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どうも、お久しぶりです。おすなのかたまりです。
スパムがひどいので、禁止語句を設定しました。
「http://」を禁止していますので、URL を記入する場合は「ttp://」とかにして下さい。
これでこのスパムがツールを使ったものかどうかよく分かると思います(笑
この掲示板は XREA.COM が生きてる限り多分あると思いますので、どうぞよろしくお願いします。
以上、さくらがちる頃に。
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とりあえず、第七十話が完成。復活記念の超長編の始まりです
第七十話 パレンバンからの手紙
Qタンク王国、ドガスデン基地。その洋風の施設を背景にした、数枚の写真
日戦軍団総司令官、松井元帥が基地の視察に来た際、撮ったものだ
当時、その基地に所属していた、第一一五中隊の当時の隊員が、一両残らず写っている
各分隊ごとに撮られたものもあり、その中に、松井元帥が一緒に写った物があった
その裏面には「CQ暦243年10月14日 ドガスデン基地司令部 溝口中尉以下十両及び松井元帥」と書かれている
溝口分隊の写真であった
まだ使い慣れない写真機の時限装置(=タイマー)を試すために、溝口分隊と一緒に撮ったものだ
中尉になりたての溝口の隣には、よき部下佐藤、萬屋両少尉。その手前には松井元帥が写っており、溝口たちの後ろには宇野沢准尉、田辺、佐軒両軍曹及び、寺島軍曹。その隣には入隊したての初年兵(注:日戦軍団では二等兵を入隊からの年数で呼んでいる)たちが写っている
松井元帥「・・・また、こんな写真が撮れる日が、来るのだろうか・・・」
あのころ、キュワールは荒れていた。幾多もの大戦が続き、平和はほんの五〜六年で崩れていた
そして、その大戦の最中で、大勢のチョロQが死んでいったのだ
松井元帥「それを分かっていない指導車が、戦争を引き起こすのだろう」
灰田大佐「・・・司令、もうすぐベータです」
少し前まで、ベータ沖合いで哨戒活動を行っていた第一特務艦隊は、補給を完了させた潜宙艦隊と交代して、ベータへと寄航した
ベータに寄航した「紀伊」から、数両のタンクがやってきた
復興が始まる基地内部で、またも新たに運んできた地底戦車が内部を走り回っていた
松井元帥「・・・久々だな、この基地も・・・」
何しろ、パレンバンと並ぶ巨大要塞。建造当初に視察に来ただけで、あとは少し前のベータ防衛戦のころから来ていなかったのだ
今度の改装で、また配置が変わっているはずだ。そのために、彼は基地内部を調べていたのであった
松井元帥「・・・しかし、あいつもうまい具合に作ってくれたものだ」
斎藤技術中佐のことである。基地の設計と建造指揮を担当していた彼は、さまざまな新機軸をこの基地に盛り込んでいたのだ
あの第五滑走路も、その一つであった
松井元帥「・・・あいつも、グリシネ軍部から出てきた身だ。連中、精鋭を引き抜かれて、困ったんだろうな・・・」
斎藤技術中佐の父は、グリシネ空軍の設計技師だったんだそうだ
ただ、新機軸をなかなか取り入れない頑固な一面があり、松井元帥は彼を「石頭の設計技師」と呼んでいたと言う
しかし、優秀な設計技師だったことには変わりなく、技師でありながら軍事会議に出席して、松井元帥と論争を極めたこともあった
特に激しかったのは、第四次キュワール大戦迫る中での戦略会議であった
陸海軍の軍事予算を削減し空軍に回そうという彼に対し、松井元帥は「陸海軍を単なるハリボテにするつもりか!」と批判したところ「腰抜けどもは黙ってろ!」と言い返され、反抗した松井元帥は「陸海軍を腰抜けのハリボテにしたのは貴様ら空軍のエリート気取りの石頭どもだ!」と言い返し、一時は銃撃戦になりかけたほどだったという
それを止めたのがモントレー元帥であり、その功績から陸軍総司令官に抜擢されたという
松井元帥「参謀本部ほど、悩ましい敵は無かったな・・・」
無論、厄介な連中は、彼だけではなかった。さまざまな「敵」がグリシネにはいたのだった・・・
松井元帥は、あの大規模な戦闘があった外部へと出た
無論、カルオス帝国軍の攻撃を受け撃破された地底戦車の状況を調べに行ったのだ
大型の牽引車に引かれ、六三式地底戦車の残骸が動き出していた
操縦しているのは、この地底戦車に搭乗していた島村兵長であった
松井元帥「・・・どうだ、直せそうか?」
島村兵長「直せるとは思いますが、少々時間がかかると思います」
機関部はやられたが、再使用は可能である。たとえ使えなさそうな残骸でも直して使えるようにするのが、日戦軍団整備班である
松井元帥「とりあえず二両持ってきたから、基地の修理はそっちで大丈夫だな」
島村兵長「なるべく早く済ませておきます」
松井元帥「ああ、頼んだ」
牽引車はそのまま、格納庫へと走り去っていった
松井元帥「ベータの守りは、地底戦車に任せるか」
この「地底戦車」の発案は日戦軍団陸軍のチヌ元帥である
海の潜水艦と同じように、陸の兵器も下からの攻撃に弱いのではないか。ということで、地中に潜ることの出来る戦車を開発したということである
他にも日戦軍団は、対空用熱線砲車、自走噴進砲などさまざまな新兵器を開発していた。無論、これはQシュタイン連邦のバックアップがあってこそ実現した物であった
「紀伊」の他の幹部も、ベータ基地を視察していた
航空隊司令の角田少佐は、第五滑走路に来ていた
角田少佐「航空隊の手配は大変そうだな・・・」
京城大佐「俺の隊も臨時で派遣されてきた。第四機動艦隊の再編がまだだからな」
角田少佐「・・・古田がいなくなっちまったからな・・・」
京城大佐「ああ、あいつ、新鋭機にやられたんだっけな・・・」
精鋭の搭乗員多数が、ベータ上空で散った
京城大佐「飛行場や飛行機は、いくらでも作り直せる。でも、搭乗員は・・・」
角田少佐「どこぞかのお偉いさんが言ってたな。搭乗員は育てるのに五年はかかるって・・・」
そこに、陸上部隊の総指揮を執っている米沢大将がやってきた
米沢大将「航空隊の手配が少々遅れているらしい。どうも、パレンバンでの戦況が原因らしいな」
京城大佐「敵艦隊を殲滅した、との報告は聞きましたが・・・」
米沢大将「後詰めがいたらしい。連中は強行作戦を好むからな」
角田少佐「クリーク王国軍も、中途半端な奴らですな」
米沢大将「いや、新兵器の装弾数が少ないだけかも知れんぞ」
京城大佐「やはり光学兵器といえど、装弾数には限りがありますか・・・」
角田少佐「今度は、パレンバン陸上航空隊の出番ですな」
米沢大将「ああ、そうだな。京城、確かおまえの弟だったな。パレンバンの飛行隊長は」
京城大佐「そういえば、あいつでしたな。乗ってるのは旧式ですが、腕は確かです」
米沢大将「ああ、その件に関しては、何度か聞いてる」
角田少佐「第六次キュワール大戦のころからの精鋭飛行機乗りだったそうですからな」
米沢大将「確か、バタビア君と組んでパパイヤアイランド沖に出撃した際も、現在とは異なる噴進機であっても機銃のみを用いて敵機総数八機を撃墜するという戦果を挙げていたな」
京城大佐「まあ、今回も活躍するでしょうな。きっと今度は十数機ぐらい落とすはずです」
米沢大将「そりゃ、頼もしいな。陸には矢矧や溝口がいるし、撃退は無理としても、大損害を与えることは出来るだろうな」
角田少佐「装甲列車隊も配備されていますから、そこでとどめは刺せるでしょうな」
米沢大将「・・・だが、油断は禁物だ。敵が新兵器を投入している可能性もあるからな」
京城大佐「確かに、そうですね。敵の新兵器や、当然精鋭の飛行兵もいるはずです。古田を撃墜した奴とか・・・」
角田少佐「さすがに、そいつはいないと思いますぜ。諜報部の話では、『遠風』の艦艇配備は難しいとのことで・・・」
米沢大将「・・・とにかく、彼らの奮戦に期待するのみだな」
エンジンの音が聞こえる。哨戒機の交代の時間のようだ
第七十話 続く
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軍部の確執。サブタイトルこそ某映画ですが、手紙というか写真でした
