第十四話 観艦式
ついにパレンバンにおいての戦闘が終結した
連合各国は初の大勝利に歓喜した
今までにない大勝利である
このまま「紀伊」で逆転できるかというのは松井元帥にかかっているわけだが
帝国側の別働隊がキュワール近辺に集結しているという情報を受信した日戦軍団情報部も随時帝国別働隊の状況を探っているが、しばらく動くことはないと見られている
プロトン合衆国 軍事総司令部
ロッキード元帥「しかしさすがクラシス司令、またも大戦果とのことですな」
大統領「ああ。あいつは427空時代から大活躍していたな」
ロッキード元帥「第一独立艦隊、コードネームは『クルセイダー』。いずれは空母一を旗艦とする特務艦隊にするとのことですが?」
大統領「宇宙での戦いだ。しばらく待ったほうがいいだろう」
この第一独立艦隊の士官、第427空出身のものが大半である
第427航空隊とはプロトン空軍の精鋭航空隊で、CQ暦260年代に発足、従って第六次キュワール大戦には参加していない
CQ暦300年代、突如たるグンナの奇襲からプロトンを守り抜き、大戦果を挙げている
そのときの隊長こそがクラシス・コスナー(当時中佐)であった
実は旗艦「フライシャー」の艦長、カイト少尉も元第427空である
第427空士官で編成されている最強の艦隊である。いずれは艦載航空隊に変更する予定だが、空母の配備までしばらくは駆逐艦隊だ
なお、その空母とは「ベロー・ウッド」級と呼ばれるプロトン初の空母とされている
10cm単装両用レーザー砲四基、ミサイルVLS計30セル、25mm連装機銃24基、そして艦載機は四十五機(F8Fベアキャット(F−86セイバーへ変更する予定もある)およびA−1スカイレーダー、TBFアベンジャーの3種を予定)である
現在1番艦「ベロー・ウッド」が建造中であり、続いて2番艦「モンテレー」も建造中である
日戦軍団第二艦隊 空母「大鳳」
チハ大佐「大戦果ですか。それは素晴らしい」
松井元帥(通信)「しかし、第一独立艦隊も気になるところだな。噂によれば新型の空母を配属して精鋭航空隊を置くそうじゃないか。その指揮官があのクラシス・コスナー君なんだからな」
チハ大佐「ようやく我々も観艦式に参加できそうです」
松井元帥(通信)「・・・・・大鳳中将に代わってくれんか?」
チハ大佐「了解しました」
大鳳中将「総帥・・・一体、何の話ですか?」
松井元帥(通信)「・・・・熱田だ。熱田がいた。カルオス第4艦隊司令の正体は・・・熱田中将だ」
大鳳中将「そ、それは一体どういうことですか!?」
松井元帥(通信)「浦塩少佐が言っていたが、カルオス第四艦隊旗艦から奇妙な音響を探知したとの報告が入った。多分これに関わっていると思われる」
ついに第二艦隊司令部にも、熱田中将関連の情報が伝わった
チハ大佐「・・・まさか、熱田中将が敵に回っていたとは・・・」
松井元帥(通信)「奴は敵に回すと恐ろしい男だ。厄介なことになったな・・・」
一方で、潜宙艦隊が絶えず索敵を行っている
この日も浦塩の「伊−168」は僚艦「伊−169」「伊−170」とともに敵潜宙艦の動向を探っていた
日本戦車軍団第一潜宙艦隊 潜宙艦「伊−168」
浦塩少佐「・・・異常はないようだな。観艦式になると全艦集合になるからな。終了時間まで粘るぞ」
音探手「艦長!敵潜宙艦を探知!」
浦塩少佐「何っ!?艦種は!?」
音探手「・・・グンナ軍のShch型です!」
Shch型はグンナ宇宙軍が最も多く保有する潜宙艦だ。やはり哨戒と通商破壊のために用いられているらしい
このままではサーロイ〜パレンバンの補給ラインを攻撃される恐れがある。浦塩少佐は僚艦にも攻撃指示を出した
浦塩少佐「まずは停船勧告だ。応じなかったら撃沈する」
通信手「了解しました」
だが、敵潜水艦は停船しなかった。敵潜三隻に包囲されてもなおも戦う気でいたのだろう
しばらくすると敵側も数隻ほどが急行してきた 音探手「魚雷発射管の音響探知!」
浦塩少佐「・・・撃沈する。各個撃破に徹するぞ!全速前進!」
