第八話 名将の最後
ついに敵主力艦隊がベータへと接近した。これを食い止めるはフォート准将率いる連邦第四艦隊、そして連邦第八駆逐艦隊、プロトン合衆国第二艦隊及び第五艦隊、熱田中将率いる日戦軍団第二艦隊である
だが、敵はあのファーゴット元帥の第四艦隊、フォージャー元帥の第二機動艦隊である
さらに第5特務艦隊、カルオス帝国第1戦艦隊、Qグリーン第二艦隊と第四機動部隊が含まれている
合衆国艦隊には「紀伊」
の真実は知らされていないため、全将兵の士気が落ちていた
辛うじて日戦軍団第二艦隊で保たれているが、タイラル少佐の第八駆逐艦隊もやはり士気が落ちていた
日戦軍団第二艦隊 重巡「衣笠」
熱田中将「何?合衆国艦隊の士気が落ちた?全く、あの腰抜けどもめ!俺達には最終兵器があることを忘れたのか!?」
日戦軍団兵士A「さすがに遠い前線には届いてなかったんでしょうね」
熱田中将「まあよい、本日はベータ基地にチト元帥殿とチヌ元帥殿が観戦に来ておられる。チハ大佐に至っては臨時副指令兼臨時艦長(正規艦長は松井元帥の命令でパレンバンにいる)として本艦に乗艦されておる。松井総帥とチリ元帥殿は多忙のため来られないと言っていた。やむを得んだろうな。彼らも『紀伊』の準備で忙しい」
日戦軍団兵士B「司令、本日我々と組むのはQシュタイン連邦第八駆逐艦隊です」
熱田中将「ほう、タイラルの艦隊か。士気が落ちてるんなら、我々が奮戦するのみだな」
要塞左翼を任された第二艦隊と第八駆逐艦隊。一方要塞右翼を担当するのはあの第四艦隊だ。メーヴェ大佐の元上官、フォート准将が指揮を執っている
Qシュタイン第四艦隊 重巡「アントン・シュミット」
フォート准将(第四艦隊司令。車種:V号戦車F型)「こっちに来るのはおそらく最精鋭だ。我々がなんとしても食い止める!」
レイク中佐(アントン・シュミット艦長。車種:T号戦車B型)「全速前進!」
Qシュタイン兵士A「全速前進!」
Qシュタイン第八駆逐艦隊 駆逐艦「ボツダメ」
タイラル少佐(ボツダメ艦長。車種:T号戦車F型)「日戦軍団の第二艦隊がいるとはいえ油断は禁物だ。たとえ敗勢に傾いても、最後まで軍人としての職務を全うするように、以上!」
第八駆逐艦隊司令「全艦、前進せよ!」
Qシュタイン兵士B「・・・」
Qシュタイン兵士C「転属届け出せばよかった・・・」
Qシュタイン兵士D「全く、お前はすぐ逃げようとするな・・・」
Qシュタイン兵士C「だってこの場合やばいでしょ。わが身大事だ」
Qシュタイン兵士D「帰るべき場所がなくなるんだぞ。それでいいのか?この船にいる以上、俺達は国を守るために戦うしかないんだ」
Qシュタイン兵士C「・・・・・・」
Qシュタイン兵士B「まあ、沈みそうになったら艦長が『総員、退艦!』と叫ぶはずだ。それを聞いたら、すぐ脱出すればいい」
日戦軍団第二艦隊 重巡「衣笠」
熱田中将「・・・第八駆逐艦隊は本当に大丈夫なのかね?」
日戦軍団兵士A「さあ・・・わかりませんね・・・」
チハ大佐「そういえば司令、こんな話があるんですよ」
熱田中将「なんだね?大佐」
チハ大佐「・・・プロトン軍も、紀伊に匹敵する、いや、紀伊以上の宇宙戦艦を建造しているって話ですよ」
熱田中将「なんだって?!」
チハ大佐「諜報部隊からの報告では、バチェリット基地のドックが1箇所、巨大宇宙タンカーの建造場所とされていましたが、そこに紀伊以上の巨大宇宙戦艦があったと言う情報があります」
熱田中将「さすが我々の諜報部隊。情報が早いな」
チハ大佐「もう竣工は直前とのことです。もっと早く起工してりゃ、ベータ防衛で戦果を挙げられたんでしょうけどね」
熱田中将「パレンバンで出ても、紀伊に出番を取られるだけだろうな」
日戦軍団兵士C「司令!電探に感あり!戦艦六、重巡八、軽巡八、駆逐艦二十二!あっ、さらに戦艦一、空母十二、重巡三、軽巡六、駆逐艦二十!航空機多数発進!」
諜報部からの報告では、それはQグリーン軍の戦艦部隊と空母艦隊であろう。後方からカルオス艦隊も接近しているはずだ
熱田中将「くそっ、青葉型に艦載機なし、やられたな・・・」
