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雑談板 チョロQ小説板  

どうも、お久しぶりです。おすなのかたまりです。
スパムがひどいので、禁止語句を設定しました。
「http://」を禁止していますので、URL を記入する場合は「ttp://」とかにして下さい。
これでこのスパムがツールを使ったものかどうかよく分かると思います(笑
この掲示板は XREA.COM が生きてる限り多分あると思いますので、どうぞよろしくお願いします。

以上、さくらがちる頃に。

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Re:青き名将 第十八話
 松井一真  - 2015/11/3 19:00 -
  
ロドスシルト少佐のキャラちょっと変わってるかも。

第十八話 ビットレイク突入作戦
郊外の通りに、爆弾が命中する
爆風のあおりを受けて、民家が吹き飛ぶ
望遠鏡でそれを観測する、二両の機銃手
パナール上等兵「敵機、爆弾を投下!」
ブレダ上等兵「遠いな。あれは逃げるぞ」
旋回し、待避しようとするB−17
しかしエンジンから火を噴く
爆発、四散するB−17
パナール上等兵「やったぁ!これで三機だ!」
しかし、何機かのB−17は、これを突破して前進してくる
パナール上等兵「まずいぞ。二番街方面に向かっていく!」
そのとき、他のやぐらから何かが発射された
それは爆撃隊の上で炸裂し、爆撃隊へと降りていく
強行突破する爆撃隊の真横で、それは一斉に爆発した!
数機の爆撃機が炎上し、空中で爆発する
パナール上等兵「お見事!」
ブレダ上等兵「こっちも来るぞ!」
敵の戦闘機が急降下して迫る
備え付けられた機関銃を構える
射程距離到達直前に、真正面から一撃
エンジンに直撃したらしく、敵機はやぐらを掠めて急降下していく
爆発、撃墜
プロトン軍航空隊、なおも劣勢である

尾部機銃手「二番街に向かっていた六機が被弾した!」
右舷機銃手「また例の対空砲か!」
チョロ〜ン軍は、小型の対空火器を所持しているらしい
以前の戦闘でも急降下した小型爆撃機が、類似した攻撃を受け墜落したという報告が入っている
しかしそれは命中しないと炸裂しないものだった
今度は時限式といったところだろう
未だにこちらは空中要塞の猛威にさらされている
バスク上級伍長の乗る一番機は、最初の空中要塞の攻撃を突破し、攻撃目標の大通りへと向かっている
この付近に展開する主力部隊を撃破すれば、後続の地上部隊が楽になるはずだ
しかし先行していた六機も被弾し、こちらもビットレイクを前に足止めを喰らっている
このままでは地上部隊の援護もままならない
そのときだった
プロトン軍航空兵(通信)「こちら第一〇三航空隊!空中要塞は我々がひきつける!」
P−40戦闘機が、勇敢にも空中要塞へと向かっていく
爆撃機隊に向けられていた攻撃は、次々とP−40へ向けられていく
P−40のうち一機が被弾、墜落していく
副操縦士「『空の要塞』が、ここまでしなければ突破できないのか!?」
通信士「攻撃部隊、残機十五!」
すでに半数以上の機体が撃墜、あるいは撤退している
バスク上級伍長はそのほかに敵影が無いか探した
すると、左舷前方より新たな敵影
戦闘機だ!
照準を合わせ、引き金を引く
上部銃座の同僚も敵機を確認したらしく、同時に攻撃を行う
一機を撃墜するが、さらに一機が迫る
そのとき、後方を飛んでいた一機が撃墜された
尾部機銃手「攻撃部隊、残機十四!」
各機が密集して細かい弾幕を張っているのだが、敵機はそれをかいくぐって一撃を加える
この街はチョロ〜ンの重要拠点。必死ということか
いや、それだけではないだろう。この街は、かつて我々が焼き尽くした街だ
四番機機長(通信)「こちら四番機!敵機の攻撃熾烈!」
五番機機長(通信)「踏ん張れ!地上部隊が突入するまで耐えるんだ!」
散開していた四番機以下三機も敵の攻撃を受けていた
目標地点は迫る
敵の大部隊が展開していると思われる場所
眼下には敵の陣地が見える
よし、目標地点だ!
機長「投下!」
三機のB−17が、一斉に爆弾を投下する
眼下ではQタンクたちが一斉に待避していく
爆発、炎上する大通り
機長「直ちに引き上げる!」
旋回していく三機のB−17
しかし、敵機の追撃は続く
さらに別働隊からも連絡が入る
四番機機長(通信)「ダメだ、左翼をやられた。離脱する!」
片方のエンジンが止まった状態で、なんとか飛んでいくB−17
七番機機長(通信)「八番機被弾、攻撃部隊、残機十二!」
敵機の迎撃はあまりに熾烈だった
強力なB−17爆撃機を四機も撃墜したのだ
反復攻撃は困難であろう

その頃、地上では連合軍の突入準備が整っていた
一番槍を担うのは、クリーク王国・ゲール共和国・ヴァイナー連邦の各三個中隊であった
クリーク将校「本部隊が、要衝ビットレイクへの一番槍となることは、キュワール連合における最大の誇りである!」
先鋒のクリーク将校が叫ぶ
クリーク将校「しかし!ビットレイクの防備はこれまでの街とは比べ物にならない!激しい抵抗が予想される!」
頭上で爆発音が響く
B−17が落ちていく
クリーク将校「キュワールの平和の礎となるのだ。心してかかれ!」
すると、将校の近辺に着弾
クリーク将校「突撃ぃぃっ!」
敵陣の方へ向き直り、前進する将校
クリーク陸軍、ビットレイク第一次防御線へ突入
だが、機関銃の猛射がクリーク軍を襲う
クリーク将校「待避っ!」
慌てて物陰に隠れる将校だが、すぐ脇を進んでいたクルセイダーMkIが吹き飛ぶ
航空攻撃で多数の被害を被りながらも、なおも多数の陣地を有する第一次防御線は、連合軍の先陣部隊を次々と撃破していった
機銃攻撃が止む
クリーク将校「突撃!」
再び数両の巡航戦車が駆け出す
砲撃が敵陣に命中する
しかし、噴煙が止むと同時に射撃が再開される
クリーク将校「巡航戦車隊は一時停止ぃっ!」
遮蔽物に待避するクルセイダーMkI
と同時に、チャーチルMkIVが前進する

郊外に設営された野戦司令部では、被害報告が次々と入っていた
クリーク兵士A(通信)「第158小隊壊滅!第204小隊応答無し!」
先陣部隊の壊滅。幕僚たちはざわめきだった
ミフェイドビッチ大佐「信じられない・・・クリーク軍の装甲は鉄壁のはず・・・!?」
先陣部隊の作戦は、防御力に優れるクリーク軍が正面突破を目指し、機動性に優れるゲール軍が裏をかいて突入、火力に優れるヴァイナー軍が遠距離から砲撃支援するというものであった
しかしヴァイナー軍の部隊が遠距離から砲撃を受け、大幅に援護火力を欠くこととなった
さらにクリーク軍の部隊も機関銃の猛攻で予想以上の損害を受けていた
ロドスシルト少佐「遠距離を榴弾砲で制圧し、突撃してきた奴は機関銃の餌食か・・・」
いくら撃たれづよいクリーク軍といえど、連続して攻撃を叩き込まれればひとたまりも無い
ロドスシルト少佐「航空隊の状況は?」
副官「戦略爆撃隊は先ほどの報告どおり、空中要塞と戦闘機隊の猛攻で壊滅状態です。リピーレド元帥指揮下の陸上部隊にまで、空中要塞の攻撃が及んでいます」
ロドスシルト少佐「急降下爆撃隊は?」
副官「ただいま攻撃を開始しました。先陣部隊はそれに続いて再度、突撃を開始するとの事です」
リピーレド元帥「よし。予定より早いが、我々も出ることにしよう」
ロドスシルト少佐「待ってください!このまま敵陣に突っ込んでしまえばいたずらに損害を増すだけです!先陣部隊が最初の防御陣地を押さえるまでは・・・」
リピーレド元帥「他国軍など待っていられるか!?我々には圧倒的物量と火力がある!敵が疲弊するまで前進あるのみだ!」
そういって、リピーレド元帥は司令部を飛び出していった
副官「・・・焦っていますね」
ロドスシルト少佐「あいつもあいつで必死なんだ。同盟国の中にも厄介な奴がいるからな」
リピーレド元帥は確かに焦っていた。ビットレイクを早期に制圧しなければ、北東部に位置する元帝国があの国に向かう可能性がある
すなわちQQQQ共和国である
内部対立で核弾頭を撃ちこむような国だ。どんなことをするか分からない
場合によってはチョロ〜ンという国そのものが消滅しかねない
ロドスシルト少佐「一番厄介なのは味方、か・・・」
ふとロドスシルト少佐は司令部に置かれた地図を見た
連合軍の展開した地域には、チョロ〜ン軍の機銃・榴弾砲陣地が多数確認できる
航空攻撃とクリーク軍の突撃によって一部に被害は出ているようだが、それでも強固な守りを固めているようだ
ロドスシルト少佐「正攻法ではとても破れそうもない。かといって航空攻撃は封じられている・・・」
こちらも榴弾砲を展開して陣地攻撃を行っているが、いかんせん数が少なすぎる
電撃作戦を決行したためほとんどの榴弾砲部隊が追いついていないのだ
機動性に優れるM12自走榴弾砲を有する部隊が到着すればまたひとつ違うのだろうが
第十八話 続く
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青き名将 第十八話
 松井一真  - 2015/11/3 18:59 -
  
実は完成から半年近く眠っていたもの。

第十八話 ビットレイク突入作戦
前大戦の末期、Qグリーン領のある小都市
大戦の勝敗は決し、すでに首都包囲網が形成されつつあったときであった
市街地のそこかしこで噴煙が上がり、爆発音が鳴り響く
小隊を任されたコムニエム軍曹は、敵部隊に対し機動戦で応戦するよう指示を出した
その一方で自身は援護射撃のため、裏通りへと走った
そのときであった
屋根上にロケットランチャーらしきものを積載したチョロQたちが、友軍部隊へと突撃していく
友軍のM4中戦車は、火炎放射器でそれを容赦なく焼き払っていく
コムニエム軍曹「・・・いったいあれは?」
プロトン兵士「おそらく市民兵です。奴さん、とうとう末期症状といったところですかね」
あらかたそれらを撃滅したと見られるM4中戦車の小隊は、そのまま前進していく
何台かのチョロQが、武装を捨てて逃げていく
そのときであった
M4中戦車が急加速し、重機関銃でチョロQたちを追撃し始めたのだ
コムニエム軍曹「どうなってるんだ!?あいつらはもう武器を持ってないはずだろう!」
プロトン兵士「あの部隊章は・・・リピーレド元帥直属の第二一師団です!」
コムニエム軍曹「いくらなんでも非武装のチョロQを銃撃するなんて!行くぞ!」
二両は物陰から飛び出して、M4中戦車の小隊と逃げる非武装チョロQの間に割り込んでいく
コムニエム軍曹「射撃を中止しろ!」
プロトン将校「・・・お前たちどこの所属だ!?」
先頭を往くM4ジャンボが言う
コムニエム軍曹「第一〇二中隊だ!お前たちは何をしている!?」
プロトン将校「敵兵の追撃だ。何か問題でもあるのか?」
コムニエム軍曹「・・・何を言っているんだ、非武装のチョロQのどこが敵兵だ!?」
プロトン将校「彼らが武器を再び手にしたら、再び敵兵になる。その前に撃つ!」
付近に榴弾砲が着弾する
物陰から小さなチョロQが飛び出していく。子供だろうか
そのとき、後方にいたM4が機銃掃射を叩き込んだ
銃弾を受けた小さなチョロQは動かなくなった
コムニエム軍曹「・・・なんてことを!」
プロトン将校「俺たちの戦友はQグリーン軍に殺された。これは復讐だ」
そういってM4の一団は去っていった
コムニエム軍曹「・・・こんな子供を殺して、何が復讐だ!?」
プロトン兵士「・・・なんということだ」
コムニエム軍曹「少佐は言っていた。正義を証明するには力が必要だと。しかし・・・この力で、本当に正義を証明できるのか?」
その街の戦闘で死亡した民間チョロQは住民の半数近くに上るが、多くはプロトン王国軍の記録上では“市民兵”として扱われている
しかし、コムニエム軍曹が見たような出来事が、街のそこかしこで起こっていたとも言われている

グリシネ国、日戦軍団総司令部
グリシネ自由政府軍の「要」となるこの場所には、無数の防空砲台が立ち並んでいた
地上では砲煙がたなびき、空中では爆発の火花が散る
ロケット戦闘機が敵爆撃機に一撃を浴びせる
爆発、両断される敵爆撃機
周囲に落下傘が舞う
壮烈な大空中戦が、上空で繰り広げられる
第一派を撃破する日戦軍団航空隊だが、間髪を容れずに第二派が襲来した
ロケット戦闘機は航続力が切れて、すでに着陸していた
そこに、奇妙な四発機の姿が現れた
零戦が四発機に接近する
日戦軍団航空兵A「こちら海軍三二一航空隊。貴機の所属を問う」
四発機から応答が入る
日戦軍団航空兵B「こちら陸軍飛行第四五戦隊。予定通り作戦を実行する」
その四発機の主翼には、日の丸が描かれていた
日戦軍団航空兵B「あとは我々に任せ、補給のため着陸せよ」
翼を振り、引き返していく零戦
爆撃機の編隊に、上下に分かれて展開する四発機
徐々に爆撃機が迫ってくる
日戦軍団航空兵B「作戦開始!」
すると、四発機から無数の弾丸が放たれた
銃撃を受け、粉砕される爆撃機
上下からの挟撃を受け、爆撃機は次々と撃墜されていった
グリシネ上空の壮烈なる航空戦は、日戦軍団の技量と奇策によって、日戦軍団による全機撃墜で幕を閉じた
防空態勢が整っていなかったグリシネ空軍側は、日戦軍団側に祝電を寄越したものの、部内では波紋の声が上がったという