水中速力で全速、この速力で突っ切るのだ
こちらも若干旧式化が目立つ海大型だが、相手のShchも我が方の巡潜型には劣る旧式気味の潜水艦だ
既に改良型のM型が生産されているというのだから旧式であろう
音探手「敵潜、魚雷発射!」
浦塩少佐「53cmだから誘導魚雷の可能性も否定できんな・・・」
だが、魚雷はゆっくりと降下を始めた伊−168を掠めて進んでいった
そもそも彼らに音波探信儀は存在しないため闇雲に撃っているのだ。カルオス第四艦隊の対潜ミサイルも、ただ単に音響感知魚雷
浦塩少佐「さすがにShchに誘導魚雷は無理だったようだな。よし、次はこっちの番だ!」
水雷手「雷撃用意!魚雷の種類はどうしますか?」
浦塩少佐「六二式で決めてみるぞ。一応、一番から六番まで全部だ」
六二式は最新鋭誘導魚雷だ。現時点で潜宙艦用魚雷は無誘導式の五七式とこの六二式の2種である
6本の六二式が装填される。もっとも艦尾の二本は使われないだろうが、いざというときのためだ
音探手「敵潜、前方に展開!」
敵潜は判明しているだけで六隻。こちらの倍だ
音探手「指標二番より魚雷!」
六隻が次々と魚雷を叩き込んでくる
だが、次々と回避しつづける
浦塩少佐「今だ、一番、てっ!」
まずは一番発射管から、続いて二番発射管から撃った
全て敵一番艦(指標一番)を狙っての攻撃であった
1発はギリギリで回避したが、次の命中は必至
爆発と共に敵潜は轟沈した
続いて「伊−169」が指標二番を狙った
日本戦車軍団第一潜宙艦隊 潜宙艦「伊−169」
艦長「目標、敵指標二番。一番、てっ!」
こちらも二発直撃で轟沈
音探手「撃沈!」
艦長「よし。本大戦初の戦果だな」
日本戦車軍団第一潜宙艦隊 潜宙艦「伊−168」
浦塩少佐「これで二隻。あと4隻だな・・・」
音探手「指標四番、撃沈!」
指標四番を狙った「伊−170」の魚雷が見事命中、轟沈した
残りの三隻の沈没も時間の問題であった
浦塩少佐「三番、てっ!」
続いて三番と四番。僚艦2隻も同じであった
ボゴーーーーーーーーーーン!
音探手「命中!撃沈を確認!」
潜宙艦は次々と撃沈され、6隻の潜宙艦隊は全滅した
その大半が誘導魚雷によるものであった
だが敵も多数の魚雷を放ち、時には深深度まで追い込まれたこともあったため、とにかく強力であることは間違いない。これで誘導魚雷が付こうものなら大変である
通信長「潜宙艦『伊−8』より入電、観艦式近し、直ちに帰還せよ、以上です」
浦塩少佐「敵潜狩りは一時中断か。よし、これより帰還する」
ついに連合軍各艦艇がパレンバンへ集結することとなった
パレンバン方面に展開する各艦艇および、再編を果たした日戦軍団第二艦隊、Qタンク、Qレースの主力艦隊なども参加することとなっている
そして、壮大な観艦式が開かれた
Qシュタイン連邦第一艦隊 戦艦「ビスマルク」
松井元帥「しかし、巨大な戦艦だな。さすが連邦の誇る超弩級戦艦だ」
ボルゾル元帥「かつてキュワールに君臨した巨大戦闘豪華客船『ゲトラ・スペシャル』と同じく張り出し式飛行甲板を搭載しております」
松井元帥「ほう、ゲトラスペシャルか・・・」
ゲトラスペシャルとは第五次キュワール大戦時、兵員輸送などにも活躍した武装客船である
50.8cm連装砲二基、7.6cm速射砲十基、25mm三連装機銃五十基を有する巨大客船である
艦載機はBf−109が25機。すなわち航空戦艦の能力も兼ね備えている
第五次キュワール大戦末期、Qトルック沖でQトルック海軍の飛行隊の攻撃を受け大破するも、日本戦車軍団の援護射撃により無事生還したという話がある
このときは艦尾から発生した浸水による被害であり、甲板部は急降下爆撃機の強襲を受け炎上であった
飛行甲板ビスマルク級の飛行甲板と同じ張り出し式である
なお、ビスマルク級自体は紀伊型戦艦を参考にして建造されている
