第二十話 ヴァイナー襲撃
合衆国壊滅に伴い、独立艦隊以外の合衆国主力艦隊は本国へ撤退することとなった
すなわち、最強の戦艦の異名までついたプロトン級戦艦は一度も実戦に参加しないまま本土へ撤収することとなったのであった
一方で独立艦隊はパレンバンへ駐留することとなったわけだが、宇宙軍本部の存在するザンブニールでは現在空母2隻の建造が難航している
理由は単純、バチェリットとリベージュダースに資材と搭載予定だった武装が行ってしまったからだ
搭載予定の武装の内高角砲がいくつか補充として各都市へ輸送されたのだ
一方で、日本戦車軍団は最新鋭高速フリゲート艦を開発中である。この高速フリゲート艦は今までの船にはない超高速で移動し、接近しつつミサイルと魚雷で攻撃するという特殊な船である
潜特型潜宙艦も完成し、無事演習中である。演習後は特務潜宙艦隊に編入されるという
そして、帝国艦隊の第二派が接近していた
目標はヴァイナー連邦。すなわち東方連合の国家である
Qシュタイン大陸には7つの国が存在する
北から順にQターレット王国、Qタンク王国、Qシュタイン連邦、ヴァイナー連邦、ゲール共和国、クリーク王国、パンツァー王国である
Qターレット王国はグンナ大陸に最も近い連合国であり、そのために第七次キュワール大戦では重要戦略拠点になった。最初にグンナと交戦したのもこの国であり、日戦軍団の支部が存在する(ちなみに日戦軍団支部はQターレット以外にQシュタイン、リゾニアなど日戦軍団と今まで共同作戦を展開した国々の大半に存在する)
Qタンク王国はキュワール初のQタンク国家として知られる歴史ある国だが、今はたいした活躍もなく、東方連合第二の国である
Qシュタイン連邦は言わずもがなキュワールの超大国である。面積ではプロトンを大幅に上回るキュワール最大の連邦国家である
そのため連合の盟主であるプロトン合衆国に並ぶ地位を持つ
そしてヴァイナー連邦。Qシュタインの友好国のためQシュタイン連邦製の兵器が用いられている
ゲール共和国はプロトン合衆国の友好国である。ヴァイナーとの共同戦線が幾度か続けられている
クリーク王国も一応連合国だが宇宙艦艇が不足気味のため現在は補給のみを行っている。中立国だ
すなわち、Qタンク大陸で有力なのはQタンク王国およびQシュタイン連邦のみである。一応日本戦車軍団支部がQシュタインとQターレットに存在するが、あくまで「支部」
である。当然、本部はグリシネである
そして今回の帝国艦隊第二派、現在Qタンク、Qシュタイン、Qターレット、そして日戦軍団は多方面作戦展開中で残るはヴァイナーとゲールだけであった
ヴァイナー連邦第三艦隊 戦艦「リュッツオウ(最近ドイツ艦名が枯渇気味)」
ヴァイナー通信兵「敵艦隊はなおもヴァイナーへ接近中、戦艦、空母多数、重巡二十八、駆逐艦三十前後!」
ヴァイス少将(第三艦隊司令。車種:W号戦車H型)「かなりの数だな。我々だけで防げるか・・・」
テラス大佐(リュッツオウ艦長。車種:マルダーT自走砲)「陸上砲撃ともなれば戦艦が脅威ですね。我々は戦艦を叩きましょう」
ヴァイナー連邦は第三艦隊および第四駆逐艦隊、ゲール共和国は第二駆逐艦隊をこの戦闘に派遣している
第三艦隊には戦艦が六隻存在するが、リュッツオウ以外の各艦は全てシュレージェン級であった。とはいえシュレージェンでも充分強いのだが
ヴァイス少将「しかし、相手は強力だろうな。一部の艦隊を日戦軍団やQシュタインの潜宙艦が抑えているが、彼らがいなければもっと多い艦隊がいただろうな・・・」
テラス大佐「彼らには感謝しなければいけませんな」
対するはグンナ帝国第二艦隊。すなわち、今までザクスの第一艦隊に付属するオマケのような艦隊だったがついにメインで登場するようになったのだ
艦隊司令は不明だが、おそらく優秀な士官であろう
そして砲撃戦が始まった
グンナ艦の発砲が当然先であった。射程距離では向こうのほうが長い
先陣を切って突撃してくるペトロバブロフスク級に照準を合わせる
テラス大佐「撃ち方初め!」
ボゴン!
