第二十一話 連合各国の情勢
連合各国は動揺していた
帝国艦隊の次期攻撃目標がニビリア共和国だったからである
ニビリアはQシュタイン連邦と並ぶ技術大国であり、面積こそ小さいものの資源は豊富で、プロトン合衆国とは建国当初から交易が行われている
そしてカルオス艦隊は北上していた・・・
カルオス帝国第一特務艦隊 戦艦「ニマスト」
戦艦ニマストの司令官室では、熱田中将と謎の士官が通信機で会話していた。謎の士官は国籍不明で強力な艦隊を保有している
熱田中将「・・・・・なんだって?!アマティスが!?」
????(通信)「ああ、本当だ。アマティス軍およびデュミナス軍がキュワール救出のために大艦隊を出航させた」
熱田中将「・・・・・・・・・アマティスは敵に回すと恐ろしい国だな・・・・」
????(通信)「そこで我々も手を打っておいた」
熱田中将「一体、どういうことだ?」
????(通信)「最新鋭亜空間移動高速戦艦、シルグノーム・クラス。こいつを主軸とする艦隊をそちらに向かわせる。三日でつくはずだ」
熱田中将「三日?!一体諸君らはどんな機関を開発したのかね!?」
????(通信)「『亜空間移動』。すなわち遠い場所へ一瞬で移動することが出来る。分かりやすく言えばワープだ」
熱田中将「ワープ機能・・・・」
????(通信)「とにかく、キュワールにとどまりつづけるのは危険だ。我が艦隊が到達した後に直ちに我々と共に脱出する」
熱田中将「・・・了解した」
そういうと、熱田は通信を切った
司令官室をノックする音が聞こえた
熱田中将「入れ」
ドアが開き、通信士官が入ってきた
カルオス通信兵「司令、一体どなたと話していたので?」
熱田中将「ラファリエスの特務士官だ。これから本艦隊はプロトン北沖上空に移動する」
カルオス通信兵「ニビリア攻撃作戦はどうなるのですか?」
熱田中将「中止だ。とにかくアマティスとデュミナスがいるからにはいくら我々でも勝ち目は無い。『紀伊』とやらもいるからな・・・とにかくラファリエスの艦隊を待たねばならない。やつらの艦隊、あと三日でつくそうだ」
カルオス通信兵「三日?!ラファリエスからここまでとなると、何ヶ月もかかるはずでは?!」
熱田中将「奴らの技術力だ。とんでもない技術を持ってやがったよ」
熱田はたまたま入ってきた通信士官にことの全てを語った
当然、その士官も驚いていた
熱田中将「話が長くなったな。何か飲むか?」
カルオス通信兵「司令が出すんですか?」
熱田中将「たまにはいいだろう、そういうことも」←ちなみに日本戦車軍団時代も良くこういうことがあったようだ
カルオス第一特務艦隊は、ラファリエスの援軍を待ちながら、北上していった・・・
一方でプロトン合衆国。2都市が崩壊し、野党の攻勢が活発化していた・・・
プロトン合衆国 大統領官邸
プロトン大統領「・・・もはや戦争が出来る状態ではないな・・・」
ロッキード元帥「・・・・・・・・迎撃戦力を残していなかったことが原因でしたね・・・」
リピーレド元帥「いえ、これは戦争だから仕方が無いのです!次からは反撃のために!」
ロッキード元帥「リピーレド、残念だがもはや我が国はどうにもならんよ」
リピーレド元帥「ロッキード!一体それはどういう話だ!?」
ロッキード元帥「反戦デモが各地で起こっているんだぞ!こんなときに戦争など出来るか!」
コムニエム軍曹「我々は『キュワールの警察』なんですよ!そんな我々がこんなところで・・・」
ロッキード元帥「コムニエム!だったら貴様一両で戦ってみろ!今戦うことがどんなに無理なことか!」
フェレックス大将「我々は戦うために軍部に入ったんですよ!」
ミフェイドビッチ大佐「最後の一兵まで戦い抜かなければ他国に示しがつきません!」
ロッキード元帥「貴様らは何を学んできたのだ!今まで六つものキュワール大戦に従軍しているというのに、諸君らは進歩しておらんではないか!」
コムニエム軍曹「・・・・・・・・」
スピシュード中佐「・・・・元帥、もう止めましょう・・・・」
リピーレド元帥「・・・・・そうだな、本国の命令ともなれば従わざるを得ない・・・」
ロッキード元帥「すまんな、リピーレド。本国の命令なんだ」
リピーレド元帥「ロッキード・・・・・」
プロトン大統領「独立艦隊以外の全艦艇を撤収させる。できれば、この目でプロトン級の威力を見てみたかったな・・・」
ロッキード元帥「同感です・・・・」
プロトン合衆国はもはや戦争続行が不能となったためにキュワール防衛をQシュタイン同盟各国(Qタンク王国、Qターレット王国、Qシュタイン連邦、ヴァイナー連邦、ゲール共和国)および日本戦車軍団、ニビリア共和国に託し戦線を離脱した
一方でグリーンアイランド(グリーン民主共和国)側もキュワール防衛ライン構築のためにレイスト級駆逐艦による防衛艦隊を編成した
そしてニビリア共和国では・・・
ニビリア共和国 国王居城
ニビリア国王「プロトンの損害が甚大のようだ。彼らは戦闘続行が不可能と見て戦線を離脱するらしい。士気も低下していたからな・・・」
テレダイン元帥「仕方ないでしょうな。リベージュダースの犠牲車の数からすれば、撤退はやむを得ないでしょう」
ニビリア国王「帝国艦隊が我が国へ接近していると聞いたが?」