第七十話 パレンバンからの手紙
そして、軍港に停泊する「アナポリス」へ、一両のタンクが近づいていた
松井元帥であった
松井元帥「・・・厚木准将」
「アナポリス」の艦橋を見上げるタンクに、語りかける
厚木准将「・・・松井元帥?」
松井元帥「・・・あの時の件、感謝するよ」
第三艦隊の空母郡を、危険を冒してまで守り抜いたことである
厚木准将「・・・松井元帥、当然のことをしたまでです。無茶はしましたがね。味方を守ることは、兵隊として当然です」
松井元帥「・・・あの時と、変わってないな」
松井元帥が厚木准将に出会ったのは、陸戦指導に行った際である。陸軍元帥でありながらも海軍に興味を持ち、陸戦指導の際には指揮を執っていたのだ
そうであれ、グリシネの将官がこのようなことを言うのは予想外であった。松井元帥は感動した
空軍国家グリシネにとって、陸海軍はお荷物でしかなかった。それを覆したのが、松井元帥たち転属幹部であった
雑談をしながら、松井元帥は質問をした
松井元帥「・・・そういえば、貴官は我が軍をどう思っているのかね?」
厚木准将「かけがえのない、友軍です。参謀本部の連中は、日戦軍団を『反逆車』とか言ってますが、決め付けずに受け入れるべきです。松井元帥は確かに、叛乱と見られてもおかしくない行動をとりましたが、軍部の不手際が元だったでしょう。そして、キュワール連合の中核をなしているじゃないですか!参謀本部も見習うべきです!」
参謀本部、本国軍部の中核をなしている組織である
特に、そのまま総司令部に直結している空軍参謀本部は、松井元帥ら日戦軍団の幹部を恨んでいるのだ
無論、それに異を唱えるものもいる。陸軍本部の原田大将は「いくら戦略が合わないからって、かつての戦友を見殺しにはできない」と、日戦軍団を支援しているのだ
松井元帥「・・・まあ、大声張り上げなくても、貴官が言いたいことはよく分かる。確かに、俺は軍部の不手際で、叛乱とも取れる艦隊強奪を起こしたからな。さて、まだドニゲッテル少将に挨拶してなかったんだったな。司令室まで行って来るよ」
そういうと、松井元帥は港を出て行った
厚木准将は再び、溶接作業が行われている「アナポリス」の艦橋を見上げながら、呟いた
厚木准将「・・・そうだ、今のグリシネ軍部は腐敗し始めている・・・何とか、止められないものか・・・」
グリシネ軍部は、たびたびの改革によって空軍主体へと変わっている。厚木准将も空軍参謀本部の戦略に異を唱え、最前線へと送られた身なのだ
原田大将も、反抗姿勢を表に出来ないのだ
一説に寄れば、空軍参謀本部は国王さえも介入できない謎の領域になっているそうだ・・・
グリシネ国、軍参謀本部会議室
また、くだらない作戦会議が行われている
陸軍参謀長、原田大将は、空軍を嫌っている参謀の一両であった
だが、いざそれを口に出せば、松井元帥と同じ道をたどることは分かっていた
きっと、同じことを考えている参謀は大勢いるだろう
空軍参謀A「しかし、海軍第三巡洋宇宙艦隊のあの行動は何なのかね!」
空軍参謀B「我々の敵である日戦軍団を命がけで守り抜くなど狂っている!」
海軍参謀、西郷中将が反論する
西郷中将(車種:四式中戦車)「あれは厚木准将が勝手に行った行動ではないか!」
それが起爆剤となった。一両が空軍に反論すれば、他が続く。この日も同じだった
海軍参謀「現場の兵士の独断行動で、上層部が責任を問われるなど、それこそ狂っている!」
空軍参謀、黒田中将が怒鳴り散らす
黒田中将(車種:五式中戦車)「貴様、反逆車の肩を持つつもりか!」
海軍参謀「そういう意味で言っているのではない!」
空軍参謀A「誉れ高きグリシネ空軍にたてつくつもりか!」
陸軍参謀A「今のグリシネ空軍に誉れなどない!こんな腐敗した軍隊、松井元帥が辞任して当然だ!」
黒田中将「・・・貴様、後は分かっているだろうな!?」
陸軍参謀B「気に入らない参謀は即抹殺、そんな参謀がいるからグリシネ空軍は腐敗したんだ!」
黒田中将「言ったな!?」
海軍参謀「十数年前まではそりゃ、国王自慢の誉れ高き空軍だった!しかし今となっては、単なる腐敗した形だけの空軍ではないか!」
空軍参謀B「ハリボテ海軍どもに言われたくはない!」
海軍参謀「貴様らこそ、せっかくの国産品を使用しているというのに、本土に置いていては宝の持ち腐れではないか!」
そう、空軍も「空軍直轄宇宙艦隊」をいくつか所有しているのだが、全く使おうとしないのである
空軍参謀A「あれは最後の切り札だ!」
海軍参謀「損害を恐れているだけではないのか!?」
斎藤中将(車種:八九式中戦車乙型)「俺が設計した船にケチつけるつもりか!?」
海軍参謀「艦にケチをつけているのではなく、運用方法にケチをつけているというのだ!」
空軍長官「うるさい!ヘタレ海軍が!」
海軍長官「ヘタレはそっちだろうが!」
海軍参謀A「飛行機扱ってるくせに、航空力学を一切理解しない機体を設計しやがって!」
斎藤中将「誰が設計した機体の事だ!?」
海軍長官「貴様だ!この奇想技師!」
陸軍参謀B「だいたい、貴様らは前線を知らなさ過ぎるんだ!」
海軍参謀「そうだ!奇麗事ばかり言いやがって!そんなことが通じるほど、戦争は甘くないんだぞ!」
陸軍参謀A「空軍の連中がハリボテである以上、グリシネ軍部は全て見掛け倒しなんだ!」
モントレー元帥「作戦会議で口喧嘩をするな!」
結局のところ、この日の作戦会議は陸軍長官、モントレー元帥の判断により中断された
会議室を出た原田大将と西郷中将は、通路の隅で話し合っていた
原田大将「・・・あいつが何故ここの参謀を辞めたのか、それはここが腐敗することを見越していたんだな・・・」
西郷中将「まあ、そういうなよ。グリシネ空軍の連中だって根はいい奴なんだから・・・」
原田大将「しかし、厚木准将の独断的行動で西郷中将が責任を問われるなんて、間違ってないか?」
西郷中将「そもそも、友軍たる日戦軍団を守って何が悪いのか、それが分からない・・・」
原田大将「・・・でも、西郷中将はそれを参謀会議で口に出すことはできない・・・」
西郷中将と空軍参謀たちは、古くからの親友なのだ。そして原田大将とも、第二次キュワール大戦以来の戦友である
西郷中将「・・・ある意味、松井元帥はすごい奴だよ」
原田大将「軍部の不手際を見るや否や、唐突に『こんな腐った軍部、辞めたほうがマシだ!』なんて叫んで、椅子を蹴飛ばした挙句、部下全員と三軍の精鋭たち、そして海軍主力艦隊を一斉にかっぱらって義勇軍やってるんだもんな・・・」
西郷中将「・・・まあ、いざとなったら、またなんとかしてやるか」
原田大将「だな。あいつも、俺たちの活躍に期待してるはずだ」
松井元帥は第五次キュワール大戦を前にした参謀会議において、空軍のお粗末な戦略を聞くや否や「こんな腐った軍部、辞めたほうがマシだ!」と叫び、椅子を蹴飛ばし退室、それから数日後、部下のチリ元帥らと共にグリシネ軍部を脱退、当時、軍部の運用法が災いしてグリシネ軍港に放置されていた戦艦「大和」以下グリシネ海軍主力艦隊をあっさりと強奪したのだ
その際、グリシネ空軍の猛烈な航空攻撃を退け、当時から縁があったQシュタイン帝国(当時)のグリドール軍港へ停泊、以後、Qシュタインの支援を受けて発展を続けてきたのが、日本戦車軍団であった
第七十話 続く
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平岡登場。そういえばチリ元帥も88mm砲装備でした
第七十話 パレンバンからの手紙
通路を進む松井元帥は、開戦時以来会っていないグリシネ軍上層部のことを思い出した
松井元帥「・・・陸海軍はともかく、空軍の連中は最低最悪だったな・・・」
自らの保身と目の前の戦果ばかりを気にし、戦略性に欠けていた。自分の気に入らない奴はあっさりと射殺、航空機の操縦は出来るがミサイル頼りで機銃によるドッグファイトは出来ない
そんな奴らがグリシネ空軍上層部だったのだ。Qトルック戦争のころは国王自慢の軍隊だったが、いまや見る影もない
もっとも、例外もいないわけではないのだが、彼らもそういった「強豪勢力」たちにはなす術もないのだ
