第四十話 特務艦隊再び
第一独立艦隊がサイファーを出航した頃のことであった
ほとんど止まっていた第一特務艦隊旗艦、「紀伊」の機関が始動した
艦橋へ駆け上がる何両ものチョロQ
そしてその艦橋には、90式戦車の姿があった・・・
日本戦車軍団第一特務艦隊 戦艦「紀伊」
松井元帥「全艦に通達。これより本艦隊はライトウォーター基地所属艦艇の攻撃任務に移る!」
以前の航空戦により、敵海上戦力の撃滅を優先したほうがいいと見て、ついに第一特務艦隊が出航することとなったのだ
捷一号作戦以来の大艦隊決戦である
ティーガー元帥「久々ですな、こうして艦橋に立つのも」
松井元帥「ああ、そうだな」
ティーガー元帥「機関微速で前進、出航せよ!」
日戦軍団兵士A「機関微速!」
そして「紀伊」が出航した
回航ではない、戦闘である
以下、本作戦の戦力である
日戦軍団第1特務艦隊(司令 松井元帥 車種:90式戦車)
旗艦:紀伊型「紀伊」
軽巡洋艦阿賀野型2隻
駆逐艦陽炎型8隻
対空駆逐艦秋月型8隻
駆逐艦島風型8隻
計27隻 航空機80機
日戦軍団第2艦隊(司令 大鳳中将 車種:三式中戦車)
旗艦:大鳳型「大鳳」
装甲空母大鳳型1隻
中型空母雲龍型4隻
戦艦大和型2隻
戦艦金剛型2隻
重巡洋艦妙高型3隻
重巡洋艦青葉型1隻
軽巡洋艦天龍型2隻
駆逐艦神風型3隻
駆逐艦吹雪型23隻
計42隻 航空機440機(偵察機含む)
日戦軍団第4機動艦隊(司令 元山少将 車種:八九式中戦車乙型)
旗艦:赤城型「高千穂」
正規空母赤城型1隻
中型空母蒼龍型2隻
主力戦艦扶桑型4隻
重巡洋艦青葉型8隻
駆逐艦神風型14隻
計30隻 航空機284機(艦載航空隊含む)
Qシュタイン第2巡洋艦隊(司令 レオパルト大佐 車種:レオパルトIIA6)
旗艦:フォーミュラ級「バレンツ」(艦長 ヘンス中佐 車種:V号中戦車パンターA型)
重巡洋艦トレニオス級5隻
重巡洋艦グラシュトライク級8隻
ミサイル重巡洋艦ディーングロウ級6隻
軽巡洋艦エムデン級8隻
駆逐艦レービリヒト・マース級12隻
駆逐艦パウル・ヤコビ級10隻
計50隻 航空機50機
日本戦車軍団第二艦隊 空母「大鳳」
大鳳中将「・・・ツラギ、本作戦は第四機動艦隊での参加となったか・・・」
ツラギ少佐の指揮する重巡洋艦「青葉」は、本作戦の主軸となるであろう第四機動艦隊の主戦力として引き抜かれたのだ
代わりに入ったのが「中淀」。当初は大淀型軽巡の予定だったそうだが、建造計画変更により重巡、それも兵装が小規模な青葉型となったそうだ
大鳳中将「・・・だが、この作戦、ツラギが離脱して正解だったかも知れんな・・・」
「大鳳」の周辺には、空母「早崎」「野崎」「剣崎」「鳳龍」の姿がある
いずれも緊急補充の雲龍型である
建造がとにかく行いやすい雲龍型は、一時期十隻ほどを一個艦隊に配属させる計画があったほどだ
なお、後ろに「崎」の付く艦名のものはもともと別の任務の船として配属される予定だったが、建造計画の変更により雲龍型として建造された船である
大鳳中将「航空屋、か・・・」
かの熱田についた仇名は「航空屋」であった。第六次キュワール大戦時、空母に魚雷を積んで自ら敵艦隊に向かっていき、壊滅的打撃を受けたそうだ
確か「戦艦に巨砲をつける意味などない。なぜなら戦艦は敵艦の上部構造物しか破壊できないからだ」とか語っていたはずだ
片やレンネル中将は、「航空母艦など意味はない。なぜなら不沈の戦艦を作ってしまえば空母は不要」などと語っていた
そして松井元帥は「戦艦はいらんとか、空母はいらんとか、そういう問題ではない。双方が存在してこそ、究極の艦隊が出来上がるのだ」と語っていた
この三両の対立は一時期凄まじいものとなったが、あの海戦で熱田が下がると、レンネルと松井元帥の戦いになった
今は第八艦隊司令としてグリシネにいるレンネルだが、果たしてどうなることやら
Qシュタイン連邦第二巡洋艦隊 航空巡「バレンツ」
レオパルト大佐「今回の作戦はかなりの難関だと思われる」