グリシネでこの激戦が繰り広げられていたころ、グッドウェイ島では重装甲列車撃破作戦が行われていた
海路により輸送された「敷島」が、Qトルック軍装甲列車との交戦を開始したのである
Qトルック軍の装甲列車は、ゲリラ対策としてQグリーンが開発した重装甲列車で、「コンドラチェンコ」という制式名が与えられていた
起伏の多いグッドウェイ島では、砲撃を命中させることもままならない
巡洋艦並の大口径砲を有する「コンドラチェンコ」だったが、その砲撃を「敷島」に命中させることはできなかった
一方、小口径の火器を連続で叩き込む「敷島」は、高い機動性をもって「コンドラチェンコ」を追い詰めていった
この激闘については、また別の機会に語ることとする
一進一退の攻防が続き、遂に「コンドラチェンコ」が停止したのは、一時間後のことであった
史上最大の装甲列車決戦は、ここに幕を閉じた
それと同時に、Qトルック軍は対連合軍防波堤となりうるグッドウェイ島を喪失。本土防衛のため、戦力を本土に集中させる結果となる・・・

その日、マッグユーノスの飛行場に、無数の飛行機が集まっていた
四つのプロペラを持つ大型機が、次々と滑走路へ向かっていく
B−17・フライングフォートレス
「空の要塞」の異名を誇る、プロトン王国の主力爆撃機である
本来は対艦戦闘に重点を置いて開発された機体であるが、その航続力から長距離爆撃に多く使われるようになった
管制官(通信)「第805航空隊、離陸を許可する」
隊長「了解!」
滑走路を加速し、飛び立っていく飛行機
それらの爆弾槽には、無数の爆弾が搭載されていた・・・
ビットレイク攻撃計画、第一段階の始まりである
マッグユーノスを飛び立った部隊は、まっすぐにビットレイクを目指した
大編隊の遠方では、白い雲が流れている
これから起こりうる悲劇など想像できないほど、平和な光景であった
部隊がビットレイクに近づく
しかし、迎撃機の姿はない
隊長「迎撃機の姿は見えない。これよりビットレイクを攻撃する」
爆弾槽を開ける爆撃機
眼下に見えるのは、ビットレイクへ向かう道
街は再び、火の海になろうとしている

ビットレイクの街に、警報が響き渡る
思い起こすは、26年前の悲劇
すでに過去の出来事となりつつあるが、市街地には当時の遺構が所々に残っている
その一つが、壁面の半分が真っ黒になったパーツショップだ
強度が高かったおかげで焼け残ったが、壁面は爆発の影響で黒く染まった
その前を、一個小隊が前進する
チョロ〜ン将校「対空部隊は外郭部へ!連合軍機を一機たりとも入れるな!」
それとすれ違うように、退避していく住民たち
対空監視用のやぐらには、二両の機銃手の姿があった
ブレダ上等兵「敵影はどうだ?」
パナール上等兵「今のところは見えない」
望遠鏡で監視をするパナールが答える
ブレダ上等兵「外郭部の連中は少しずつ見えているらしい。そのうち見えてくるぞ」
パナール上等兵「見つけたら・・・もちろんあれだな」
ブレダ上等兵「こいつを、ぶっ放す!」
ブレダはなにやらバズーカ砲のような火器を持っている
上空に轟音が鳴り響く
パナール上等兵「来たか!?」
ブレダ上等兵「いや・・・あいつだ!」
二両が見上げる先には、巨大な機影があった

郊外に配置した聴音機と電探には、敵機の反応が近づいていることが示されている
対空陣地の配置を完了させたジョロンバ軍曹は、敵影が目視距離に入るのを待った
ジョロンバ軍曹「・・・早く出て来い、プロトン機!」
その時、上空を巨大な機影が通過した
分隊員A「あっ、あれは!?」
部下のM18が叫ぶ
ジョロンバ軍曹も一瞬驚いたが、機影を確認するとすぐに無線機を取った
ジョロンバ軍曹「こちらジョロンバ軍曹だ・・・総本部も重い腰を上げてくれたみたいだ!」

大編隊がビットレイクへと近づく
爆弾槽に搭載した爆弾さえ投下すれば、後は陸軍の仕事である
いつもどおりの単調な任務
左舷機関銃手のバスク上級伍長は、出番の無い状況に欠伸をしながらも窓の外を監視していた
副操縦士「バスク伍長、欠伸をしているようだが、敵機はいないな!?」
それを見ていたらしい副操縦士が言う
バスク上級伍長「はい!敵機は確認できません!」
少し慌てつつも答える
副操縦士「ビットレイクは奴らの重要拠点だ。きっと何かがやってくるはずだ!」
その直後、遠方から明らかに爆撃機のそれと異なる爆音が響き渡った
バスク上級伍長は周辺を確認する
すると、遠方に巨大な何かを視認できた
大型爆撃機のような機影
少なくとも、我が王国にあのような機影は無い
まさか、噂の空中要塞・・・?
バスク上級伍長「左舷前方、空中要塞接近!」
副操縦士「何っ!?」
その刹那、機影より猛烈な銃撃が放たれた
後方を飛んでいた一機が、銃撃をモロに受ける
爆発、四散する爆撃機
尾部機銃手「五番機被弾!」
続いてその隣を飛んでいた機体が炎上する
三番機機長(通信)「こちら三番機、被弾!爆弾を落として待避する!」
不滅の空中要塞が、いとも簡単に撃墜された瞬間であった
第十八話 続く
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デヴォリアに八地あり あとがき
 松井一真  - 2015/1/2 23:32 -
  
あとがき:直前まで書いていた「青き名将」がほとんど進まない結果、いつのまにかこっちが先にできていました。
5年のブランクの間にここもすっかりスパムに埋まってしまったので、状況打破のために早く完成させようと若干後半は急ぎました。どの道ダークスピリッツさんも戻ってくる見込み薄いですけど。
キュワールシリーズで宇宙モノを!と意気込んだものの、いろいろとグダグダになってしまった「宇宙戦艦紀伊」。
どうも自分とダークスピリッツさんの間で書きたいものの齟齬があるらしく、それがグダグダの原因になっていたと判断。とりあえず自分で書きたいものは「外伝」で書こうと思ったら、なぜかダークスピリッツさんもメカ設定などの項で「こういったエピソードを外伝でお願いします」とまったく違うものを要望してきたり。長距離爆撃行だけで短編小説書けって結構無理があるよ。

今回題材にした「地方艦隊」。もともとの「紀伊」では第七十二話で唐突に出てきたワードで、どういう設定にするかまるで考えていなかったのですが、せっかくの復帰作なので「地方艦隊」の解説みたいなエピソードにしようと。実は「紀伊」の休止以前は考えてなかったエピソードです。あとは中小艦艇の活躍を描きたかった。
高速艦による奇襲戦法で一席の被害もなく勝利。多分昔の自分では書かなかったエピソードです。

とりあえずは復帰第一作。「紀伊」の本編は一から書き直したいなぁ。
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Re:宇宙戦艦紀伊外伝 デヴォリアに八地あり
 松井一真  - 2015/1/2 23:21 -
  
後半。若干決着を急ぎ過ぎたかも。

宇宙戦艦紀伊 外伝 デヴォリアに八地あり
水雷長「見事なまでの長槍か・・・アレ、行きますか」
山辺少佐「囮魚雷発射準備!」
艦尾側にある第二発射機には、囮魚雷が装填されている
熱源を放ち、敵の魚雷を撹乱するようになっている
水雷士(通信)「発射準備よし!」
山辺少佐「敵の第二射が発射され次第、本艦隊の進行方向に向けて撃て!」
敵艦隊はこちらに向かい前進する
距離を詰めて第二射を撃つらしい
牽制のためか砲撃を再開する敵艦
光線のひとつが「龍田」を掠める
山辺少佐「被害報告!」
副長「左舷に被弾するも損傷軽微!」
敵艦はなおも前進してくる
山辺少佐「ひきつけろ!」
そしてついに敵艦から第二射が放たれた
山辺少佐「よし、囮魚雷発射!」
水雷長「てーっ!」
第二発射管から囮魚雷が放たれる
それはまっすぐ艦隊の前方に向かっていった
山辺少佐「よし、右舷機関停止、面舵一杯!」
魚雷と並行していた艦隊は、一旦敵艦隊に背を向ける
そのころ別働隊が敵艦隊と交戦を開始した
敵艦隊は突撃してくる駆逐艦に対し、一斉に魚雷を叩き込んだ
しかし我らが駆逐艦は各艦ごとにバラバラに急旋回し、魚雷を回避した
そして敵艦隊の中央に飛び込み、魚雷を撃ち込んだのである
爆発、炎上する敵軽巡洋艦
航海長「練度の低い相手で助かったな・・・」
別働隊と残存駆逐艦の間では主砲の撃ち合いが始まっており、物量で勝る我が方が優位に立っている
もっとも何隻かは砲撃を受け損傷を負っているようだった
加来大佐「被弾した艦は後退、応急修理に務めろ!」
まだ敵本隊の動きは見られない
あくまで様子見といったところだろうか
しかしこれで動かざるを得なくなるはずだ
山辺少佐「両舷前進強速!突っ込め!」
急速前進し、敵重巡洋艦に突っ込む
参謀「正気か!?」
加来大佐「相手に魚雷をかわされないようにするには、至近距離まで一気に突っ込むしかない!」
慌てふためいたように重巡の砲塔が旋回し、こちらに砲撃を仕掛ける
山辺少佐「両舷停止、取り舵一杯!」
副長「取り舵一杯!」
つんのめるように急旋回する「龍田」
山辺少佐「魚雷発射準備!目標右舷前方の敵重巡洋艦!」
加来大佐「『菖蒲』以下四艦は後続艦を攻撃!」
無傷の右舷を晒しながら、魚雷発射管を旋回する
それに呼応するように、後続の駆逐艦四隻が「龍田」をかわして敵艦隊に飛び込む
山辺少佐「魚雷発射!」
水雷長「てーっ!」
敵の砲撃が右舷に命中するが、雷撃に支障なし
四本の魚雷が敵重巡洋艦の横っ腹に叩き込まれる
続いて全速力で敵艦隊に突入した四隻の駆逐艦が、すれ違いざまに一斉に魚雷を叩き込んだ
山辺少佐「両舷前進強速!」
後続の敵軽巡洋艦も、魚雷を受け損傷している
続けざまに主砲の砲撃を受け、敵軽巡洋艦の砲塔が吹き飛ぶ
爆発、炎上する敵軽巡洋艦
想定外の動きに対処できなかったのか、敵駆逐艦もほとんど反撃できないまま砲撃を受け沈黙した
そのとき、残っていた敵重巡洋艦が反撃を開始した
急旋回で回避するが、間に合わない
右舷に被弾する「龍田」
副長「右舷大破!」
バランスを崩し、一瞬船体が傾く
山辺少佐「取り舵一杯!」
未だ損傷の少ない左舷を敵側に向け、少なくとも沈没を防ぐ
主砲塔が旋回し、敵艦を攻撃する
被弾するも、なおも前進する敵重巡洋艦
山辺少佐「衝撃に備えろ!」
そのとき、敵重巡洋艦が爆発した
反転した駆逐艦が、敵重巡洋艦を仕留めたようだ
山辺少佐「奴さん、手間を取らせてくれたな・・・」
加来大佐「敵の残りは・・・」
こちらは駆逐艦の半数近くが少なくない損傷を負っている
敵はほとんどが撃沈されたものの、なおも旗艦とおぼしき重巡洋艦は無傷である
このまま向かってくるならば我が方の全滅は免れない
しかし、敵艦隊は反転、離脱していく
電測員「敵艦隊、離脱して行きます」
加来大佐「どういうことだ?あと一息でひねり潰せるだろうに・・・」
そのとき、艦隊の直上を機影が飛び去っていった
友軍の航空隊のようであった
どうやら先ほどの連絡を受けて飛来したようだった
山辺少佐「友軍に助けられましたね・・・」
撤退する敵艦隊を、友軍の航空隊が追撃する
加来大佐「よし、ここは友軍に任せて離脱する!」
別働隊を合流させ、帰還の途につく第八地方艦隊
山辺少佐「・・・しっかし手ひどくやられましたね。しばらく哨戒への参加は無理そうですね」
加来大佐「デヴォリアにいるのは我々だけではない。そこまでの問題ではないよ。そんなことより・・・」
山辺少佐「・・・司令?」
加来大佐「敵の旗艦が戦艦だったら、どうしてた?」
先ほどの哨戒中に話した一件の延長である
想定以上の戦闘能力を持ちうる敵艦隊と交戦した場合は・・・
山辺少佐「・・・できるなら一撃離脱。それに限りますかね」
この戦闘で第八地方艦隊は巡洋艦一、駆逐艦六が大破するが、一隻の損失もなく敵艦隊を壊滅せしめた
この戦果が後に、キュワール連合軍内において“デヴォリアに八地あり”と讃えられるきっかけとなったのである
終わり
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宇宙戦艦紀伊外伝 デヴォリアに八地あり
 松井一真  - 2015/1/2 23:20 -
  