結果的に、グリシネはジェット機の爆音が絶えない「騒音都市」になってしまったのだ
松井元帥「レラッフティの奴、そんな事実も知らないんだろうな・・・」
若くして派遣部隊の隊長になったレラッフティ曹長のことである
ふと、廊下でドニゲッテル少将とすれ違った松井元帥は、ドニゲッテル少将を呼び止めた
松井元帥「少将、司令室はどうなってる?」
ドニゲッテル少将「まだ、遺体の搬送が終わってないそうです」
松井元帥「・・・そうか・・・」
ドニゲッテル少将「・・・皮肉なものです。我々指揮官ばかりが生き残って、彼ら兵士たちが死んでいく・・・」
松井元帥「・・・俺も、たくさんの戦争を見てきたが・・・無能な上層部によって、前線に放り出され、そして無茶苦茶な指示を受け全滅する。そんな部隊が後を絶たなかった・・・」
Qトルックにおける紛争において、グリシネ軍は陸海空三軍を用いての対Qトルック迎撃戦が行われたが、陸海軍の息は合いながら最強の戦力である空軍との息が合わず、陸海軍はほぼ壊滅。当の空軍に至ってはそれ以降は損害を恐れてQトルック上空に一機の飛行機もよこさなかったのだ
参謀本部にいる参謀たちはみんな意気になっていたが、何故か自ら戦闘機に乗って敵機の迎撃には向かわなかったのだ
松井元帥「口先だけは達者だが、果たして・・・」
先ほど述べたように、飛行機のことばかり考えたためにグリシネを「騒音都市」にした挙句、今度は「飛行機の音がうるさいから空軍司令部を移転する」と来た。どうせまた、航空基地を増やして「騒音都市」にするに決まっている
何しろ自らのことしか考えないから、「海軍なんぞと共同で行えるか」などど言って、陸上基地で夜間飛行訓練をやるような連中だ。陸海軍共同で行うために沖合いで空母を用いて行っている日戦軍団とはわけが違う
さて、その日戦軍団総司令部周辺はといえば、グリシネ空軍さえも避けて飛ぶ地域なので、その轟音が響くことはほとんど無い。強いて言えば、敵機の空襲か、グリシネ空軍の航空機が強行的に飛来したときぐらいであろう
以前、グリシネ空軍の航空機が日戦軍団司令部空爆のために飛来したが、全機撃墜の報告が入ったのは言うまでもない
松井元帥「そういえば、以前、徹底抗戦を唱えつつも自らは一切戦場に出ようとしない彼らに対し『散々部下を犬死させておいて、どこまで貴様らは逃げるつもりだ!』と言ったことがあったな・・・」
ドニゲッテル少将「・・・それで、向こうの陸海軍との連絡は?」
松井元帥「ああ、空軍に知られんように、内密に行ってる」
ドニゲッテル少将「・・・大変なことになってしまいましたな」
松井元帥「・・・参謀本部も色々あるんでな」
ドニゲッテル少将「国に残った参謀たちも、大変ですな・・・」
松井元帥「そのうち前線に引っ張り出されるだろうさ。そのときが、グリシネの最期だよ・・・」
ドニゲッテル少将「・・・そうですな」
松井元帥「俺は参謀たちは敵だと思っているが、前線部隊は大事な友軍だと思っている」
ドニゲッテル少将「さすが、我々をうやむやの内に連合国に引き入れた指揮官ですな」
松井元帥「・・・溝口の奴、生きて帰ってこれるかな・・・」
ドニゲッテル少将「・・・松井元帥?」
松井元帥「まさかパレンバンに来るとは思わなかったから、まだ隊の派遣をしてないんだよ。まあ、高須の根拠地隊だけよりはマシだが・・・」
ドニゲッテル少将「・・・犠牲車、増えるかもしれませんな・・・」
松井元帥「ああ・・・」
ドニゲッテル少将「それで、一体どこへ?」
松井元帥「司令室・・・の跡地に行く予定だ。遺品の回収にな」
辺り一体でさまざまな作業を行っている兵士たちの間を縫いつつ、松井元帥は司令室へと進んでいったのであった
さて、その司令室は、まだ瓦礫と化していた
以前、藤田が必死に掴み掛かって話した通信機のマイクも、垂れ下がったままであった
ここに並んでいる、レーダー員や通信兵たちの遺体を処理するのだから、大変である
日戦軍団陸軍所属の平岡二等兵も、その辛い任務を課せられた一両であった
彼は、瓦礫の間から一両の特二式内火艇を見つけた
砲身は折れているが、それ以外に外傷は少ない。爆風でやられたのだろうか
側面装甲の名札に「平岡」と書かれていた。そして、その傍らにある階級章は、赤地に星が3つ。上等兵だ
平岡二等兵(車種:五式中戦車改(88mm砲装備。チリ元帥(同じく88mm砲装備の五式中戦車)と若干の相違点あり))「・・・同じ苗字か・・・偶然なこともあるものだ。でも、俺はこんな風にはなりたくはないな・・・」
誰だって、死にたくは無いものだ
彼はその特二式内火艇を安置室へと運んだ
そして、黙祷を行った。そのときであった
何か、声が聞こえた
だが、部屋の外ならともかく、部屋の中には彼しかいない
「ここだよ!」という大声が聞こえた。真後ろであった
振り返ると、さっき安置したはずの特二式内火艇が浮いていた
平岡二等兵(・・・う、嘘でしょぉぉーーーー!?)
信じられないことが、起こっていた
無論、そんなことはいざ知らず、遺体の移送作業は黙々と行われていた
第七十話 続く
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空中戦。参考用に敷島のスペックデータも載せました
第七十話 パレンバンからの手紙
方や、敵部隊の上陸迫るパレンバンでは、各部隊の展開が行われていた
その中核を勤めるのが第二防御陣地、日戦軍団陸軍第一一三中隊および第一一五中隊である
第一一五中隊の指揮は同部隊きっての精鋭、第七小隊の指揮を務めていた溝口少佐が担当することとなった
中隊参謀の砂原も少佐に昇進したため、佐官が三両も存在する精鋭部隊となっている
火器に関しては、三八式十二糎榴弾砲六門ならびに三八式十五糎榴弾砲四門、一式機動四七粍速射砲四門、九四式速射砲八門を装備している
それ以外にも九二式重機関銃四丁、三年式機関銃四丁、十一年式軽機関銃四丁、九八式高射機関砲六門といった各種小火器や、八八式七糎半高射砲四門、十一年式七糎半高射砲八門といった高射砲郡も配備されている
溝口少佐「・・・榴弾砲が十門か。高射砲を含めても少々物足りないところか」
矢矧中佐「小火器も若干難がある兵装がほとんどだからな。装甲列車隊を含めても、あまり多くはない」
高須少佐(パレンバン基地根拠地隊司令。車種:三式中戦車)「司令、準備完了です」
矢矧中佐「分かった。あとは敵が来るのを待つのみだな・・・」
第一防御陣地にはラフォールス少佐が指揮するQシュタイン連邦軍同基地守備隊が、第三防御陣地にはスターク少佐が指揮するプロトン合衆国同基地守備隊が布陣している
それ以外にも、ヴァイナー陸軍第197機動大隊、グリーンアイランド第221小隊が布陣している。第197機動大隊は高速力を誇る高速部隊であり、グリーンアイランド第221小隊も強力な重火力支援部隊だが、錬度が低いので遊撃部隊として配置されている
矢矧中佐「三つの防御陣地と、二つの遊撃部隊、そして後方に控える装甲列車隊。これらを用いて、敵部隊に打撃を与えるのだ」
溝口少佐「・・・九龍司令はフレイ中佐の護送のために、天城、久村両名と共に輸送船に乗ったそうです」
矢矧中佐「後は、後詰めの『敷島』だな」
溝口少佐「本土の奴と比べると大して大きくは無いそうですが、強いことには変わりありませんな」
四一式重装甲列車「敷島」型。時折その名を見せるその新兵器は、以下の性能を有する
四一式重装甲列車「敷島」型
全長:一両20m(十三両編成)
装甲:複合装甲
武装 (警戒車):15.5cm加濃砲一基
12cm加濃砲一基
90mm滑腔砲二基(一部は75mm榴弾砲を利用)
(砲車):12cm滑腔砲二基
90mm滑腔砲二基(一部は75mm榴弾砲を利用)
12.7mm重機関銃二丁
(機関車):90mm滑腔砲二基(一部は75mm榴弾砲を利用)
(貨物車(甲)):7.7mm重機関銃二丁
物資、兵員搭載
(貨物車(乙)):特に無し(物資/特殊戦車搭載)
(貨物車(丙)):15cm榴弾砲一基(降車して使用する)
7.7mm重機関銃二丁
(指揮車) :75mm榴弾砲一基