チハ大佐「第八駆逐艦隊は艦載機二十四機。圧倒的不利です」
熱田中将「だが、我々も、最期まで戦わねばならん!諸君、死を覚悟して戦ってもらいたい!」
チハ大佐「全速前進!」
熱田中将「第八駆逐艦隊へ打電!『本艦隊はこれより敵艦隊との戦闘に入る!貴艦隊は支援されたし』以上!」
Qシュタイン第八駆逐艦隊 駆逐艦「ボツダメ」
Qシュタイン兵士B「艦長!友軍巡洋艦『衣笠』より入電!『本艦隊はこれより敵艦隊との戦闘に入る!貴艦隊は支援されたし』!」
第八駆逐艦隊司令「我々が加わったところでどうにかなるのか?だが、支援要請が下ったからには行くしかあるまいな。全速前進!」
Qシュタイン兵士D「全速前進!」
Qシュタイン兵士C「艦載機で脱出したいな・・・」
Qシュタイン兵士D「いい加減にしろよ」
タイラル少佐「まあ諸君、日戦軍団に続いていくぞ」
日戦軍団第二艦隊 重巡「衣笠」
チハ大佐「第八駆逐艦隊、しっかりついてきます!」
熱田中将「よし、そのまま前進を続ける!」
日戦軍団兵士A「司令!前方、敵艦が本艦に艦首を向けています!」
熱田中将「まさか、小型波動砲か!?」
グリーン級戦艦には小型ながら波動砲が搭載されている。おそらくそれの発射態勢に入ったのだろう
さらに後方からのカルオス艦隊の戦艦、グワダン級も大口径砲を積んでいる
日戦軍団兵士B「敵艦、波動砲発射!」
チハ大佐「取り舵一杯!」
見事、波動砲が右舷脇を掠めていく。回避成功だ
熱田中将「お見事、大佐」
チハ大佐「臨時とはいえ、艦長ですからね」
Qシュタイン第八駆逐艦隊 駆逐艦「ボツダメ」
第八駆逐艦隊司令「・・・よし、敵艦隊に肉薄する。日戦軍団艦隊を追い越すぞ!」
タイラル少佐「司令!無茶ですよ!」
第八駆逐艦隊司令「だが、ともに『紀伊』を作っていくのだ。ここで両国の絆を深めるのみだ!」
日戦軍団第二艦隊 重巡「衣笠」
チハ大佐「第八駆逐艦隊、前進していきます!」
熱田中将「盾になるつもりか!?」
Qグリーン第二艦隊 戦艦「ツェザレヴィッチ」
グノーム中将「なんだ!?Qシュタインの駆逐艦が向かってくるぞ!」
ロジェスト大佐「あいつら、ムキになって突っ込んできたとでも言うのか!?」
Qグリーン兵士A「波動砲、発射準備完了しました!」
ロジェスト大佐「よし、俺達が狙うのは仇敵日戦軍団!突っ込んでくる艦隊は無視して、あの重巡を狙う!」
グノーム中将「各艦、攻撃初め!」
日戦軍団第二艦隊 重巡「衣笠」
日戦軍団兵士A「カルオス軍の戦艦、Qシュタイン軍駆逐艦に向け発砲!」
熱田中将「連邦艦隊はカルオスに任せ、我々を狙うつもりか・・・」
チハ大佐「おそらく、そうでしょうね」
日本戦車軍団総司令部
松井元帥「戦闘状況はどうなっている?」
チリ元帥「はっ、今のところ、それぞれに損害は無い模様です!」
日戦軍団通信兵A「要塞右翼では第四艦隊と敵艦隊の熾烈な戦いが繰り広げられています!」
松井元帥「ほう、各方の主力艦隊、すごい戦いだな」
チリ元帥「要塞正面ではプロトン艦隊と敵艦隊が交戦中!しかし、被害は増す一方です!」
松井元帥「・・・熱田、すまない・・・」
日戦軍団通信兵B「・・・司令?」
Qシュタイン第四艦隊 重巡「アントン・シュミット」
フォート准将「よし、敵艦撃沈!」
レイク中佐「珍しく、すごい戦果ですね」
Qシュタイン兵士A「この分なら、あの波動砲のバケモノ戦艦も撃沈できますね」
グンナ第四艦隊 戦艦「テリンブルグ」
フィンテルン大佐「よし、目標、敵重巡、波動砲、攻撃用意!」
グンナ兵士A「安全装置解除よし!目標艦首前方!閃光防御よし!発射準備完了!発射まで5、4、3、2、1、発射!」
ボゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
フィンテルン大佐「何だ!?」
グンナ兵士A「艦長!波動砲に被弾!波動砲が大爆発、本艦はこのままでは沈没します!」
フィンテルン大佐「畜生、これで2度目かよ・・・総員、退艦!」
ボゴーーーーーーーーーーーーーーン!