ヘンス中佐「確かに、相手は大規模艦隊ですからね」
レオパルト大佐「だが、勝たねばならんのだ」
ヘンス中佐「・・・そうですね。勝たなければ我々は壊滅。ルナツーも再び壊滅です」
レオパルト大佐「・・・しかし、あの恐ろしいシスター・レイはどこへ消えたのかが気になるな」
ヘンス中佐「・・・おそらく、今ごろ基地で整備でもしてるんでしょう。だって砲艦ですから」
レオパルト大佐「そうだろうな。あれほどの巨砲だからな」
ヘンス中佐「まあ、それはともかくとして、今回、敵艦隊の規模もすごそうですな」
レオパルト大佐「そうだな。最低限、あの機動部隊はいるだろうな」
第四機動艦隊 空母「高千穂」
元山少将「大規模な艦隊を相手にしなければならん。まだ第117航空隊は整備が完了していないからな。何しろ新竹機の損傷が酷い。今度電征が配属されたら、乗機を交代してもらわんとならんな。そうでもせんと、奴らに対抗できん」
ちなみに、電征はエンジンを強化した一二型などが存在する
防弾性能を強化した二二型なども予定されている
元山少将「まあ、本部から来るのは一一型の甲が主軸だったな。彼の戦法に合ういい機体だと思うが・・・運動性性能は零戦よりいいそうだな」
そして、ついにライトウォーター近辺に到着した
日戦軍団兵士B「索敵圏内に敵機動部隊を捕捉!」
艦長「数は?!」
日戦軍団兵士B「空母六、戦艦十、重巡十、駆逐艦二十四!」
元山少将「よし、各機発艦用意!」
ついに敵艦隊を捕捉した
無数の航空機が飛行甲板に集合し、発艦していく
その数、約300機
対するは、大日本帝国第五機動艦隊である
大日本帝国第五機動艦隊 空母「蒼龍」
大日本兵士A「敵航空隊来襲!数は100機以上!」
古田少将「航空隊は全機攻撃態勢!急げ!」
だが、直援機は100機しかいなかったのだ
連合軍は数で勝る
その空中戦はほとんど量で押していた
ほとんどの帝国機が撃墜され、大量の航空機が突入してくる
大日本兵士B「敵機急降下!」
見るや、無数の航空機が急降下して爆弾を投下する体勢に入っていた
その中には九九式艦爆の姿もある
つまり、日本戦車軍団も攻撃に参加しているのだ
そして爆弾を投下し始めた
爆発音が響く
大日本兵士A「敵弾甲板に命中!」
古田少将「・・・酷いな、この状況は」
無数の爆弾が飛行甲板に命中し、既に離着艦は困難であった
古田少将「戦闘艦艇は前進し、敵航空機を攻撃せよ!」
護衛を担当する艦艇を前進させ、対空砲火で敵を撃墜するつもりである
大日本兵士B「敵航空隊、第二派接近!」
戦闘艦艇に次々と攻撃を仕掛ける航空機群
だがそれらは次々と墜落していく
大日本兵士C「敵航空隊、撤退していきます!」
やはり今回の航空隊は錬度が低かった
近辺に展開するベテラン航空隊が前回の戦闘で消耗したからだ
無論、大日本帝国側もだが・・・
しかし、砲撃戦ともなれば話は別だ。連合軍は帝国艦隊を押しつづけている
日本戦車軍団第一特務艦隊 戦艦「紀伊」
松井元帥「・・・大日本帝国の海防艦は侮れんぞ。重巡の主砲である20.3cm砲を搭載している」
ティーガー元帥「司令!敵艦発砲!おそらく先の20.3cm砲です!」
松井元帥「どうやら、来たようだな」
日戦軍団兵士A「司令!敵艦、大型ミサイル発射!」
松井元帥「雷星だ!」
電探上には、「RAI−SEI」とミサイルに注約が書かれている
AD兵器、雷星である
まだ日本戦車軍団ですら開発段階のAD兵器を開発しているのだ
小型艦艇からも「流星」と呼ばれるAD兵器が発射されている
松井元帥「全艦、回避運動を取れ!」
いくらミサイルとはいえ、誘導機構の部分にまで弾頭を搭載しているAD兵器は誘導性能が低い
おそらく命中率はいつぞやかの滑空爆弾なみであろう
そう、第五次キュワール大戦末期に開発された四三式滑空爆弾である
飛来した飛行船団を一撃で撃墜したあいつである
あの爆弾をベースに五六式誘導噴進砲や一式誘導噴進砲が開発され、現在のミサイルに至るわけだ
一隻の巡洋艦に流星が直撃、巡洋艦は爆沈した
戦艦部隊の損害はたいした規模ではなかった