7.7mm重機関銃二丁
(後部警戒車):特に無し(物資搭載。なお、車体後部に7.7mm重機関銃を搭載可)
最大速力:100km程度
編成:警戒車−砲車−砲車−貨物車(甲)−機関車−機関車−砲車−貨物車(甲)−貨物車(乙)−砲車−指揮車−貨物車(丙)−後部警戒車
近年、改装が進み、重機関銃が口径7.7mmの九二式重機関銃から口径12.7mmの三一式重機関銃への更新が行われているが、現在は砲車のみの改装にとどまっている。今回第二防御陣地に配備されているのは、この砲車から降ろされた代物である
矢矧中佐「おそらく第一派は航空隊だ。高射機関砲および高射砲要員は戦闘配置!」
高射機関砲、高射砲に次々と兵士が集まる
仰角、合わさる
後は、敵機飛来を待つのみだ
格納庫で航空機の整備をしている兵士たちがいる。Qシュタイン連邦の第221航空隊、第341航空隊と、日戦軍団第362航空隊、第369航空隊である
この第362航空隊の指揮官は、かの第117航空隊司令、京城大佐の弟、京城少佐である
海軍航空隊指折りの搭乗員であり、その素質は兄以上とも言われている
だが、最新鋭機たる電征を駆る兄とは違い、彼は零戦一一型を使用している
彼曰く、「使い込んでいるこっちのほうがいい」のだそうだ
事実、電征は旋回性に難がある。防弾性では電征のほうが勝るが、要するに零戦一一型でも「当たらなければ問題はない」のである
彼らの相手となるラファリエス軍の航空隊はとてつもない規模を持つ
数を言えば、六〇〇から七〇〇機はいると言う。果たしてどれほどの実力かは分からないのだが
京城少佐(車種:60式自走無反動砲)「敵機の飛来までに準備を済ませるんだ!」
日戦軍団兵士「了解!」
総員、出撃準備。スクランブルのときは近い
司令室には、基地司令のボルナソス大佐、参謀のガランタン大尉、そして脱出した通信兵の代わりに席に座っている陸戦兵たちがいる
一大陸戦となる今回の戦闘、いざとなれば彼らも戦場に出るのだ
通信を担当している陸戦兵が、電探の光点を見て叫ぶ
Qシュタイン兵士A「敵、艦上機多数飛来!推定四〇〇機!」
ボルナソス大佐「よし、各機出撃せよ!」
滑走路から次々と航空機が飛び立っていく
敵機の迎撃に向かうのである
その飛行場の端で、プロトン合衆国第133航空隊の各員が集合していた
ラグラ中佐「各戦闘機搭乗員は、燃料補給と機体整備を行っておけ」
プロトン兵士「了解!」
そう、彼らも出撃するのである
一方、第一防御陣地で指揮を執るラフォールス少佐は、飛来する敵機を高射砲で迎撃していた
若干ながら、こちらにも被害は出ている。敵陸上部隊の襲来まで、損害は押さえなければならない
そのとき、無数の友軍機が飛来した
ラフォールス少佐(車種:III号戦車L型)「よし、こちら側に飛来する敵機のみを迎撃せよ!誤射は絶対にするな!」
まあ、そう簡単に誤射をするはずはないが、念のためだ
そして、二四五機もの連合軍航空隊と、二四〇機のラファリエス軍航空隊の大航空戦が展開された
京城少佐「よし、各機攻撃初め!」
主軸となる零戦一一型が一斉に攻撃を開始する。この第362航空隊には零戦一一型以外にも紫電および紫電改も所属している。公式記録上、紫電改の最高速度は590km台だが、実際には600km以上出るという
なお、パレンバン基地には精鋭の桜花航空隊こと第965航空隊(百の位9は「特殊戦闘機(カタパルト発進の機体)」である)が所属しているが、今回は重爆撃機が飛来していないため、出番ではないのだそうだ。航続距離、機動性共に高い艦上機が相手で、航続距離が短い桜花では分が悪いのだ
飛来するGu−117の背後に付き、機銃を撃つ。楽な相手であった
一機を撃墜、続いて別の機体を狙う
敵はこちらに気づかなかった
再び、Gu−117の背後につく。敵もこちらに気づいたらしく、上昇をはじめる
しかし、零戦の機動性の前にはなす術もない。次の瞬間、Gu−117は機銃弾を受け、墜落した
背後から、敵のロケット弾が襲い来る
しかし、それをかわし、ロケット弾を発射した敵機の背後につく
そして、機銃を放つ
敵、第1331航空隊司令、エンデルス中佐は、次々とGu−117を撃墜していく零戦一一型を見た
エンデルス中佐(車種:IV号戦車J型)「相手は旧式機だぞ!一体、どうなってるんだ!?」
機動性の高いGu−117が、たちまち銃弾を受け墜落していく。これはもはや、錬度の問題であった
エンデルス中佐「しかし、我が最新鋭機の前には無力!正面からやってくれる!」
一機の零戦一一型の正面に、エンデルス中佐の乗る新鋭戦闘機、Gu−122が迫った
京城少佐は、正面から迫るGu−122が、隊長機だと気づいた
京城少佐「・・・隊長機か。ジェット機であろうが問題はない!」
正面から、迫り来るGu−122を照準に合わせ、機銃を放った
敵の30mm機関砲四丁と、同時だった
二機の戦闘機が、機銃を放ちつつすれ違う
そして、旋回して衝突を回避した
エンデルス中佐「敵、隊長機を撃・・・なにっ!?」
煙を噴いたのは、Gu−122のほうだった
直後、Gu−122が火を噴いた
無数の銃弾を翼に受けていたのだ
何とか冷静になったエンデルス中佐は、機を旋回させる。今度こそ零戦を撃墜するのだ
しかし、零戦は銃弾をかわし、そのまま視界から消えた
エンデルス中佐「ど、どういうことだっ!?」
零戦は、Gu−122の後ろについたのだ
京城少佐「よし、あとは止めを刺すのみだ!」
京城少佐機は、20mm機関砲を放った
エンデルス中佐「高速、離脱だっ!」
スロットルを開き、離脱をはじめる
しかし、20mm機関砲弾は、胴体後部のエンジンに命中、爆発した
エンデルス中佐「・・・嘘だろ・・・」
そして、エンデルス中佐のCPUを、轟火が襲った
爆発、炎上し墜落するGu−122の脇を、零戦一一型が飛んでいく
京城少佐「敵、隊長機を撃墜!」
再び、敵編隊へと向かっていく
激戦、なおも続く
第七十話 続く
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第三防御陣地陥落。一部の砲兵装は資料が無かったので省略してます
第七十話 パレンバンからの手紙
そして、ついに敵部隊が強行上陸を果たした
第一防御陣地の機銃、火砲が果敢に砲撃する
機銃はMG08が六丁、MG34が二丁、MG34対空仕様が六丁、2cmFlak38が四丁。あわせて十八丁にも及ぶ
火砲に関してもかの有名な8.8cmFlak36四門配置されているほか、7.5cmFlak四門、3.7cmPak36/37が六門、5cmPak38が四門、5cmFkが六門、7.5cmFk38が二門配備されている
ラフォールス少佐「向こうはざっと三〇〇〇両、こっちは七〇〇両だ。篭城戦で行くぞ!」
この陣地が突破されるまで、どれだけの敵を倒せるか
戦線は我が方が不利。敵も榴弾砲を運んできている
Qシュタイン兵士B「敵も榴弾砲を持っているようですね」
ラフォールス少佐「進んできたものだ。ベータでの反省か?」
ベータでは遠距離攻撃用の砲台が少なかったため、地底戦車に次々と部隊が倒されていった。おそらく、ラファリエス軍もその反省で、遠距離攻撃が出来る榴弾砲を持ってきたのだろう
もっとも、あの時は艦砲射撃があったから、似たようなものだろうが・・・
第三防御陣地も、同じ篭城戦法を取っていた
スターク少佐(車種:M4A3E8)「なんとしてでも死守しろ!それが俺たちに下された命令だ!」
第三防御陣地には、M2重機関銃十二丁、M1919重機関銃十四丁、M1918小銃十四丁といった各種機関銃が配備されている
このうちM2重機関銃はこの基地で配備されている機関銃では最も威力が高く、もっとも戦果が挙げられるであろうといわれた物であった
砲に関してはM3対戦車砲十門、M1対戦車砲十門、M3高射砲八門、M1A1高射砲四門が配備されている
このうち、M3高射砲は対空、対地ともに威力が高く、過去の戦闘においてもことごとく敵機を撃墜したとの記録が残っているほどだ
それゆえに、第二防御陣地に次いで堅い陣地であることには変わりは無い
そのとき、突如として防御陣地入り口を爆風が襲った