まさかの5年のブランク。

宇宙戦艦紀伊 外伝 デヴォリアに八地あり
ヴァイナー連邦軍の宇宙要塞“デヴォリア”
この星系の片隅で巻き起こった大戦に、さまざまな思惑が介入した結果誕生した要塞である
内惑星領域への勢力圏進出を図る外惑星連合と、それを阻止せんとする内惑星連合。このうち内惑星連合がキュワールを内惑星防衛の防波堤にせんとしたため、外惑星方面の防備強化が必要となった
従来キュワールは外惑星方面には哨戒基地のセイロンしか配置していなかったのである
直径5km前後の小惑星に建造された要塞都市には、強力な武装と艦隊が備わっている
同基地の設立に当たって、キュワール連合各国はデヴォリアに多数の艦隊を派遣。日戦軍団も艦隊を派遣することとなっていた
しかし、元来独立自治政府である日戦軍団は、八個艦隊・八個支援艦隊(機動艦隊・特務艦隊ほか)による「八八艦隊計画」の構想に無いデヴォリア方面艦隊を新規に編成することは困難であった
そこで、主力艦隊の一部戦力をデヴォリア方面に分派させることとなった
こうして誕生したのが“地方艦隊”である
このデヴォリアに位置する地方艦隊は六個あるが、その中で最大級の戦力がこの第八地方艦隊である
正式には「第二艦隊第八水雷戦隊」。再編直後の第二艦隊の戦力の一部を分派させたものであり、元々はパレンバンに駐留していた軽巡洋艦「龍田」を初めとする初代第二艦隊の戦力である
戦力は「龍田」のほかは駆逐艦一三隻。日戦軍団では珍しく駆逐艦が奇数となっているが、これはベータ沖の艦隊戦で壊滅した第二六駆逐隊の戦力を合流させているためである
司令官・加来進大佐は主要艦隊戦にこそ参加していないものの、大戦初期から対潜宙艦・哨戒艦隊戦闘に参加していたベテランである
参謀「司令、聞きました?我が軍のJT18船団が壊滅したという話」
加来大佐(車種:四式中戦車)「ああ、聞いたよ。ナントカドライブという機関で動く最新鋭戦艦にやられたらしいな」
山辺少佐(車種:八九式中戦車)「まあ、油断していたんでしょうね。直前に潜宙艦隊までやられたというのに、小規模な艦隊で護衛していたというのですから」
「龍田」艦長の山辺少佐は、戦隊編成以来の戦友である
どこか飄々としており、誰に対しても敬語で話している
話題になったのはデヴォリア設営前後、日戦軍団のJT−18船団が、突如敵の襲撃を受け全滅したという一件である
このとき連合軍はただの一隻も敵艦を沈めることが出来なかった
日戦軍団は船団司令官セラム大佐を後方部隊へと転属させ、Qシュタイン連邦も護衛艦隊司令官グローゼ中佐をパレンバン司令部付としている
山辺少佐「こちらは海防艦が十一隻に軽巡洋艦が一隻。相手は戦艦二隻を初めとした大艦隊。勝てる道理はありません」
直前には我らが日戦軍団の潜宙艦隊が、最新鋭潜宙艦に撃沈されている。このときもキュワール最強を誇った日戦軍団潜宙艦隊が、一切の抵抗もままならず撃滅されている
それでもJT−18船団の護衛は、海防艦(Qシュタイン連邦での呼称は“艦隊護衛艦”)十一隻と軽巡洋艦一隻という、旧来からの護衛体制であった
そして襲撃されたのは先に潜宙艦隊が壊滅したのと全く同じ宙域だったのである
参謀「しかし、突然の奇襲攻撃だったと聞いているが」
山辺少佐「最初に攻撃を加えたのは、例の潜水艦だったはずです。それにあの“特務”が問題なんですよ」
参謀「・・・“特務”?」
砲術長「ああ、第一特務艦隊のことか。確かあの時、晩餐会やってたって聞いたぞ」
当時、第一特務艦隊司令部においては旗艦「紀伊」で晩餐会が開かれていた
総司令官・松井元帥もそれに参加していたため報告が届くのが遅れていたというのだ
航海長「やれやれ、戦況は逼迫しているのに晩餐会で浮かれているとは。上層部はいいご身分ですね」
加来大佐「おいおい航海長、言葉が過ぎるぞ」
航海長の皮肉に、加来が釘を刺す
現在第八地方艦隊は、同じくデヴォリアに駐留する第一〇地方艦隊とともに哨戒任務に就いている
外惑星方面に睨みを利かせるには不足しているが、我々の相手になるのは基本的に敵の斥候だ
そのためこの戦隊は、主に機動性に優れた艦で構成されている
小柄だが機動性に優れる「龍田」はもちろん、連合軍ではトップクラスの最大速力を誇る峯風型駆逐艦が五隻、その改良型たる神風型駆逐艦が四隻所属している
第一〇地方艦隊も同様で、峯風型駆逐艦を中心とした第一〇駆逐隊、峯風型駆逐艦と呉竹型駆逐艦で構成された第三一駆逐隊、そして呉竹型駆逐艦で構成された第六五駆逐隊の三戦隊により構成されている
いずれも元来は第三艦隊の所属であり、船団護衛のためセイロンに寄航していたところを地方艦隊に編入された経緯がある
通信長「定時報告を行います。こちら第八地方艦隊旗艦『龍田』、現在デヴォリア宙域に異常なし」
ヴァイナー通信士(通信)「了解了解。そのまま哨戒活動を続行してください」
通信の相手はデヴォリアの司令部だ。大都市アハト・ラントシャフトを初め各地に大被害をもたらした帝国同盟軍の襲撃後も、なおも多数の艦隊を前線に展開するヴァイナー連邦軍。その指揮下に存在する
あの大陸三国は不思議な国で、いつもは三国揃って共同戦線を展開するというのに、今大戦に限ってクリーク王国が中立宣言を発したのだ
どうやら例のナントカドライブ戦艦の技術を研究しているらしいという噂もあるが・・・
そのとき、広域電探に謎の反応を探知した
電測員「電探に感あり!複数隻、移動速度から考えるに輸送船とは思えません!」
よりによって“異常無し”との通信後か
山辺少佐「参ったなぁ。通信やり直さなくちゃいけないなぁ」
加来大佐「全艦我に続け!所属不明艦に接近する!」
旋回する「龍田」。後続の駆逐艦も続いて旋回する
この間は敵艦だと思って近づいたら内惑星連合の艦艇だった
今度はどこの星の連中だろうか
広域電探の光点は徐々にこちらに近づいてくる
そして通常電探の範囲内にも掛かるようになってきた
電測員「数は一六・・・四隻は反応の大きさから巡洋艦と思われます」
山辺少佐「数が我々より多いですね。味方だと心強いのですが」
こちらは巡洋艦一と駆逐艦一三。うち四隻は火力に劣る呉竹型。本来なら対潜哨戒に使われるような艦だ
所属不明艦が仮に敵艦だとしたら厄介だ
前方に艦影が見えてきた
通信長「所属不明艦に発光信号。『こちら日戦軍団第八地方艦隊、軽巡洋艦『龍田』。貴艦隊の所属ならびに航行目的を問う。貴艦隊は我々キュワール連合宙域に侵入しつつある』」
艦橋の探照灯がリズミカルに点滅する
先頭を行く所属不明艦は重巡洋艦と思われる。大型の連装砲塔が確認できるだけでも四基。手ごわそうな相手だ
それに続く艦も同型と見られる
さらに後方を進むのはやや小柄で、主砲塔の基数も少ない。軽巡洋艦と見るのが妥当であろう
国籍表示などは見受けられない。どこと無く内惑星連合の艦艇にも似ている
すると、先頭の艦影が砲塔を旋回し始めた
山辺少佐「面舵一杯、両舷前進強速!」
急旋回する「龍田」
後続の駆逐艦もそれに続く
敵の先頭艦が発砲する
光弾はこちらの駆逐艦を掠めるように飛んでいった
加来大佐「全艦、状況報告!」
各艦から状況が報告される
先の攻撃での被害はないようだ
参謀「だまし討ちかよ・・・!」
砲術長「戦時とはいえ、なんて卑怯な!」
こちらの通信が終わらないうちから、敵は攻撃を仕掛けてきた
もちろんこちらからの呼びかけへの応答はない
加来大佐「・・・山辺、どうする?」
山辺少佐「決まってるじゃないですか・・・こんな卑怯な手を使う連中を・・・殲滅するまでです!」
その言葉を合図に、艦内にサイレンが鳴り響いた
副長「総員、戦闘配置に付け!」
急旋回する各艦
通信長「こちらは第八地方艦隊!デヴォリア宙域に国籍不明の艦船を発見!攻撃してきた!」
ヴァイナー通信士(通信)「了解!」
通信長はデヴォリア基地へ敵艦隊接近との報せを打つ
しかし援軍が来るかはわからないのが現状だ。我々だけで対処しなければならない
敵艦からの砲撃は止まない
敵は見たところ重巡・軽巡が各二、駆逐艦一二。重巡二と駆逐艦四を中心にした本隊のほか、軽巡一と駆逐艦四からなる二戦隊で構成されている
そのうち軽巡を中心にした二戦隊がこちらに向かってきた
遠距離攻撃に失敗した重巡は後方へ引き下がる
加来大佐「『菖蒲』、『杜若』、『躑躅』、『紫陽』は本艦に続け!敵を各個撃破する!」
四隻の呉竹型駆逐艦を従えて、「龍田」は敵戦隊へ向かう
加来大佐「『清風』以下八艦は分離、敵艦隊をひきつけろ!」
八隻の駆逐艦が隊列を離れていく
機動性に優れ、かつ強力な魚雷を搭載する峯風型・神風型八隻ならば、敵艦隊の砲撃は当たらない
初期の艦隊戦を多数潜り抜けてきた猛者・第八地方艦隊ならなおさらである
二つに分かれた艦隊を、敵艦隊は二分して追う
駆逐艦隊には軽巡一と駆逐艦六、本隊にはそれに重巡一を加えており、旗艦らしき重巡洋艦はそのまま待機している
あくまで慎重策か、はたまたこちらの戦力を甘く見積もったか
どちらにしてもこちらの読み通りだ
電測員「敵艦、魚雷発射!」
水雷長「遠いな・・・誘導魚雷か?」
先頭の敵重巡洋艦が魚雷を放つ
後続の艦艇もそれに続く
山辺少佐「左舷機関停止、取り舵一杯!」
急旋回し、敵魚雷を回避しようとする
しかし、魚雷は航跡を変えて向かってくる
山辺少佐「両舷前進強速!」
再び急発進し、重巡が放った第一射をかわす
第一射はこちらを追おうとするが、鋭く旋回した「龍田」に追いつくことはできなかった
後続の四艦も同様に回避したようだ
続く
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Re:「宇宙戦艦紀伊」設定資料 グリシネ軍参謀本部
 松井一真  - 2010/8/15 20:16 -
  
続きの陸海軍編。今後も色々と追記する可能性があります。

−海軍−
・大河内元帥(車種:特四式内火艇)
海軍長官。情報部から出世してきたグリシネ軍としては異例の将校で、グリシネ海軍においては「一〇年に一両の逸材」とも言われた優秀なチョロQ。
以前から陸軍作戦部で異彩を放っていた松井と対を成し、「海軍の切れ者」とも言われていた。
西郷中将更迭の折に海軍人事部長と海軍長官、そしてとある空軍参謀との癒着が噂され、独自に調査を行った末にその事実をあぶり出し、海軍人事部長と海軍長官を辞任に追い込んだ。
作戦部で閑職に回されていた西郷を海軍参謀本部に連れ戻し、自身は海軍長官に就任。「新たなる軍事体制」のために奮闘する。

・西郷中将(車種:四式中戦車)
海軍参謀。グリシネ北東部出身のエリート将校。
漁師の出身のため、海への憧れが強く海軍へ入隊。黒田、森、斉藤、西郷とは同郷の親友だったが、憧れの対象は違っていた。
参謀本部への転属後、空軍とのやり取りに何度も苦労しており、それゆえに経歴的には対照的な原田とは意外と仲が良い。
かつては小泉を副官に据え、当時のグリシネ軍としては革新的な作戦を立案していた。
しかし空軍を完全に補助戦力として取り扱った作戦が谷村らの怒りを買い、一度は表舞台から引き摺り下ろされる。
小泉は最前線に左遷され、自身は本土で閑職を転々としていたが、後の海軍長官となる大河内の尽力によって、再び参謀本部へと舞い戻ってきた。
その際に、自身と小泉を参謀本部から追いやった黒幕が、先代の海軍長官と空軍作戦部の森だったことが発覚。自らを裏切った森に失望するとともに、空軍を憎悪するようになる。
以後は会議の状況を冷静に見計らって発言することが多くなったが、部下の失敗を押し付けられると森を槍玉に挙げて批判する場面がある。

・高沢少将(車種:三式砲戦車)
海軍情報参謀。グリシネ海軍最強の組織である情報部を統括するチョロQ。
海外旅行が趣味だったため海外へ行くことも多く、情報戦を制するために自ら情報部への転属を志望した。
大河内の後輩で、かつては大河内の下で空軍の裏を調査していた。
会議には基本的に口を出さず、部下の湊川に指示を出すことが多い。

・稲沢中将(車種:四式中戦車)
海軍作戦参謀。西郷の先輩で、一度は海軍作戦参謀の座を西郷に譲ったが、西郷更迭の折に作戦参謀に舞い戻った。
穏健派で会議にはあまり口を出さないが、作戦関連に議題が移行すると職務を存分に発揮する。
西郷からは信頼されており、軍の内部改革にもやや慎重ながら取り組んでいる。

・江原少将(車種:特四式内火艇)
海軍軍務参謀。海軍の家系に生まれた生粋の海軍将校。
そのためか海軍愛が激しく、海軍を邪険に扱う空軍を極端に憎悪する。
空軍の弱みが明らかになると直ちに批判意見を述べるなど、会議ではそれが顕著である。

・浜野少将(車種:海軍十二糎自走砲)
海軍参謀。現場から参謀本部へ転属したたたき上げ。
極端な現場主義思想のためか、現場で役に立たない空軍を蔑視する傾向にある。
乱闘騒ぎの引き金になることも多い。

−陸軍・その他−
・モントレー元帥(車種:90式戦車)
陸軍長官。Qターレット北西部の町、ブラウメーア出身。
ブラウメーアは海岸部に位置するが、グンナ帝国との位置が近いため陸軍の軍備が多く、彼もまた陸軍に徴兵されることとなった。
Qターレット軍時代は精鋭部隊の総指揮官で、松井、原田と同等の実力を持つ名将だった。
グリシネに亡命後、徐々に地盤を固めて陸軍長官に就任する。第四次キュワール大戦開戦を前にして軍を脱退した松井にライバル意識を燃やし、軍強化政策を実行していった。地上決戦主義車だったが当時の軍務大臣の遠戚だったため陸軍長官職にとどまることができた。
故郷のブラウメーアは第七次キュワール大戦開戦の遠因になったヴォルスク放射能流出事故によって壊滅しており、事故以来「いたずらな軍拡は破滅をもたらす」と考え、暴走する空軍を止めようと尽力する。しかし海軍とは異なり地盤が弱いため、体制を変えることが出来ず苦悩している。

・原田大将(車種:90式戦車)
陸軍参謀。Qターレット北西部の出身。現在の日戦軍団総帥、松井元帥とは古くからの友。
Qターレット陸軍入隊後も変わらず、ともに一中隊を任される。
戦場では自分の部隊に損害が出ないことを重視するあまり、友軍の救援に行くこともせず、捕虜を独断で処刑するなど非情に徹していた。
このことが「自分を犠牲にしてでも仲間を救う」という思想を持つ松井との対立を呼び、グリシネ亡命後に距離を置くようになった。
グリシネ参謀本部に転属後、参謀間の意見を取り持つことが増える。早々と作戦参謀に昇進したために持論を展開して対立を呼ぶ松井とは対照的であった。
その過程で徐々に軍内部に潜む腐敗に気づき、軍の改革のため松井と協力していくようになる。