ヴァイス少将「各艦へ告ぐ。目標は帝国艦隊。なるべく多く撃沈しろ!」
ボゴン!ボゴン!
ボゴーーーーーーーーーン!
ヴァイナー兵士A「敵艦、撃沈!」
まずは一隻を撃沈した
圧倒的火力を持つグンナ級戦艦が大量にいる。まずはそれらを攻撃すべきだ
テラス大佐「よし、次の目標は敵大型戦艦、主砲、射撃用意!」
主砲を敵グンナ級戦艦に向ける
すると敵は温存すべきであろう波動砲の射撃をするのか、艦首を向けている
ヴァイナー兵士A「射撃準備完了!」
テラス大佐「撃てっ!」
ボゴォン!
敵は波動砲のチャージを始めた
だが、既に波動砲めがけてレーザーが飛来していたのだ
ボゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
大爆発を起こし敵戦艦は沈没した
続いてデーベルン級。グンナ艦は赤いはずだが、一部で同艦に酷似した緑色の軍艦を見たという噂もある
松井元帥は「キュワールやグンナ以外のどこかの戦艦が索敵活動を行っていたと思われる」と語っていた
角張った形状のデーベルン級の火力は巡洋戦艦としては高い、速力は「紀伊」型戦艦とほぼ同等とされる
これに関してはシュレージェン級戦艦二隻が同時に攻撃した
36cm連装砲四基を搭載するシュレージェン級が二隻同時でデーベルン級を狙っているのだ
同時に十六発もの36cmレーザーが発射される
集中砲火を受けデーベルン級は爆沈した
シュレージェン級には「紀伊」型と同じ70cm巨大レーザーが搭載されているが、当然奥の手、使用は「大艦隊に対抗するときもしくは圧倒的不利な状況に追い込まれたとき」とされている。耐久性に難があるようだ
続いてコンスロート級が突撃してくる
松井元帥が言うには「形状は違うが同名の船がアマティスにいる」んだそうだ
形こそ違うが、全く同じ艦名の船が敵味方の陣営に所属しているというのは奇遇だ
とにかく、アマティスのコンスロートはグンナのそれより優秀である
何しろ一時期かのザクス司令が座乗していたとはいえ、大戦初期の駆逐艦だ。大戦中期から現れたアマティスのコンスロートには劣るであろう
そして、このコンスロート級駆逐艦も接近戦で撃沈されていった
すると、ゲール共和国軍の軽巡洋艦から報告が入った
ヴァイナー通信兵「第二駆逐艦隊旗艦より入電。『我、敵空母を捕捉、これより攻撃にかかる』。以上です」
ヴァイス少将「機動部隊を見つけたようだな。所属はどこだ?」
ヴァイナー通信兵「Qグリーンとのことです」
ヴァイス少将「そうか。Qグリーンか。それほど強くは無いだろうな・・・」
一方でこの戦闘をモニターしていた「紀伊」では、松井元帥が敵の大艦隊に関する情報を探っていた・・・
日戦軍団第一特務艦隊 戦艦「紀伊」
松井元帥「確か、現在Qグリーン軍が持っている航空母艦は・・・」
そのデータベースの画面上には次々と空母の情報が掲載されていた
最新鋭中型空母アキーラ級・・・16隻
全長:280m
武装:15.5cm連装レーザー砲4基8門(艦体上部4基)
12.7cm連装両用レーザー砲4基8門(艦体左右側面部2基ずつ)
ミサイルVLS8連装発射管2基16門(艦体上部2基)
25mm連装機銃24基48門(艦体上部左右舷6基ずつ、艦体左右側面部6基ずつ)
艦載機50機搭載
解説:ウルタンク・Qグリーン最新鋭中型空母。各国の中型空母と比べると若干火力が高い。30隻ほど建造する計画があるとされる
松井元帥「・・・・・確かこいつを見かけたという情報があるな・・・」
新鋭正規空母インドミタブル級・・・22隻
全長:300m
武装:14cm連装レーザー砲3基6門(艦体上部3基)
12.7cm連装両用レーザー砲4基8門(艦体左右側面部2基ずつ)
ミサイルVLS10連装発射管2基20門(艦体上部2基)
25mm連装機銃24基48門(艦体上部左右舷6基ずつ、艦体左右側面部6基ずつ)
艦載機70機搭載
解説:ウルタンク・Qグリーン新鋭主力空母。やはり普通の性能の空母で弱点も無い秀でた所もないある意味強い空母。35番艦まで建造中