スターク少佐「何だっ!?」
傍らにいたライカミング曹長が返答する
ライカミング曹長(車種:M4A1)「隊長、敵の砲撃です!」
スターク少佐「艦砲射撃かっ!?」
ライカミング曹長「いえ、陸上砲台のようです!」
スターク少佐「連中はあれほどの威力を持つ陸上砲台を所有しているのか?!」
ライカミング曹長「・・・どうやら、そのようです!」
敵陣の遠方を見ると、確かに戦艦の主砲塔のような巨大な砲台が見える
そして、その敵部隊が前進を開始している
スターク少佐「機銃、砲陣地応戦始め!死守せよ!」
そう叫ぶや否や、スターク少佐は敵部隊へ突撃を開始した
一方、ラファリエス軍は、28cm砲という艦砲に匹敵する大砲を持ち込んでまでも、敵の防衛陣地を破壊できないことに苛立っていた
この攻撃部隊の指揮官、ケファルス大佐は狙撃手である
狙撃照準機を使って、2500mの遠距離から、第三防御陣地に居座る合衆国軍を狙っていた
突撃してくる部隊の中に、他の車両とは装飾の異なるイージー・エイトを見つけた
後続の車両は通常のM4A1や、M3リー・・・いや、グラントであった
おそらく、部隊の指揮官だろう。照準をその指揮官に合わせる
正射必中。敵のターレット・リングを狙い、撃った・・・
ライカミング曹長は、聞きなれない砲声を聞いた
通常の徹甲弾ではない。ニビリアの精鋭兵が使う、高速徹甲弾に似た音だ
ライカミング曹長「隊長!危険です!」
スターク少佐「なんだっ?!」
しかし、間に合わなかった。ターレット・リングに、砲弾は命中した
ライカミング曹長「隊長!」
しかも、その高速徹甲弾は、いわゆる「高速徹甲榴弾」であった・・・
後続のM4A1が、指揮官と思しきイージー・エイトへと駆け寄った。しかし、そのイージー・エイトは事切れていた
ケファルス大佐(車種:SU−85)「よし、全軍突撃!一気に陥とすぞ!」
指揮官を失い、自慢の統制力を失った合衆国軍を撃破することなど、造作も無い
あっさりと包囲網を形成し、第三防御陣地は陥落した
第二防御陣地に、数両の合衆国軍兵士が駆け込んできた
高須少佐「・・・どうした?!」
ライカミング曹長「第三防御陣地、陥落!・・・指揮官、スターク少佐は戦死されました!」
矢矧中佐「・・・そうか・・・」
溝口少佐「・・・司令、次は我々の番です。スターク少佐の仇を討ちましょう!」
矢矧中佐「・・・そうだな、溝口。よし、俺の直轄分隊と、溝口分隊は入り口近辺にて待機だ」
溝口少佐「・・・今のうちに、写真機で隊員を撮っておきますか」
全員で集合写真を撮るほか、それ以外にそれぞれが一両ずつ写った写真も撮る
溝口少佐「・・・諸君、今回我々はこのパレンバン基地を防衛する任務に当たる。ライトウォーターのときのように、退くことは出来ない。だが、無茶はしてはならない。勇気と無謀は、紙一重だ」
彼らの並んでいるところの前には長い机があり、そこには料理が乗っている
高須少佐「・・・敵襲の前に、食事を済ませて置くように」
溝口少佐「中隊各員へ、何度も言うが・・・死んではならんぞ!」
佐藤大尉 \
日戦軍団兵士 >「ハイッ!」
萬屋大尉 /
宇野沢中尉\
田辺曹長 >「了解!」
佐軒准尉 /
返答も、普段どおりだ
だが、この中で生きて帰って来れるのは、果たして何両だろうか・・・
ベイシャン級大型空母「タイシャン」。ラファリエス軍の誇る大型空母で、その火力は巡洋戦艦に匹敵するという
その空母の格納庫に、普段は入っていない航空機が入っていた
大日本帝国の飛行機のようだ
その飛行隊の隊長が言う
飛行隊長「相手はエンデルス中佐機を撃墜した強敵だ。心してかかれ!」
大日本帝国兵士「了解!」
数十秒後、飛行甲板に三機の九六式艦上戦闘機と、三機の零戦一一型が上がってきた
そして、飛行甲板から発艦。行く先は、無論パレンバンである・・・
Qシュタイン連邦、第341航空隊
指揮官はユーリス少佐。精鋭の飛行隊である
二機のBF−109Gと、二機のFw−190Dが飛んでいる
そこに、六機の戦闘機が襲い掛かった
そのうち二機が一機ずつ単独で行動し、残りの四機はそのまま二機編隊で襲い掛かった
一瞬であった。あっさりと四機の戦闘機は撃墜されてしまった
Qシュタイン航空兵(通信)「隊長!四機の応答が途絶えました!」
ユーリス少佐「なにっ!?」
Qシュタイン航空兵(通信)「六機の大日本帝国軍航空機の攻撃を受け・・・隊長!来ました!」
それから数秒後、その機体からの通信も途絶えた
ユーリス少佐「た、たった六機の敵機に対し、この損害・・・」
どうやら、京城少佐のような精鋭搭乗員が乗っているようだ
ユーリス少佐「京城少佐!燃料補給を早く!」
京城少佐(通信)「こっちも急いでるんですよ!機体整備もそれなりに済ませておかないと・・・」
若干、被弾している機体が数機ほどいるので、それらの修理が必要だったのだ
が、既に整備を完了している機体がいた
そう、プロトン合衆国第133航空隊だった
ラグラ中佐「管制官、発進許可を!」
管制官(通信)「・・・しかし、僅か十八機では・・・」
ラグラ中佐「こちらもそれなりに腕はあります!京城少佐にも勝るとも劣りません!」
彼には熱意があった。管制官もそれを理解していた
管制官(通信)「・・・分かった。離陸を許可する」
ラグラ中佐「ありがとうございます!」
そこに、京城少佐がやってきた
京城少佐「すぐ追いつくんで、持ち堪えてください」
ラグラ中佐「分かってる、そう簡単には墜とされんよ」
かくして、十八機の戦闘機は、パレンバンの飛行場を飛び立っていった
状況は劣勢だった。ラファリエスの航空機とはほぼ互角に渡り合っていたが、大日本帝国の精鋭には対処が困難だった
既に八機ほどが落とされていた
そのとき、ユーリス少佐機に通信が入った
ラグラ中佐(通信)「こちら第133航空隊、日戦軍団航空隊到着まで、援護する!」
ユーリス少佐「・・・どういうことですか?」
ラグラ中佐(通信)「管制官に無茶言って、離陸させてもらった」
ユーリス少佐「・・・さすが、ラグラ中佐。操縦の腕と、熱意はかなりの物ですね」
これで、状況は互角となった
次々と飛来する敵編隊。ラグラ中佐機は華麗に銃弾をかわし、次々と敵機を撃墜していく
数分後、日戦軍団航空隊が到着した
それと同時に、Qシュタイン連邦航空隊は撤退を開始した
京城少佐は、前方に飛来する九六式艦上戦闘機を見た
どうやら、向こうの精鋭らしい
背後を取るが、捻り込みでかわされる
直後、銃弾の雨が降り注いだ
しかし、それをかわし、再び敵の背後につく
敵機、それを捻り込みでかわす
激しい格闘戦が、続いた
援護のために飛来する友軍機も、別の機体に次々と落とされていった
直後、敵機が急降下を開始した
京城機、後を追う
しかし、零戦最大の難点は、機体強度であった
防弾性を高めるために機体強度を上げた烈風、電征とは異なり、零戦、特に一一型は軽量化のために機体強度が低く、急降下時に速度が650kmを超すと空中分解の恐れがあるのだ
だが、敵の九六式艦戦はそうではなかった。結局のところ、振り切られてしまった
日戦軍団は、いつもそうだった。大日本帝国軍の精鋭を幾度か追い詰めたりするが、いつも振り切られてしまう。そうしているうちに、こちらの精鋭は次々と撃墜されていく
皮肉な物であった
九六式艦戦に搭乗する坂井大佐は、五機の僚機を集めた
下手をすると、撃墜されるところであった
杉田大佐(副隊長。車種:五式中戦車)「危ないところだったな」
坂井大佐(車種:五式中戦車)「ああ、あれがエンデルス中佐機を撃墜した強豪だな」
杉田大佐「・・・今度は、ああやって振り切ることは難しいかもしれんぞ」
坂井大佐「ああ、そうかもしれんな・・・」
六機の戦闘機は、今作戦での母艦である「タイシャン」へと戻っていった
基本的に、僚機が撃墜される前に手を引くのが坂井大佐のやり方である。生き延びれば、再出撃は出来るし、経験も積めるのである
この日の彼らの戦果は、戦闘機十六機撃墜、火砲三門破壊であった・・・
第七十話 続く
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第二防御陣地の奮戦。忘れ去られてた杉山大尉も再登場