・木原元帥(車種:TK−X)
統合幕僚長。陸軍系の将校で、グリシネ北東部の出身。
海軍比率の高い北東部にあって、数少ない陸軍支持車だった。
実家が空軍基地の近くにあったため、常に航空機の爆音に悩まされてきた。
士官学校を出て参謀本部へというエリートコースをたどり、第三次キュワール大戦時の陸軍の大活躍を生み出した。
しかしその後参謀本部の空気が空軍優先志向へと変わって行き、彼が統合幕僚本部に移ったころには完全に空軍主権体制となっていた。
空軍基地のいたずらな増設が始まったのもこのころで、「空軍主権体制こそが国民を悩ませる爆音の元だ」と考え、参謀本部の改革に臨むこととなる。
叛乱やクーデターに関しては毅然とした態度で臨み、叛乱の鎮圧などにも全力を尽くす。
基本的に会議では発言しないが、収拾がつかなくなったときに場を静めるのが役目。

・その他参謀
他に陸軍には二〜三両ほどの参謀が確認されている。片方は現場主義、片方は日戦軍団のシンパらしいことが明らかになっている。

・グリシネ国王(車種:特二式内火艇(フロート無し))
国家元首。第三次キュワール大戦時には木原のサポートとともに、グリシネの復興に一役買った名君である。
しかしその木原が統合幕僚本部に移るや否や、陸軍の権威低下に伴い権威を失ってしまう。
「国王職などあって無いようなもの」と一部の政治家に揶揄されるほどで、民政にはかろうじて発言権が与えられているが、軍政に関しては完全に参謀本部任せとなってしまっている。
平和主義で、基本的に寛容。

−上層部以外の会議室参加メンバー−
・湊川少佐(車種:特五式内火艇)
海軍情報部主任。恩師である高沢の意向で情報部に入り、国外での情報収集を行う。
第五次キュワール大戦後は政情不安定のQQQQ方面に赴いたことがあり、航空主兵に走る同国の現状から、「空軍主兵に走る我が国も同じ鉄を踏むのでは」と警戒、内部調査を独断で行うようになる。
その結果、空軍内における汚職が明るみになり、大河内と共同で全てを公開して海軍幹部を更迭したという逸話がある。
本来会議では発言権は与えられていないが、第七十四話では例外的に与えられていた。

・本村中尉(車種:九三式装甲自動車)
海軍情報部所属。湊川の部下。
元々艦艇所属だったが、軍縮(という名の空軍軍拡)の折に情報部に転属した。
転属後は湊川の元で情報収集に従事。海軍幹部更迭のおりには自ら空軍施設内に侵入しての書類収集も行った。
現在は通信傍受などが主な仕事となっている。

−会議室参加メンバー以外の上層部関係車−
・松井元帥(車種:90式戦車)
日戦軍団総司令官兼第一特務艦隊司令。かつては陸軍作戦部に属していたが空軍参謀との軋轢から軍を脱退、日戦軍団を設立する。原田大将とは戦略面での不一致を除いては仲がよく、日戦軍団設立後もたびたび会っていた。
グリシネ陸海軍とは親交が深いが、空軍の現場筋とは親交が浅い。ただ、空軍学校爆破事件の負い目や、部下に空軍出身車がいる事情から、グリシネ空軍の現場筋と戦うことは望んでいないらしい。

・清水中佐(車種:四式中戦車)
日戦軍団第八列車隊隊長。Qターレット出身で、松井たちともどもグリシネへ亡命。
当初は陸軍航空隊(輸送機隊)配属だったが、陸軍航空隊の正式な空軍統合に伴い、情報部に転属。
西郷とは仲が良く、彼の作戦立案にも貢献していた。
日戦軍団設立の折に突然作戦への同行を表明。情報部を抜けて日戦軍団陸軍へと移った。

・小泉少佐(車種:四式中戦車)
駆逐艦「ライズナ」艦長。元は西郷の副官で、士官学校時代の親友。
空に憧れるかつての仲間たちを見つつも、考えの異なる西郷を認めていた。
西郷ともども作戦部に移籍。各方面において海軍の戦果に貢献した。
しかし、ある作戦を立案した際にないがしろにされた空軍の怒りを買い更迭された。その黒幕は当時の海軍長官と、空軍参謀本部にいた森だった。
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「宇宙戦艦紀伊」設定資料 グリシネ軍参謀本部
 松井一真  - 2010/8/15 20:16 -
  
書きかけで放置していたものを完成。

・グリシネ国について
あまり設定していなかったにも関わらずストーリー上の主要国家の仲間入りを果たしてしまった、グリシネ国について説明。

グリシネ国は、Qシュタイン大陸の北西部に浮かぶ島国。Qシュタイン大陸とは海底トンネル、南東に浮かぶサウストルック領マジノライン島とは長大な鉄橋で結ばれている。
面積はニビリアよりやや広い程度。
元来自然豊かな海洋立国だったが、他国との交易のために航空技術が異様に発展、各都市に小規模な飛行場が必ず存在するほどの航空国家となった。
それゆえに空軍の発言力は高く、軍の主戦力となっていた。
陸上の交通機関は、航空機の補助的な役割しか与えられていないが、Qシュタイン大陸とほぼ同じ程度の物を保有している。
陸軍はニビリア共和国陸軍と類似した体系を持ち、小規模な分隊を用いてのゲリラ作戦を得意とする。
一方、島国であるにも関わらず海軍はそれ程発展しておらず、強力な超弩級戦艦を保有していながらも上手く扱えない状況が長らく続いていた。
しかし、第二次キュワール大戦時にQターレットから多数の陸海軍幕僚が亡命、これにより陸海軍の整備が瞬く間に進んでいった。
このQターレット出身の幕僚の多くはグリシネ系であり、軍部に溶け込むのも早かった。
Qトルック紛争の折、レラッフティ曹長指揮する第一派遣分隊の活躍は有名だが、逆にこの部隊以外の陸軍はそれ程活躍していないこととなっている。

参考資料:Qトルック紛争時の第一派遣分隊の戦力
特二式内火艇十二両
九七式中戦車九両
74式戦車六両
61式戦車四両
90式戦車一両(レラッフティ曹長)

Qトルック紛争終結後は、ニビリア同様プロトンと友好関係を築く小規模国家となっていたが、第三次キュワール大戦が全体的な収束を見せた直後に、突然堕落を始める。
時の軍務大臣が極端な空軍優遇政策を打ち出したためだ。
一時は空軍主体による一大防衛網が築かれた物の、続いて就任した空軍長官が空軍絶対主義車であったために、軍部は完全に空軍絶対主義へと変革していった。
そんな中、Qシュタイン帝国で「ドロワル事件」が起こってしばらく後、第二の転機が訪れる。
陸軍作戦部に所属していた松井元帥が、海軍の三個艦隊を乗っ取り逃亡。Qシュタイン帝国で「日本戦車軍団」という独立民兵組織を創設する事件が発生した。
後に「日戦軍団事件」と呼ばれるこの事件は、キュワールに衝撃を与えた。
それからしばらく後に起こった軍事クーデターにより、Qシュタイン帝国は連合国の仲間入りを果たし、日戦軍団もそれに続いた。グリシネ軍との仲はそれ程悪くなかった。
空軍絶対主義にありながらも、その空軍の堕落はまだ始まったばかりだったからだ。
本格的に対立が始まるのは、第六次キュワール大戦直前のことだった。
空軍過激派のある将校の陰謀により、空軍学校の視察に来ていた松井元帥を狙った爆破テロ事件が発生。空軍学校は全焼、多数のチョロQが死傷するという大惨事となった。
空軍の陰謀である旨は如何なる報道機関も公表しなかったが、日戦軍団側は大方、状況を掴んでいた。
第七次キュワール大戦時、空軍の幕僚と対立した海軍幕僚が前線送りにされるなどの事件もあり、空軍と陸海軍の対立が激しくなる。
それから膠着状態が続き、現在に至る。

「紀伊」で登場した幕僚達についていくつか詳細な設定を紹介する。

−空軍−
・黒田中将(車種:五式中戦車)
空軍参謀長。士官学校第二十五期のエリート将校。
幼少期から時折空を飛んでいく航空機に憧れ、空軍に入隊。しかしそれが高じてか空軍至上主義に走り、保守派の古参将校に媚を売るようになる。
自分なりの信念を持って行動しているものの、極端に利己的であるが故に革新派参謀とは折り合いが悪い。
その信念も「戦闘機・ミサイル万能論」に基づくものであり、機銃を「弾切れのときの護身用」程度にしか見ていない。
北東部の出身で、森、西郷、斎藤、小泉とは同郷の親友だったが、今では軍に対する思いから対立も見られる。
フライトシューティングゲームが得意。ただ実際の飛行機の操縦が得意かは定かではなく、肝心のフライトシューティングでも松井元帥に「機銃で」撃墜されている。

・森中将(車種:四式中戦車)
空軍参謀。かつての西郷の親友だが、士官学校航空科への転属後は会話が少なくなり、空軍保守派に転じた黒田の影響を受けて暴走、利権主義に走っている。
黒田同様エリート街道を一直線に突き進んできたため、失敗を恐れてほとんど口を出せないでいる。
黒田とは異なり、明確な理想を持たずに突き進んできたため、空軍至上主義思想にはやや迷っている。
そのことを西郷から批判されているが、それに対し「俺はチョロQであることを辞めた」と返している。

・谷村中将(車種:一式中戦車)
空軍参謀。黒田より三期上の先輩。
空軍の影響が最も強い南西部の出身。
優秀な後輩である黒田を立てて参謀長の座を明渡したが、今なお次期空軍長官の有力候補と呼ばれている。実力は確かで、空軍部内では信頼されている。
黒田同様、栄光ある空軍に憧れて空軍に入隊したが、それゆえに自国空軍を極端に至上視する「空軍至上主義」に染まり、今となっては保守派参謀の筆頭となっている。
理想は黒田よりエスカレートし、自分の理想に反する物は徹底的に軍部から追い出そうとする傾向にあり、松井元帥の更迭、空軍士官学校爆破などの黒幕とも言われている。

・藤沢中将(車種:九五式重戦車)
空軍参謀。数少ない現場出身の実力派。そのため航空機の操縦の腕前にも優れる。
しかし自身の所属していた、比較的実力の高いいわば「黄金時代」の空軍こそが空軍の実力であると信じて疑わないため、どちらかというと保守派のポストに収まっている。
谷村は現場時代の上官だった。
「○○ではないか!」が口癖。

・村瀬中将(車種:九二式重装甲車)
空軍参謀。黒田の一期上で、黒田のフライトシューティング仲間。
あまり理想を持たないまま参謀本部に上り詰めたため、とりあえず先輩たちの「空気を読む」ことを優先するあまり、谷村たちの追従に走っている。
森と少し違うところは、彼はとりわけ黒田を信頼しているというわけではないというところ。

・斎藤技術中将(車種:八九式中戦車)
空軍技術参謀。黒田の親友で、黒田の推薦で空軍技術本部に入った。
かつての飛行試験の失敗のトラウマか、保守的な設計思想を維持する一方、他国が成功した技術力を横取りすることも多い。
数多くの空軍宇宙艦艇の設計を担当しているが、よく言えば堅実的、悪く言えば器用貧乏な艦ばかりができている。

・金居少将(車種:四式自走迫撃砲)
空軍情報参謀。国軍の強さは情報にあり、という思想を持ち、空軍情報本部に進む。
職務熱心な性格で、自分の指揮する情報本部さえあれば空軍は無敵であると信じている。
しかし空軍情報本部は見掛け倒しな一面もあり、それが明るみに出れば根底から崩れ落ちかねない将校でもある。


陸海軍編に続きます。
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新・チョロQ大戦争派生作品「栄光の黒旗(仮題)」 プロローグ ...
 松井一真  - 2010/7/20 23:43 -
  
あとがき:毎年なぜかこの日に鉄道ネタを入れようとしているものの、今年はまさかの鉄道ネタなし。というのも、当初予定していた作品がまったく進まなかったからです。
今回も前半部だけ書き終えていたものを投稿し、即座に後半を書いただけだったり。
とりあえず、この作品の主人公は「紀伊」で活躍しているホーポス中佐。彼が将校に任官した直後からということになります。
何かと不安の多い最新作ですが、書くことの多いQシュタイン。色々と頑張っていきたいです。
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Re:新・チョロQ大戦争派生作品「栄光の黒旗(仮題)」 プロローグ
 松井一真  - 2010/7/20 23:36 -
  
後半です。

プロローグ 戦いへの系譜
没落の一途をたどっていたQグリーン帝国は、北方の国々との同盟により復活を遂げた
いまや二〇年前の大戦直前までの版図を取り戻した帝国にとっても、衝撃の事態であった
プロトン王国の同盟国、レイオガル王国の諜報部が独自に調査を行ったところ、北方の国家に大きな動きが見られるという
北方地域最大の勢力を誇るカルオス帝国と、レイオガル王国との情勢が悪化しているというのだ
元来より対立の絶えない二国は、紛争も頻発していた
プロトン王国がこの紛争の解決のため派遣されることも多々あった
レイオガル王国側からの判断により、今回は即座に派遣という事態には至らなかった
しかし、二国間での紛争は避けられない事態となった
その要因は、Qグリーン帝国の存在である
レイオガルをはさんで東側に位置するQグリーンが、カルオスと同盟を結んだ
これにより、レイオガルは孤立する事となった
カルオスが攻め込まないとしても、Qグリーンが攻め込んでくる可能性は十分ありうるのだ
Qグリーンの元首が交代してからというもの、急速に軍備が拡張されているからだ
前々大戦での停戦、前大戦での戦勝を経て、見事にプロトン側の仲間入りを果たした帝国は、もちろん彼らの敵となる
攻撃を受ける可能性はもはや100パーセントであろう
軍部は検討の末、北方方面の軍備強化を決定した
第二次キュワール大戦で苦杯をなめさせられた彼らも、北方に派遣されることとなった

ダンケロリ地方。かつてQタンク王国とQシュタイン帝国の激戦が行われた場所である
基地の通信室には、警戒部隊の指揮官と、将校のティーガーII
そして、本部からの指示を聞く通信士の姿があった
Qシュタイン将校「・・・連絡はまだか?」
ティーガーIIが聞く
Qシュタイン通信兵「まだ入っておりません・・・あっ、来ました!回線開きます!」
そう言って、通信スイッチを押す通信兵
司令部から入った通信は、予想通りのものであった
「Qグリーン帝国、カルオス帝国、ウルタンク帝国の三カ国が、本国を含めた連合国に戦線を布告した」
Qシュタイン将校「・・・始まったか」
ティーガーII―――ホーポス少尉は、そう呟いた
これから起こりうる戦いは、キュワール全土を巻き込んだ、壮絶な戦いとなるだろう
プロローグ 終わり
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新・チョロQ大戦争派生作品「栄光の黒旗(仮題)」 プロローグ
 松井一真  - 2010/7/20 23:31 -
  
