の横田大佐。実は後述する深谷副長は横田大佐をすっかり忘れていた結果(というか横田大佐の乗務艦が「アナポリス」だったことを忘れていた)登場したキャラクターだったり。
> 「アナポリス」副長。厚木、横田と来たら次は深谷通信所から。余談ですが、厚木飛行場は厚木ではなく相模川を挟んで向かい側の大和市に存在するそうな。
> 車種の九五式軽戦車増加装甲付は実際にインドシナで見られたもの。元々防弾性に難があった九五式ならば増加装甲をつけるのも無理はない・・・というか旧軍戦車の大半がそうですな。その他にもラバウルには九五式改造の火炎放射戦車があったとか。
>
> オルキス軍。そういえばホンゴウ軍港はともかくオルキス軍自体はこれが初登場。以前のホンゴウ軍港は随分駆け足で書いてましたな。よっぽど執筆意欲が湧かなかったのか。そう言う点では不憫なオルキス。そして今回も・・・
>
> 今回のあとがき、まだまだ続きます。
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ダークスピリッツ
- 2009/10/7 19:12 -
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思いの他長かったのでここに纏めて今回の反省を(爆)
正直今回はやりすぎたなぁ・・・と思いました。ただ叛乱軍の強さをグリシネ空軍に知らしめたかったわけなのですが、これじゃワンサイドゲーム過ぎて単なる虐殺ですね。紺碧の艦隊もビックリだ(オイ)
神聖グリシネ王国軍はグリシネ王による王政の復古と空軍等の軍部の独裁を根絶するのが第一目標となっています。厚木准将はそのためであれば非情な事もするかも知れません・・・ってこれじゃ何か悪役だなorz
今回完全に部外者となったオルキス艦隊ですが、そろそろここでオルキスを出さないとなんか忘れ去られてしまうような感じだったので出しました。
戦い方に関しては自分の描写が稚拙過ぎて一方的な虐殺となってしまいました。オルキスを悪役にするはずじゃなかったのに・・・orz
松井さんの考えている内惑星連合軍=非情ですが、正直おお!そういう考え方があるのか!と思ってしまいました(オイ)
ですがこれだと何かいつか内惑星連合VSQWになっちゃいそうで怖いですね^^;僕の考えではアマティス&デュミナス軍はそういう考えもあるようですがオルキス軍は違うと思ったのですが今回でオルキスは悪役ぶりを発揮してしまいましたね・・・これからその辺の信頼を戻していこうと思います。
橋本少将は「少将」です。間違って中将と明記してしまった所があって申し訳ありませんでした。
大日本帝国の件ですが、元々離反する事は考えて今回出したのですが、既に日本戦車軍団とは仇敵の関係となってしまったようでかなり迷ってます。歩み寄りのチャンスを逃してくうちに互いの間に深い溝が出来てしまった感じ・・・正直どうすればいいか迷ってます。日本戦車軍団と大日本帝国が手を取り合うにはどうすればいいでしょうか?
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松井一真
- 2009/10/10 11:00 -
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> > 今回、「腕が鈍ったんじゃないか?」と思うぐらいに味方側に都合の良すぎる展開。あまりに一方的過ぎて空軍側に敵愾心が沸きました。
> 今回は叛乱軍の圧倒的な勝利を書くために多分にご都合主義を混ぜてしまいました。僕もまだまだ浅いです・・・
ちょっとオルキスの登場は都合よすぎですかね。もっと言えば当たった相手のグリシネ空軍も錬度が最底辺だったことも。
> > 今回はどうも場面展開が多く詰め込みすぎ感がします。目まぐるしく舞台が変わるスピード感はどうも上手く出せない。いつも思うんだけど第七分隊(溝口分隊)と藤田上等兵って脇に追いやられてるなぁ。お陰で本編に比例してあとがきも長い長い。実は執筆時、テキストファイルをある一定の長さ(ファイルサイズ20kbぐらい)ごとに「A、B、C」で区切ってるんですが、まさかの「D」突入。Dパート入るなんて思わなかった・・・しかもそれでもBパートが30kbになってた。
> ぶっちゃけ登場人物を増やそうとして場面展開が多くなってしまったのですが・・・藤田上等兵とかの出番をどこで出せばいいのか・・・
藤田上等兵は元々エキストラ的キャラクターを予定していたにも関わらず、平岡上等兵の戦死で結果的にメインストーリーに組み込まれてしまったため、扱いに苦労してます。結局エキストラ的通信兵は他の通信兵に譲ってます。そういえばせっかくデヴォリア出したのに勝山とディールを出し忘れた。
> > そういうことで、どうもサブタイトルが思いつかない。あわや前代未聞の無題回になるところでした。
> 今回はかなりカオスとなってしまいましたからね^^;
ここまで展開が二転三転するとは本当に思ってなかったので。
> > 後々構成される「神聖グリシネ王国」にちなんで「正義亡き聖戦」というのも考えましたが却下。いずれ使いますが、使い時はこちらに任せてください。
> 神聖という言葉はゼロの使い魔の影響でつけてしまいました。つけてから気づいた事・・・これじゃなんか悪役然として名前じゃねぇ!?