第七十話 パレンバンからの手紙
方や、ラフォールス少佐の第一防御陣地が後退してきた。負傷車の数が多いことからである
矢矧中佐「みんな怪我だらけだな。よし、要塞の中で・・・」
しかし、若干の弾片を喰らっていたラフォールス少佐は言う
ラフォールス少佐「いえ、自分はここで戦います!」
矢矧中佐「・・・よし、志願車はここで戦え。戦力の足しにもなる」
ラフォールス少佐以下数両の部下は、第二防御陣地に残って防衛戦を展開することとした
見張り台に立っていた兵士が言う
日戦軍団兵士B「敵戦車部隊現出!数四〇〇〇両!」
矢矧中佐「よし、降りて応戦しろ!」
兵士は九二式重機関銃の近くまで降りた。九二式重機は他の機関銃とは異なり、発射釦が側面についているのだ
そして、その機銃陣地は「ベトン」と呼ばれる厚い鉄筋コンクリートで固められた土台の上に建っているのだ
敵は28cm砲まで繰り出してきた。列車砲か何かだろうか。いや、砲台そのものだった
宇野沢中尉「砲撃音から察するに、二八糎連装砲ですな」
歴戦の猛者たる宇野沢は、砲撃音だけで砲の種類を言い当てられるのだ
溝口少佐「厄介な戦力だ。だが、我が機銃陣地のベトンはそう簡単に破れる物ではないだろう」
敵戦車部隊は果敢に攻撃を仕掛けてきた。溝口分隊の配置にも、三年式機関銃が据え付けられた銃座が存在する
溝口少佐「寺島!機銃配置に付け!」
寺島曹長「了解!」
寺島曹長は機銃へ飛びつき、敵へ狙いを定め、射撃を開始した
いくら機関銃対策のために装甲を厚くしているQタンクといえども、連射されてはひとたまりも無い
正面装甲に数十発もの命中弾を受け、吹き飛ぶ敵兵
ここが落ちればパレンバンの陥落はほぼ必至。いくら詰めに「敷島」がいても、最後の抵抗にしかならないだろう
溝口少佐「伊沢!給弾は貴様に任せた!」
伊沢一等兵(車種:一式中戦車)「了解!」
三年式機関銃も、当然弾数には限りがある。弾帯は彼らのいるトーチカのすぐ下に置かれていた
接近する敵戦車。無数の銃弾が敵戦車に襲い掛かる
次々と炎上する敵戦車
日戦軍団兵士B「喰らえっ!」
銃弾、次々と敵戦車を撃破する
杉山大尉「撃てぇ!」
一門の一式機動四十七粍速射砲の指揮を執っている、杉山大尉が叫ぶ
放ったタ弾は敵戦車の側面装甲に直撃、爆発する
後続、もう一両に照準を合わせる
日戦軍団兵士C「装填完了!」
杉山大尉「撃てぇ!」
もう一両、炎上する
敵は我が方の数倍はある。しかし、精鋭部隊たる日戦軍団の奮戦により、戦線は膠着状態となった
さて、この四〇〇〇両もの敵兵は、ラファリエスの第二上陸作戦部隊であった
指揮官ケファルス大佐は自走砲、SU−85である
高射砲改装の85mm砲は、大抵の戦車を破壊できる威力を持つ。無論、それなりの徹甲弾が必要だが
彼を筆頭にSU−85が三両、SU−76が三両が、狙撃班として部隊後方に居座っている。無論、この六両以外にも司令直轄の二〇両が存在している
ある程度援護射撃を行った後、本来の狙撃任務に移る
狙うは司令室、砲座、機銃座である
照準機に榴弾砲を捉える
そして、撃つ。必中、近くに置かれていた砲弾を巻き込み、榴弾砲は爆発した
直後、果敢に奮戦していた十二糎榴弾砲が、砲弾を受け爆発したのだ
宇野沢中尉「・・・高速徹甲弾か?!」
威力と砲声から、またも弾種を特定した
溝口少佐「ひるむな、寺島!」
寺島は絶えず引き金を握っている
その傍らで、分隊員の伊沢一等兵が弾帯を込めている
直後、別の機関銃が爆発した
続いて、またも榴弾砲が爆発する
・・・今度はこっちか!?
だとしたら、寺島が危ない!
弾帯を取りに行った伊沢はいいが、引き金を握っている寺島は・・・
溝口少佐「寺島!退避だ!」
直後、砲声が響いた
爆発する機銃座
佐藤大尉「寺島ぁぁーーーー!」
しかし、寺島は銃座の後方に突き飛ばされていた
寺島曹長「・・・隊長が、隊長が身代わりになって・・・」
田辺曹長「なにっ、隊長が!?」
確かに、三年式機関銃の残骸の傍らに、溝口少佐はいた
重傷を負っていた
そこに襲い掛かる、三両のIV号戦車。敵兵だ
一斉に砲撃を開始した
二発は外れる。しかし、もう一発は・・・
佐藤大尉「隊長!」
直後、一両の一式中戦車が、溝口少佐の前に立ちはだかった
田辺曹長だった
溝口少佐「・・・田辺!」
弾帯を持ってきた伊沢一等兵も、それに気づいた
田辺曹長「伊沢!俺に構うな!」
伊沢一等兵「しかし・・・」
佐藤大尉「宇野沢、寺島、隊長を運ぶぞ!」
佐藤大尉、九〇式発煙弾を放つ。敵戦車三両、射撃を中止する
その間に、三両がかりで溝口少佐を持ち上げる
佐藤大尉「・・・萬屋、田辺、佐軒、無茶はするな。死ぬなよ!」
萬屋大尉「・・・無論です!」
伊沢一等兵「自分と鳥井、及び池内も、ここに残ります!」
佐藤大尉「ああ、分かった。隊長の言ったとおり、死んではならんぞ!」
陣地の上で、徹甲榴弾を連射する萬屋大尉たち
襲い掛かる戦車の群れに対し、果敢に反抗する
だが、田辺曹長は既に重傷を追っていた
萬屋大尉「田辺、おまえも医務室に行った方がいい。隊長が言ってたじゃないか。死んではならんぞ、って」
田辺曹長「・・・自分はもう助かりません。戦場で死ねるなら、本望です!」
・・・助けられないのか
これほどの奮戦があっても、戦友を助けることは出来ない。どんなに、頑張ったとしても・・・
田辺曹長の傍らで、徹甲榴弾を乱射する萬屋大尉は、そう思っていた
第七十話 続く
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田辺戦死。中隊副隊長は「砂原少佐」です
第七十話 パレンバンからの手紙
一方で、帝国勢力側も、第二防御陣地の予想外の奮戦に驚いていた
ザイガン中将(上陸総指揮官。車種:T−10)「手前の陣地は楽勝だったが、さすがに後詰は手強いな・・・」
参謀「・・・前線からの報告では、日戦軍団のようです」
ザイガン中将「キュワール最強の陸戦部隊、だったか・・・よし、例の最新鋭狙撃砲を準備しろ」
司令部は、精密射撃が行える24cm砲の使用を決定した
この司令部から、第二防御陣地までは6kmある。しかし、それでも誤差数cmに押さえられるというのが、24cm砲の精度であった
照準、防壁に定まる。そこは、溝口分隊が最後の奮戦をしていたところであった・・・
防壁に備え付けられた通信機から、矢矧中佐の声が聞こえる
矢矧中佐(通信)「敵が陣地から大口径砲を用いた精密射撃を行うようだ!総員、退避しろ!」
だが、既に砲声が聞こえた
萬屋大尉「敵陣、発砲!」
間に合わないか。すまない、佐藤・・・
田辺曹長「大尉殿ぉぉ!」
直後、田辺曹長が掴み掛かり、本部の方角へと、萬屋大尉を投げ飛ばした
萬屋大尉が着地したのは、本部の近くだった
直後、爆発が防壁を襲った
九二式重機を構えていた兵士が駆け寄ってくる
日戦軍団兵士B「萬屋大尉!?」
萬屋大尉「田辺ぇぇーーーーー!」
防壁は、瓦礫と化していた・・・
砂原少佐「・・・萬屋、どうした!?」
萬屋大尉「田辺たちが、あの防壁にいたんです!」
砂原少佐「そうか・・・」
瓦礫から何とか起き上がった佐軒准尉は、他の隊員を探した
伊沢一等兵「佐軒准尉!」
背後から、伊沢一等兵の声が聞こえた
鳥井一等兵(車種:一式中戦車)「我々は無事ですが・・・」
佐軒准尉「田辺と池内はどうした!?」
瓦礫の間から砲身が見える
伊沢一等兵「おそらく・・・」
瓦礫をどけてみると、田辺曹長の姿があった
佐軒准尉「田辺!田辺!応答しろ!死んではならん!田辺ぇぇーーー!」
田辺曹長の応答は、無かった・・・
直後、佐軒准尉は、言葉にならない濁音の叫びを上げながら、敵部隊へと突っ込んでいった
伊沢一等兵「佐軒さん!?」
鳥井一等兵「そ、そんな、無茶ですよ!」
二両が止めたが、遅かった
既に叫び声は、砲声へと変わっていた・・・
一方、もう一両の行方不明車、池内一等兵はというと、敵の一個小隊が迫る地面へと落下していた
ここで捕まるわけにはいかない。全速力で退避する
途中、叫び声を上げつつ全速力で走る戦車のような物とすれ違い、崩落地点へとたどり着いた