発射直前の波動砲にレーザーが命中、波動砲は粒子逆流で大爆発を起こし、「テリンブルグ」全体を巻き込んで爆発した。フィンテルン大佐以下、わずかなタンクが脱出に成功した
Qシュタイン第四艦隊 重巡「アントン・シュミット」
Qシュタイン兵士A「艦長!敵グンナ級戦艦、爆発しました!」
フォート准将「波動砲は諸刃の剣、もしそこに命中したら、大爆発を起こすようだな・・・」
プロトン第二艦隊 戦艦「アーカンソー」
ルックス少佐(アーカンソー艦長。車種:M60A2)「畜生、なんてことだ!」
ミグレイ大佐(第二艦隊司令。車種:M60A3)「こっちは損害ばかりじゃないか!」
プロトン兵士A「あっ!敵空母沈没!駆逐艦も次々と沈んでいきます!」
ミグレイ大佐「おお、空母が次々と沈んでいくぞ!」
グンナ第二機動部隊 空母「ザクス」
フォージャー元帥「くっ・・・空母が三隻も!?」
フレスコ中将「厄介ですね・・・」
プロトン艦隊は、かなりの戦果を挙げた。だが、それなりに損害もあった・・・
カルオス第一戦艦隊 戦艦「トロンヘイム」(以後、カルオス軍の戦艦はヨーロッパの地名をつける)
シュタール中将(第一戦艦隊へ転属した)「ほう、なかなかやるようだな。ドゴス・ギア級を一隻、アイリッシュ級を一隻、撃沈したとは・・・」
カルオス兵士A「司令、波動砲発射準備完了です!」
シュタール中将「よし、撃て!」
カルオス兵士B「発射まで5、4、3、2、1、発射!」
Qシュタイン第八駆逐艦隊 駆逐艦「ボツダメ」
Qシュタイン兵士B「敵艦、波動砲発射!」
タイラル少佐「面舵一杯!」
Qシュタイン兵士D「回避成功!」
Qシュタイン兵士C「危なかった・・・」
Qシュタイン兵士B「さらに波動砲接近!」
タイラル少佐「取り舵一杯!」
ボゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
Qシュタイン兵士C「うわああぁぁぁぁぁ!」
Qシュタイン兵士B「貴様、大丈夫か!急いで脱出するぞ!」
Qシュタイン兵士C「良かった、生きてた・・・」
Qシュタイン兵士D「急ぐぞ!」
タイラル少佐「総員、退艦!」
Qシュタイン兵士B「そういえば、司令は!?」
第八駆逐艦隊司令「・・・敗軍の将に脱出は不要。諸君らは先に行け。私は、火災消火のために向かう」
Qシュタイン兵士C「司令・・・・」
タイラル少佐「・・・・・・」
ボゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
駆逐艦「ボツダメ」沈没。司令は艦と運命を共にし、タイラル少佐達は脱出に成功した
日戦軍団第二艦隊 重巡「衣笠」
チハ大佐「全速前進!」
日戦軍団兵士C「回避成功!」
日戦軍団兵士B「さらに波動砲接近!」
チハ大佐「取り舵一杯!」
日戦軍団兵士A「回避成功!」
日戦軍団兵士C「波動砲接近!」
チハ大佐「面舵一杯!」
日戦軍団兵士D「回避成功!」
チハ大佐「・・・こいつら、何隻波動砲搭載艦を持ってやがるんだ!」
熱田中将「大佐、敵は総攻撃をかけてるんだ。止むを得んだろう」
日戦軍団兵士A「敵艦、波動砲発射!」
チハ大佐「面舵一杯!」
日戦軍団兵士C「回避成功!」
日戦軍団兵士D「波動砲接近!」
熱田中将「全速前進!」
日戦軍団兵士B「回避成功!」
日戦軍団兵士A「さらに波動砲接近!」
チハ大佐「取り舵一杯!」