テレダイン元帥「そのために護衛艦隊を先にパレンバンから引き上げたんですよ。日戦軍団はしばらく駐留するそうですが」
ニビリア国王「彼らにはまだ特務艦隊がいる。いざというときには頼りになる奴らだ」
現在ニビリア共和国ではエチゼン級戦艦を初めとする大規模な艦隊でタルタ海上空を警戒している
時たま小規模な索敵艦隊が現れたりするものの現状では戦闘は行われていない
ボアン大尉「しかしプロトンはもう終わりでしょうかね。まさか『キュワールの警察』があっさりと敗退とは・・・」
テレダイン元帥「帝国の技術力はいつの間にやら上昇したものだな」
ボアン大尉「そうですね。昔はここまで強くなかったのに・・・」
ニビリア国王「ところで全防衛艦艇は配置についたのだな?」
テレダイン元帥「はっ、全艦、準備は完了しました」
ニビリア国王「よし、外郭防衛網を担当するQタンク同盟各国のためにもしっかり最終防衛線を構築せねば・・・」
Qシュタイン連邦 大統領官邸
T35「連合各国の結束のためには我々Qタンク同盟各国が頑張らなければならないな」
ナルマルガム中将(本土防衛部隊司令。車種:ミーネンロイマー)「そうですね、大統領閣下」
T35「そのためには同盟各国および日本戦車軍団が共同で防衛線を構築しなければいけないな」
ナルマルガム中将「現在潜宙艦による索敵網および艦隊による防衛網を構築中とのことです」
T35「昔から防衛だけはすごかったからな・・・」
現在QシュタインをはじめとするQタンク大陸各国はキュワール防衛のために主戦力をパレンバン近辺に展開中である
日本戦車軍団、Qターレット王国、ヴァイナー連邦、ゲール共和国はそれぞれQシュタイン連邦を支援するように主戦力を展開している
T35「ところで新兵器の件は?」
トレニオス少尉「はっ、新型艦艇の建造は順調です。この調子ならばキュワール近辺の防衛は完璧なものとなります」
T35「まあ、現状では大丈夫だろうな。帝国艦隊も攻撃を止めているようだし」
トレニオス少尉「次はいつ来るのやら、ですね」
T35「なるべく遅く来て欲しいものだがな・・・」
ナルマルガム中将「そういうものですね」
ヴァイナー連邦 大統領官邸
ヴァイナー大統領「都市が2つ壊滅したが、いまだ士気は維持できているそうだな」
ヴァイナー将校「はっ、隣国ゲール共和国も奮戦しております」
ヴァイナー大統領「しかしなぜプロトン合衆国は急に戦力を撤収させたのか?」
ヴァイナー将校「あちらさんは野党が強いですからね。いままでこんなことも少なかったみたいですし」
ヴァイナー大統領「そういえば我が国はいつも貧乏くじ引いてたな」
ヴァイナー連邦、常に酷い扱いを受けていた気がする国である
第三次キュワール大戦ではクリーク、ゲールと共に戦いながら、最も損害が酷く、Qシュタイン帝国(当時)への派遣部隊は全滅してしまったという
以後の大戦でも戦闘に参加してはいたものの損害はかなりのものであった
ヴァイナー大統領「しかし今度こそ活躍のときが来たな」
ヴァイナー将校「そうですな。今こそQタンク同盟の力を見せるときですね」
Qタンク王国 国王居城
Qタンク国王「それでアマティス軍は援軍をよこしてくれるのかね」
Qタンク大使「そうなっている様子です」
Qタンク国王「さすが大使、海外にも詳しいな」
Qタンク大使「それでセイロン基地ですが、前線基地となる可能性が強まりましたので強化する必要が出てきました」
Qタンク国王「確か、ヴァイナーが新たに基地を建設すると聞いたが」
Qタンク大使「はっ、その通りです。セイロン基地近辺にもう一つ作るそうです」
Qタンク国王「いずれにせよ防備する方角が増えたということだな・・・」
セイロン基地
クラシス「中佐殿、一体この艦艇は・・・」
ダークスピリッツ中佐「アマティス軍の新型艦だ。特別に君たちに分けてやろうと思ってな」
クラシス「フォーラスR級でしたっけ?重巡としては最強クラスじゃないですか」
ダークスピリッツ中佐「うむ。アマティス軍の主力艦艇だ」
クラシス「しかし1隻とはいえ、こんな主戦力を・・・」
ダークスピリッツ中佐「アマティスの生産能力はすごい。既にこの船を20番艦まで建造している」
クラシス「20隻ですか!?」
ダークスピリッツ中佐「そう。これの一つ前のフォーラス級をあと一隻、残りは軽巡のアスラートR級二隻とコンスロート級六隻だ」
クラシス「コンスロート?!」
プロトン兵士A「それってたしか、グンナの・・・」
ダークスピリッツ中佐「名前は同じだが形は別物だ。何が理由か、名前が被ってな」
プロトン兵士B「まさかそんな異国の船に、今まで戦ってきたグンナの船と同じ名前があったとは・・・」
ダークスピリッツ中佐「まあ、そういうものだな。これで艦隊の艦載機は、スマッジUが二十二機だ」
クラシス「スマッジU・・・」
スマッジU、20mm機関砲六丁と空対空ミサイル六発を積む、最高速度マッハ2.9の戦闘機である
性能はかつてクラシス達が搭乗していたF−16ファイティングファルコンを凌ぐ性能である
ダークスピリッツ中佐「そろそろ、演習の開始時刻だな」
クラシス「そうですね。よし、総員戦闘配置!」
プロトン第一独立艦隊 重巡「フィンバック」
クラシス「よし、主砲撃ち方初め!」
ボゴォン!