とりあえず新作が完成。プロローグ前半です。

新・チョロQ大戦争派生作品 栄光の黒旗
プロローグ 戦いへの系譜
CQ暦212年5月、カクトピスク荒野
ユンカースの轟音がこだまする
辺り一帯で弾丸が飛び交う
プロトン将校「この荒野を突破すればQシュタインは目前だ!なんとしても突破するぞ!」
クルセイダーMkIIIが激走する
砲台が果敢に奮闘するが、猛砲撃の前に壊滅する
ユンカースが爆弾を投下する
クルセイダーMkIIIが数両、吹き飛ばされる
その隙に砲撃する砲台
炎上するシェリダン
その陰からM24が突撃する
砲台の陰からティーガーIIが現れる
Qシュタイン将校「・・・ここは、譲らない!」
ティーガーIIが発砲する
M24が吹き飛ばされる
遠方で爆発音が響く
別の砲台がやられたようだ
見ると、携帯噴進砲を持った特殊兵の姿があった
Qシュタイン将校「小癪な・・・!」
Fl282が編隊を成して飛行する
武装を施した最新のC型だ
機銃を掃射するFl282
爆散するM3軽戦車
M42が対空射撃を行う
一機が撃墜されるが、もう一機のFl282が対地爆弾を投下した
直撃し、粉砕されるM42
Fl282が旋回し、上昇する
一進一退の攻防が続く
この戦いが、ある将校の初陣となった
一昨年の秋から始まった帝国の西部侵攻は、順調かと思われた
しかし昨年春、突如として侵攻が止まった
敵側の隠し玉が明らかになったのだ
それからというもの、帝国は撤退戦を強いられた
確実に版図を縮小する帝国
州都直前のカクトピスクまで追い込まれ、いまやほぼ全ての戦力を総動員しての防衛戦を展開することを余儀なくされたのだ
防衛網の指揮を執るセブルーガ中尉は、この戦いが初陣となっていた
セブルーガ中尉(車種:センチュリオンMkIII)「絶対にこの場所を死守する!持ち場を離れるなぁ!」
実戦経験もほとんど無いまま、初の部隊指揮を執ることとなったため、その指揮も散々なものであった
完全に硬直した命令系統。敵は集中して戦力を投入しているにもかかわらず、敵のいない地域から援軍をよこすこともままならない
指揮官の独断でかろうじて増援部隊がたどり着いたが、戦線の維持は困難となっていた
そのときであった。背後のレイザーシュタット地域から別働隊が上陸してきたのは
レジスタンス部隊を引き連れた敵別働隊は、ナルマルガム中将が指揮を執る帝国の本隊と戦った
こちらの撃滅は成功したものの、本隊の損害も大きかった
援軍は絶望的となった
そして、最後の防衛線も、敵の総指揮官によって突破された
ティーガーIIが同僚とともに撤退する
辺り一帯にQタンクの残骸が散乱している
激戦とはこのことを言うのか
凄惨な光景であった
そして、ティーガーIIもまた、この戦いが初陣だったのだ・・・

それから時は流れた
第三次キュワール大戦終戦直後のクーデターによって、皇帝による独裁政権は崩壊
先代総統の家系を次ぐ新たな総統による民主政権が樹立し、帝国は一応の解放を見た
しかし、その直後に新たな大戦が起こった
かつての同盟国、Qグリーンによる南部侵攻
そして、帝国本土での決戦
激戦の只中で疲弊した帝国は、ある国から亡命した民兵に希望を託した
かろうじて本土を守り抜くことに成功し、帝国の解放の象徴となった
この大戦においてQグリーンは敗戦、帝国とは一転して没落の一途をたどる・・・
この物語は、その2年後から始まる
プロローグ 続く
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特報!
 松井一真  - 2010/7/19 23:44 -
  
> > 現在第七十六話について色々と考えていますが、自分の描写不足・設定不足が明らかになり、このままグリシネに侵攻するとなんか取り返しのつかない事になりそうなのでグリシネ侵攻は取りやめようと思っています。
>
> 今グリシネ国の詳細設定とかを書いてます。元々あまり目立つ予定の国じゃなかったので色々と考えて書いてます。
> このスレッドのレスに載せる予定です。
>
> > 具体的には・・・
> >
> > 「紀伊」により少なくない損害を被ったラファリエスの意見によりQW星を侵攻するよりもQW星の宇宙に於ける残存戦力を殲滅してからQW星を侵攻すべきだと主張。大日本帝国はこれに抗議したが、グンナ同盟側もラファリエスの意見に賛成し大日本帝国も渋々了承・・・・みたいな感じで。
> >
> >
> > どうでしょうか?
>
> ちょっと都合の良いグリシネ攻撃と比べればいい筋書きですね。なんたってこれからタイトルに名を冠すにも関わらずまともな活躍があまり無かった「紀伊」の大活躍が期待できそうですからな。
> とりあえず今後の展開で必要そうな話を。
>
> ・大日本帝国の現場側
> 初登場直後のルナツー戦ぐらいしかなかったので、地位が確定した現時点で欲しいところ。
>
> ・ラファリエス艦隊
> 「紀伊」に対する復讐に燃えるラファリエスの提督の話とか。「紀伊」と交戦して壊滅した唯一の部隊であるパレンバン南方艦隊の話ですかね。
>
> ・最近出番の無い第一独立艦隊
> せっかく内惑星連合所属艦隊最大勢力となったのに、全く活躍がない。今後ラファリエスの総攻撃に対していかなる活躍を見せるか期待したい。
>
> ・何よりも「紀伊」の活躍
> タイトルに出ているのにまだたいした活躍がないのもどうかと。実力は高いのに戦況をひっくり返すに至らないあたりがある意味リアルというか。


グリシネ国設定資料集は未完成ですが、書こうとして停滞していた新作のプロローグが完成直前となっております。
「新・チョロQ大戦争」スピンオフ企画第二段、Qシュタイン帝国・日戦軍団側メインの作品を執筆しております。
一応主人公は「紀伊」でも少しだけ活躍しているホーポス中佐を予定しています。
今回も色をタイトルの中に入れようと思っています。Qシュタインの国旗の色「黒」を予定しています。

その他、「新・チョロQ大戦争」スピンオフ企画として、以下の国を題材にする予定です。
Qタンク王国:大戦を通してあまり描かれなかったため、ほぼオリジナル作品。ということで結構後になると思います。
ニビリア共和国:陸戦メインの「青き名将」に対し、主に海戦を主体に描く予定です。
QQQQ:一応、次の大戦がQQQQの内紛から始まった設定なので。多分初期なんか色々と違う展開になってると思う。
グリーンアイランド:SCQ中期ごろからのスタートになりますが、新興国のもろもろを描ければと思います。

短編としてさまざまな国々を描きたいところです。
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Re:お久しぶりです。
 松井一真  - 2010/7/14 20:27 -
  
> お久しぶりです、ダークスピリッツです。
> この名前から蒼月颯に改名して1年程が経過していますが、便宜上こちらではこれで。
>
> とりあえず生存報告みたいな物ですが、自分のサイト運営の方が忙しくて中々こちらの方に手が付きません……
>
> ではまた来る日までノシ

高架化工事中の京急蒲田駅に行って写真を撮ってきたり、大好きな2100系の加速音を生で聞いたりと色々と面白いことがあった一方で、就職活動に関しては壊滅状態。色々と間違えたかと思う今日この頃だったりします。
こちらも休筆状態にありましたが、「青き名将」第十八話のプロットが完成したので書き進めております。
他の作品に関してはほとんど進んでおらず、「紀伊」外伝は冒頭数行のみという有様ですが、少しずつ進めております。ご期待ください。こちらも「紀伊」の第七十六話プロットに期待しております。

・・・ということで、添付画像は横浜遠征のときに撮影した京急蒲田駅地上ホーム(使用停止3日前)。

添付画像
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[添付] 〜添付ファイル〜
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お久しぶりです。
 ダークスピリッツ  - 2010/7/14 17:59 -
  
お久しぶりです、ダークスピリッツです。
この名前から蒼月颯に改名して1年程が経過していますが、便宜上こちらではこれで。

とりあえず生存報告みたいな物ですが、自分のサイト運営の方が忙しくて中々こちらの方に手が付きません……

ではまた来る日までノシ
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Re:青き名将 第十七話
 松井一真  - 2010/4/13 23:42 -
  
あとがき:さて、久々すぎてのっけでHNを間違える凡ミスを犯した第十七話。今回から「(仮題)」が取れました。SCQリメイク作品はいずれもタイトルに色をつけようかと思ってます。
ロドスシルト少佐最大のライバル、ドグニア中佐の登場。こうやって見ると、チョロ〜ン側のQタンクは相当優遇されてるなぁと思う。
そのしわ寄せを食ったのが間違いなくリピーレド元帥。あんなに悪役っぽくするつもりはなかったんだけどなぁ。救いようのないほどのQタンクになってる。「作戦を優先するあまりに周りが見えない指揮官」のつもりだったんだけど。

冒頭の回想シーン。「廃墟と化した街でほんのわずかな戦力で挑む」という、キョウビーチャでやりたかったことをやってみました。あまり戦ってないですが。
このときにものすごく残酷なことを呟いているQタンクが、もちろんのことリピーレド元帥。やっぱり彼、本作だと悪役だなぁ。マウス好きなんだけど、Qシュタイン陸軍幹部のほうをメインに書いてたし。Qシュタインの総統→大統領T−35も、副官のマウスも、長らくシリーズやってる割には名前が出ていないという珍しいチョロQだったりします。Qタンク系の国家は現場を重視して描いているから仕方ないか。

今回はSCQの第五十八話〜第五十九話の時系列の話。ゲープコッチ上空の空中戦と、たった一両、地上で戦うフォレスト。それにしても、秘書ってここまで保護車キャラだったっけなぁ。このシリーズのギャグメーカーであるフォレストですが、シリーズでかなり誇張入ってますし。辛党キャラなんて完全にオリジナルだよ。

ビットレイク。元の作品でもあっさり滅ぶためか細かい描写が無いんですが、とりあえず漁業が盛んな街で近くの(とはいえ結構距離があるようですが)キョウビーチャ同様和の雰囲気がある街、といった感じで描きました。
ジョロンバ軍曹は結構陽気なキャラで書いてます。キュワールシリーズの「猛将」キャラは毎回癖のある感じで書いてたりします。同じ装甲車でも出番の少ないトレニオス少尉(彼は「技術将校」なので仕方ありませんが)とは大違い。
チョロ〜ンの珍兵器。これもフィズィキさんの元の作品にあった「パンサーホース」そのものです。四脚(?)のホバータンクで、トップヘビーだったのが災いしてあっけなく横転してしまう、というもの。横転した後わざわざチェーンソーで弱点を切断してまでフルボッコするプロトン軍はまさに鬼畜。

ドドビガ大尉。実はフィズィキさんの作品ではドドビガ大尉もグレートブラスター持ちなんです。すっかり忘れてた。今回はその設定を生かしてみました。
リピーレド元帥の恨み節。リピーレドは「元帥」とあって、Qシュタイン大陸内で大規模な戦いがあった第一次キュワール大戦時にはすでにチョロ〜ン方面に従軍していました。当時の所属はQタンク陸軍・・・すなわち、キュワールシリーズでは「第一次キュワール大戦でQタンク王国軍が劣勢に陥ったのは戦力を分散させすぎたから」だったり。そうでもしないとあそこまで友軍の数が少ない説明が付かなかった。

さて、総攻撃が延期になってしまいましたが、次回第十八話から本格攻勢。しばらく休筆状態になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
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Re:青き名将 第十七話
 松井一真  - 2010/4/13 23:40 -
  
幕僚たち。グリシネの幕僚と比べると、扱いはまだまだ良くないところ。

第十七話 ビットレイク
司令部に集う、数両の戦車
その中心のレオパルト2A5は、どこと無く浮かない表情だった
チョロ〜ン陸軍、第三〇一中隊指揮官、ドグニア中佐。二〇年前、同じビットレイクの防衛についていたQタンク
有能な指揮官である一方、射撃の名手でもあり、狙った獲物は逃さない
だが、二〇年前、彼は守るべきものを守ることができなかった
「敵性国民は、徹底的に排除する必要がある」。あの時戦った敵将の言葉は、今でも覚えている
終戦後、彼は私的にその敵将について調べた
プロトン王国陸軍の主力部隊指揮官、リピーレド元帥
陸軍創設当初からのベテラン幹部で、陸戦においては向かうところ敵なしの猛将
だが自国の戦力を過信し、強大な戦力を大量投入する物量戦を好む傾向にある
少数精鋭主義のビスカイト中将とは何度も対立していたらしい。そしてそのビスカイト中将の腹心の部下、ロドスシルト少佐があの戦いに参加していたというが・・・
一体なぜ、ロドスシルト少佐はあの作戦を止めなかったのだろうか
ドグニア中佐「・・・勇猛果敢だが、敵の戦力を見極めて効率的な作戦を行うというロドスシルトと、物量と火力の力技で攻めるリピーレド。なぜあの二両が手を組んだ・・・?」
そして数週間前のキョウビーチャ攻略戦でも、ロドスシルト少佐とリピーレド元帥が共同戦線を張ったという
水と油の二両が、なぜ手を組んだのだろうか
ドグニア中佐「・・・我が軍にはあのときとは比べ物にならないほどの戦力がある。力技のリピーレドだけが攻めてくるのなら、防波堤となれるだろう。しかし・・・」
キョウビーチャの戦訓で明らかだ。ロドスシルト少佐は要塞の隙を突いて攻め込んできた
それにより部隊が総崩れとなり、リピーレド元帥の本隊の侵入を許す結果となった
プロトン国民による義勇兵集団、プロトンレジスタンスも無視できない
正規軍に属さないゆえ、命令系統に縛られない遊軍として存在し、予想外な方角から攻めて来る
その攻略の完璧さは、彼らさえもロドスシルト少佐の指揮下にあるとさえ言われているほどだ
ドグニア中佐「・・・分からない。彼らの本質が分からない」
プロトン王国軍の特徴といえば、何よりもその統制力の高さである
第二次キュワール大戦時、ほんの四個師団と一個中隊規模の戦力でQシュタインの大部隊を相手に渡り合った実績がある
ロドスシルト少佐のように、小規模な戦力を巧みに扱う指揮官が多かった証拠であろう
このとき、リピーレド元帥は実質的に裏方に回っていたことからも分かる
リピーレド元帥が表舞台に現れたのは、軍備が充実してきたチョロ〜ン紛争時
降伏した帝政Qシュタインからの技術供与もあって、Qタンク搭載装備が格段にパワーアップした時期だ
それまで巧みな戦略で敵国を追い詰めたプロトンが、突然力技にシフトした
この街を一度滅ぼした高性能榴弾搭載巡航ミサイルは、この時期に多用されたものだ
ビットレイク以外にも、この兵器の被害を受けた街はたくさんある
なぜプロトンの上層部は、リピーレド元帥をチョロ〜ン攻略部隊の指揮官に任命したのだろう
次期陸軍長官候補といわれたロッキード元帥なら、まだ分かるのだが
ドグニア中佐「・・・あの国には、底知れない何かが潜んでいるのかもしれないな・・・」
そして、二〇年前の自分はその「底知れない何か」に敗れたのだ
しかし、今は違う
ドグニア中佐が指揮する本隊のほかに、ドタグラ大佐率いるキョウビーチャ要塞残存部隊を始めとする多数の戦力がある
それだけではない。海軍の開発した秘密兵器が、この街に存在するのだ
ドドビガ大尉「司令官。今回の防備は完璧です。プロトン軍の攻撃から、この街を守りぬくことができるはずです!」
今回の防備展開には、ドドビガ大尉が貢献した
彼は、二〇年前の戦争において、プロトン軍の有するそれには劣るものの、高火力榴弾をプロトン軍に向けて放っている
その際の経験から、高性能榴弾を「使う側」にとって非常に厄介になる配置を考案し、今回の防御網構築に役立てたのだ
今度は、絶対に守らなければならない
この街を、そして我が祖国を