「神聖欧州帝国」ってありましたねぇ、「紺碧の艦隊」に。
> > デヴォリアの病院。実はここが最初に執筆意欲が湧いた部分。出てないけど天城と野末について色々と掘り下げてます。何故彼らはデヴォリアまで退避することになったのか、というのを説明してなかったので。
> そういえば音沙汰が無かったフレイ中佐を出そうと思って考えました
パレンバン戦が終わって散り散りになった面々、またデヴォリアやルナツーが出るなら今回出せなかった面々を出したいところです。
> > ルナツーの出航。池内に関するエピソードですが、今回の話の内容には合わないと思ったので出航式典の場面に統一しました。完全に脇に追いやられました。個人的には「相棒を死なせてしまった佐軒」と「止むを得ない事情があったとはいえ同僚を見捨てて逃げ延びてしまった天城」をメインに掘り下げたい。
> これも前と同じ理由。でも合わなかったかなぁ・・・
第七分隊メンバーが池内以外にも描写されてればもう少し書いたかもしれません。
> > 京城大佐。兄弟という設定だからそろそろ下の名前を設定しようか検討中です。共演するとややこしくなりそうだから。因みに豊島少佐の語っている言葉は「エースコンバット5」に登場するバートレット大尉(主人公の所属する飛行隊の隊長)の台詞に由来。実は5はやったこと無いです。
> 下の名前は松井さんに一任します。どうぞ良い名前をつけてやってください^^
実は今回も書こうかと考えてました。また色々と検討してみます。
> > グリシネの参謀も一本調子じゃないんですよ。この後も森が結構騒いでるし。いくら強権的とはいえ全員あの様子じゃあとっくの昔に滅んでるわけですし、木島のようなQタンクが統合幕僚長になってるわけですし。
> そうなんですか。どうも強権的な所ばかり感じてしまうので・・・
なんか本当に2〜3回の出番だけでメインストーリーに組み込まれてしまった(日戦軍団や連合各国の面々はSCQという地盤があった)ので、何かと設定面では苦労してます。
今まで、空軍参謀本部が登場した回は、以下の通りです。
話数:会議内容
第七〇話:日戦軍団を護衛するような戦い方をした第3巡洋艦隊に対する処遇
第七十三話〜第七十四話:独断で行動した第3巡洋艦隊司令、厚木准将に対する処遇
第七十五話:叛乱軍に対する処遇
・・・全部厚木がらみじゃないか。しかも出番はたった3回・・・
これに第六十七話にあった回想シーンの原田大将を加えても4回。それもここ最近の数話ほどでの登場で、地盤など無いに等しい。藤田上等兵もまともにクローズアップされるエピソードが無いままメインとなる第五十九話を迎えているほか、第七分隊もメインとなるエピソードが殆ど無い状態でパレンバン戦を迎えています。どうも彼らに関しては扱いが悪い。
そのうち会議室メンバーに関する設定とかも書きます。
> 思いの他長かったのでここに纏めて今回の反省を(爆)
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> 正直今回はやりすぎたなぁ・・・と思いました。ただ叛乱軍の強さをグリシネ空軍に知らしめたかったわけなのですが、これじゃワンサイドゲーム過ぎて単なる虐殺ですね。紺碧の艦隊もビックリだ(オイ)
「紺碧の艦隊」でいえば、トンでも作戦が成功して、あっさりと壊滅する強力なUボート軍団のような雰囲気ですね。
> 神聖グリシネ王国軍はグリシネ王による王政の復古と空軍等の軍部の独裁を根絶するのが第一目標となっています。厚木准将はそのためであれば非情な事もするかも知れません・・・ってこれじゃ何か悪役だなorz
構成車が現時点では軍人しか見受けられないので、本当に王制が復古できるのかというのが怪しいところですね。王政復古派の政治家を味方につけるとか、そういう場面がなかったので。なんか、段取り間違えたなぁって感じが。
> 今回完全に部外者となったオルキス艦隊ですが、そろそろここでオルキスを出さないとなんか忘れ去られてしまうような感じだったので出しました。
> 戦い方に関しては自分の描写が稚拙過ぎて一方的な虐殺となってしまいました。オルキスを悪役にするはずじゃなかったのに・・・orz