武装は120cm波動レーザー砲一基、46cm3連装レーザー砲五基、20cm連装レーザー砲四基、10.5cm連装レーザー砲十六基、25mm連装機銃三十六基、ミサイルVLS計42セル(一基につき14セル)である。そして艦載機は二十機だ
パレンバンで無事竣工し、観艦式でその姿を見せることとなったのだ
その後方を行くのは空母「グラーフ・ツェッペリン」である
Qシュタイン連邦第一艦隊 空母「グラーフ・ツェッペリン」
大鳳中将「戦闘空母とはまさにこのことですね」
サウラー中将「そうですね。それにしても、素晴らしい戦闘能力のようで」
大鳳中将「もし敵艦が近づいてきたら15cmを叩き込むわけですか」
サウラー中将「火力だけなら軽巡に匹敵します」
グラーフ・ツェッペリン。これもパレンバンで竣工した大型空母だ
武装は15cm連装レーザー砲六基、10.5cm連装両用レーザー砲二十基、25mm連装機銃三十二基、ミサイルVLS二十セル(一基につき10セル)である
艦載機は90機。結構大型の空母だ
そしてその連邦艦隊の側面を行くのがQレース軍の誇る重巡「サラミスU」「ゲルゲレン」、軽巡「シーランス」「セイファー」「ミデア」などである
重巡「ゲルゲレン」
は全長300m超の大型巡洋艦で、かなりの速力を誇る。関係ないが日戦軍団の青葉型は全長240mである
また、Qタンク王国のクイーン・エリザベス級は260m、日戦軍団の大和型は263mなので、このゲルゲレンには全長で劣る
というか、大和型は日本戦車軍団では最も小型の宇宙戦艦だ
「サラミスU」は改サラミス級で、こちらは全長310m、かなり巨大だ。武装は重巡としては若干強力だ
「シーランス」「セイファー」はシーランス級で、その火力は重巡なみである
「ミデア」はミデア級で、こちらも重巡張りの巨体を誇る。元来Qレースに軽巡は存在せず、駆逐艦隊指揮用に新たに建造されたのだが、重防御のため重巡張りになったんだという
さて、この観艦式に参加した「連合の超弩級戦艦」を紹介しよう
一つは「紀伊」型。全長480m。武装は50.8cm連装レーザー砲七基、長砲身70cm単装レーザー砲二基、ミサイルVLS発射管27セル、大型ミサイル発射管2セルを搭載している。艦載機は80機(主に零戦五二型(烈風へ変更予定)、彗星、天山を搭載)。続いて先述の「ビスマルク」級である
こちらの全長は490mと、若干紀伊型より巨大である。兵装に関しては一部で紀伊型に劣るが、それでもかなりのものだ
続いて「プロトン」級。全長560m、武装は150cm波動砲一基、60.8cm3連装レーザー砲五基、50.8cm連装レーザー砲六基、ミサイルVLS16連装発射管64セル、10cm連装両用レーザー砲二十四基、高性能37mm連装機銃三十六基であり、連合軍では最大級だ。ちなみに艦載機は二十機。武装を強化したため若干少ない
これらの大艦隊が次々と並んで、各国で単縦陣で行動していた
そして堂々たる射撃まで披露した
轟音もすごいものだ
更に航空隊の雄姿も見られた
軍楽隊の演奏も加わった
捷一号作戦成功に伴い、見事に連合軍は復活したのだ
続く反攻作戦も次々と計画中である
だが、その一方でついにある通達が届いた
Qシュタイン連邦第一艦隊 戦艦「ビスマルク」
日戦軍団兵士「司令!Qシュタイン軍観測衛星から報告!『帝国同盟艦隊、キュワールへと接近中』!」
松井元帥「何っ!?」
日戦軍団兵士「観艦式を知っていたんでしょうかねぇ・・・」
松井元帥「本土の艦隊は?!」
日戦軍団兵士「本土でもパレンバン防衛作戦成功記念に式典やってますよ」
松井元帥「・・・まあいい、式典が終わるまでの辛抱だな。中止させるわけにもいかない」
ボルゾル元帥「本土に敵艦隊ですか・・・」
松井元帥「大丈夫だ。式典もそろそろ終盤だろ。終わったらすぐに戦闘配置命令を出す予定だ」
数時間後、連合軍の観艦式は終わった
そして、再び連合軍の兵士たちは戦闘配置についたのであった
第十四話 終わり

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