作戦開始の日は、刻々と迫っていた
ロドスシルト少佐は、何度も攻撃中止を具申した
しかし、それは認められなかった
ロッキード元帥に直談判しても、結果は同じだった
上の連中は、あの街に恨みでもあるのだろうか
QQQQが邪魔なら、彼らの行動を妨害することもやむなしなのではないだろうか
ロドスシルト少佐「・・・QQQQさえいなければ・・・」
そのとき、傍らにいたコムニエム軍曹はこう言った
コムニエム軍曹「・・・中将。私に、あの旗を撃たせてください・・・!」
彼の目線の先にあったのは、QQQQの旗だった
ビスカイト中将「・・・残念だが、許可できない」
ビスカイト中将から帰ってきたのは、その言葉だった
コムニエム軍曹「・・・なぜですか!相手国の住民を虐殺するような連中を、野放しにするんですか!?」
ビスカイト中将「落ち着け、軍曹!QQQQはわが国の同盟国だ。うかつに攻撃はできない!」
コムニエム軍曹「あんな連中が律儀に同盟を守ると思っているんですか!?」
ロドスシルト少佐「コムニエム軍曹!」
ビスカイト中将に詰め寄ったコムニエム軍曹を、ロドスシルト少佐が制止する
無言のにらみ合いがしばらく続いた後、コムニエム軍曹は引き下がった
ロドスシルト少佐「コムニエム軍曹。君の思いは良く分かる。できれば、私もあの旗を撃ちたい。だが、同盟国との同盟を断ち切って攻撃するというのは、政治的な問題だ。

そして我々の成すべき仕事は・・・軍事的な問題の対処だ」
コムニエム軍曹は、無言でその話を聞いていた
砲身が、わずかに垂れ下がるのが見えた
ロドスシルト少佐「・・・最善を尽くせ。多くのチョロQが生きることができるようにな」
コムニエム軍曹「・・・はっ、了解しました!」
少しだけためらった後、コムニエム軍曹は言った
このような一幕があった一方、攻撃を決定した幕僚たちは前向きだった
この攻撃を立案したのは、他でもないリピーレド元帥である
ミフェイドビッチ大佐「ビットレイクの防備はご覧の通り、恐ろしいほど強固なものになっております。正面から攻めては、勝ち目はありません」
リピーレド元帥「分かっている。だからこそ、陸海空から一斉に、この街を叩く。この街こそが、チョロ〜ン軍の要なのだ」
「この街こそがチョロ〜ン軍の要」。リピーレド元帥が大都市攻略の折に必ず口にする言葉だ
実際、チョロ〜ン軍の本土防衛は複数の大都市によってなせられるものである
スピシュード中佐「冷静に、敵の防御を見極める必要があります。この付近には航空基地も確認できますし、軍港も存在します。海空にも援軍を呼ばれる危険性は、きわめて大です」
リピーレド元帥「何のための装甲車かね?何のための高性能榴弾かね?」
その言葉を聴き、スピシュード中佐は戦慄した
まさか、あの兵器をまたしてもここで使うつもりか
スピシュード中佐「元帥、まさかまたあの兵器を・・・!?」
リピーレド元帥「キョウビーチャのときはビスカイト君の活躍で何とかなったが、今度とばかりはな」
スピシュード中佐「元帥、流石にそれは・・・!」
リピーレド元帥「何か問題でもあるのかね?」
スピシュード中佐「あの高性能榴弾は、非常に高コストで、かつ周辺地域の被害が甚大になります!後の苦労を考えれば、使わないに越したことはありません!」
その言葉に、リピーレド元帥は意外な言葉を返した
リピーレド元帥「コストがどうした。被害がどうした!あの街を占領するためには、手段を選んではいけないのだ!」
やはり彼は、チョロ〜ンに何か恨みのようなものを抱いているのかもしれない
確か元帥は、第一次キュワール大戦時のチョロ〜ン紛争にも従軍していたと聞くが、それにも関係があるのだろうか
大都市ビットレイクへの攻撃計画は、一両のQタンクの恨み節とともに、着々と進行しつつあった・・・
第十七話 終わり
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Re:青き名将 第十七話
 松井一真  - 2010/4/13 23:39 -
  
平和な街並み。多分次回の冒頭あたりにでももう少し描写すると思います。

第十七話 ビットレイク
ビットレイクの市街地では、黙祷する市民と兵士たちの姿があった
あの日から、どれほどの年が経っただろうか
あの紛争で、この街は一度滅んだ
無慈悲なる大国の攻撃により、市民のほとんどが死んだ
以来、あの戦いがあった日に、街にいるほとんどの市民が広場で黙祷するのだという
パナールとブレダの姿も、そこにあった
押し黙った群集たちの間には、どんよりとした空気が立ち込めていた
その式典が終わった後、二両は街中へと進んでみた
キョウビーチャのように木造家屋が立ち並ぶような光景ではないが、風情のある街並みである
パナール上等兵「・・・今度、奴らがこの街に攻め込んできたら、どうする?」
ブレダ上等兵「・・・勿論、殲滅する。一両たりとも残らず、な」
既に彼らにとって、プロトン王国軍は憎むべき悪であった
ブレダ上等兵「奴らは一度・・・この街を焼いた。その理由・・・知ってるだろ?」
パナール上等兵「ああ。囮作戦だ」
わが軍をおびき寄せるための、囮。そのために、この街は焼かれた
指揮官のドグニア中佐は、責任を取るべくこの街・・・の跡地で戦ったという
焼け野原と化した街に攻め込んだプロトン軍に対し、最後の一兵になるまで戦い抜き、彼自身も自決しようとした
しかし、それを止めたのは上の判断だった
「優秀な指揮官を失うのは惜しい」、ただそれだけだった
「守るべき市民と部下を死なせておいて、おめおめ生き残る術があるか」と反論したが、聞き入れてくれるはずも無かったという
パナール上等兵「上もずいぶん冷たいもんだよなぁ。応援の一つでも遣してくれれば・・・」
ジョロンバ軍曹「おいそこ!何辛気臭くなってんだ!いくら漁業の街っつってもお前らまで塩っぽくなる必要ねぇぞ!」
そういって会話に割り込んできたのは、第692分隊のジョロンバ軍曹だ
分隊が壊滅したため、パナールとブレダは現在彼らと行動している
ブレダ上等兵「ジョロンバ軍曹!?」
ジョロンバ軍曹「俺たちもここに呼ばれた。やっぱり上は分かってるなぁ。前の轍は踏まないつもりだ。どうせその話だろ?」
さらっと割り込んでおいて、どうやら話の内容を掴んでいたらしい
確かに、二両が話しているのは援軍の話だ
ジョロンバ軍曹「そもそも前の大戦はなぁ、戦力を分散させすぎたんだ。連中が大軍で攻めてくるってことが分かってるのに、小さな町にまで部隊を置いて。そんなんだから将校拉致られるんだよ。それでさぁ、その拉致された将校の話なんだが、聞いてみないか?」
パナール上等兵「いえ・・・遠慮しておきます」
パナールは話の内容を大体知っていた。とても恐ろしい話だった
あらゆる走行装置を引っぺがされて、ガラクタのように扱われた、というのが話の要点だ
そもそも力技で攻めるプロトンが、わざわざ将校を拉致して尋問するということ自体が怪しいのだ。ストレスがたまって八つ当たりがしたかったに違いない。相手が相手だけにどうも怪しいが
ジョロンバ軍曹「そうか。じゃあしょうがねぇや。俺の隊に置かれてた胡散臭い装脚戦車の話でもするか。あのトップヘビーの・・・なんて名前だったっけなぁ?」
そう言って、ジョロンバ軍曹は唸っている
ブレダ上等兵「・・・それって、『パンサーホース』じゃないですか?」
ジョロンバ軍曹「そう、それだ!その水道みたいな名前のやつ。その装脚戦車がよぉ、足つきの癖にホバーっちゅうめんどくせぇやつなんだよ。その癖に25cm砲なんて海軍の巡洋艦に乗っけるぐらいでかい砲台乗っけちまったから、坂道登ったら強風に煽られて横転してはい、おしまい。なんて失敗作だ」
パナール上等兵「あれってそんなに酷かったんですか!?」
パナールは驚愕した。確か資料では「壮烈無比な火力を有するチョロ〜ン陸軍の超兵器」みたいな煽り文句が書かれていたはずだが
ジョロンバ軍曹「ああ、酷い代物だ。現場で使った俺が言うんだから間違いない。あれが役立つのなんて、せいぜい砂漠の上か平べったい草原くらいだろ。キョウビーチャは入り組んでるから無理あったんだよ」
さらに倒されてからというもの、プロトン軍に分解されて回収されたというのだから、なんとも悲惨である
その後の紛争で投入された装脚兵器は、パンサーホースの部品を参考にしたものだと言われている
ジョロンバ軍曹「あれならQシュタインのペテロだかヘドロだか言うやつのほうが優秀だな。まったく横転しなかったらしいし」
ブレダ上等兵「・・・『ヘテロ』じゃないですか?」
ジョロンバ軍曹「いちいちうるさいな。別にいいじゃねぇか名前なんて。どっちにしてもなぁ、うちの軍の巨大兵器で成功したのは、あの空中戦艦ぐらいだってことだ」
やはり頼りになるのは、あの空中戦艦だけのようだ
空軍の開発した新兵器。本来の任務は爆撃機の護衛だったが、もっぱら地上掃射用に使われるようになった
現在も散発的に爆撃などに用いられており、プロトン軍にわずかながら打撃と与えているという
聞いた話では、空中戦艦を用いたプロトン本土空襲も計画しているらしい
実現すれば、プロトンに大打撃を与えられるはずだ
ジョロンバ軍曹「ここが正念場だ。なんとしてでも食い止めるぞ。その前に・・・腹が減っては戦はできぬだ。昼飯食いに行くぞ」
ブレダ上等兵「何かおいしい店でも知ってるんですか?」
ジョロンバ軍曹「当たり前だ。俺の隊の奴の知り合いが板前やってるんだ。今日はそこだ」
一度滅んだこの街で、彼らは誓った
二度と、この町を焼かせない、と
第十七話 続く
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Re:青き名将 第十七話
 松井一真  - 2010/4/13 23:38 -
  
