第四十三話 反撃の砲火
上陸部隊本部
溝口大尉「第113中隊およびプロトン合衆国陸軍第152中隊が到着したため、反攻作戦を開始することとなった。しかし、本隊最高指揮官九龍少佐殿の怪我が酷く、この状況では戦列復帰は不可能とされ、一時的に第113中隊の指揮下に入ることとなった」
この通達を聞いた残存隊員は驚いた
何しろ九龍少佐無し、それも第113中隊の指揮下に入っての任務である
宇野沢少尉「敵の攻撃能力には心底感服する。素晴らしいものだ。おそらく我々が倒せたものも極わずかであろう」
溝口大尉「なお、第113中隊の指揮下での任務だが、各小隊、各分隊ごとにそれぞれ隊長の判断で行動せよ。なお、本中隊指揮権をこの私、溝口に臨時移行することが決定された」
皆は動揺した。何しろ砂原大尉という立派な参謀がいるというのに、一分隊の隊長でしかない溝口が臨時中隊長に選ばれたのだ
砂原大尉(車種:三式中戦車)「静まれ!」
溝口大尉「中隊参謀の砂原大尉と相談した結果、先の戦闘で全く損害を出さなかった溝口分隊の隊長であるこの私が、臨時中隊長にふさわしいということで、臨時中隊長に就任することになったのだ」
佐藤中尉「つまり現時点での中隊最高権力車のお墨付きということだ」
砂原大尉「他の分隊も損害がある。杉山大尉!」
杉山大尉(車種:一式中戦車)「はっ!」
砂原大尉「君の分隊は君を含めて3両だけだったようだな」
杉山大尉「敵双発機の攻撃を受け、壊滅しました。空に敵がいるとは不覚でした」
砂原大尉「分かった。やはり航空攻撃は最大の敵だな。だが表面部の敵はほとんど撃破した。残るは内部。ルナツーでそうであったように、内部ともあらば航空攻撃は効かない。まずは内部へ突入するのだ」
溝口大尉「以上、別命あるまで待機せよ!」
作戦開始の時は近づいていた
ルナツー司令部
松井元帥「・・・そろそろ作戦が再開される時期だが、負傷車搬送用の輸送機も手配しないといけないな」
ドニゲッテル少将「現在ライトウォーター沖に展開している機動艦隊もそろそろ引くべきですな」
松井元帥「さて、内部攻撃作戦だ。敵はどう守るか・・・」
ドニゲッテル少将「推測では防御、攻撃に勝るJSが前方に押し出されているでしょうな」
松井元帥「あとT−28が砲台的に配置されているだろうな」
ユゴス少佐「・・・T−34、T−44を用いた高機動作戦も通用しそうですな」
松井元帥「とにかく、かなりの戦力がいるようだな・・・」

プロトン合衆国揚陸艦「イオージマ」 戦車1000両 物資輸送トラック10両搭載
戦力
プロトン第152中隊(隊長:インパル少佐 車種:M4A3シャーマン中戦車)
M5スチュアート軽戦車 300両
M24チャフィー軽戦車 300両
M4A1シャーマン中戦車 200両
M4A3シャーマン中戦車 200両(インパル隊長含む)

日戦軍団揚陸艦「国東」 戦車600両 物資輸送トラック50両搭載
戦力
日戦軍団第113中隊(隊長:矢矧少佐 車種:四式中戦車)
兵士の車種
九八式軽戦車 150両
九七式中戦車改 150両
三式中戦車 200両
四式中戦車 100両(矢矧隊長含む)

松井元帥「『大隈』『下北』『アルビオン』『オーシャン』『キアサージ』『ワスプ』に関してはそのまま停泊させておけ。部隊撤収時に用いることにする」
ライトウォーター基地
ついに反攻作戦が開始された
溝口大尉「総員、かかれ!」
おなじみの掛け声である
部隊は突撃を開始した
先陣を切って突撃するは溝口以下十両、そして第113中隊である
佐軒准尉「隊長、どうやら強敵は、第十中隊だけではないようですな」