フォーラスR級を初めとするアマティス艦艇の性能は優秀であった
なおこれに伴い「フライシャー」を初めとする艦艇は換装のためにしばらくドック入りとなった。これらの駆逐艦は大改修を行いかなりの戦力とする予定である
シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
クラシス「スマッジUか、かなり優秀な機体ではないか」
ダークスピリッツ中佐「そりゃ、アマティス製だからな・・・」
クラシス「やはり彼らの力は素晴らしいものだ」
しかし、しばらくすると奇妙な艦艇を捕捉した
プロトン兵士C「司令、奇妙な船を電探に捕捉しました」
プロトン兵士D「結構大規模な艦艇です」
クラシス「・・・・どれ、望遠鏡は?」
プロトン兵士D「ここにありますが・・・」
彼らが見たものは、巨大な紫色の艦艇であった
プロトン兵士A「これは・・・」
プロトン兵士B「見たこともない船だ、きっと攻撃を仕掛けてくるぞ!」
クラシス「面舵一杯!これより本艦隊はセイロンに帰投する!」
そして第一独立艦隊はセイロンへ帰還した
後に分かったことだが、それはラファリエスの軍艦で、キュワールに向かっていることが判明した
ラファリエスはカルオス艦隊救援のためにキュワールに向かっていたのだ
セイロン基地
ダークスピリッツ中佐「これはまずいな・・・ラファリエスまでこの戦いに加わるとは・・・」
クラシス「一体ラファリエスとはどんな奴らで?」
ダークスピリッツ中佐「詳しいことは分からんのだが・・・アマティスと対立しているそうだ」
その一方でアマティスとデュミナスは救援のために艦隊を出航させた
どれも優秀な艦艇である
これらが帝国側の艦艇と交戦するのも近いと見られている
その一方でクリーク王国からキュワールに発せられたのはとんでもない情報だったのだ
クリーク王国 国王居城
クリーク国王「我がクリーク王国は、この戦争には介入せず、中立国としての現状を維持していきます」
ブリテン「・・・・・・・・まさか、同盟国の都市が二つも破壊されたというのに・・・」
クリーク兵士「何かあるんでしょうかね?」
ブリテン「元来我がクリーク王国およびゲール共和国、ヴァイナー連邦は対立しているからな。共通の敵がいれば協力するんだがな・・・」
クリーク兵士「共通な敵というと・・・」
ブリテン「そう、帝国だ。だが、今回の戦争だけは、どうやら違うようだな・・・」
クリーク王国は中立国としての現状を維持すると通達したのだ。これは連合各国を驚かせる結果となったのである
日本戦車軍団総司令部
チリ元帥「ただいま帰還しました」
松井元帥(通信)「よし。現状の報告を」
チリ元帥「はっ、キュワール内部では中立国のクリーク王国と壊滅したプロトン合衆国を除いてほぼ全ての国がキュワール防衛網を構築、今まで戦闘に参加していなかったGIを初めとする各国も防衛の準備を整えているとのことです」
松井元帥(通信)「GIもかね?また珍しいことが起こったものだ」
チリ元帥「そしてキュワール以外ですが、連合側にはアマティスおよびデュミナスが救援艦隊を派遣、セイロン基地からの通信ではラファリエス軍がカルオス艦隊救援のためにキュワールへ接近中、ワープ機能を用いれば三日でつく距離とのこと」
松井元帥(通信)「オルキス、ガトランティス、デトロワ、ファントムはどうなっている?」
チリ元帥「オルキスは独立艦隊をキュワールに向かわせ、ガトランティスは主力艦隊を派遣しております。また、デトロワとファントムは中立ですが、いずれもラファリエス側、すなわち帝国側につく可能性が出ております」
松井元帥(通信)「厄介だな・・・・ファントムは星系最強と呼ばれているからな。我々の船でも太刀打ちできるかどうか・・・」
かくして、エレミア星系内に大戦争の予感が広まっていたのであった・・・
第二十一話 終わり