オルキス。壊滅してからゲリラ戦を続けていたようなので、逆にゲリラ戦で苦戦を強いられているところに連合軍が応援を出すみたいな展開だったら今回のようにはならなかったのではと思ってます。ただこれだと前回(グリシア艦隊に苦戦を強いられたニビリア艦隊に、Qシュタイン連邦の艦隊が応援に駆けつける)と被るんですよね。
虐殺。軽巡洋艦を殲滅するくだりで、あの「きたかみ」の悲劇が真っ先に書けましたからね。
> 松井さんの考えている内惑星連合軍=非情ですが、正直おお!そういう考え方があるのか!と思ってしまいました(オイ)
デュミナスしかり、アマティスしかり、あまりにもやりすぎた場面が目立ちますからね。なんか日戦軍団がなかなか「震風」を使わなかったわけがなんとなく分かってきた(おい)。
アマティスは第一独立艦隊再編成以降出番が少ないのと、日戦軍団との共闘が少ないのでありませんでしたが、デュミナスは第六十五話でのあれがありましたからねぇ。しかも両方とも必要な時(例:パレンバン防衛戦)に限っていなくなる。
> ですがこれだと何かいつか内惑星連合VSQWになっちゃいそうで怖いですね^^;僕の考えではアマティス&デュミナス軍はそういう考えもあるようですがオルキス軍は違うと思ったのですが今回でオルキスは悪役ぶりを発揮してしまいましたね・・・これからその辺の信頼を戻していこうと思います。
確かに、このままだと内惑星連合内で内乱が発生しそうです(「内」ばっかりだな)。
オルキス軍。前述のように、これは設定の問題が(おい)。あまり干渉していないロドリグも松井元帥に半ば迷惑がられてたし。
この後第七守備艦隊が強力な外惑星軍艦隊に挑んで戦闘の勝利に貢献するエピソードでもあればちゃんと受け入れてくれるはず。
> 橋本少将は「少将」です。間違って中将と明記してしまった所があって申し訳ありませんでした。
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> 大日本帝国の件ですが、元々離反する事は考えて今回出したのですが、既に日本戦車軍団とは仇敵の関係となってしまったようでかなり迷ってます。歩み寄りのチャンスを逃してくうちに互いの間に深い溝が出来てしまった感じ・・・正直どうすればいいか迷ってます。日本戦車軍団と大日本帝国が手を取り合うにはどうすればいいでしょうか?
なんか、古田少佐が戦死したところから完全に敵になってしまった感じです。それまでは松井元帥も戦いに迷っていたので。初登場時なんか「同族との戦いは避けたい」なんて言ってたのに。
現時点ではみんな仇討ちに燃えている状態なので、第252航空隊の隊長である有田中佐が戦死するか、あるいは有田中佐の部下が戦死するか。とりあえず有田中佐の指揮する第252航空隊に関するドラマがあってからですかね。
後は第二偵察潜宙艦隊との決着ですかね。パナイ少佐が出なくなって久しいので。とにかく大日本帝国と日戦軍団の戦闘に関する話を全部収拾つけてからでないと、大日本帝国との講和はならない。両軍にだってルナツーでの陸上戦闘で多くの部下を失ったチョロQがいますからね。
どうでもいい話。この敵対の原因となった第252航空隊の隊長、ここで書き直すまで「遠山中尉」だと思ってました(それは「真夏のオリオン」の回天特攻隊の隊長じゃないか)。おかしいと思って読み返したらやっぱり違ってた。多分乗機の名前が「遠風」だったのでそこで間違えたのかと。読み返してよかった。
大日本帝国はとりあえず味方にする割にはドラマが希薄だったので、どこかで出しておきたかったですね。壊滅した防空銃座のエピソードくらいじゃないか。外伝は基本的に内惑星側視点で書きたいので(その癖に初期構想段階でグンナ側のエピソード二つも押し付けられたんじゃぁ・・・)。
とりあえず、地味に外伝も進めていきます。グンナ帝国に関しては特に設定も無いので色々と大変だ。もしかしたらそれ以降に構想された日戦軍団編のほうが先に完成するかも。
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