|
どうも、お久しぶりです。おすなのかたまりです。
スパムがひどいので、禁止語句を設定しました。
「http://」を禁止していますので、URL を記入する場合は「ttp://」とかにして下さい。
これでこのスパムがツールを使ったものかどうかよく分かると思います(笑
この掲示板は XREA.COM が生きてる限り多分あると思いますので、どうぞよろしくお願いします。
以上、さくらがちる頃に。
|
後半。どうも急ぎすぎたような気もします。
キュワールシリーズ短編 二両の提督
その膠着状態が、どれくらい続いただろうか
敵の攻撃が、突然止んだ
どうやら、攻撃を一旦中止したらしい
「・・・第一派は、何とか乗り切ったな」
窓の外を見ながら、彼が言った
「しかし、補給はどうするかだな。向こうは大量の部隊を持ってこれるが、こっちの工場は放棄されている。ある程度物資は運び込んだが・・・港町のほうはどうなったんだろうな?」
実は、港町グルンシュタットでも、同じように武装蜂起が行われた
向こうの部隊に関する報告は入っていないが、果たして大丈夫だろうか
「やはり『帝国の不死鳥』の強さは予想以上だ!」
「本部に応援を頼みましょう!」
無線機越しに騒がしい声が聞こえる
どうやら切り忘れているようだ
向こうの状況が分かるなら、こちらにとっては好都合だ
だが、増援が来るとなれば厄介だ
「・・・増援がくるらしいな。一体どんな奴らが来るだろうか・・・」
私は、敵の増援に付いて考えてみた
先ほどまでのように通常の部隊が攻めてくるなら、こちらは先ほどと同じ手段で対応する
しかし、大半の場合、別の手段で来るだろう
例えば、榴弾砲による遠距離射撃。この場合は、部隊を分散させて、被害を最小限にとどめる
あるいは、爆撃機か
この場合は、多彩な対空兵装を有しているので問題は無い
そもそも森林地帯にあるので、無闇な航空攻撃は出来ないはずだ
と思っていると、遠方から轟音が響き渡った
列車のジョイント音のように聞こえる
まさか、第三の手段を使ってくるのだろうか・・・
「遠方より敵部隊!あれは・・・PZ26型!?」
PZ26型。確かQシュタイン軍が開発した最新の装甲列車だったはずだ
従来型のドライジーネと比べ、高い火力を有している
最も、その火力の中枢となる砲車はQグリーンからの輸入品で、後は適当に寄せ集めた貨車だったはずだ
しかし、線路を破壊する術が無い現状では、装甲列車ほど厄介な物は無い
何しろ、線路は森林地帯のど真ん中を通っているので、砲撃を線路に向けることが出来ないのだ
「撃て!なんとしてでも破壊するんだ!」
砲台が、一斉に砲撃を行う
しかし、測距が上手くいかず、苦戦を強いられる
さらに、見張り員が新たな報告を向けた
「敵の別働隊を発見!」
装甲列車だけではなく、敵の大部隊がこちらに向かってきた
先ほどより、明らかに多い
もしかしたら、グルンシュタットは鎮圧されたのかもしれない
「あの戦力・・・もしやグルンシュタットは・・・」
ポルシェ元帥が呟く
「たとえそうだとしても、俺達は最後までやりぬく。ここで敵を退け、州都へ殴りこむんだ!」
そのとき、私は非常に強気だった
祖国最強の戦力が結集した武装クーデターだ
よほどのことが無ければ破られるはずは無い。そう思っていた
しかし、最大の問題点が、ここで生じていた。補給だ
グルンシュタットの反乱が鎮圧された以上、これ以上の補給は期待できない
ここの敵部隊を撃退すれば、恐らく弾薬は尽きるだろう
そうなれば、これ以上戦うことは出来なくなる
私はこのとき、それに気づくべきであった
しかし、全くそれに気づいていなかったのだ
機関砲により、撃破されていくIII号突撃砲
遠距離からの射撃により、炎上するヘッツァー
敵の第一派、第二派は、確かに退けた
しかし、その後の第三派で、それは生じた
「こちら第一陣地!弾薬が残り僅かです!」
このとき、私はようやく、弾の補給が滞っていることに気づいた
廃工場に残っている分もある程度配備しておいたが、残りはこの司令部から持ってくるしかない
その間、勿論砲撃は停止する
その隙を突いて、敵の別働隊が殴りこんできた
それは、先の装甲列車だった
「装甲列車がこちらに向かってきます!」
見張り員が叫ぶ
ポルシェ元帥が無反動砲を構える
砲撃により、装甲列車の周辺に展開する敵戦車が吹き飛ぶ
しかし、装甲列車の進撃は止まらない
「・・・よし、俺が行く!」
そう言って、彼は司令室を飛び出そうとする
「おい、待て!」
私は、彼を呼び止めた
「勝機はあるのか!絶対に生きて戻ってくる自信はあるのか!?」
私が彼を呼び止めた理由は二つ。彼はこの部隊で最大の戦力となりうる。ここで失うのは惜しい
そしてもう一つは・・・彼が私の戦友だったからだ
同じ思想を持ち、共に戦った戦友として、ここで死に別れてはいけない理由もあった
