第十一話 パレンバン前夜
「紀伊」はついにサーロイ基地へ寄港、パレンバンへ向かっていた
一方で帝国艦隊もルナツーを出航、パレンバンへと接近していた
パレンバン要塞
ボルナソス大佐(パレンバン要塞司令。車種:ブルムベア中期型)「パレンバンに移ってかなりの時間になるな、大尉」
ガランタン大尉(パレンバン要塞参謀。車種:W号戦車F2型)「そうですね。そういえばレイザー大尉はどうなったんですかね?」
ボルナソス大佐「命令が下るまで、Qシュタイン国鉄の特急の運転をしているらしい。ドロワルもそうらしいぞ」←Qシュタイン国鉄:第四次キュワール大戦後、Qシュタイン鉄道省改めQシュタイン国有鉄道に。いずれは民営化が計画されているとか、いないとか(当然、そうなるとSR。QRだとシーキュと被る)
ガランタン大尉「そういえば敷島列車隊の操縦手は、平時は国鉄特急の運転手、戦時は敷島列車隊の操縦手、でしたね」
Qシュタイン兵士A「大統領閣下、到着されました!」
T35「ボルナソス大佐、開戦から一年が経ったな。早いものだ」
ボルナソス大佐「そして、帝国の侵攻も早いものですね」
T35「そうだな。状況も悪化してきている。昨日、ヴァイナー海上空で帝国艦隊とヴァイナー、ゲール連合艦隊が交戦、帝国艦隊の軽巡一を拿捕、駆逐艦九を撃沈した」
ボルナソス大佐「で、拿捕した巡洋艦はどうなったんですか?」
T35「大破していたが、直せば使い物になるそうだ。直して、ヴァイナー艦体に編入するらしい」
ボルナソス大佐「リゾニアには来ないんですか」
T35「そうだな。珍しいな。まあ、リゾニアも軍備が少ない。そろそろ、プロトン軍が新手の艦艇を入れてくれるはずだが・・・」
ボルナソス大佐「ところで、ムサイ級を手に入れたとなれば、船の弱点も分かるのでは?」
T35「そういうことだ。現在、連合各国が調査している。トレニオスも呼ばれたよ」
ボルナソス大佐「内地も騒がしくなってきましたね」
T35「うむ。私も色々と忙しいのだが、激励にやって来れた所だ。まあ、この間に少し、危なかったがな」
聞けば、ユンカースJu−88で移動中、敵ヤコブレフ戦闘機の強襲を受けたが、軍団所属の零戦に救援され、無事だったという
T35「護衛にメッサーシュミットが付いていたが、あいにく、メッサーの航続力では途中までしか護衛できなくてな。まあ、死傷車が出なかった分、マシだったところだ」
ボルナソス大佐「そうですねぇ・・・」
松井元帥(通信)「こちら日本戦車軍団総帥兼第一特務艦隊司令、松井元帥。現在ニビリア護衛艦隊及び第四艦隊とともにサーロイを出航、パレンバンへ急行中!」
T35「おお、松井元帥か。ようやく、竣工したようだな」
松井元帥(通信)「T35大統領閣下ですか。そういえば激励のためパレンバンへ行ったと聞きましたね」
T35「いやぁ、危うくあの時は撃墜されるかと思ったぞ」
松井元帥(通信)「あれは本艦の艦載機です。第一哨戒艦隊をサーロイ沖で潰したんですが、それ以外にも演習を行ってましてね。航空機運用演習の際、ついでに零戦に偵察命令を出したんですが、たまたま、閣下のユンカースが攻撃を受けているのを発見したそうでしてね」
T35「ほう、演習のさなかにですか。偶然だったな」
松井元帥(通信)「ところで、そちらはどうなっているのですか?」
T35「だいぶ騒がしいな。ボルナソス大佐が言うには、戦いのときが近いと聞き、航空隊も強化のために頑張っているそうだ」
松井元帥(通信)「そうですか。ルナツーとサーロイ、比べればルナツーのほうがパレンバンに近いですからね。こちらがパレンバンにたどり着く前に、向こうが先にパレンバンに着くと思うので、時間稼ぎが必要になりますねぇ」
T35「そうだな。そういう面では、今回の戦いも厳しいな」
松井元帥(通信)「では、これで通信を切ります。なるべく、全速力で向かいます!」
T35「ああ、なるべく早く頼む」
ピッ!