日戦軍団兵士C「回避成功!」
このとき、回避した波動砲総数は10発を超えていた、しかし、敵はさまざまな場所に波動砲を見越し射撃していた
チハ大佐「何!?死角なし、だと!?」
ボゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
日戦軍団兵士A「やられました!」
チハ大佐「総員、退艦!司令も、一緒にお願いします!」
熱田中将「いや、いい」
チハ大佐「しかし、司令はここで死ぬわけには・・・」
熱田中将「・・・捕虜になるよりかは、ここで沈んだほうが良い。敗軍の将に、脱出と言う言葉無し・・・」
チハ大佐「総帥は、船と共に沈むことは犬死に同然だと・・・」
熱田中将「ならば、私は発生した火災を止める!それが、祖国のためだ!」
チハ大佐「・・・では、私も!」
熱田中将「貴様には、まだ奴らを止めるという任務が残っている!私がもし、捕らえられたなら、私の能力を買って艦隊司令とするだろう。そのときでも良い、たとえ敵同士でもいい、この戦争の真理を、確かめてもらいたい!」
チハ大佐「・・・・・・・了解しました!」
プロトン第二艦隊 戦艦「アーカンソー」
ミグレイ大佐「くそっ、ある程度沈めたが、こちらの損害もかなりのものだ、撤退!」
ルックス少佐「面舵一杯!撤退だ!」
日戦軍団第二艦隊 重巡「青葉」
ツラギ少佐(青葉艦長。車種:96式装輪装甲車)「・・・・・・・『衣笠』が、一発で・・・」
日戦軍団兵士E「なんて火力だ・・・」
日戦軍団兵士F「内火艇、向かってきます!」
かくして、残存乗員収容作業が行われた
ツラギ少佐「・・・・で、司令は?」
チハ大佐「・・・火災を止めに行きました・・・」
ツラギ少佐「戻って、来なかったのか!?」
チハ大佐「はい・・・」
日本戦車軍団総司令部
大和元帥「熱田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
松井元帥「熱田、すまない。貴官を死に追いやったのは、この私であろう・・・」
チリ元帥「・・・・」
ベータ要塞
チト元帥「熱田中将以下、重巡洋艦衣笠の英霊に対し、敬礼!」
チヌ元帥「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
かくして、ベータ基地とライトウォーター基地は陥落した。全残存兵が撤退し、ついに帝国軍は最後の要衝、パレンバンへ迫っていた
日本戦車軍団総司令部
松井元帥「熱田・・・」
チリ元帥「司令、諜報部より入電。プロトン軍の最新鋭秘匿戦艦が出航していったとのことです」
松井元帥「そうか。『紀伊』もそろそろ竣工だろ。急がねばな・・・」
チリ元帥「では、工作部のほうへ行くので」
ガチャ!
バタン!
松井元帥「・・・熱田・・・この分は、紀伊で、返さねばな・・・貴官に・・・空母艦隊の指揮を任せたかった・・・」
この日、熱田中将が消息を絶った。軍団上層部では戦死認定がされたが、その最期に関しては誰も見ていなかったと言う
熱田と思しきタンクが艦外へ放り出されるところを見たという兵もいた
だが、分かっていることは一つ。帝国側は、かつて連合軍諜報部によって発見された、巨大な砲艦をルナツーへ向かわせていると言うことだった・・・
第八話 終わり

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