溝口大尉「ああ、IS−3、IS−2、そしてT−44だな」
宇野沢少尉「隊長、前方にデカブツのT−28が!」
佐藤中尉「撃たれる前に撃て。攻撃を開始するぞ!」
前方にはT−28が四両、T−34が2両いた
T−34が攻撃を開始する
一両がやられた
だが反撃によりT−34を仕留める
T−28も攻撃を開始する
だが、多砲塔戦車ゆえに防御装甲も薄い。すぐに破壊され、六両の戦車を全て破壊した
萬屋中尉「これで、ここの奴らは全部片付けましたね」
溝口大尉「よし、次を探すぞ」
一方で他の部隊も敵部隊を捕捉、戦闘を開始しているようだ
ライトウォーター司令部
吉田一等兵「敵部隊、突入を開始しました」
近藤大佐「・・・さて、この後どう来るか・・・」
とりあえず、近藤中佐は第十中隊の各員に戦闘配置命令を下すことにした
その命令を受け各員が行動を開始した
コロゾフ中佐「そろそろ、敵さんも総攻撃を始めるでしょうな」
近藤大佐「そうだな。できる限りは、戦うとするか」
ライトウォーター基地
前方から次々と襲い掛かるT−28、T−34、そしてT−34/85。日戦軍団得意の機動戦法で次々と破壊していく
だが、一両の九八式軽戦車が突如爆発した
溝口大尉「何だ!?」
田辺曹長「あれです!」
田辺の目線の先には、T−44戦車十両、IS−2戦車四両の姿があった
溝口大尉「ようやく、真打登場と言ったところか・・・」
それまで戦っていた中戦車群(注:T−28はあの大きさでありながら中戦車である。ちなみに重戦車になるのはT−35から)とは違い、T−44、JS−2の防御および主砲の威力は凄まじいものである
背面装甲を攻撃しない限り、日本戦車では倒せないような強敵である
だが、それら14両の戦車の前には、十字路が確認できた
溝口大尉「よし、分隊各員に告ぐ、あの十字路まで前進する」
萬屋中尉「十字路までですか?」
溝口大尉「ああ、影から狙えるかもしれん」
佐藤中尉「影からですか?」
溝口大尉「その通りだ。迷ってはいられん、行くぞ!」
十両の戦車が突如前進を開始した
5両ごとで別々の壁に隠れた
ちょうど十字路の陰になる場所である
ここからなら敵は攻撃できない
砲声が聞こえた
続いて着弾音。装填まではある程度の時間がかかるはずだ
溝口大尉「撃て!」
直後、陰から飛び出した三式中戦車や一式中戦車が、T−44やJS−2を狙い総攻撃。自慢の速射で全車撃破した
溝口大尉「良くやった!」
佐藤中尉「何とか、突破できそうですね」
寺島曹長「これからも厄介な相手がたくさん出てくるでしょうな」
矢矧少佐「見事な戦法だ。さすが、九龍少佐の部下だけのことはあるな」
前方に敵がいないのを見て、日戦軍団は進撃を開始した
一方でニビリア、Qシュタイン軍は、JS−2、JS−3に梃子摺っていた・・・
ホーボス中佐「やはり厄介な敵だな・・・」
JS−2は撃破できるものの、JS−3は強すぎる
とにかく装甲が堅いのだ
フレイ中佐「正面からじゃあ無理だな、これは」
パンターA型がJS−3めがけて射撃を開始した
しかし、命中してもほとんど効果は無い
反撃を受け、そのパンターは破壊された
ホーボス中佐「・・・これでは損害が増えるばかりだ」
ルドルフ伍長(車種:パンターF型)「・・・隊長!この手が有りました!」
そういうと、ルドルフ伍長は全速でJS−3に接近していった
ホーボス中佐「おい!ルドルフ伍長!止めろ!」
だが、ホーボスの制止を聞かず、ルドルフ伍長はJS−3に突っ込んだ
爆発音が響く
その煙から、一両の戦車が接近してくる
やってきたのはルドルフ伍長だった