久々すぎて現行HNのままだった・・・

第十七話 ビットレイク
その一方で、プロトン王国軍は首都を除いてはチョロ〜ン最大の都市、ビットレイクを攻撃する計画を立てていた
ビットレイク。キョウビーチャの北東60kmにある都市で、元々は平和な水産都市であった
20年前のあの悲劇までは
20年前、ビットレイクを襲ったのは、文字通り火の雨・・・いや、風だった
グレートブラスター。プロトン王国軍が開発した高性能榴弾で、半径200mを一瞬にして焼き尽くす
形状は大型のロケット弾とさほど変わらず、大型のロケットランチャーに搭載されて打ち出される
当時の指揮官、リピーレド元帥の命令を受け、第102中隊はビットレイクへ向かった
自分たちが持っているのが、恐ろしい大量破壊兵器であることを知らずに
単なる榴弾と思い込んでいた兵士達は、火焔に包まれるビットレイクを見て愕然とした
ただ一両その事実を知るのは、指揮官ロドスシルト少佐
本来なら、止めるべきだった
しかし、止めることは出来なかった
あの時は必死だったのだ。みんな勝ちに急ぎすぎていた
当時敵軍の指揮を執っていたのは、チョロ〜ン陸軍屈指の名将、ドグニア中佐
自身に勝るとも劣らぬ技量を持つ彼を前にすれば、苦戦を強いられることは分かっていた
怖かったのだ。正面から挑むことが
それが、あの大量虐殺を引き起こしてしまった・・・
ビットレイクに降り注いだ高性能榴弾は、瞬く間に町を焼き尽くした
家並み、港、停泊する船
そして、そこに生活するチョロQたちまでも・・・
ロドスシルト少佐「・・・できれば、もう武器を担いでは行きたく無い街だ」
ロドスシルトは、街に負い目を持っていた
「20年前の復讐だ!俺の家族を殺した虐殺車どもめ!」
上陸作戦のとき、コムニエムに重傷を負わせた兵士の言葉だ
その兵士は20年前、ドグニア中佐の下で戦っていた
「きっと生きては帰れないだろう」。そう言って家を出た彼を待っていたのは、真逆の事態だった
帰れないはずだった自分は生きて街に戻り、帰るはずだった家は消し炭にされていた
中佐と共に撤退して生き延びた彼は、20年もの間復讐の時を待っていたのだ
そして、シュパシュア半島でそれを実行した
しかし、直後に飛び込んできたコムニエムの同僚に捕縛され、輸送船まで連れられた
現在は本土の収容所に居るはずだ
コムニエムと同年代の若いTH400は、何を思って戦場にいたのだろうか
ビスカイト中将「・・・少佐、決まったぞ」
隣に座っているビスカイト中将が言う
ビスカイト中将「陸上戦力と航空戦力による総攻撃、だそうだ」
総攻撃!?
またあの悲劇を再現するとでも言うのか
ロドスシルト少佐「・・・それは、本当ですか!?」
ビスカイト中将「・・・ああ、事実だ」
その言葉を聞き、ロドスシルトは愕然とした
やはり上は、あの水産都市を再び火の海にしたいらしい
いや、今までも、チョロ〜ンの大都市は言われずとも火の海になっていた
マッグユーノスの工業地帯、キョウビーチャの市街地・・・
これは大都市ではないが、ミニッツワーモのレーダー基地もそうである
ロドスシルト少佐「・・・中将。一つ疑問に思っているんですが・・・」
ビスカイト中将「どうした?」
ロドスシルト少佐「今回のビットレイク攻略は、どういう意図があってのことですか?」
ビスカイト中将「・・・敵の戦力を減殺する。以上」
ビスカイトは冷徹に答えた
ロドスシルト少佐「・・・それって、多くのチョロ〜ン国民を殺せって意味ですよね?中将はそれを・・・!?」
ビスカイト中将「これは私の決定ではない。上の決定だ。従わざるを得ないのが軍人の務めだろう」
ロドスシルト少佐「正しいことをするために偉くなったんじゃないんですか、中将!?」
ロドスシルトはビスカイトに詰め寄る
ビスカイト中将「・・・すまない、少佐。これが祖国の、プロトンの正義なんだ・・・」
ロドスシルト少佐「こんなことでいいんですか!?私はキュワールの平和のために軍人になったのです!チョロQを無意味に殺すためになど・・・!」
ビスカイト中将「それは私も同じだ!」
ロドスシルトの言葉を遮って、ビスカイトが言う
ビスカイト中将「・・・私も、フェレックス大将も同じ意見だった。この作戦には反対したんだ!しかし・・・しかし・・・!」
この作戦が通ってしまったのだ
それにも、ある理由があった
ビスカイト中将「知っているだろう。QQQQがチョロ〜ン北西部を狙っているという話。もし彼らに先を越されれば、ビットレイクの悲劇なんて目じゃないほどの悲劇がチョロ〜ンを襲うはずだ!」
二両は、QQQQについて凄まじい事実を知っていた
「QQQQによって敗れた国の政治家・軍幹部他は、全てQQQQ軍により死刑」
「国民は全員QQQQに強制連行、あるいは死刑」
QQQQの国際法に書かれていた一文だ
もしこれが事実ならば、QQQQが戦争に参加し、そして勝利すれば、確実に相手国を滅ぼせることになる
生き残った国民は残らずQQQQで強制労働を受ける
その仕打ちは、きっと凄まじい物だろう
一体この法律を書いたのは、どんなチョロQなのだろう
ビスカイト中将「あんな油の通わないチョロQどもに、このチョロ〜ンを蹂躙させてなるものか!」
ビスカイトもまた、チョロ〜ン紛争に負い目を抱いていた
だからこそ、無益な殺生は避けたい
ビスカイト中将「・・・だから、否定する理由が、見つからなかったんだ・・・」
殺戮車たちに、一つの国も蹂躙させない
そのためには、多くの国民の犠牲を以ってでも戦う
ふとロドスシルトは、先の怪獣とQQQQ軍の戦闘を思い出した
幹部達はみな、国民を守ることよりも、怪獣を倒すことを優先していた
真っ先に日戦軍団がリーダーシップを取り、市街地に部隊を展開したからこそ、被害を最小限に抑える事が出来たのだ
もし日戦軍団が怪獣対策に乗り出さず、QQQQが単体で怪獣と戦っていたら・・・?
ノースポートは、恐らく壊滅していただろう
そう、あのビットレイクのように・・・
ビスカイト中将「・・・決まったからには。最善を尽くせ。それが我々に課された使命であり、任務だ」
ロドスシルトのほうを向き直り、ビスカイトが言った
ここまで真剣にロドスシルトに頼み込んだビスカイトを見たのは、恐らく第二次キュワール大戦以来だろう
軍上層部の無謀な作戦に付きあわされ、苦戦を強いられたあの時
部下のロドスシルトに指揮を引き継ぐよう命じたビスカイトは、部下と共に攻撃に向かい消息を絶った
実際は敵軍に捕らえられただけだったのだが、一時は戦死の可能性も考えたロドスシルトは涙した
ロドスシルト少佐「・・・分かりました。最善を尽くします・・・一つだけ、誓わせてください」
それを聞いたビスカイトは、先の言葉を予想して言った
ビスカイト中将「・・・ビットレイクは、二度と焼かせない。だな?」
やはりビスカイトも、思いは同じだった
絶対に、悲劇は繰り返させない
既に何度も繰り返しているから、今度こそ・・・

チョロQアイランド領、ゲープコッチ島
上空では凄まじい航空戦が繰り広げられ、地上には無数の高射砲が展開している
別荘の庭に飛び出した深緑色のチョロQが、空を見上げて言う
深緑のチョロQ「行けぇ!帝国の爆撃機なんて叩き落せぇ!」
彼の見上げる先には、大型爆撃機を攻撃する連合軍の戦闘機の姿がある
同じく庭に飛び出した黒いプレジデントが駆け寄ってくる
黒いチョロQ「閣下、危険です!中へ!」
深緑のチョロQ「かまわん!私は元大統領だ!これしきのことなど・・・」
黒いチョロQ「空襲の真っ只中で飛び出していく政治家がどこに居ますか!?」
深緑のチョロQの前に停止して、制止する黒いプレジデント
すると、別荘に向かって急降下爆撃機が向かってきた
黒いチョロQ「言わんこっちゃない!早く地下壕へ!」
深緑のチョロQ「連合軍航空隊が信頼できんのか!?」
黒いチョロQ「信頼していますが、もしものことが・・・!」
爆撃機は投下体勢に入る
そのときであった
爆撃機が銃撃を受け大爆発を起こした
そのまま別荘の上空をすり抜け、海上に墜落していった
深緑のチョロQ「どうだ!これが連合軍航空隊の力だ!」
空を見上げ、全身で歓喜を表現する深緑のチョロQ
行動派と聞いていたが、なんと言うか子供っぽいと黒いプレジデントは思った
国内のあまりにも目まぐるしい政治体系の変遷から、職を辞した黒いプレジデントは、いつしかかつて付いていた深緑のチョロQの下にいた
遠方で爆音が聞こえる
高射砲の咆哮だ
上空を見ると、炎上する爆撃機の姿
高度を下げ、海上へ落ちていく
爆発と共に、水柱が上がる
そのとき、上空から轟音が響き渡る
敵の急降下爆撃機だ
黒いチョロQ「こっちに来る!閣下、危ない!」
深緑色のチョロQが、小銃を取り出す
そして、爆撃機に向けて構える
黒いチョロQ「閣下!無茶ですよ!」
深緑のチョロQ「まあ見てろ!」
そう言って、深緑のチョロQは引き金を引いた
銃撃は爆撃機に命中する
爆撃機はなおもこちらに向かってくる
すると、銃弾がエンジン部に直撃した
爆発し、海面へ墜落する爆撃機
深緑のチョロQ「見たか、今の!?」
黒いチョロQのほうに振り返り、得意げに言う深緑のチョロQ
黒いチョロQは思った
やっぱり振り回されるのは政治事情よりも、政治家そのもののほうが良い。そしてその政治家が優秀であればそれでよい、と
第十七話 続く
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青き名将 第十七話
 松井  - 2010/4/13 23:37 -
  
ようやく「(仮題)」が取れたわけですが、遅れに遅れた第十七話。攻撃も延期です。

第十七話 ビットレイク
彼らがその街にたどり着いたとき、街は火の海に包まれていた
数日前まで自分たちがいたはずの料亭のあった辺りには、黒く焼け爛れた木材がむなしく建っていた
近づいてみると、その木材が崩れ落ち、すでに建物の跡形をとどめていないことを示した
通りへと振り返ると、他の建物も同じようになっていた
骨組みだけが残っているもの
完全に消滅しているもの
今なお原形をとどめているが、火の手が上がっているもの
チョロ〜ン将校「・・・どうなってるんだ、これは!?」
それは、もはや街とは呼べなくなっていた
チョロ〜ン将校「誰かいないのか!?」
部下たちに生存車を探すよう命じ、自分も街中を走り回った
街にあるもの、すべてが燃え上がっている
空を見上げると、黒い煙が立ち込めていた
航空機の飛ぶ轟音は聞こえない
一体、何がどうなったというのだろうか
彼らがこの街を出たとき、異常は見られなかった
敵の部隊が接近しているという報告を受け、直ちに出動
交戦した敵部隊を撃退し、そのままキョウビーチャの奪還へと向かった
しかし、守備隊の姿が見られないことから、急いで反転したのだ
そのときだった。街のほうから黒煙が立ち上ったのは
いや、黒煙だけではなかった
巨大なきのこ雲が立ち上ったのだ
あれはおそらく、プロトン軍の新型爆弾だ
ただの一発で、街一つを吹き飛ばす
プロトン軍は本当に、そんな兵器を開発していたのだ
チョロ〜ン兵士「隊長、市街地も火の海です。生存車らしきものは・・・」
チョロ〜ン将校「よし、漁港をあたるぞ!」
しかし、漁港へ行っても、状況は変わらなかった
ただ、唯一違っているものがあった
市民の姿があったのだ
部下たちが急いで助け起こそうとする
しかし、その車体には、すでに弾痕が刻まれていた
チョロ〜ン兵士「隊長!これは・・・」
傍らにいた別の市民の車体にも、無数の弾痕が刻まれていた
将校は思った。これが大国の慢心というやつか、と
圧倒的戦力で敵を駆逐し、たとえ戦えないものであっても敵性民は皆殺し
伊達にQシュタインを打ち負かしてはいないということか
しかし、これはいくらなんでもやりすぎだ
連中だって油の通ったチョロQのはずだ
敵将の中には、これを好まないやつがいたと聞いていたが・・・
そのとき、近くで銃声が聞こえた
銃声のした方角へ向かってみると、物陰から一台のチョロQが現れた
かと思うと、噴煙を上げて爆発した
出撃前、盛大に見送ってくれた漁師だった
後を追うように現れたのは、M4A3中戦車
そのうちの一両が持っていた旗は、何度も戦場で見たデザイン
青地に、羽を広げた鳥を思わせる白い徽章
紛れも無く、「西の大国」だった
チョロ〜ン兵士「貴様らぁ・・・こんなことをして、許されると思っているのかぁ!?」
部下の一両が声を荒げる
それを見た敵の将校が、こう呟いた
プロトン将校「・・・敵性国民は、徹底的に排除する必要がある。もちろん、貴様らもだ!」
敵の将校は、冬季迷彩を思わせる白い塗装に、国籍を示すかのように青い斑点が描かれていた
車体脇に輝く階級章が、彼の階級を示していた
元帥。こんな奴が、元帥にまで上っているというのか
プロトン将校「やれ。一両たりとも残すな!」
敵将がそういうと、無数のM4A3が射撃を開始した
部隊は必死に応戦するが、一両、また一両と破壊されていく
チョロ〜ン兵士「隊長だけでも、隊長だけでも生き残ってください!生き残って、連中の非道を明かしてください!」
部隊の指揮を執った将校は何とか生き残り、あることを誓った
なんとしてでも、奴らを倒す。と
CQ暦215年、夏の出来事であった

QQQQ沖に現れた謎の大怪獣は、キュワール各国を震撼させた
連合軍の共同作戦の前にそれは崩れたが、通常火器の攻撃を寄せ付けず、最終的には空中戦艦の攻撃により撃退されたことから、キュワール連合軍内でも空中戦艦の建艦競争が始まることは大いに予想された
しかし、その建艦競争は、現時点では始まらなかった
というのも、南方における戦況が原因であった
特にQトルック帝国領グッドウェイ諸島の戦闘は熾烈を極めた
本島、グッドウェイ島に展開するQグリーン製装甲列車はQシュタイン軍地上部隊の攻撃を寄せ付けなかった
大きな島の内陸部に配置し、航空攻撃を行おうとすれば森林地帯に逃げる
線路を破壊すれば、工作部隊が夜間のうちに速攻で修理する
グッドウェイの戦闘は膠着状態に陥った
一方、チョロ〜ン方面で戦うプロトン王国軍は、一つの問題に直面した
ゲープコッチに接近しつつある航空隊の対処だ
通信士「『アーチャーフィッシュ』から入電です!『敵艦隊はゲープコッチ島へ向かいつつある模様』!」
航空基地の通信士が、司令官に報告する
基地司令「第一〇二、一〇三、一〇四航空隊、緊急発進急げ!」
基地司令官が直ちに離陸の指示を出す
管制官A「第一〇二航空隊は直ちに滑走路へ!」
管制官がそれを復誦する
ラグラ大尉(通信)「了解!」
複数のP−40戦闘機が、駐機場から滑走路へ移動を始める
そして、次々と離陸していく
管制官A「第一〇二航空隊各機、高度制限解除!」
管制官B「第一〇三航空隊は直ちに滑走路へ!」
それを見て、管制官が次の指示を出す
現在グリシネ上空では、ウルタンク帝国軍の重爆飛行隊と、グリシネ海空軍及び日戦軍団航空隊の激戦が繰り広げられている
プロトン王国軍も、急遽ロナルミックの航空基地から航空隊を出撃させた
それとほぼ同時刻、ウルタンク帝国海軍も、航空隊を発進させた
空を埋め尽くすかのような、航空機の編隊
中には中型爆撃機の姿もあった
空母から発進したまでは良いが、果たしてそれからどうするのだろうか、と少し考えた
そういえば、ここから北に行けば、彼らが占領したノイズシティがあるのだ
おそらく、そこに着陸するつもりだろう
だが、絶対にその過程で、この街を焼かせはしない
ラグラ大尉「各機、散開して敵機を撃墜せよ!」
数機のP−40が旋回し、敵爆撃機を攻撃する
ラグラ大尉機も旋回し、敵の爆撃機を捕捉する
投下体勢に入り、降下しようとする爆撃機を追う
後ろについて、機銃射撃
一機を落とし、旋回して別の機体を狙う
水平爆撃の体勢に入る中型爆撃機を狙い、上昇する
下方からの一撃で、中型爆撃機は撃墜された
付近を飛んでいた中型爆撃機も、爆炎に包まれる
僚機が撃墜したようだ
そのまま編隊の上空まで上昇し、敵戦闘機を狙い急降下
僚機を狙い、旋回する戦闘機を狙う
こちらに気づいたらしい敵機は、旋回して射線から逃れようとする
しかし、見越し射撃により、機首から銃撃を受け炎上した
再び降下し、敵の艦上爆撃機を狙う
銃座からの反撃をもろともせず、射撃を開始する
銃撃を翼に受け、爆発する艦上爆撃機
眼下の街では、無数の高射砲が砲身を持ち上げている
現状は互角。このまま押し切りたい
しかし、僚機から新たな報告が入った
プロトン航空兵A「隊長!敵の第二派です!」
遠方を見ると、いくつかの大型爆撃機がこちらに向かってきている
恐らくノイズシティから離陸した援軍だろう
護衛にはいくつかの戦闘機もついてきている
あれほどの数では、現在の戦力だけでは押さえられない
ラグラ大尉「Qシュタイン軍はどうした!?」
確かQシュタインに援軍を要請したはずだが
プロトン航空兵A「こちらに向かっているはずです!」
僚機から再び報告が入る
確かに、離陸の報告は入っていた
しかし、今のところ援軍は到着していないようだ
前方で複数の艦上爆撃機が急降下を開始した
どうやら爆弾の投下体勢に入ったようだ
直ちに追撃に移る
奇襲攻撃で一機を撃墜し、旋回して別の機体を狙う
しかし、思ったよりスピードが速かった
こちらの攻撃をすり抜け、急降下していく機体
高射砲により一機が撃墜されるが、なおも三機が残っていた
そのとき、残った三機が爆発した
その後を飛行していく、三機の戦闘機
Qシュタイン航空兵「こちらQシュタイン帝国軍第二〇三航空隊。すまない、少し出遅れた」
Qシュタインの戦闘機隊が駆けつけてくれたようだ
ラグラ大尉「いや、ちょうどいいタイミングだった。戦闘機を叩いてくれ!」
Qシュタイン航空兵「了解!」
Qシュタインの戦闘機が旋回し、敵戦闘機を攻撃に向かう
ラグラ大尉機も上昇し、敵爆撃機を攻撃する
そろそろこちらの第二派も到着するはずだ
一気に畳み掛けて、この街を守り抜くのだ
第十七話 続く
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短編小説 二両の提督 あとがき
 松井一真  - 2010/2/22 22:22 -
  