ガランタン大尉「閣下、そろそろ航空演習が始まります」
T35「そうか、ではそろそろ飛行場に向かうか」
一方、要塞内部の軍事病院では、ルナツー戦で辛うじて生還したが、重傷を負ったラピート中佐が入院していた
ボアン大尉「中佐殿、見舞いに参りました」
ラピート中佐「おお、ボアン大尉か」
ボアン大尉「もうすぐパレンバンも、帝国が迫っているとのことで」
ラピート中佐「そうか。ところで、テレダイン元帥は来られないのか?」
ボアン大尉「はい、今ようやくサーロイを出たところで・・・」
ラピート中佐「・・・紀伊の護衛艦隊に乗っているのか。しかし、大変になってきたものだ」
ボアン大尉「そうですね。そろそろ少将殿が着かれる頃ですが」
メルカバ少将(パレンバン所属陸上部隊司令。車種:メルカバW)「中佐、先に大尉に向かってもらったが・・・」
ラピート中佐「ああ、メルカバ少将殿。久しぶりです」
メルカバ少将「中佐、どうやら敵巨大波動砲を喰らって生還したのは、貴官だけのようだな」
ラピート中佐「・・・そうですね。第二の月の名を冠すルナツーを守り抜けなかった敗軍の将が残り、そして・・・」
メルカバ少将「中佐・・・」
ラピート中佐「・・・・・・・・だが、それが戦争というものなんでしょうね。兵器開発競争は避けては通れません」
メルカバ少将「・・・・・・」
ラピート中佐「さてと、262空の演習が始まるんですよね」
メルカバ少将「ああ、そろそろ、向かったほうがいいな。中佐はまだリハビリの時期じゃないから、行くことは出来んらしいが、頑張って、復帰してくれ」
連合各国はパレンバンへ主戦力を集中していた。これは帝国側もそうであった
カルオス帝国軍 戦艦「ジェルフォー」
カルオス将校「熱田中将、日戦軍団の新兵器とは、いかなるものなのかね!」
熱田中将「貴様ら叛徒に言うものではない」
カルオス将校「何だとっ!?」
熱田中将「・・・捕虜になるならば、自決したほうがマシだったかもしれんな・・・」
カルオス将校「あっ!」
熱田は所持していた爆弾を爆破させようとした。だが、将校に止められた
カルオス将校「貴様には死なれるわけにはいかんのだ!」
カルオス兵士A「司令、どうしますか?」
カルオス将校「例の物をもってこい!まだテストすら行ってないが、使うのみだ!」
カルオス兵士B「はい!」
カルオス将校「よし、それを中将に付けろ」
カルオス兵士A「ハッ!」
カルオス将校「中将殿、失礼します」
熱田中将「な、何をするんだ!」
カルオス将校「なに、ちょっと精神を操作するだけですよ。マインドコントロールパルス起動!」
カルオス兵士C「了解!起動します!」
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウン
熱田中将「うっ、頭の中にへんな意識が流れ込んでくる・・・うわーーーーーーー!?」
カルオス将校「よし、成功だな。貴官の所属は?」
熱田中将「・・・・・・私はカルオス宇宙軍中将・・・・。名前は・・・・。熱田だ・・・・・。」
・・・カルオス帝国の技術力は恐ろしいものである。それは、チョロQの精神をも操作する
それ故に、カルオス帝国に叛乱の二文字はないのである
その眼下では、それを見ていた潜水艦がいた・・・
日本戦車軍団 潜宙艦「伊−168」
音探手「艦長!奇妙な音響探知!艦首前方、敵旗艦です!」
浦塩少佐(伊−168艦長。車種:61式戦車)「何だとっ?!」
音探手「はっ、旗艦より先ほど奇妙な音響を探知、その音と共に、先ほどまでしていた物音が沈黙しました!」
浦塩少佐「・・・・・怪しいな・・・」
音探手「敵駆逐艦、ミサイル発射!」
浦塩少佐「くっ・・・気づかれたか・・・」
水雷長「どうします?この数では魚雷を撃っても・・・」
浦塩少佐「急速潜航!深度三〇〇まで潜れ!」
操舵手「そこまで潜れるんですか?」
浦塩少佐「大丈夫だ!海大ならそこまで行ける!」
音探手「ミサイル、そのまま誘導魚雷と化して、本艦に接近中!」
操舵手「深度250・・・260・・・270・・・」
音探手「衝突まで10、9、8、7」
操舵手「深度280・・・」
音探手「6、5」
操舵手「深度290・・・」
音探手「4、3」
操舵手「深度300!」
音探手「2、1、0!」
ボゴーーーーーーーーーーーーーン!
音探手「敵魚雷、消滅しました!」
浦塩少佐「ふう・・・危なかったな・・・」
パレンバン要塞飛行場
シュゴオオオオオオオオオオオオオオオ!