松井元帥「・・・・・この装甲空母もいたはずだな・・・」
最新鋭正規空母サラトガ級・・・10隻
全長:320m
武装:20cm連装レーザー砲4基8門(艦体上部4基)
12.7cm連装両用レーザー砲4基8門(艦体左右側面部2基ずつ)
ミサイルVLS10連装発射管2基20門(艦体上部2基)
25mm連装レーザー機銃24基48門(艦体上部左右舷6基ずつ、艦体左右側面部6基ずつ)
艦載機90機搭載
解説:ウルタンク・Qグリーン最新鋭主力空母。巡洋艦の主砲、レーザー機銃を搭載し、火力が高い空母で搭載機数も高い優秀艦。18番艦まで建造中
松井元帥「レキシントンも確かいたはずだ・・・」
日戦軍団の技術力は非常に高い
既に潜特型を初めとする潜宙艦などでデータを収集しているのだ
無論、今までの戦闘データも用いられている
そんな中で、諜報部から入ったばかりの最新鋭の情報の中に、恐るべき巨大空母の情報が記されていたのだ
松井元帥「・・・まさか・・・Qグリーンの空母ってこいつでは・・・」
ティーガー元帥「司令?どうしましたか?」
松井元帥「ティーガー元帥!急げ!すぐにリュッツオウに回線を繋げ!このままではゲール艦隊がやられる!」
そしてその画面上にはこう記されていた
最新鋭巨大空母ジブラルタル級・・・3隻
全長:440m
武装:20cm連装レーザー砲5基10門(艦体上部5基)
14cm連装両用レーザー砲6基12門(艦体左右側面部3基ずつ)
ミサイルVLS12連装発射管3基36門(艦体上部3基)
25mm連装レーザー機銃32基64門(艦体上部左右舷8基ずつ、艦体左右側面部8基ずつ)
艦載機180機
解説:ウルタンク・Qグリーン最新鋭大型空母。火力が高く、同盟軍キュワール侵攻時にはQグリーン軍に3艦とも所属しておりその豊富な艦載機搭載数を使って何故か護衛艦隊とヴァイナー爆撃に向かっている。8番艦まで建造中
20cm連装砲、すなわち、重巡洋艦並みの火力。そして報告によれば防御力は通常の戦艦とほぼ同等
このバケモノ空母ならば、ゲールの艦隊を自艦の火力のみで殲滅することが出来るであろう
ましてそんなバケモノが3隻もいるのだ
松井元帥「・・・諜報部には感謝せねばならないな・・・」
ティーガー元帥「司令!リュッツオウと繋がりました!」
松井元帥「分かった、通信機をよこせ!」
ヴァイナー連邦第三艦隊 戦艦「リュッツオウ」
ゲール将校(通信)「くそっ、さすがにグンナがいるだけのことはある・・・」
ゲール兵士(通信)「奴ら、どれだけの物量を・・・」
ヴァイス少将「ゲール艦隊も苦戦しているようだな・・・」
ヴァイナー通信兵「司令!『紀伊』より通信が!」
松井元帥(通信)「ヴァイス少将、聞こえるか!私だ!松井元帥だ!」
ヴァイス少将「はっ、こちらヴァイナー連邦第三艦隊司令、ヴァイス少将です!」
松井元帥(通信)「前置きは後だ!それより大変だ!Qグリーン機動部隊主戦力はバケモノだ!ジブラルタル級、その火力は重巡に匹敵する!」
ヴァイス少将「な、何ですって!?」
松井元帥(通信)「すぐにゲール艦隊旗艦に報告し・・・」
ヴァイナー通信兵「司令・・・先ほど第二駆逐艦隊の全駆逐艦との通信が途絶えました・・・」
ヴァイス少将「・・・・・どういうことだ!?」
ヴァイナー通信兵「旗艦より入電!『我、敵巨大空母の攻撃に向かうも護衛艦艇および空母自身の火力により壊滅す。総員退艦を・・・』」
ヴァイス少将「・・・・どうした?」
ヴァイナー通信兵「旗艦との通信が途絶えました・・・」
松井元帥(通信)「間に合わなかったか・・・・」
直後、遠方、Qグリーンの大艦隊のど真ん中で大爆発が起こった
それはゲール第二駆逐艦隊旗艦が沈没する瞬間であった・・・
彼らが与えた損害は空母「ニュージーランド」小破、他戦艦二中破であった・・・
そして圧倒的火力による攻撃が始まった
Qシュタイン連邦製の艦艇の誇る強大な戦闘能力も物量の前には無用であった・・・
ボゴーーーーーン!