そこにいたのは、伊沢一等兵と鳥井一等兵であった
池内一等兵(車種:三式中戦車)「・・・今のは、一体?」
伊沢一等兵「・・・佐軒准尉です」
鳥井一等兵「我々が止めましたが、もう遅かったです・・・」
佐軒准尉は、通信機を持たずに敵部隊に突っ込んでいったのだ・・・
ついに艦砲射撃も始まった
矢矧中佐「・・・これ以上の損害は避けるべきだな、高須君」
高須少佐「そうですな。残念ですが、第二防御陣地は放棄しましょう。列車隊と共同で、残る敵を撃退しましょう」
第一一五中隊の後退も、砂原少佐の手によって始まっていた
溝口少佐も医務室へと運ばれていた
そのとき、伊沢一等兵が駆け込んできた
伊沢一等兵「・・・矢矧司令!」
矢矧中佐「どうした?!」
伊沢一等兵「防壁の爆発に巻き込まれて、田辺曹長は戦死、佐軒准尉は敵部隊に特攻し行方不明です!」
田辺曹長の遺体は、伊沢たちによって運ばれたが、通信機さえ持たずに特攻した佐軒准尉は依然行方不明である
いや、厳密には隊員携行の小型通信機は持っていたのだが、あいにく電源が切れていたのだ
持ち運べるだけの火器と弾薬を持ち運んで、第二防御陣地は放棄された
一方、消息を絶った佐軒准尉である
彼は一五〇両の敵一個小隊に奇襲をかけたのである
佐軒准尉「・・・貴様らぁ・・・よくも、田辺を・・・!」
半ば、発狂していた
砲撃を受け、一両の敵戦車が吹き飛ぶ
さらにもう一両、もう一両。次々と破壊されていく
敵兵はそれを見て、驚いて逃げ出していった
しかし、それを追跡する佐軒准尉、一両たりとも、残さなかった・・・
そして、たった一両で、一五〇両もの小隊を壊滅させてしまったのだ
気づけば、そこは放棄された第一防御陣地近辺であった
佐軒准尉「ここは・・・第一防御陣地か・・・」
何とか戻ろうとするが、車体がうまく動かない
どうやら、疲れてきたようだ
しかし、倒れるわけにはいかない。既にここは敵陣だ
そのとき、再び砲声が響く
さっきの小隊の残党のようだ
ラファリエス将校「これだけやって、ただで済むと思うな!」
敵兵は、一斉に攻撃を仕掛けた
しかし、佐軒は砲弾をかわし、次々と敵兵を倒していった
そのとき、一発の砲弾を履帯に受けた
そして、行動不能となった
敵兵、止めを刺そうとする
しかし、その敵兵も破壊された
敵兵を撃破したのは、高速で走ってくる、連合軍の戦車隊であった
残存する敵兵は、撤退した
分隊長(車種:パンターD型)「・・・大丈夫か?」
応答は、無い
隊員A「・・・生きてるんでしょうかね?」
隊員B「・・・気を失ってるだけだと思いますが・・・」
分隊長「よし、本隊まで運ぶぞ!」
隊員たちは、佐軒准尉を担ぎ上げ、本隊へと運んでいった・・・
沖合いには、増援を運んでいる敵の揚陸艦の姿があった・・・
第七十話 続く
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平岡登場。まだ佐軒は戦死したと思われているようです。なお、平岡二等兵は何年兵かという設定は未定
第七十話 パレンバンからの手紙
報告は、逐次松井元帥の下に届けられていた
松井元帥「・・・そうか、田辺が・・・」
佐藤大尉(通信)「立派な最期でした・・・」
松井元帥「・・・これ以上の犠牲は、防がなければならない。もっとも、奇麗事が通じる世の中ではないことは、分かっているな?」
佐藤大尉(通信)「無論です。列車隊の応戦準備は完了しております」
松井元帥「あれで、一矢報いてくれたまえ」
そのとき、大島二等兵が駆け込んできた
大島二等兵「司令!なにやら怪事件が発生したとの事ですが・・・」
松井元帥「怪事件?また帝国勢力か、連中のスパイか?」
大島二等兵「いえ、そういうわけではないようです・・・」
なんでも、遺体の護送を行っていた平岡一等兵が叫び声を上げたという
まさか、基地内に怪物でも現れたか?
松井元帥「・・・わかった。少将、後は頼んだ」
ドニゲッテル少将「了解!・・・空軍どもに、気をつけてください」
松井元帥「・・・言われんでもわかってる。少将も気をつけろよ」
ドニゲッテル少将「了解しました」
松井元帥は大島二等兵と共に、通路を走っていった・・・
さて、ベータ基地において起こった「怪事件」。つまり、半透明で空中浮遊する特二式内火艇である
平岡二等兵「お・・・おまえは・・・まさか・・・幽霊という奴かっ!?」
半透明の特二式内火艇・・・つまりは、平岡上等兵は、返答する
平岡上等兵「・・・どうやら、そういうことのようだ・・・」
周りの兵士たちは、どうも不可解な目で平岡一等兵を見ている。平岡上等兵が見えていないようだ
だが、「奴には普通のチョロQには見えないものが見えるのだろう」と解釈したのか、普通に作業を行っていた
結局のところ、二両(?)は兵舎へと向かった
そして、二両はいろいろなことを話した
無論、さっきのように不可解な目で見られると困るので、近距離通信機を使っている
平岡上等兵「陸戦科から通信科に転属したんだが、結構うまいこといってな、通信隊で戦友が三〜四両出来たよ。藤田とは特に馬が合ってな、松井司令もそれが分かってたみたいで、いつも俺と藤田は同じとこに配属されてたんだ」
平岡二等兵「・・・その、藤田ってのは・・・」
平岡上等兵「・・・俺が死ぬ前まで、一緒にいた通信兵だ。まだ昇進してないなら、階級は上等兵。風の便りじゃ、今はライトウォーターにいるそうだ・・・」
平岡二等兵「藤田上等兵・・・ああ、確か『奇跡の直属通信兵』と言われていた・・・」
平岡上等兵「ああ、そいつだ。それでよ、ベータ基地に外惑星連合とかいう連中の大部隊が押し寄せてきて、何とか持ち堪えてたんだけど、頼りになってた地底戦車が破壊されちまって、ベータはあわや陥落といったところだった・・・」
―――――――――――――――――
平岡上等兵「司令!敵襲です!」
司令室の上空には、敵機が大量に飛来していた・・・
ドニゲッテル少将「第875航空隊は?!」
Qシュタイン兵士C「燃料補給で着陸中です!」
ドニゲッテル少将「畜生、肝心な時に使えん奴らだ!」
精鋭の飛行隊も、燃料補給中。空の守りがいなくなったベータ司令室は、無防備に等しかった・・・
ユゴス少佐「これはまずいですね・・・」
さらに、レーダーを監視していたモヴァーク二等兵が、とんでもねぇ話を持ち込んできた・・・
モヴァーク二等兵「ベータ沖に艦影!」
藤田上等兵「・・・260・・・270・・・280・・・290・・・300隻以上、輸送船級は内60隻程度!」
沖合いに、友軍艦はただの一隻もいなかった・・・
平岡上等兵「奴ら、占領に時間食ってるから、援軍呼んできたのか・・・」
モヴァーク二等兵「何ですか?!」
藤田上等兵「敵襲だ!シュトルモビクが来た!」
Qシュタイン兵士C「敵機、急降下!」
平岡上等兵「避けろ!」
俺が叫んだが、間に合わなかった・・・
藤田上等兵「少将!」
煙の後に、少将たちの姿は無かった・・・
平岡上等兵「一気に指揮官がやられちまったか・・・」
藤田上等兵「だが、俺たちの任務は終わっちゃいない!」
そのとき、電探に光点が見えた。高速で進んでいた
モヴァーク二等兵「ミサイルだ!」
平岡上等兵「そんなこと叫んでる場合か!」
俺はとっさに叫んだ
平岡上等兵「退避!」
そして、最大の戦友へと近づいた
平岡上等兵「藤田!」
藤田上等兵「平岡!」
平岡上等兵「藤田!俺は間に合わない!お前だけでも・・・」
言い終わる前に、凄まじい爆風が、俺たちを引き離した・・・
藤田上等兵「平岡!平岡!平岡ぁぁーーーーー!」
―――――――――――――――――
平岡上等兵「それで、俺はこんな風になって、ベータ基地をうろついてるわけだ。どうせ普通のチョロQには見えないわけだし・・・」
そのとき、二両のQタンクとすれ違った
松井元帥と大島二等兵であった
二両の「平岡」はとっさに敬礼した
松井元帥「搬送、ご苦労・・・」
平岡二等兵の後ろに、見覚えのある特二式内火艇がいた
松井元帥「それと、後ろにいるのは、通信科の平岡上等兵だな?」
平岡上等兵「自分が、見えるのですか!?」
松井元帥「当たり前だ。そうでなけりゃ、話し掛けるわけ無かろう」