見るやJS−3は煙を上げている
どうやら破壊されたようだ
ホーボス中佐「・・・撃破には成功したが、あれでやられたら俺たちも壊滅していたぞ」
ルドルフ伍長「しかし、零距離射撃以外での撃破は、あれでは不可能だったでしょう」
ニビリア、Qシュタイン軍残存部隊は進撃を開始した
十字路に差し掛かった残存部隊は、突如十字路の両側面からの敵に襲われた
四式、五式中戦車が主力である
敵の数は少ないとはいえ、精鋭部隊である
連合軍は苦戦を強いられた
ホーボス中佐「さすがに挟撃ではつらいな・・・」
フレイ中佐「まさかこれほどの敵が隠れていたとは・・・」
ルドルフ伍長「やはり挟み撃ちでは対処が難しいですね・・・」
何しろ相手が相手だ。精鋭の第十中隊である
すると、敵の後方からエンジン音が聞こえた
フレイ中佐「敵の増援か!?」
だが、そうではなかった
突如響く砲声。炎上する五式中戦車
プロトン合衆国軍であった
別の入り口から突入し、そのままここに合流したのだ
一方敵部隊の内、挟撃を受け孤立した側は、降伏勧告に応じず、結局全滅した
もう片方の部隊は撤退していった
一方、日戦軍団は・・・
矢矧少佐「相手も、なかなか楽に通してはくれないようだな」
敵側も次々と押し寄せて来た
JS系列の数が増えていった
だが、損害を出しつつも日戦軍団は防衛網を突破していった
軍団名物突撃戦法である
砂原大尉「前進を続けろ!」
溝口大尉「総員、続け!」
日戦軍団は前進を開始した
しばらくして司令部が見える位置にまで達したが・・・
直後、砲声と共に九七式中戦車一両が炎上した
杉山大尉「今度は何だ!?」
砂原大尉「おそらく狙撃手だな」
溝口大尉「一体、どこにいるんだ?」
第二射、また一両がやられた
続いて第三射
百発百中である
溝口大尉「あそこだ!」
なんとかなり遠方の司令部の方から撃っていたのだ
約20kmほどは離れているところから狙っているのだ
射程が20kmのあるものは99式155mm榴弾砲。すなわち砲撃部隊司令、広末中佐である
第四射、第五射、第六射と、次々と兵士がやられていく
しかし、第六斉射を完了した途端、突如砲撃が行われなくなったのだ
溝口大尉「・・・砲撃が止まったぞ・・・」
矢矧少佐「よし、前進だ」
ライトウォーター司令部
吉田一等兵「大本営より入電です!『これ以上の抵抗は無意味と見てライトウォーター基地の放棄が決定。輸送機を手配するので撤退されたし』・・・」
近藤大佐「撤退だと!?」
吉田一等兵「はい、撤退命令です」
広末中佐「おい、それは無いだろ!我々がここで引くわけには・・・」
近藤大佐「そうだ!このまま最後まで戦闘を続行し・・・」
吉田一等兵「どうやら、第十中隊各員の損害を考慮してのことのようです」
コロゾフ中佐「我々にも同じ命令が下りました。撤退するほか、無いでしょうな」
近藤大佐「・・・分かった、撤退する」
飛行場には次々と輸送機が着陸してきた
戦車隊が次々と乗り込む
そして、連合軍が司令部に到着した時には、既に司令部はもぬけの殻であった・・・
溝口大尉「作戦は成功したが、損害はかなりのものだったな・・・」
砂原大尉「部隊再編のために、一度ルナツーへ戻る必要性がありそうですな」
杉山大尉「これまた、大変なことになりましたな」
矢矧少佐「とりあえず飛行場を確保しておかないとな」
こうして、ライトウォーターの占領に成功した
連合軍の要塞の一つの、奪回に成功したのだ
第四十三話 終わり

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