ヴァイナー兵士A「消火急げ!」
テラス大佐「くっ・・・・・」
被害は甚大であった・・・
ヴァイナー艦隊、戦艦二、重巡六、駆逐艦十五、沈没・・・
ゲール艦隊、軽巡二、駆逐艦十四、全滅・・・
そして連合軍の艦隊は撤退した
帝国艦隊の総攻撃は熾烈であった・・・
日本戦車軍団総司令部
松井元帥(通信)「今度はヴァイナーか・・・」
ホニ大佐「今回も酷いらしいですよ」
松井元帥(通信)「先ほどゲール軍の艦隊が全滅したという報告が入った。艦隊司令と旗艦の艦長は生還したそうだが・・・」
ホニ大佐「ヴァイナーの都市が攻撃を受けているそうですが」
松井元帥(通信)「総旗艦の艦隊を出すわけにもいかんな・・・」
ヴァイナー連邦 都市
ボゴーーーーーーーーン!
ヴァイナー兵士B「畜生!奴ら、どれだけたくさんの船を!」
消防車「なんど消してもまた攻撃を仕掛けてくる!」
ヴァイナー兵士C「まさかこんなところで連合は終わりなのか!?」
総攻撃はあまりにも熾烈であった。彼らの消火活動空しく、都市は壊滅していった・・・
消防車「ダメだ!もう間に合わん!」
救助隊員「しかし、なんとしてでも助けなければ・・・」
ヴァイナー兵士B「あんたに死なれるわけには行かないんだ!」
ヴァイナー兵士C「なんてこった・・・・」
そしてヴァイナー軍主要都市5つの内、2つが壊滅した。あたり一体が瓦礫の山であった
死車3万台、負傷車10万台。かなりのものだった
日本戦車軍団総司令部
ヴァイナー広報士官「・・・我が軍の損害は戦艦二、重巡六、駆逐艦十五沈没、戦艦三、重巡三、駆逐艦五中破、戦艦一、重巡一、駆逐艦一小破。帝国艦隊は我が国の都市を攻撃後撤収。これにより、我が国の都市二つが壊滅し、死傷車は10万台を軽く超え・・・」
松井元帥(通信)「都市二つか・・・」
ホニ大佐「これはまずいですね・・・」
松井元帥(通信)「・・・だが、迎撃体勢がうまく行っていなかったのと敵の戦力情報が届いていなかったことが原因だろうな・・・」
一方でパレンバンでは第一独立艦隊が寄港していた
第一独立艦隊 駆逐艦「フライシャー」
カイト大尉「司令、セイロン基地駐留の第一特務艦隊より通信です。発信車はダークスピリッツ中佐です」
クラシス「ダークスピリッツ中佐?聞いたことがあるような・・・」
カイト大尉「あれじゃないですか?かなり前に空軍のバチェリット基地視察に来た・・・」
クラシス「ああ、あのダークスピリッツ司令か!かなり前のことなんで忘れていた。すまん」
ダークスピリッツ中佐はかつてQタンク王国空軍に所属しており、以前バチェリット基地視察で第427航空隊の各員と会っていたのだ
プロトン兵士A「で、通信の内容はどういうもので?」
カイト大尉「はっ、回線開きます」
ダークスピリッツ中佐(通信)「久しぶりだな諸君。本国が壊滅し、艦艇不足で困っていると聞いたので通信をよこした」
声の主、ダークスピリッツ中佐は日戦軍団の士官に似た古風の士官である。Qタンク王国でもかなり珍しい。大使もそのような方だと聞いたが・・・
クラシス「ダークスピリッツ中佐、一体今まで何を・・・」
ダークスピリッツ中佐(通信)「本国で艦隊の整備を行っておったが、特務艦隊に回されて今はセイロンにおる。しかし諸君らも育ったものだな。まさか艦隊の上層部にいるとは・・・そうそう、いいものをやるから、セイロンに来てくれ」
プロトン兵士B「通信、終了しました。まったく中佐殿は変わった方で」
クラシス「・・・・いいもの?」
プロトン兵士C「艦艇不足で困っていると聞いたので・・・ということは艦艇と思うが・・・」
クラシス「艦艇か。それもアマティスと同盟を結んだQタンク王国のこと。かなりのものだと思うな」
プロトン兵士D「で、どうする?もう帰る港も無いし・・・」
クラシス「大尉、今すぐセイロンへ向かってくれ」
カイト大尉「了解しました」
かくして第一独立艦隊はセイロンへと向かった。第二独立艦隊も報告を受けセイロンへ向かうこととなった・・・
第二十話 終わり