T35「ようやく配備されたジェット機、か」
ボルナソス大佐「はい、ニビリア軍精鋭飛行隊に配属された最新鋭機です」
T35「ガンドルフに導入され、ある程度の戦果を挙げたそうだな」
ボルナソス大佐「はい。それにしても、わがほうのメッサーシュミットにも勝る勢い、すごい機体ですね」
既にQシュタインもMe−262の生産に成功している。だが、同じく先行生産機であるF−86はかなり高性能だ
T35「だが、まだ少ないらしいな。フューリアスで輸送されてきたと聞いたが」
ボルナソス大佐「そういえば、他国軍空母で輸送されたって話は聞いてますね」
そのとき、T35大統領の近くに、プロトンから派遣されたロドスシルト少佐が近づいた
ロドスシルト少佐「・・・T35大統領閣下、少々、奇妙な事柄があるのですが」
T35「何かね?」
ロドスシルト少佐「スパイは、一般的にはその最期まで通信機を外すなと言われていますが・・・」
T35「そうだな。射殺のときまで、敵の全てを見せるためだが・・・」
ロドスシルト少佐「奇妙な機械音と共に、一部の通信機が謎の爆発を遂げているんです」
T35「何っ!?」
ロドスシルト少佐「おかしくありません?見つからない位置に隠し持った通信機が、奇妙な機械音で爆発するなど・・・」
T35「まさか、敵は新兵器を!?」
ロドスシルト少佐「しかも健在でいるはずなのに、です」
T35「・・・・・・・・・・・・」
ボルナソス大佐「松井元帥殿から通信です」
松井元帥(通信)「・・・・閣下、厄介な話です。カルオス軍の艦隊を索敵していた潜宙艦『伊−168』より、敵戦艦『ジェルフォー』より奇妙な機械音を探知したとのことです」
T35「な、なんだって?!」
松井元帥(通信)「なお、『伊−168』に関しては、敵の対潜魚雷を見事かわし、生還したとのことです」
T35「さすが、鳴神の教え子だな」
鳴神中将はかつて潜水艦隊を率いた名将である。それゆえに潜宙艦の訓練の際にも出席することがある。伊−168の艦長は鳴神中将の教え子である浦塩少佐だ
松井元帥(通信)「ちなみに、これに伴い、戦艦『ジェルフォー』以下カルオス帝国艦隊は、グワジン級大型戦艦二、ドゴス・ギア級戦艦四、アイリッシュ級戦艦四、チベ級重巡十、ミンスク級駆逐艦二十五であることが判明しました」
T35「そうか。司令に関しての情報は?」
松井元帥(通信)「・・・・・・・・・不明です。数日前までカルオス軍のとある提督が担当していましたが、彼が第二艦隊司令に転属したと、諜報部から入電が入り・・・」
T35「・・・・・厄介だな・・・」
ちなみに、伊−168は海大Y型である。本来、海大は海軍大型の略であり、宇宙を行くのなら宇宙軍ではないのかといわれるが、日戦軍団では海軍が宇宙を担当しているのだ
ただし、陸軍も潜宙艇や哨戒艇を配備していたりするのだが
日本戦車軍団第四艦隊 戦艦「常陸」
鳴神中将「そうか、そりゃ、すごい冒険だったな」
浦塩少佐(通信)「司令の言ったことがうまいこと使えましたよ。危なくなったら深く潜れ、魚雷はそこまで追って来ない、見事にそのとおりでしたよ」
鳴神中将「しかし、敵も対潜ミサイル、それもアスロックみたいな奴を配備してくるようになったとは。さすがに帝国だな」
浦塩少佐(通信)「先ほど司令部に定時通信と共に、探知した奇妙な音響に関して話しておきました」
鳴神中将「奇妙な音響?」
浦塩少佐(通信)「はい。敵軍のグワジン級戦艦『ジェルフォー』より、奇妙な機械音を探知したと、音探員から聞いたので」
鳴神中将「・・・・・・・・・」
浦塩少佐(通信)「その後です。突然敵がミサイルを叩き込んできましたよ」
鳴神中将「ほう、そこで、深度300まで潜ったのかね」
浦塩少佐(通信)「はい。さすが、日戦軍団の潜宙艦は違いますね。みんな深度300まで潜れるんですから」
鳴神中将「そういえば連邦さんのUボートも結構使えるらしいな」
浦塩少佐(通信)「どうやら、やはり深度300まで潜れる新式が登場したそうですね。今度のパレンバン連合宇宙軍観艦式に参加できれば、見てみたいところですね」
鳴神中将「うむ。だが・・・厄介だな。奇妙な音響か・・・」
とにかく、ようやく潜宙艦が活躍するようになったのだ。浦塩少佐の活躍に期待したいところだ
一方では、帝国軍の進撃速度はおそらく連合軍新型艦隊に勝ると思われ、連合軍は小艦隊で時間稼ぎをすることを決定したのだ
この艦隊にはメサイア戦で重巡「ガルスター」で大奮戦したレオパルト中佐の第二巡洋艦隊が所属している
さらに同第一駆逐艦隊、プロトンの二個艦隊も参加することとなっている
こうして、連合軍最大の大海戦の火蓋が、切って落とされようとしていた・・・
第十一話 終わり