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後編
第十話 同盟軍大気圏突入
ゲール第四駆逐艦隊 軽巡「デトロイト」
バラジス中佐「敵艦隊、撤退していきます!」
フォドラル大佐「・・・見ろ、一隻落伍している。優秀なムサイ級だ。あれを拿捕すれば相当の戦力になると思う。それに、ムサイ級の弱点を知ることも出来そうだ。あいつに降伏勧告を送れ」
バラジス中佐「了解しました」
カルオス第五駆逐艦隊 軽巡「マスカランジ」
カルオス兵士C「機関損傷!主力艦隊は全速で撤退していきます!」
フーヴァー少佐(マスカランジ艦長。車種:III号戦車J型)「・・・本艦にかまわず先行せよ、と打電しろ」
カルオス兵士D「了解!」
カルオス兵士E「敵軽巡より入電!『貴艦の勇戦に敬意を示す。しかし艦隊主力から落伍した今、貴艦の撤収は不可能に近い。直ちに停船し降伏されたし』以上!」
フーヴァー少佐「何っ!?降伏勧告だと!?」
副長「降伏など出来るはずがありません!我々がレイオガル側に負けるわけにはいけないんです!」
フーヴァー少佐「副長、状況を理解できているのかね!」
副長「しかし、今出しえる速力で、敵艦隊を引き離せるはずです!」
フーヴァー少佐「そんな馬鹿な話があるか!たとえ俊足を誇るムサイ級でも、機関が損傷していれば、連合軍の軍艦にだって速力は劣る!」
副長「機関長!どういうことだ!何で機関が損傷したんだ!貴様のメンテナンスに問題があったんだろ!」
機関長「いえ、そんなはずは・・・」
副長「機関がやられたんだ!絶対そうだ!」
フーヴァー少佐「そうやって他車に責任を押し付けるのが、我が国のやり方か!?」
副長「うるさい!艦長が口出しする問題ではありません!」
フーヴァー少佐「誰か、精神注入棒でも持って来い!」
機関長「・・・すいません、精神注入棒って・・・」
フーヴァー少佐「金属バットでいい!」
機関長「いえ、そんなものがあるはずが・・・」
副長「とにかく今出しうる速度で前進!」
フーヴァー少佐「ちっ、これでも喰らえ!」
フーヴァー少佐は、機関長が持っていた整備用具箱で副長を殴った
機関長「・・・副長は気絶されました」
フーヴァー少佐「全く、世話の焼ける奴だ。機関長、念のため道具箱を後で洗っておけ」
航海長「とりあえず降伏勧告を受諾しますか」
フーヴァー少佐「そうだな。副長が復活する前にな」
通信長「貴艦の降伏勧告を受諾する!」
フーヴァー少佐「機関停止!白旗を揚げろ!」
ゲール第四駆逐艦隊 軽巡「デトロイト」
バラジス中佐「敵艦、降伏しました!」
フォドラル大佐「よし、一応、敵艦を包囲しておけ!」
かくして、軽巡「マスカランジ」は降伏した
殴られた副長はゲール沖で復活したが、まだ降伏に納得がいかなかったためか、機関長や通信長に袋叩きにされたという話がある
果ては部下であるはずの先任伍長までもが、副長を海上へ放り投げたほどだ。オチは艦長がカルオス帝国の独裁的な標語プレートを投げつけたり、主計長と炊事班が生ゴミを放り投げたりと、まるで降伏してナチ派と反ナチ派とで対立するUボートのような状況であった
日戦軍団第一特務艦隊 戦艦「紀伊」
松井元帥「本当に、まるでUボートだな」
ホニ大佐(通信)「まあ、これで敵の奇襲作戦は失敗したわけですね」
松井元帥「そうだな。そろそろ、紀伊が敵主力艦隊に主砲を向ける時が来るのか・・・」
ティーガー元帥「敵哨戒艦隊はどうやら、あの突入艦隊の戦力の一部だったようですね」
松井元帥「別働隊の一部だったのか」
ティーガー元帥「ただし、任務を敵新兵器捜索に変更していたようですが」
松井元帥「で、その新兵器『紀伊』に叩き潰された、ってわけか」
ホニ大佐(通信)「どうやら、後発の部隊がいる模様ですが、しばらくは向かってこないでしょうね」
松井元帥「となると、本隊であるパレンバン攻撃隊か・・・」
宇宙図を見ると、ほとんどの基地が帝国の占領下に当たる赤色で塗られている
これは松井元帥が陥落時に赤く塗っているもので、「紀伊」に持ち込んだのである
そして青塗りで残されていたのは、キュワール本土、パレンバン要塞、そして、まもなく連合参戦となるクリークの基地「サーロイ」を始めとするわずかな基地群であった
第十話 終わり
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