「おまえは、自分一両で罪を償って死ぬつもりか!?」
僅かな沈黙の後、彼は答えた
「・・・そんなはずが無いだろう。俺は必ず、生きて戻ってくる。忘れたのか?俺の異名」
・・・確かにそうだ。彼の異名は「不死鳥」だ
絶対に死なないのだ
敵の装甲列車の砲撃により、こちらの部隊も損害が増えていく
「敵は待ってくれない。俺は行くぜ」
そう言って、彼は司令室を出て行った
「おっ、おい!」
ヤークト大尉が呼び止めるが、彼は二度と止まらなかった
後には、私とヤークト大尉、ポルシェ元帥、そして数両の見張り兵
「・・・よし、最後まで戦うぞ。なんとしてでも、ここで止まるわけには行かない!」
ポルシェ元帥が言った
確かにここで止まるわけには行かない。ここで止まれば、粛清は目に見えている
我々は、最後の戦いに身を投じた
一両、また一両。隊員達が次々と装甲列車の前に破れていく
そして、彼の姿も、いつしか見えなくなっていた
そのとき、無線機から久々に声が響き渡った
「元帥!私です!」
それは、聞きなれた、私の弟子の声だった
「少将!まさか貴様・・・」
鎮圧部隊に参加しているのか
だとしたら、師弟がここで殺しあうことになる
「いえ、私は彼らとは違う理由でここに居ます」
ドニゲッテル少将は、なにやら別の理由で来たようだ
「一体どういうことだ?!」
「・・・元帥。我々と一緒にここから離脱しましょう!」
少将から返ってきた言葉は、予想外であった
「元帥が降伏したこととすれば、奴らだってそう手荒な真似はしないはずです」
「・・・そう見えるのか、彼らが?」
「・・・私が保証します。私の知り合いが、プロトンへの亡命手続きを行わせる予定です」
その言葉が、私の運命を変えることとなった・・・
思えば、この昔話をしたのは何度目だろうか
あれから祖国の軍に復帰するまで、一〇数年の時が経った
ドニゲッテル少将によってプロトン王国へと亡命した我々は、プロトン陸軍の軍事顧問となった
その直後だった。ドニゲッテル少将がクーデターを起こしたのは
彼はかつての総統の親戚を起用し、革命勢力の地盤を固めたのだ
クーデターにより、祖国は変わった
第四次/第五次キュワール大戦を生き残り、遂に祖国に帰れるときが来た
そして、かつての階級と地位を手にし、私はここにいる
「・・・まあ、こんなものか」
話を聞いていたチョロQは、私の昔話の間、一言も発しなかった
「ありがとうございます。『ドロワル事件』にそんな経緯があったとは知りませんでした」
青い車体に、黄色いライン。車体にアンテナまでつけたチョロQは、その見た目に反し新聞社のチョロQらしい
はるばる海外から来たとあれば、昔話もしてみたくなる物か
聞けば、その新聞記車は、普段はレースの取材をしているらしい
「・・・それにしても、レース専門と聞いている君が、どうしてQタンクの私を取材しているんだ?」
私は、記車に聞き返してみた
「・・・デスクから一つ、課題を出されましてね」
「なんだ?」
「『レース以外のチョロQの記事を書いてみろ』・・・と言う事です」
なんでも、その新聞社はそれまでほぼレース専門だったのだが、レース以外の事項を専門に取り扱っていた他の新聞社がレース分野にも乗り出してきているのだという
どうやら報道業界も大変らしい
もっとも、デスクがそのようなことを言ったのは、もうひとつ別の理由があった
『チョロQの存在意義は、レースだけではない』。デスクはそう言って、記車を送り出したそうだ
「・・・そういえば、聞き忘れたんですが・・・」
「どうした?」
「・・・ティーガー元帥の戦友・・・装甲列車に挑んでからどうなったんですか?」
この質問も、何度聞かれただろうか
「・・・それは、私にも分からない。しかし、これだけは言えるよ。彼は生きている」
「・・・何故、そう言えるんですか?」
記車は再び質問をぶつけた
「・・・聞かなかったのか?彼の異名」
私は、当然のように、そう答えた
「帝國の・・・不死鳥・・・」
記車は、そう呟いた
そう、きっと生きているはずだ
私はこうして祖国に自由を取り戻したが、彼は罪を償うことが出来ただろうか
いずれ会うことができれば、それも分かるだろう
窓の外は、平和な大地が広がっている
結局、私は記車を駅まで送ることにした
私―――ティーガー元帥は、記車との別れ際にこう言った
「・・・楽しみにしているよ。君が『チョロQの存在意義』を見つけることを」
汽笛と共に、列車は走り出していった
CQ暦245年、大戦の終結直後のことであった
終わり
|
|
|
6,698 hits
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.0; YTB720)@ntaich023069.aich.nt.adsl.ppp.infoweb.ne.jp>
|
|
|
|