あとがき:ティーガー元帥の回想として描かれるドロワル事件の経緯。あとがきの「平成22年2月2日22時22分」の投稿を狙って、前日に駆け足で書き上げた結果、なんか駆け足過ぎて訳のわからない展開になってしまいました。
結構長い間構想していた作品で、「ドロワル事件」を端的に描いて見ました。
全般的にティーガー元帥の一人称視点で描かれており、いつものように多数のチョロQの視点から、ということが出来ないので、何かと苦労しました。ティーガー元帥メインの作品ってそういえば無かったなぁ。ロドスシルト少佐主役というのも「青き名将」が初ですし。初期から居るのになぁ。
今回も前回同様、台詞鉤括弧の前にキャラクター名を書かないという手法をとりました。
そしてタイトルも何度か変えました。最初は「『自由』を手にするために」でしたが、ティーガー元帥の回想主体としたところで多数のタイトルを考え、最終的には「二両の提督」に落ち着きました。
さて、「帝國の不死鳥」といえば、勿論マッドタンク。そういえばまともにマッドタンクを出したのはCCQ小説とこれだけだなぁ。
かつてその異名と共に伝説を作り上げたマッドタンクの、明らかになっている限りでは最後の戦い。そう言う雰囲気にしてみました。
もっとも、全編回想シーンみたいなものなのであまり長めにするわけにも行かず、少し端折った感じになってしまいました。終盤ちょっと無茶振りだなぁ。
ポルシェ元帥。後にQシュタインに復帰したティーガー元帥に対し、彼はそれらしい描写が無かったりします。「青き名将」では諜報科の幹部という設定になってました。
一応本作の時間軸は第三次キュワール大戦後期、大陸南方戦線が膠着状態に陥った時期です。いずれはCCQAの小説も書く予定ですが、それとほぼ同一の時間軸です。
ティーガー元帥とマッドタンクは少し前まで最前線で戦っていましたが、一旦引き揚げてグルンシュタットに展開していました。そこで武装蜂起を行ったわけですが、思いのほか政府陣営についたチョロQが多く苦戦を強いられたようです。
後にティーガー元帥の意思を継いだドニゲッテル少将がクーデターを敢行し、Qシュタインの体制を一気に変えています。

ラストシーン。短編集はいっそのこと線路にまつわる話にしようと考え、終盤に装甲列車を出してみたり、駅を登場させたりしました。

キュワールシリーズの各国家の設定を補完する要素も担っているこの短編集。今度は何処の国にスポットを当てるか、また考えてみます。
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Re:短編小説 二両の提督
 松井一真  - 2010/2/22 22:02 -
  
後半。どうも急ぎすぎたような気もします。

キュワールシリーズ短編 二両の提督
その膠着状態が、どれくらい続いただろうか
敵の攻撃が、突然止んだ
どうやら、攻撃を一旦中止したらしい
「・・・第一派は、何とか乗り切ったな」
窓の外を見ながら、彼が言った
「しかし、補給はどうするかだな。向こうは大量の部隊を持ってこれるが、こっちの工場は放棄されている。ある程度物資は運び込んだが・・・港町のほうはどうなったんだろうな?」
実は、港町グルンシュタットでも、同じように武装蜂起が行われた
向こうの部隊に関する報告は入っていないが、果たして大丈夫だろうか
「やはり『帝国の不死鳥』の強さは予想以上だ!」
「本部に応援を頼みましょう!」
無線機越しに騒がしい声が聞こえる
どうやら切り忘れているようだ
向こうの状況が分かるなら、こちらにとっては好都合だ
だが、増援が来るとなれば厄介だ
「・・・増援がくるらしいな。一体どんな奴らが来るだろうか・・・」
私は、敵の増援に付いて考えてみた
先ほどまでのように通常の部隊が攻めてくるなら、こちらは先ほどと同じ手段で対応する
しかし、大半の場合、別の手段で来るだろう
例えば、榴弾砲による遠距離射撃。この場合は、部隊を分散させて、被害を最小限にとどめる
あるいは、爆撃機か
この場合は、多彩な対空兵装を有しているので問題は無い
そもそも森林地帯にあるので、無闇な航空攻撃は出来ないはずだ
と思っていると、遠方から轟音が響き渡った
列車のジョイント音のように聞こえる
まさか、第三の手段を使ってくるのだろうか・・・
「遠方より敵部隊!あれは・・・PZ26型!?」
PZ26型。確かQシュタイン軍が開発した最新の装甲列車だったはずだ
従来型のドライジーネと比べ、高い火力を有している
最も、その火力の中枢となる砲車はQグリーンからの輸入品で、後は適当に寄せ集めた貨車だったはずだ
しかし、線路を破壊する術が無い現状では、装甲列車ほど厄介な物は無い
何しろ、線路は森林地帯のど真ん中を通っているので、砲撃を線路に向けることが出来ないのだ
「撃て!なんとしてでも破壊するんだ!」
砲台が、一斉に砲撃を行う
しかし、測距が上手くいかず、苦戦を強いられる
さらに、見張り員が新たな報告を向けた
「敵の別働隊を発見!」
装甲列車だけではなく、敵の大部隊がこちらに向かってきた
先ほどより、明らかに多い
もしかしたら、グルンシュタットは鎮圧されたのかもしれない
「あの戦力・・・もしやグルンシュタットは・・・」
ポルシェ元帥が呟く
「たとえそうだとしても、俺達は最後までやりぬく。ここで敵を退け、州都へ殴りこむんだ!」
そのとき、私は非常に強気だった
祖国最強の戦力が結集した武装クーデターだ
よほどのことが無ければ破られるはずは無い。そう思っていた
しかし、最大の問題点が、ここで生じていた。補給だ
グルンシュタットの反乱が鎮圧された以上、これ以上の補給は期待できない
ここの敵部隊を撃退すれば、恐らく弾薬は尽きるだろう
そうなれば、これ以上戦うことは出来なくなる
私はこのとき、それに気づくべきであった
しかし、全くそれに気づいていなかったのだ
機関砲により、撃破されていくIII号突撃砲
遠距離からの射撃により、炎上するヘッツァー
敵の第一派、第二派は、確かに退けた
しかし、その後の第三派で、それは生じた
「こちら第一陣地!弾薬が残り僅かです!」
このとき、私はようやく、弾の補給が滞っていることに気づいた
廃工場に残っている分もある程度配備しておいたが、残りはこの司令部から持ってくるしかない
その間、勿論砲撃は停止する
その隙を突いて、敵の別働隊が殴りこんできた
それは、先の装甲列車だった
「装甲列車がこちらに向かってきます!」
見張り員が叫ぶ
ポルシェ元帥が無反動砲を構える
砲撃により、装甲列車の周辺に展開する敵戦車が吹き飛ぶ
しかし、装甲列車の進撃は止まらない
「・・・よし、俺が行く!」
そう言って、彼は司令室を飛び出そうとする
「おい、待て!」
私は、彼を呼び止めた
「勝機はあるのか!絶対に生きて戻ってくる自信はあるのか!?」
私が彼を呼び止めた理由は二つ。彼はこの部隊で最大の戦力となりうる。ここで失うのは惜しい
そしてもう一つは・・・彼が私の戦友だったからだ
同じ思想を持ち、共に戦った戦友として、ここで死に別れてはいけない理由もあった
「おまえは、自分一両で罪を償って死ぬつもりか!?」
僅かな沈黙の後、彼は答えた
「・・・そんなはずが無いだろう。俺は必ず、生きて戻ってくる。忘れたのか?俺の異名」
・・・確かにそうだ。彼の異名は「不死鳥」だ
絶対に死なないのだ
敵の装甲列車の砲撃により、こちらの部隊も損害が増えていく
「敵は待ってくれない。俺は行くぜ」
そう言って、彼は司令室を出て行った
「おっ、おい!」
ヤークト大尉が呼び止めるが、彼は二度と止まらなかった
後には、私とヤークト大尉、ポルシェ元帥、そして数両の見張り兵
「・・・よし、最後まで戦うぞ。なんとしてでも、ここで止まるわけには行かない!」
ポルシェ元帥が言った
確かにここで止まるわけには行かない。ここで止まれば、粛清は目に見えている
我々は、最後の戦いに身を投じた
一両、また一両。隊員達が次々と装甲列車の前に破れていく
そして、彼の姿も、いつしか見えなくなっていた
そのとき、無線機から久々に声が響き渡った
「元帥!私です!」
それは、聞きなれた、私の弟子の声だった
「少将!まさか貴様・・・」
鎮圧部隊に参加しているのか
だとしたら、師弟がここで殺しあうことになる
「いえ、私は彼らとは違う理由でここに居ます」
ドニゲッテル少将は、なにやら別の理由で来たようだ
「一体どういうことだ?!」
「・・・元帥。我々と一緒にここから離脱しましょう!」
少将から返ってきた言葉は、予想外であった
「元帥が降伏したこととすれば、奴らだってそう手荒な真似はしないはずです」
「・・・そう見えるのか、彼らが?」
「・・・私が保証します。私の知り合いが、プロトンへの亡命手続きを行わせる予定です」
その言葉が、私の運命を変えることとなった・・・

思えば、この昔話をしたのは何度目だろうか
あれから祖国の軍に復帰するまで、一〇数年の時が経った
ドニゲッテル少将によってプロトン王国へと亡命した我々は、プロトン陸軍の軍事顧問となった
その直後だった。ドニゲッテル少将がクーデターを起こしたのは
彼はかつての総統の親戚を起用し、革命勢力の地盤を固めたのだ
クーデターにより、祖国は変わった
第四次/第五次キュワール大戦を生き残り、遂に祖国に帰れるときが来た
そして、かつての階級と地位を手にし、私はここにいる
「・・・まあ、こんなものか」
話を聞いていたチョロQは、私の昔話の間、一言も発しなかった
「ありがとうございます。『ドロワル事件』にそんな経緯があったとは知りませんでした」
青い車体に、黄色いライン。車体にアンテナまでつけたチョロQは、その見た目に反し新聞社のチョロQらしい
はるばる海外から来たとあれば、昔話もしてみたくなる物か
聞けば、その新聞記車は、普段はレースの取材をしているらしい
「・・・それにしても、レース専門と聞いている君が、どうしてQタンクの私を取材しているんだ?」
私は、記車に聞き返してみた
「・・・デスクから一つ、課題を出されましてね」
「なんだ?」
「『レース以外のチョロQの記事を書いてみろ』・・・と言う事です」
なんでも、その新聞社はそれまでほぼレース専門だったのだが、レース以外の事項を専門に取り扱っていた他の新聞社がレース分野にも乗り出してきているのだという
どうやら報道業界も大変らしい
もっとも、デスクがそのようなことを言ったのは、もうひとつ別の理由があった
『チョロQの存在意義は、レースだけではない』。デスクはそう言って、記車を送り出したそうだ
「・・・そういえば、聞き忘れたんですが・・・」
「どうした?」
「・・・ティーガー元帥の戦友・・・装甲列車に挑んでからどうなったんですか?」
この質問も、何度聞かれただろうか
「・・・それは、私にも分からない。しかし、これだけは言えるよ。彼は生きている」
「・・・何故、そう言えるんですか?」
記車は再び質問をぶつけた
「・・・聞かなかったのか?彼の異名」
私は、当然のように、そう答えた
「帝國の・・・不死鳥・・・」
記車は、そう呟いた
そう、きっと生きているはずだ
私はこうして祖国に自由を取り戻したが、彼は罪を償うことが出来ただろうか
いずれ会うことができれば、それも分かるだろう
窓の外は、平和な大地が広がっている
結局、私は記車を駅まで送ることにした
私―――ティーガー元帥は、記車との別れ際にこう言った
「・・・楽しみにしているよ。君が『チョロQの存在意義』を見つけることを」
汽笛と共に、列車は走り出していった
CQ暦245年、大戦の終結直後のことであった

終わり
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んー、スパムとか面倒なんで勘弁。


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