全く、思わぬ再会である
松井元帥「もし、これで実体があれば、最高だったのだがな・・・」
平岡上等兵「全く、皮肉な物です」
この間、平岡二等兵は取り残されていた
平岡上等兵「まあ、自分以外にも、似たようなのが大勢いるんですがね。自分は、存在感と、未練がありますから・・・」
松井元帥「・・・俺のそばで死ねなかったことか?」
冗談交じりで、言った
平岡上等兵「・・・それだけじゃ、ありません・・・」
松井元帥「だろうな。藤田や勝山のことだろ・・・」
大島二等兵「・・・すいません、そろそろ隊に戻る時間なので・・・」
平岡二等兵ともども忘れ去られていた大島二等兵が言う
松井元帥「ああ、すまんな、大島」
大島二等兵は、先に基地へと戻った・・・
その後、兵舎の前へとたどり着いた
平岡上等兵「・・・どうやら自分は、この同じ苗字の二等兵からあまり離れることが出来ないみたいなんで、兵舎のほうにいないといけないようです」
松井元帥「ああ、分かった」
二両の「平岡」は、松井元帥と別れて、兵舎へと入っていった
そして、その夜・・・
平岡二等兵「・・・俺って、なんか大変なことに巻き込まれてる?」
兵舎の二段ベットに横たわりながら、平岡二等兵は呟いた
「紀伊」の艦橋に戻った松井元帥は、司令室の机に置かれていた写真を見た
松井元帥「・・・田辺・・・佐軒・・・」
溝口分隊の写真である。もう、彼らと並んで、写真を撮る事さえかなわないのか
別の分隊の写真もある。速射砲の指揮を執っていた杉山分隊だ
杉山分隊もかなりの損害を受けたそうだ
松井元帥「・・・すまない・・・俺が援軍を送ってやらなかったばっかりに・・・」
そのとき、扉を叩く音がした
松井元帥「入れ」
入ってきたのは、伊原航海長であった
伊原少佐「司令、補給が完了したのはいいんですが、みんなパレンバンに出たがるんです・・・」
あれほどの損害があったのだ。これ以上の損害を避けるために出撃したがるのも無理も無い
松井元帥「だろうな。俺も、パレンバンへの出撃を考えていたところだ」
・・・これで、もし列車隊でさえも敵の進撃を止められず、パレンバンが陥落するとなれば、犠牲車はスターク少佐や佐軒たちだけでは済まないだろう・・・
松井元帥「通信長へ、ティーガー元帥と藤田をベータ基地まで呼んできてくれるよう、頼む」
伊原少佐「・・・藤田上等兵もですか?」
松井元帥「・・・ああ。ライトウォーター基地はまだ暫定配置だったからな。ティーガー元帥もそろそろ、怪我が治る頃だし・・・」
通信長「司令、輸送船団より通信です」
天城大尉(通信)「こちら天城。現在船団の状況は良好。諜報員もいないようなので、ひとまずは安心です」
松井元帥「ああ。だが、デヴォリアが攻撃を受けんとは限らん。既にセイロン近辺において艦隊戦が発生しているからな・・・」
天城大尉(通信)「まあ、そうなったら今度は我々の番です。覚悟は出来ています」
松井元帥「・・・分かった。だが、一つだけ言っておく・・・死んではならんぞ!」
天城大尉(通信)「ハイッ!」
友軍の輸送機が飛来する
次の便で、残りの増員が向かってくるだろう
そのときが、我々の出撃のときである・・・
第七十話 終わり
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ダークスピリッツ
- 2007/6/22 15:25 -
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第七十話お疲れ様ですw超長編でしたね
斎藤中佐は親父がいたという設定追加。なんか親父のほうがキャラが濃そうですね^;松井元帥と互角に論争をするなんて・・・
破壊された六三式地底戦車は修理されてまたどこかで出てきそうですね。多分ベータ基地配備となるかとおもいますがこれでベータ基地は地底戦車3両配備ってある意味装甲列車より強そう・・・
そしてグリシネ軍部では不穏な空気が漂っている様子。近々何か起きるのかも知れませんねフフフ。さてそれに関して国王はどう思われているのかな?まだこの小説には出てきてないと思われますが・・。(どっかで出てきてたかな?)
そしてパレンバンの激戦と田辺曹長の戦死、また佐軒准尉はヴァイナー機動大隊本部に収容されています。そして幽霊平岡ですが何かに憑依する事は可能でそれを利用して戦線復帰する予定です。
そして次の第七十一話ですがパレンバン内部軍敷地及び市街地で大規模な戦闘となる予定です。そして後半はパレンバン脱出、降伏となる予定です。
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> 第七十話お疲れ様ですw超長編でしたね
前話完成から原案投稿まで二ヶ月、構想・執筆数週間の超長編でした
> 斎藤中佐は親父がいたという設定追加。なんか親父のほうがキャラが濃そうですね^;松井元帥と互角に論争をするなんて・・・
あれは個人的な事情もからんでたりするんですが、自分のやり方以外は信じない頑固な技術車という設定です。海外からの派遣兵である松井元帥は立ち位置があまり良くなかったりするんですが、陸軍部内での評判はよかったようです
彼に限らず、今回登場したグリシネ国軍の参謀たちはとにかくキャラクターの分け方が大変でした。無名の参謀たちが論争をしている間、西郷中将と原田大将は一言も発言していません(西郷中将の起爆剤発言のみ)が、それくらいです
で、松井元帥が陸軍参謀本部に就任していた頃は、あれより激しい論争が繰り広げられており、負傷車が続出することもあったために、会議室の近くに医務室を置くという事態に発展していたようです
> 破壊された六三式地底戦車は修理されてまたどこかで出てきそうですね。多分ベータ基地配備となるかとおもいますがこれでベータ基地は地底戦車3両配備ってある意味装甲列車より強そう・・・
一応、現在パレンバン以外で最前線に当たる基地なので、防備が強化されているようです
で、装甲列車ですが、一応複数(5〜6編成ほど)が配備されています。スペックデータは劇中に書いたとおりです
> そしてグリシネ軍部では不穏な空気が漂っている様子。近々何か起きるのかも知れませんねフフフ。さてそれに関して国王はどう思われているのかな?まだこの小説には出てきてないと思われますが・・。(どっかで出てきてたかな?)
脇役の名前が登場していない参謀たちによって繰り広げられる激しい論争。その中で空軍も艦隊及び陸戦部隊を所持していることが判明しております
グリシネ国王はまだ出てません。車種は特二式内火艇で、フィズィキさんがかつて制作したコンバットチョロQ小説に脇役で登場してました
今回名前だけ登場した派遣部隊指揮官のレラッフティ曹長はSCCQのボアン大尉の立ち位置なんですが、階級が「曹長」である分、指揮下の部隊は少なく、プロトン王国(当時)軍の指揮下に入っていたようです
> そしてパレンバンの激戦と田辺曹長の戦死、また佐軒准尉はヴァイナー機動大隊本部に収容されています。そして幽霊平岡ですが何かに憑依する事は可能でそれを利用して戦線復帰する予定です。
ちなみに、今回活躍した田辺、佐軒、寺島は元ネタの「Panzer Front bis」では溝口隊長の指揮下に入ってなかったりします。面倒だったので溝口隊に入れたわけです
ストーリー上、佐軒がヴァイナー軍の機動大隊に救出されたことは分かっていましたが、あえてぼやかしました
ちなみに、HTML化作業中に、平岡二等兵の階級が途中、二箇所で一等兵のままだったのに気づき、直しました
で、第七十三話に予定されている第一特務艦隊特攻に備えてティーガー元帥や藤田上等兵といった、今まで離脱していたメンバーが「紀伊」に集結するというのを最後に入れました
> そして次の第七十一話ですがパレンバン内部軍敷地及び市街地で大規模な戦闘となる予定です。そして後半はパレンバン脱出、降伏となる予定です。
果たして、恐怖の装甲列車「敷島」の再来なるか。パレンバン最後の激戦が繰り広げられます
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