しかし、問題は空母機動部隊であった
日本戦車軍団第二艦隊 空母「大鳳」
日戦軍団兵士B「空母『早崎』『剣崎』『鳳龍』沈没!」
直撃したのは、「雷星」だった
大鳳中将「何っ!?空母が・・・一撃で・・・」
あの空母群の内、「早崎」は装甲空母だ
そう簡単に沈められるはずが無い
それなのに、あの「雷星」は一撃で撃沈したのだ・・・
そして、「中淀」も回避運動を続けていたが、ついに直撃弾を受け、爆沈した・・・
日本戦車軍団第一特務艦隊 戦艦「紀伊」
松井元帥「・・・あの空母を撃沈するとは・・・」
ティーガー元帥「新型戦艦『筑波』がこちらに到着するまでは、我々はこれにはかないませんな」
松井元帥「・・・Qタンク王国のようにアマティスやデュミナスに頼ることなどしない。AD兵器は、我々キュワールのチョロQが開発しなければならない!」
ティーガー元帥「そして、それを搭載する戦艦こそが、『筑波』を初めとする戦艦というわけですね」
松井元帥「・・・実は『紀伊』にも搭載出来るぞ」
ティーガー元帥「えっ!?そんなシステムがあったんですか!?」
松井元帥「あれだ。艦尾甲板にある大型誘導噴進弾発射口。あそこに入る口径のミサイルを開発している。そいつが、うちのAD兵器だ」
しかし、話している暇は無かった
前方に見えた艦隊の一隻、薩摩型戦艦「安芸」が波動砲を発射したのだ
松井元帥「何っ!?波動砲だと!?」
狙われたのは、第四機動部隊であった
扶桑型戦艦を初めとする多数の艦艇が沈んでいった・・・
ティーガー元帥「司令、あの兵装を使う時です。艦体下部70cm砲!」
松井元帥「そうだな、さすがに大和の100cm波動砲ほどではないが、かなり強力だ。『肥前』『石見』にもできれば波動砲を発射するよう打電してくれ」
そして充填が始まった
日戦軍団兵士A「目標、前方敵大型戦艦!」
日戦軍団兵士C「エネルギー充填完了!」
松井元帥「よし、大型光学砲撃ち方初め!」
波動砲ほどではないがものすごい音が艦内に響く
そして凄まじい反動と共に、大型レーザー砲が発射された
大日本帝国第五機動艦隊 戦艦「安芸」
大日本兵士C「敵艦、波動砲発射!?」
艦長「あれが・・・波動砲だと?!」
大日本兵士D「艦首を向けずに波動砲を撃つとは・・・」
艦長「まさか・・・大型レーザー砲か!?」
直後、ものすごい爆発が「安芸」を襲った
そして、戦艦「安芸」は炎上した
辛うじて生き残った艦長が叫ぶ
艦長「総員、退艦!」
生存車はわずかだった
その甲板の上で兵士が叫ぶ
大日本兵士E「見ろ!『周防』もやられたぞ!」
香取型戦艦「周防」も被弾、爆沈したのだ
生き残った艦橋員たちは、艦長を引き連れて甲板を滑り降りる
大日本兵士D「・・・そんな・・・」
大日本兵士C「これが・・・キュワールの戦艦の・・・攻撃だと!?」
傾斜する甲板から、内火艇へと滑り降りる彼ら
艦長「・・・まさか、キュワールの軍艦があれほどの力を持っていたとはな・・・」
これにより、戦況は逆転した
連合軍の猛反撃が始まったのである
次々と沈んでいく敵艦艇
結局空母撃沈には至らなかったが、戦艦三を初めとする多数の艦艇を撃沈したのであった
だが、「早崎」「剣崎」「鳳龍」の損失は大きかった
他の艦艇も損害が大きく、両軍の艦艇は作戦続行は不可能と見て撤退した
日本戦車軍団第一特務艦隊 戦艦「紀伊」
松井元帥「損害が大きいな。これが大日本帝国の力と言うものか」
ティーガー元帥「我々も戦力増強が必要なようですな」
松井元帥「しかし、新型艦艇の到着はまだのようだな」
ティーガー元帥「はい、第七艦隊の出航がまだですからな」
松井元帥「・・・『尾張』等に関してはだが・・・」
ティーガー元帥「確か『尾張』は竣工したそうですね」
松井元帥「護衛艦艇を率いてパレンバンへ向かわせることにした。いずれは全紀伊型戦艦が集結することになるな」
こうして、ライトウォーター駐留艦隊攻撃作戦は終了した
そして、ライトウォーター基地攻撃作戦第三派がはじまることとなった
第四十話 終わり